二次キャラ聖杯戦争@ ウィキ

Shadow of Memories

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匿名ユーザー

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更なる強さを得るべく塔に侵入したルルーシュ・陽介・こなたの一行を出迎えたのは、一人の男だった。
最上階で待っていると言ったマーガレットではない。白衣に眼鏡、まるで医者か科学者かといった風貌の男だ。
当然、陽介たちに面識はない。

「誰だ?」
「ようこそ…強き魂を持つ者たち。待っていたよ」

干将莫邪を構えた陽介が前に立ち、誰何する。
サーヴァントであるガウェイン、火野映司はこの場にはいない。
ルルーシュとこなたが呼びかけてみたが、どうにもこの空間は隔絶されているらしく念話も届かなかった。
だからこの場で最も力があるのは陽介ということになる。

「私の名はトワイス・H・ピースマン。ピースマンで構わないよ」
「ピースマン…ルルーシュ、知ってるか?」
「いや、初めて聞く名だ。だがこの場にいるということは…おそらく俺たちと同じマスターということではあるまい。
 ここが本当に心の世界だというのならばな」
「その通りだ。私は今回、君たちと争う立場にはない。私はただの道案内だ」

敵意はないとピースマンは両手を上げる。
彼はサーヴァントを従えておらず、陽介がやろうと思えば一瞬で首を落とせるだろう。

「この塔…まあ迷うほどの広さではないが、それでもナビゲーションが必要だと思ってね。
 ダンジョンとはそういうものだ。君ならわかるだろう? 花村陽介」
「ナビ…クマやりせちーのあれか」

思い当たることのあった陽介は、とりあえず武器を収める。

「先程も言ったが、私は今回君たちの戦いには介入しない。
 君たちがここでの探索を円滑に行えるよう、手助けするだけだ」
「信じられんな。そもそもお前は何者だ? 今までどこにいて、どうやってここに現れた?」
「私の知っていることなら可能な限り教えよう…まず、私は何者か、だったな。私はNPCだ。
 ただし普通のNPCではなく、既に死んだピースマンという人物の記憶を保有している」
「記憶のあるNPC?」
「そうだ。まれにそういうこともあるらしい」
「では、貴様はマスターではないのか?」
「そうでもあり、そうでもない。少なくとも今この場では、私に従うサーヴァントはいない。ここは私の戦場ではないからな。
 私はあくまで君たちの補助をするためにここにいる。
 ここに来れたのは…私がそういう力を持っているから、で納得して欲しい。説明すると長くなるからな」
「では、俺たちを助ける理由は?」
「この戦いの結末には私も興味がある。だから、こんなところで足踏みをしてほしくない。
 早いところこの塔を攻略して、戦いの続きを見せてほしい…といったところだ」

陽介はルルーシュ、こなたを振り返った。
口に出さなくても何を考えているのかわかる。こいつは胡散臭いやつだがどうする、と。

「もちろん、私の助力が不要だというなら立ち去るが。
 助力といったところでせいぜいナビゲーションと解説くらいしかしないがね」
「…待て、まだ聞きたいことがある。
 NPCであるというなら、お前はこの聖杯戦争を仕組んだ者…俺たちを招いた者を知っているか?」

ピースマンが本当にNPCであるならば、当然ムーンセル側の駒であることになる。
そのムーンセルを恣意的に歪めた黒幕、とでもいうべき存在の手がかりに違いない。
他のNPCであるならばに聞いたところで答えるはずはないが、この怪しげなNPCならばどうか。

「ああ、知っている。少し、話もした」
「誰だ、そいつは?」
「すまないが、それは答えられない」

ギアスの使用も念頭に入れて、ルルーシュが問いかける。
ピースマンは感情を見せない瞳でルルーシュと真っ向から視線を合わせた。

「何故だ? お前がNPCだからか」
「そうではない。その存在の情報は…私から語るべきことではないからだ。君たちが自らの力で辿り着かねばならない」
「そんな悠長なこと言ってる場合かよ!」
「君たちが今考えるべきはこの塔を攻略し、古の英雄王を打倒することだろう。
 それ以外に心を割いていては、とてもあの最強のサーヴァントを打倒することはできまい」

む、とルルーシュが口ごもる。
確かにギルガメッシュとの戦いにおいて余裕はなく、今は少しでも不安要素は排除しておきたい。

「心配せずともギルガメッシュを打倒すれば自ずと道は開ける。
 ムーンセル中枢へと続く熾天の門で、君たちは真実と出会うことになる」
「やつらを倒せば黒幕が俺たちを招くということか?」
「その認識で問題ない。…ではそろそろ出発していいだろうか?」

返事も待たずピースマンは歩いていき、【塔】の最初の階層、大きな扉の前でこちらを振り返る。

「ええっと、ピースマンさん? ナビって言ってたけど、具体的に私たちは何をすればいいの?」
「この【塔】はシャドウの巣窟だ。そのシャドウを排除し、最上階まで到達することが目的になる」
「シャドウってなに?」

こなたの疑問には陽介が答えた。
といっても、陽介も完全にシャドウを理解しているわけではないため、かなりアバウトな説明になった。

「人間の抑圧された願望が形になったもの…か。しかしガウェインも火野もいない現状、俺たちだけで対処できるものなのか」
「問題はない。シャドウと言っても、この戦いに招かれた者の影だ。サーヴァントほどの力はないよ」

ピースマンが扉を開ける。
その部屋の中は建物の内部ということを忘れさせるほどに広い。
奥の方には教会らしき建物が見える。その前には、全身を黒く染めた人影…まさに影だった。それが二つ。

「あれは…!」
「天野雪輝、そして我妻由乃。この戦いで最初に脱落したマスターたちだ。
 花村陽介、君は覚えがあるんじゃないか?」
「ああ、名前までは知らなかったけど、俺とアレックスが最初に戦ったやつらだ。
 確か男は女にユッキーって呼ばれてた。雪輝だからユッキー、か…」

