No.9


扉を潜り抜けた先は大海原でした。
潮風が頬を撫で、ウミネコの鳴き声が微かに聞こえる。

「う~ん、良い気持ち…
 って、んな訳あるかぁ~!!
 何処だ、ここわぁ~!?」

協会から扉を開けたら、2秒で海。
なんということでしょう。
流石にテロリスト雨流みねねも絶叫してしまう。
彼女も似たような場所は知っているが
あれは意識のみで飛ばされる場所であり、
肉体ごと別な場所に跳ばされるなど
初めての経験である事に変わりはない。
意味が分からず手当たり次第に
甲板に散らばる物に当り散らす。

「…五月蝿いねぇ~、アタシの船で何騒いでんだい?」

「あ゛ぁん?」

声が聞こえた方にギロリと振り返る。
船室の扉に寄りかかり、
手には酒の瓶を持った大柄な女が
酒気で紅く染まった顔でみねねを睨みつけていた。

「何だい、どんな奴がアタシの
 マスターなのかと思ったら、
 こんな『はねっかえりだけが取り柄です』って
 顔に書いてるような女かい!」

ヒックと喉を鳴らして女は自分で言った台詞が
気に入ったのか爆笑している。
みねねは震えていた。
意味も分からず連れてこられ、
陰険そうな神父には煽られ、
腹が立ってつい扉を開けてしまった
自分にも腹が立つが、
何よりも目の前のこの女が気に食わない。

「やったろうじゃないか、このクソッたれ!!」

言い終えるか否かという瞬間には
女に向かって飛び掛っていた。

「あらよ」

みねねの拳が女に触れるかと思ったら、
あっさりと手を取られ、
考える間もなく足を払われ、
それはもう見事なまでに無様に宙を舞っていた。

「単純だねぇ、そんな猪みたいに突っ込んだら
 こうなるって分かんないかねぇ?
 第一、あの程度で頭にくるなんて、
 あんた、まさか処女かい?」

放り投げられ、甲板に仰向けに倒れて放心していた
みねねの顔を覗き込みながら、
酒気を帯びた息を吐き掛けながら女が哄笑する。
それを受けてみねねの顔が瞬時に真っ赤に染まる。

「ち、違うっつの!? わ、私には必要ないだけだ!」

煙を出しそうな勢いで否定しつつ、
慌てて起き上がる。
一度、失敗しているので即座に
飛び掛るような真似はしない。
頭に血が上り過ぎて失念していたが、
そもそも“この女は誰だ?”。

「アッハハハハ!!
 悪いねぇ、あんたがアタシのマスターらしいから、
 ちょっと試させて貰ったよ」

笑いながら女は懐から別な酒瓶を取り出して
みねねの目の前に突き出してくる。

「……何だよ?」

女の顔と酒瓶とを交互に睨み、
みねねが女を警戒する。

「呑みな! 遺恨や禍根は呑んで流すもんさ!
 あんたとはこれから長い付き合いになるだろうしね」

子供の様な無邪気な笑顔を浮かべる女から
奪う様にして酒瓶を受け取ると口を開けて一気に流し込む。

「良い呑みっぷりだ!
 さっきは馬鹿にして悪かったね。
 まぁ、これがアタシの性分なんで
 まぁ、大目にみなよ!」

豪快に笑う女にみねねも馬鹿らしくなって
怒りも急激に冷めていく。

「それで、私との付き合いってどういうことだよ?」

みねねの質問に女はきょとんとした表情になり、
暫くして顔を抑えて俯いた。

「あちゃ~…アンタ、もしかして話聞いてなかったね?」

「ウッ! そ、そりゃ、もう、聞いて…ない…かな?」

大いに動揺するみねねに溜息をしつつ、
女が手招きして船室に招き入れる。

「あぁ、分かった分かった。
 説明するから取り敢えず入りな」

そうして船室の中で改めて女から説明を受ける。
話を聞き終え、だらしない姿勢で椅子に座っていた
みねねの口元に余裕の笑みが出来る。

「キヒッ! 要は殺し合いで残ったらご褒美って事か。
 何だ、それじゃ前と大してかわらねぇな!」

神の座を賭けてのバトルロイヤルが聖杯に摩り替わっただけ。
しかも、今回はお供付だという訳である。
逃亡日記もしっかりと手元にある。

「それで、アンタは聖杯に何を願うんだい?」

ライダーと名乗った女が酒を呷りながら、みねねに尋ねる。

「あ~……そうだね、神様って奴をぶっ殺す」

「乗ったぁっ!!」

答えるや否や叩きつける様に酒瓶を置き、
大声でライダーが叫ぶ。

「良いねぇ、デカイ奴ほどやりがいがあるってモンさ!!」

嬉々としてはしゃぐライダーが視線を足元に落とす。

「で、そのマスターは何してんだい?」

「……デカイ声の手下に恵まれてんだよ」

ライダーの叫び声に驚いて、
ひっくり返ったままの姿勢で
バツが悪そうにみねねは悪態をついた。

【参加者No.9 雨流みねね@未来日記】
【サーヴァント:ライダー(フランシス・ドレイク)@Fate/Extra】

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