それは陽介がアレックスとともに臨んだ最初の戦い。
由乃というらしい女が一方的に陽介を敵視し、襲ってきたことを思い出す。

「彼らは共に自らの願いを叶えるために未来日記と呼ばれる道具を使って戦っていた。
 原理的には聖杯戦争と似たようなものだ。だからこそ、特に躊躇いもなくこの戦いに参加したのだろう。
 」
「花村、彼らはお前が…?」
「いや違う。俺も応戦はしたけど、いきなり別のところから剣と炎の波が押し寄せてきてあいつらを飲み込んだんだ」

――由乃…日記…父さん…母さん…キャスター…
――ユッキー、ユッキー、ユッキー、ユッキー、ユッキー、ユッキー、ユッキー、ユッキー、ユッキー、ユッキー

「喋った! ねえ、あの人たちまだ生きてるんじゃ…」
「泉こなた、それは違う。彼らは既に死亡し、ムーンセルによって解体されている。
 あれは生前の彼らが抱いていた願望…未練が形を得ただけのものだ。君たちはあれを破壊し、魂の残滓を回収すればいい」
「破壊って、またあいつらを殺せってことかよ!」
「殺すという表現は正しくない。花村陽介、シャドウと戦ってきた君ならわかるだろう。
 あれは影だ。姿形は同じでも、決して本人ではない。そしてそのオリジナルである人物が死亡している以上、対話など不可能だ。
 君がペルソナを発現した時のように、戦って打ち倒し、力を吸収する以外にない」

陽介がペルソナに目覚めたのは、テレビの中で己の影と対峙し受け入れた時だ。
しかしここには、あのシャドウを受け入れる器となる人間はいない。

「…やつらは強いのか?」

イルバーンを構えたルルーシュがピースマンに訊く。陽介が手を下せないのなら代わりにルルーシュがやるつもりだった。

「本体が死亡している今、あれに戦闘力など皆無だ。泉こなた、君のその銃でも容易に破壊できるだろう
「なんだよそれ…俺たちは強くなるためにここに来たんだぞ!
 なのに戦いもせず、ただ一度死んだ奴らをもう一度殺せって、それで強くなれんのかよ!」
「ウィザード――霊子ハッカーの能力とは肉体的な強さを指すものではない。
 意志の強さ、霊子…魔力を制御する能力、魂の純度。そんなものだ。
 あれを破壊するということは、元々彼らが保有していた霊子を取得するということに等しい」
「その霊子を得れば、俺たちは強くなる……と?」
「そうだ。ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア、泉こなた。
 君たちは花村陽介のようにペルソナを覚醒させることはできないが、保有する魔力の底上げをするには十分だろう」

ウィザードとして上達するということは、サーヴァントに供給する魔力もまた増幅されるということだ。
つまり直接的に戦力の強化に繋がる。

「確認するが、あいつらを倒したとして、その力を吸収できるのは倒したやつだけか?」
「いや。影を破壊すれば貯蔵されていた霊子が弾けて拡散する。
 この場にいる君たち三人、均等に受容できるだろう」
「…花村、泉。聞いての通りだ。俺たちに手段を選んでいる余裕はない。
 が、無理強いすることでもない。ここは俺がやろう」

ルルーシュがイルバーンを構えて、影の雪輝と影の由乃の前に進んでいく。
近づいても攻撃される気配は無い。これなら確かにサーヴァントは必要ないが、やることは虐殺に近い。

「…済まんな」

逡巡をぐっと飲み込んで、ルルーシュは槍を突いた。
諸共に貫かれた男女の影が、淡い光の粒子となって放散していく。

――由乃
――ユッキー

最後にお互いの名を呟き、影は消えた。
ルルーシュたちの体に光が吸い込まれる。

「…なるほど、確かに力を感じる。これがウィザードが力を得るということか」

ルルーシュと同じく陽介とこなたも光を吸収し、僅かながら力を増した。
しかし、二人の顔は晴れない。

「可哀想だね…死んだ後でもこんな目に合うなんて」
「いくらシャドウだからって、これはないだろ」

二人にルルーシュを責める気はないが、納得しきれていないのも事実だ。
ルルーシュは、ピースマンを見る。

「…そうか。ピースマン、お前が出てきたのは、この痛みを俺たちに感じさせるためか」
「どういうこと?」
「花村、泉。もしピースマンがあの二人の名前を言わなければ、俺たちは躊躇いなくあいつらを倒していた。違うか?」
「そりゃあ…そうだな。シャドウは基本的に俺らの敵だったし」

そして、彼らの正体を知らないまま、手に入れた力にただ喜んでいただろう。
この程度のシャドウでこんなに経験値を貰えるのか、と。

「戦う必要はない。しかし、自分が何を、誰を蹴落としたのか知れ…
 何を踏み台にして先に進むのかを認識しろ、そういうことだろう。違うか? ピースマン」
「概ねその通りだ。これはある錬金術士の言葉だが…
 『痛みを伴わない教訓には意味がない。人は何かの犠牲なしに何も得る事などできないのだから』。
 私はこれを、この世の真理の一つだと思っている」

痛みと引き換えに、新たな力を得る。体は無事でも、心を傷つける戦い。

「…まさかこの先も、あいつらのような既に死んだ者の影が待っているのか?」
「そうだ。といっても、特に強い未練を残した者たちだ。
 鳴上悠、天海陸など死後に君たちと和解した人物はここにはいないし、自身の結末に納得して穏やかに逝った者も同様だ。
 中には君たちとは面識のない者もいるだろう」

ピースマンはさっさと次の階へ向かう階段に向かっていく。
取り残されたルルーシュたちは、誰ともなく顔を見合わせた。

「面識がない…か。私たちとは会わなかったか、会ってても名前を知らない人たちってことなのかな」
「名も無き脱落者ではなく、一人の人間として、ここにいた証を覚えておく。俺たちにできることはそれだけなんだろう」
「天野雪輝…それと我妻由乃、か。忘れられねえな…」

静まり返った空気の中、三人はピースマンに続いて階段を上がる。
次に出たのは近代的なショッピングモールらしき空間だった。

――狼…戦い…得物…弁当…
――エルム…人造人間…
――咲良…衛…ファフナー…島に帰りたい…

「今度は三人!」
「金城優。半額弁当を得るために、そして己の誇りを満足させるために、闘争に臨んだ男。
 アシュヒト・リヒター。死んだ恋人を人間として甦らせるため、戦いを決意した男。
 近藤剣司。心を砕かれた想い人を救い、幼き日の穏やかな生活を取り戻したいと願った少年。
 ちなみに彼らは、ゼフィールとライダー・アシュナードによって鏖殺された。花村陽介、君がゼフィールたちと出会う少し前だな」
「あいつら、三組のサーヴァントを相手に勝ちやがったのかよ…」
「東の新都での出来事だから、君たちは知らないだろう。聖杯戦争序盤のことでもあるしな」

そういえば月海原学園の掲示板で名前を見たことがある。
しかし、文字の羅列としてみるのと、こうして目の前にするのとではやはり現実感が桁違いだ。

「さあ、初対面だからといって気に病むことはない。先ほどと同じように、破壊し、力を得るといい」

無表情のまま煽ってくるピースマンを横目で睨みつけ、再びルルーシュが進み出る。
ルルーシュはこの仕事を自分の担当だと決めていた。
陽介もこなたも、手を汚していい人間ではない。たとえそ相手が生きた人間ではなくその残滓だとしても。
しかし、そのルルーシュの両手を陽介とこなたがそれぞれ引っ張って止めた。

「待てよ、ルルーシュ…さっきは悪かったな、押し付けちまって」
「今度は私たちもやるよ」
「お前たち…しかし」
「ルルーシュくん、さっき言ったよね。一人に人間として覚えておくって。
 だったら、私たちも見てるだけじゃ駄目だと思うよ」
「そうさ。俺たちも同じ痛みを共有しなきゃ、あいつらに申し訳が立たねえ」

陽介が干将莫邪を、こなたがニューナンブをそれぞれ構える。
これから彼らを終わらせる…その事実を強く認識する。
ルルーシュは二人の決意を感じ、それ以上は何も言わずイルバーンを手にする。
こなたが金城優の、陽介がアシュヒト・リヒターの、ルルーシュが近藤剣司の影の前にそれぞれ立つ。
武器を突きつけても影たちは反応しない。

「この人たちが何かに囚われてて、倒したら解放される、っていうのなら、気分的に楽なんだけどね…」
「そうだな。だが、それでは痛みにならない…俺たちの教訓にはならない」
「だからさ、せめて…絶対忘れないからな。あんたたちのこと」

陽介が双剣を振るう。
こなたが引き金を引く。
ルルーシュが槍を突き出す。
何の抵抗もなく影たちは破壊され、やがて跡形もなく消えていく。
それと同時に、三人はまた内なる力が増したのを感じる。

「終わったようだね。では、次に行こう」

影が破壊されるのを見届けたピースマンは、またも一人で先に進む。
言葉通りナビゲーション以上のことをする気はなさそうだ。
陽介たちが影を破壊してどんな思いに至るか、陽介たち次第だというように。
この塔でやるべきことを理解し、三人は足取りも重く次の階層へと移動する。

「…でも、変だな。この調子で死んだやつのシャドウと向かい合うだけなのかな」
「どういう意味だ?」
「ん、俺らが戦ったシャドウってのはさ、もっと直接的に…そう、戦ったんだよ。
 ペルソナを使ったり、武器を使ったりしてさ。サーヴァント並とまでは言わねえけど、立派な化物ばっかりだったぜ。
 だからなんつーか、こうやってシャドウが無抵抗なのは違和感があるっていうか…」

階段を登る僅かな間の雑談。
陽介の疑問にはピースマンが答えた。

「心配せずとも最上階では君たちの力を試すことになる。花村陽介、君に馴染みのある通りの方法でな」
「げ…やっぱあの人と戦うの…?」

少し前に叩きのめされたペルソナ使いの美女を思い出し、陽介が身震いした。
彼女相手ではそれこそサーヴァントでも持ち出さない限り勝ち目なんて無いように感じる。

「よくわからんが、どのみち戦いにはなるということか。なら少し考えておいたほうがいいな…」
「考えるって何を?」
「泉、お前が言ったことだ。合体攻撃とか新しい力とかな」
「あ、あれ…でもあれ、勢いで言っただけで別に案があるわけじゃないんだけど」
「そこから策を考えるのが俺の仕事だ。まずサーヴァント抜きの、俺たちマスターの戦力を確認するぞ。
 花村のペルソナ…アレックス。半分ペルソナで半分サーヴァントであるから、俺たちの中で最強であるのは言うまでもないな」
「つっても、さすがにサーヴァントと戦えるかって言ったら無理だと思うけどよ」
「しかし攻撃が通じないということはないだろう。
 おそらくガウェインや火野であっても、まったくの無防備のところにお前が全力でペルソナを使えばダメージは負うはずだ」
「そのまったくの無防備ってのがもう既に無理のある前提じゃないかなって私思うんだけど」
「今は攻撃が通じるか、通じないか。その可能性だけでいいのさ。
 そして、封印の剣。これはペルソナが使えば最大限に効果を発揮するのは以前に説明したな」
「んで、士郎が残してったこの干将と莫邪。これも一応宝具らしいからサーヴァント相手にも効くらしいけど。
 じゃあペルソナ、封印の剣、干将莫耶。この三つが俺の戦力だな」

次にルルーシュがイルバーンを軽く床に打ち付ける。元は名無鉄之介の使っていたもの。

「俺はこのイルバーン、ギアス、そしてコードキャストが二つ、そして決着術式。
 ギアスは今さらギルガメッシュに効くとは思えんし、接近戦も無謀だな。イルバーンの魔力増幅機能を使った後衛をやることになるだろう。
 ガウェインがいれば決着術式も使えるが、ギルガメッシュに通じるかは未知数だな」
「じゃあ、最後は私だね。って言っても、私には二人みたいな武器はないから何もできないけど…」

最初と最後でかなり勢いに差があるこなただったが、ふとイゴールから渡された礼装のことを思い出した。

「あ、これ使えるかな?」

鳳凰のマフラー、聖者のモノクル、遠見の水晶玉。それぞれ回復、偵察、地形俯瞰の能力を持つ礼装だ。
身につけてみれば、どういう効果を発揮するのかもわかった。

「陽介くん、ちょっと疲れてない?」
「そういえば…」
「じゃあ、ちょっとやってみるね。それ!」

鳳凰のマフラーのコードキャスト、heal(16)が発動した。
柔らかな光がこなたの手から放たれ、陽介を包む。

「おっ…すげえ、疲れがなくなった!」
「うん、今の状態なら私にも使えるみたいだね」
「回復か…これは有用だな。泉、他の二つはどうだ?」
「ええと、敵対者の情報を表示…アリーナの階層データを表示、ってあるね」
「どちらも情報処理系のキャストのようだな。二つとも使ってみてくれ」
「はいはい。えー、まずはこの片眼鏡で」

view_status()が発動。こなたの視界にルルーシュと陽介の様々なデータが投影される。

「ルルーシュくんは左眼に特に魔力が集中してる。
 陽介くんは…今ペルソナ出してないよね? ぼんやりと魔力が人の形になってるのが見えるけど」
「魔力がどこに集中しているかわかるのか。それなら相手の出方を見るのには有効だな」

最後に遠見の水晶玉を発動。今度は今登ってきた塔の全体図が表示された。

「この塔…五階建てみたいだね。この上にあと三階あるよ」
「地形データの走査か。これは…使い道が思いつかんな」
「ここから出たらもう使わなさそうだもんな」

どうやら一つは外れらしい。が、回復と偵察だけでも大きな収穫だ。

「サーヴァント抜きで戦う場合、花村が前衛、俺が後衛、そして泉がさらに後ろで補助をする陣形がベストだろうな」
「んー、でもこれ普通のマスター相手ならいいけど、サーヴァント相手にはあんまり意味ないんじゃない?」
「それはな…」

さらに話し込もうとした三人を、咳払いが留める。
ピースマンが三階の扉の前で振り返ってこちらを見ていた。

「作戦会議もいいが、そろそろ次に行かないかね?」

水を注され、三人は話を切り上げてピースマンの後を追う。どのみち、今はこれ以上話し合っても打開策はない。
三階層目は、古びた屋敷の前に出た。

「遠坂の屋敷…じゃないな。知っているか?」
「ここは間桐邸。そしてあの二人がこの館の主、間桐慎二と間桐雁夜だ」

ピースマンの示す先には、海藻みたいな髪型の青年と白髪の男性の影が、二人で同じようにうずくまっていた。

――衛宮…桜…遠坂…
――桜ちゃん…凛ちゃん…葵さん…

「あっ…あの白髪の人」
「泉こなた、君は間桐雁夜を知っているな。君を最初に襲ってきた相手だ。
 彼は甥である間桐慎二に殺された。そして間桐慎二は匂宮出夢に敗れた」
「出夢…? 確かその名はスザクが言っていた」
「枢木スザクは間桐慎二に蹂躙され、身体機能の大半を奪われた。
 その後、枢木スザクの同盟者となった匂宮出夢によって、間桐慎二は殺された」

淡々とピースマンは説明する。
二人ともルルーシュたちとは関わりが薄いが、スザクの両足と片腕を奪った人物とあってはルルーシュもやはり気にかかる。

「あの雁夜って人、凛ちゃんって言ってるけどもしかして」
「君の想像通りだ、泉こなた。彼は遠坂凛とも縁深き人物になる。身内ではないがね」

たとえ深く関わっていなくても、誰かの知り合いと繋がっている。
ならば、ここに彼らが出てきたのも無意味なことではないのだろう。

「…あの雁夜って人は私がやるよ」
「なら、俺は間桐慎二を」
「ルルーシュ…大丈夫か? なんだったら俺がやるぞ」

陽介がルルーシュを引き止めた。
ルルーシュ本人は間桐慎二に面識がなくても、スザクという親友に苦難を味あわせたというのだからルルーシュが怒りを抱くには十分だ。
その怒りを影に叩きつけてはいけない…この思いが直感として陽介の中にあった。
ルルーシュはそんな陽介の考えを察し、ふっと笑う。

「大丈夫だ花村。別に俺は間桐慎二を憎んではいない。
 間桐慎二に出会わなくてもスザクの意思は変わらなかっただろうし、既に死んだ人間を憎むのも馬鹿馬鹿しいことだろう。
 ただ、この中では俺が一番、間桐慎二に関係がある。だから俺が一番強く覚えていられる…それだけだ」

ルルーシュの様子を見て、余計な心配だったと陽介は手を離した。
こなたもまた、神妙な面持ちで間桐雁夜に向かって銃を構える。

「この人と凛ちゃんがどんな関係だったとか、なんで私を襲ってきたのかは知らないけど…やっぱり、雁夜さんにも願いがあったんだよね」
「間桐慎二にもな。その願いがどんなものか、俺たちが知ることはできないが」
「…絶対に、忘れないから」

引き金を引く。
槍を振り下ろす。
影が消えると、また一つ力を得る。同時に痛みも残る。

「…影との対峙は次が最後だ」

去っていくピースマンを追いかけ、陽介たちも急ぐ。
傍で支えてくれるサーヴァントがいないととても不安だと、いまさらながらにこなたは思う。
しかし、この痛みこそが、こなたが火野映司を支えるために必要な痛み。
自らも同様に傷つかねば、パートナーの痛みや苦しみを理解することなどできない。

「無理すんなよ、泉。俺やルルーシュだっていんだからさ」
「あはは、ありがとう陽介くん。でも大丈夫、このくらい平気だから」
「誰かを支えるだけじゃない。同時に誰かに支えられてこそ、仲間というものなんだろう。俺たちはもはや運命共同体だ」

同じ痛みを分かち合うことで、より陽介やルルーシュとの距離が縮まったような気がする。
気恥ずかしさを覚え、こなたはポケットに入っていた弾丸に話をすり替えることにした。

「ね、ねえルルーシュくん。この弾って使えないの?」
「衛宮切嗣の使っていた弾丸か。この大きさの弾丸となると、そのリボルバーではとても撃てないな」
「でもそれって、ただの弾丸じゃなくて礼装なんだろ? 悠のペルソナを一発で消滅させてたし。
 泉が使ってるマフラーみたいには使えねえの?」
「コードキャストを発動させるタイプではないらしい。思うにこれは、衛宮切嗣が使用して初めて効果を発揮するものなんだろう」
「じゃあ駄目かー」

こなたが起源弾をポケットに戻す。
ただの話の種に出したものだったが、ルルーシュの思考はそれをきっかけに加速していく。

(衛宮切嗣にしか使用できない弾丸…魔術礼装…ペルソナを、いや魔術をキャンセルする力?
 ジェレミアのギアスキャンセラーのような…だとしたら…)

頭の中で演算を繰り返すルルーシュを待たず、一行は第四階層へと辿り着く。
ピースマンの言葉が真実なら、影との対峙はここで最後だ。
最後の影は、小柄な少女の姿をしていた。

――あんちゃん

「羽瀬川小鳩。枢木スザクに同行していたキャスターのマスター。
 枢木スザクと同じく間桐慎二によって自由を奪われ、さらに己のサーヴァントであるキャスターの手で魔術炉へと変化させられた少女だ」
「キャスター、魔術炉…それって」
「そうだ、花村陽介。君がランサーをペルソナへと変化させる際用いた賢者の石。あれこそがこの羽瀬川小鳩の成れの果てだ」

告げられた事実に愕然とする。
あの時は単なる魔力の詰まった石としか思っていなかったが、マスターそのものを変化させたものだとは。
使った陽介、使わせたルルーシュ、二人ともに知らず知らず殺人に加担していたということになる。

「罪悪感を感じることはない。キャスターが消えた時、賢者の石もやがては消える運命だった。
 仮に消えなかったとしても、君たちに彼女を救う術はなかったのだから」

温度のないピースマンの声が突き刺さるような痛みを与えてくる。
彼女は今までの影と違い明確に陽介たちと関わっている人物だ。特に陽介は、小鳩の死の犠牲の上に命を繋ぎ止めたとも言える。

「…ルルーシュ、泉。ここは俺がやる」

二人に意見を挟ませない断固とした口調で、陽介は小鳩の影に向かい合う。
今も確かに感じるアレックスの存在感。その中に、この少女の命の残り香が含まれているとしたら、小鳩の影を消して記憶に刻みつけるのは陽介でなくてはならない。
これから先も生き続けるならば…アレックスとともに歩むのならば。

「ごめんな。謝ったって済むことじゃないけど、知らなかったなんて言い訳にならないよな。
 それでも…ごめん。ごめんな…!」

嗚咽を堪えて振り下ろした干将莫耶は、少女の影を霧散させる。
今までと同じく、影は霊子となって飛散し、陽介たちに吸収される。

「覚悟はしてた気になってたけど、まだ甘かったんだな。あんな小さい子までいるなんてよ…」
「うん…あんちゃんって言ってたね。お兄ちゃんがいたのかな」
「妹…か。やりきれんな」

こなたには従姉妹ではあるが小早川ゆたかという妹のような存在が、ルルーシュには実の妹であるナナリーがいる。
それぞれ兄、姉として生きてきただけに、小鳩が帰ってこないと知った時の小鳩の兄の辛さを想像できてしまう。

「絶対に、終わらせなくちゃな、こんなこと…!」

真っ赤になった目をこすり、陽介がずんずんと先に進んでいく。
ピースマンは相変わらず無感情に見ていたが、その足は先には進んでいなかった。

「どうした、ピースマン」
「私の役目はここまでだ。最後の階層には別の者がいるからな」
「本当に解説だけしかしなかったね…何がしたかったの?」
「君たちという存在を一度間近で見ておきたかった。
 なるほど、ここまで勝ち残ってきただけはある…これなら、『彼』の願いも今度こそ叶うかもしれないな」

最後はぼそぼそと小声になっていたため、ルルーシュとこなたには聞き取れなかった。
ルルーシュはピースマンが何と言ったか聞き返そうとしたが、

「行きたまえ。君たちなら最後の試練も突破できるだろう。
 君たちがこの聖杯戦争をどういう形で決着させるのか…見届けさせてもらうよ」
「…ピースマン、一つだけ聞きたいことがある」

これ以上ルルーシュたちに干渉する気はなさそうなピースマンに向かって、最後の問いを放つ。

「お前は俺たちの敵なのか?」
「違う。これだけは信用してくれていい。私はこの戦いには何の関与もしないと決めている。
 次回があるならば、その参考にしたいと思っているけれどね」
「そうか、ではな。二度と出会わないことを祈っている」

ルルーシュはこなたを促して上階へと向かう。
残されたピースマンは二人の背を見送っていた。

「『痛みを伴わない教訓には意味がない。人は何かの犠牲なしに何も得る事などできないのだから。
 しかしそれを乗り越え自分のものにした時…人は何にも代えがたい鋼の心を手に入れるだろう』」

欠片の男はポツリと呟く。

「ゼロ、もう少しで答えは出る。
 君が望んだ魔王たるべき器が彼らなのか…私も興味が出てきたよ」

その言葉は、誰の耳にも届かずに消える。
同時に、ピースマンの姿も消えた。






最後の階層。
陽介たちの前には、ベルベットルームの住人・マーガレットが佇んでいた。

「ようこそ、お客様方。ここが塔の終着地点でございます」
「やっぱ最後はマーガレットさんか…」

やや青ざめた顔の陽介がアレックスを出現させる。
先刻叩きのめされた相手だ。その力のほどは骨身にしみて理解している。

「あなたたちを包む王気…以前とは比べ物にならないくらい強くなっているわ。この塔を登る中で強くなったのね」
「で、この階層の試練は貴方ということか」
「ピースマンさんはここで力を試すことになるって言ってたけど」
「油断すんなよ二人とも。あの人、俺なんかよりめちゃくちゃ強いペルソナ使いだぜ」

三人は先ほどの打ち合わせ通りの陣形を組む。
しかしマーガレットは手をひらひらと振り、その勢いをくじく。

「ご期待に添えなくて申し訳ないけれど…相手は私じゃないわ。
 そちらのお二人はペルソナ使いではないし、私よりもっと相応しいものがこの場にはいるから」

マーガレットが横にずれる。
その後ろにいたのは、桃色の髪の少女…の、影。

「こちら、鹿目まどか様の影があなたたちの最後の試練。
 ただし、今までの階層と違って…ペルソナ!」

まどかの影は虚ろな眼差しを陽介たちに向ける。
その影…まどかの影が真っ二つに割れ、内から丸太のように太く腕が飛び出してきた。腕は、まどかの影を掴み…自らを引き上げるように力を込める。

「お、おいあの腕…俺なんかすっげえ見覚えがあんだけど!」
「そ、そうか花村、奇遇だな。俺もつい数時間前に見たことがある気がする…!」
「あれ、どう見ても…!」

まどかの影の中から飛び出してきたのは…三人の予想通りのもの。

「アーチャーのサーヴァント、DIOが駆使したスタンド――ザ・ワールド。
 その影が、あなたたちの相手を努めます」

マーガレットが朗らかに告げる。だが陽介たちはそれどころではない。
目前にいるのは最凶のサーヴァントとして猛威を振るったDIOのEX級宝具。
近接戦闘においてセイバーやランサーにすら匹敵するほどの超級のスタンドだ。

「いやいやいやいや! ってかなんであれがシャドウなわけ!? DIOは死んだんだろ!」
「DIOはあなたに敗れる少し前、マスターである鹿目まどかの心臓を食らった。つまり、鹿目まどかとDIOは僅かながら同化したと言えるの。
 つまり鹿目まどかの影にはDIOの、ザ・ワールドの断片が混ざっている…その情報を、私がペルソナとして再構成した。
 ペルソナとスタンドの近似性については…あなたたちはもう知っているわね?」

鳴上悠は、DIOのエネルギーを受けて反転したペルソナ・伊邪那岐禍津大神を覚醒させた。
ペルソナとスタンドは別個の存在だが、在り方は非常に似通っている。
ペルソナ使いとして悠を遥かに上回るマーガレットならば、ザ・ワールドの断片を元にペルソナとして再構成するのもさほど難しいことではない。

「もちろん、これはデッドコピー…時を止める力はない。
 でもそれ以外、たとえば格闘能力なんかはオリジナルに近いものになっているわ」

影のザ・ワールドが吼える。
DIOに制御されていた時とは違う。ただ本能の命ずるままに暴れ回る獣…暴走状態だ。

「アレックスっ!」

ザ・ワールドの豪腕を、召喚されたアレックスが受け止める。
しかし、サーヴァントの時ならいざしらず、ペルソナとなった今では正面からそのパワーを受け止めるには力不足。
後ろにいたルルーシュ、こなたもろともに吹き飛ばされた。

「なんて力だ…!」
「負けるか! アレックス!」

スサノオ、そして悠のイザナギから継承された力を発現させる。
マハタルカジャ・マハスクカジャ・マハラクカジャ、強化魔法をこれでもかと連発。三人の攻撃力・敏捷性・防御力が増加する。

「ハドロン砲を使う!」
「せぇいっ!」

ルルーシュがコードキャストを、アレックスが頭上から封印の剣を、そして加速した陽介が背後から干将莫邪をザ・ワールドへと叩き込む。
しかし、ザ・ワールドとて数あるスタンドの中で最強の位置を占める存在。
コードキャストを物ともせず、封印の剣を両掌で挟み止め、背後の陽介には蹴りを放つ。
すんでで干将莫邪を差し込みキックを防いだ陽介だが、防御力を上げてもなおその一撃は重い。
壁際まで吹っ飛ばされ、制御が疎かになったアレックスへザ・ワールドのラッシュが叩き込まれる。
ペルソナのダメージがフィードバックし血を吐いた陽介にこなたが駆け寄り、回復のコードキャストを施す。

「くっそ…やっぱつええ!」

制御する本体がいないので、今のザ・ワールドは手近にあるものを力任せに殴りつけるだけだ。
もしDIOが操っていたならば、今の攻防で陽介は確実に死んでいた。戦えない相手というわけではない。
しかし、やはりパワーが尋常ではなかった。

「あら、ここまでかしら? だったら少しがっかりね」
「まだ負けてないっつーの…!」

マーガレットの冷やかしに奮起し立ち上がるものの、陽介には勝機が掴めない。

「映司さんかガウェインさんがいてくれたら…」

こなたの呟きに全面的に同意したい気持ちだった。
しかしただ一人、ルルーシュだけはこの強大な敵に勝利する道筋を見据えている。

「違うな、間違っているぞ泉…!
 この程度の壁を乗り越えられないようでは俺たちに未来はない!
 こいつは俺たちの手で打ち倒すべき敵だ! それができないのなら、俺たちにサーヴァントと共に戦う資格などない!」

ルルーシュはイルバーンをザ・ワールドに向ける。
しかし、スザクとの戦いのときのように突撃はしない。

「泉、今こそお前の言葉を実現する時だ!」
「え? え?」
「合体攻撃と言っただろう。既にプランはできている…!」

道中の会話でヒントは得た。
構成要素は手元にある。
そしてここに来るまで高められた三人の魔力を持ってすれば…やれるはずだ。

「花村、少しでいい、時間を稼げ!」
「なにか手があんのかよ、ルルーシュ!」
「ああ、任せろ! 奇跡を起こしてやるさ!」

ルルーシュの言葉を信じ、陽介は一人ザ・ワールドへと立ち向かう。
その背中にルルーシュは、陽介から向けられる確かな信頼を感じる。ならばそれを裏切る訳にはいかない。

「泉、起源弾を貸してくれ。それにさっきの情報を表示する礼装を使うんだ」

こなたから受け取った起源弾を、ルルーシュはイルバーンの先端に突き刺す。
イルバーンと、リインフォースから託された魔術回路が駆動する。
この塔を登ってくる過程で得た霊子がルルーシュのハッカーとしての能力を底上げしている。
擬似的に起源弾の効果を再現…あるいは変化させて放つことが、不可能ではなくなった。

「ザ・ワールドの情報…出た! これどうするの!?」
「やつの魔力が弱いところを探せ! そこにこいつを叩き込む!」

ザ・ワールドの弱点…それは頭部。陽介がDIOを倒した時、とどめを刺した箇所だ。

「よし、次は…泉、イルバーンを掴め。先端の起源弾にさっきの階層表示の礼装を使うんだ」
「え…弾丸に?」
「階層を表示するということは、つまり空間を把握するということだ。
 イルバーンに接続した状態なら、起源弾の構成データも解析できる」

こなたが起源弾に向けてview_map()を使用すると、ルルーシュの言葉通り起源弾を構成する情報を表示できた。

「起源弾…衛宮切嗣の礼装。本人以外には使えないもの。
 魔術効果のキャンセル…弾丸の形状…強い指向性。
 効果を発揮するのが不可能でも、宿す性質は劣化しない…」
「ルルーシュくん、陽介くんが危ない!」

こなたが表示したデータを一瞬で掌握し、ルルーシュは脳内で演算を処理する。

「起源弾の効果をエミュレート…イルバーンを銃身に…燃料は俺たちの魔力…よし! 花村、戻れ!
「やっとかよ…!」

時間にしておよそ一分も経っていないが、陽介にとっては果てしなく長い数十秒だった。
ゼフィールと戦った時よりきついかもしれない。
アレックスをザ・ワールドへの足止めに残し、陽介が戻ってくる。

「花村、お前もイルバーンを掴め」
「よっと…これでいいのか?」

長い槍の先端近くをこなたが、中盤に陽介が、反対側の端をルルーシュが持つ。
三人のウィザードから注ぎ込まれる魔力がイルバーンを経由し、起源弾へと流れ込む。
『切って、嗣ぐ』というプロセスを経る起源弾。
その、魔術を破壊するという側面だけを抽出し、増幅する。『切る』という属性だけを特化させる。

「狙いを定めるのは泉、お前だ。お前が見たやつの弱点をイメージしろ。
 補正は俺がやる。花村はありったけ魔力を流し込め!」

幾度かの戦いでウィザードとして熟達しつつあるルルーシュが細かな制御を処理する。
魔力保有量に最も優れる陽介がエネルギー源である魔力を注ぎ込み、推進力とする。
そして敵対する者の弱点を可視化できるこなたが狙いを定めた。
イルバーンという神話級の魔術礼装を通し、三人の精神は完璧なリンクを果たす。
聖杯を砕くという目的のもと団結し、意識を繋いで高め合う…

「…ここ! 陽介くん!」
「撃て、花村!」
「っし…いけぇぇぇぇっ――!」

これこそ、ペルソナ使いたちの切り札。
コミュニティ――絆を繋いだ者たちが成す合体攻撃――ミックスレイド。
放たれた起源弾は中空で分解し、純粋な破壊エネルギーの塊となってアレックスに手こずるザ・ワールドの額へと一直線に進む。
直前で気付いたザ・ワールドが拳を突き出すが、ルルーシュの制御によってエネルギーは錐揉み回転、拳をかわす。
自動で軌跡を補正。次の瞬間、こなたが弱点と示したその額に、着弾した。

――――――――!!!!

声にならない叫びを上げ、ザ・ワールドがのけぞる。
陽介、ルルーシュ、こなたが持てる全てをつぎ込んで放った一撃は、塔を昇る間に成長したおかげもあって膨大な力を内包している。
生前の死因…弱所に命中した破壊エネルギーは、ザ・ワールドの体内で炸裂した。
影のザ・ワールドは、跡形もなく消える。
パチパチパチ、とマーガレットが拍手が響いた。

「終わった…か?」
「お見事。まさかそういう手で乗り越えるとは思わなかったわ。
 そうね、名付けるのならば『至高の魔弾』――その力なら、サーヴァントをも傷つけ得るでしょう」

二発しか無い弾丸を一発使ってしまったので、実質一発勝負。
しかし、対ギルガメッシュ戦においてマスターが行使できる最強の攻撃となるだろう。

「これが…この塔を登ることで、手に入れた力?」
「少し前のあなたたちでは、実際に放つことはできなかったでしょう。
 影たちを倒して吸収した魔力、そしてあなたたちの結んだ絆…それなくしては存在しないもの。
 素晴らしい物を見せてもらったわ。これはその御礼よ」

マーガレットがペルソナを召喚し、三人の傷を癒やす。影を破壊したためか、失った魔力もすぐに充填されていく。
そんな中、陽介たちは景色が歪み始めることに気付く。

「これは…?」
「核を破壊したから、もうこの塔も役目を終えた。あなたたちはすぐに現実で目覚めることになる。おそらく、もう会うこともないでしょう」
「マーガレットさん…ありがとうございました。イゴールさんにもそう伝えてください」
「いいわ。でも忘れないで…あの影たちは、確かに生きていたということを。
 鹿目まどかもまた、あなたたちと同じく聖杯を壊そうとしていた。残念ながらあなたたちとは出会えなかったけれど…。
 その痛みが、あなたたちに力をくれるはずだから」

マーガレットの言葉がどんどんと遠くなる…
次に三人が目覚めたのは、精神世界に入る前にいた柳洞寺の一室だった。

「こなたちゃん!」
「ルルーシュ…良かった。無事に戻られたのですね」

そこには映司とガウェインがいた。現実世界に復帰したのだ。
窓から差し込む光は朱く、すっかり日は暮れていた。

「…っ、ガウェイン、どこまで知っている?」
「すべて。我らは介入できませんでしたが、ルルーシュたちと感覚は繋がっていました。
「皆が試練に挑んで、そして打ち勝ったのも全部、見届けた。それに結構な時間休めたから俺たちももう回復したよ。
 こなたちゃんたちが強くなって供給される魔力がどんどん増えてきたおかげだね」
「そうか。それなら説明の必要はない…ん? なんだそれは」

ルルーシュはガウェインが持っている紙片に気がついた。
折り畳まれた紙は、ルルーシュがギルガメッシュに向けて放ったものによく似ている。

「ええ、これは彼らからの返答です。時間はこちらが指定したので、場所は向こうが選ぶと。
 ――冬木大橋。そこで決着をつけよう、ということです」

【深山町・柳洞寺/夕方】

【花村陽介@ペルソナ4】
[令呪]:1画
[状態]:強い覚悟と決意
[装備]:“干将・莫邪”@Fate/staynight、封印の剣@ファイアーエムブレム 覇者の剣
[道具]:契約者の鍵@ペルソナ4
※スサノオとイザナギを合体させ、アレックスをペルソナとして召喚しました。
 ペルソナのスキルとアレックスの能力を一部引き継いでいますが、会話はできません。
※愚者―遠坂邸同盟・審判―聖杯を砕くもの・世界―鳴上悠のコミュニティが解禁されましたが本人は気づいていません。
また他の人物(例ルルーシュ、こなた、アレックスなど)のコミュが解禁しているかは次の書き手にお任せします。 
※ペルソナ・アレックスの保有スキル
  マハガルダイン 疾風ハイブースタ ブレイブザッパー デカジャ
  マハスクカジャ マハラクカジャ マハタルカジャ ディアラマ
 また、サーヴァント特性として『帽子屋(マッドハッター)』の荷電粒子砲『ブリューナクの槍』を使用可能。


【泉こなた@らき☆すた】
[令呪]:2画
[状態]:強い覚悟と決意
[装備]:鳳凰のマフラー @Fate/EXTRA、聖者のモノクル@Fate/EXTRA
[道具]携帯電話、ニューナンブ@現実 予備の弾薬@現実 起源弾×1@Fate/zero 
   遠見の水晶玉@Fate/EXTRA
※礼装を装備することで、コードキャストを発動できます。
また、僅かながら魔力の総量が上昇しました。
heal(16);   効果:HPを小回復
view_status() 効果: 敵対者の情報を表示
view_map() アリーナの階層データを全表示

【ライダー(火野映司)@仮面ライダーOOO/オーズ】
[状態]:強い決意
※スーパータトバメダルは消滅しました。
※ギルガメッシュに対してスキル心眼・真は発動しません。
※無謀な行動は起こしませんが、他に手段が無いと判断した場合「壊れた幻想」を使うことも視野に入れています。


【ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア@コードギアス反逆のルルーシュ】
[令呪]:2画
[状態]: 強い覚悟と決意
[装備]:槍王イルバーン
[道具]:携帯電話
※槍王イルバーンを装備することで、コードキャストを発動できます。
  hadron(R2) 両眼から放つ魔力砲。収束・拡散発射が可能。      効果:ダメージ+スタン。
  絶対守護領域 決着術式“聖剣集う絢爛の城”をデチューンした術式。 効果:小ダメージを無効化。

【セイバー(ガウェイン)@Fate/extra】
[状態]:健康
※『聖者の数字』発動不可









「決戦といえば、あの場所以外にあるまい」

英雄王は上機嫌でそう告げ、さらには魔王ゼロに向けて注文をつけた。
橋周辺の地形情報に手を加え、現時点での損傷を修復、またそう簡単には壊れないくらいの強度を与えることを要求する。

「少し時間がかかるが」
「構わん。どうせ奴らも刻限までは動かんだろうしな」

集団の長と目されるセイバーのマスターより届けられた書状は、狙い通りの効果を生み出した。
この誇り高き英雄王にあっては、決戦の刻を指定された以上は奇襲などという無粋な戦術など取るはずがない。
形式上はマスターとサーヴァントの関係であるが、英雄王がそうすると決めた以上言峰綺礼に覆す舌はない。

「ではそれまで、酒でも舐めて待つとするか」

いつの間に街まで降りたか、神父のNPCは数本のワインを英雄王の前に置く。

「なんだこの安酒は」
「これでもこの街で手に入るものでは最上級のものなのだが」
「ハッ、さもしいものよな。まあ良い。この後の宴を思えば安酒も甘露になるというものよ」

英雄王は酒盃を手にして目を閉じる。
来たる、運命の時刻。
時計の針が天頂を指し、夜の帳が下りる時。
すべてが終り、そして始まる。




【新都・教会地下/夕方】

【言峰綺礼@Fate/extra】
[令呪]:2画
[状態]:健康

【ギルガメッシュ@Fate/extra CCC】
[状態]:健康
※ムーンセルの知覚領域の拡大によって「王の財宝」内の財宝に各参戦作品の武器、アイテム等が追加されています。
これは人類の歴史の観測者であるギルガメッシュ自身がムーンセルと同質の存在であるためです。
ただし追加される財宝には以下の制約があります。
「クレイモア」、「サモンナイト」など完全な異世界を舞台にした作品のアイテムは出自の一切を問わず追加対象にならない
神造兵装など人の手によらない武器、アイテム等は追加対象にならない。
※魔王ゼロに対して彼なりに考察していますが必ずしもその全てが的中しているとは限りません。
※参加者に対して「乖離剣エア」及びエアの最大出力である「天地乖離す開闢の星」を使用する気はありません。
仮に使ったとしてもエアの権能を解放しないFate/stay night準拠の「天地乖離す開闢の星」になるでしょう。
また基本的に慢心を完全に捨て去るつもりはありませんが状況によっては捨てることもやむ無しと考えています。
とはいえ相手が聖杯戦争を勝ち抜いた強者なので慢心したとしても度合いは最小限に抑えられるでしょう。
※ドラグレッダーと契約したことで仮面ライダー龍騎、及び龍騎サバイブへの変身が可能になりました。
変身者が元から高いステータスのギルガメッシュなので引き出される力は本来のスペック以上のものになるでしょう。


【月の裏側/夕方】

【魔王ゼロ@コードギアスナイトメアオブナナリー】
[状態]:健康
※ゼロはムーンセルに通じる秘匿回線を持っており、それを通じて度を越した不正を行なった参加者に対し間接的にペナルティを与えることができます。
現在ペナルティ対象になり得るのは花村陽介と火野映司ですが、今のところゼロは二人に手を出すつもりはありません。

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