二次キャラ聖杯戦争@ ウィキ

裏側の真実

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匿名ユーザー

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1 龍騎

『おい雑種、龍を用意しろ』

何の前触れもなく月の裏側へ通信を繋げ、さらに常人には即座に理解できない事を命令口調で言い放ったギルガメッシュ。
しかし言われた当の本人である魔王ゼロはその意味するところをすぐに了解していた。

「仮面ライダーである火野映司への当て擦り、というわけか。
構わないが…聖杯戦争で破壊された生命の蘇生は表側で行えば流石にムーンセルに異常を気取られるのでやるなら一度裏側に来てもらう必要がある。
君の欲するものはそこで用意しておく」
『任せたぞ』

上機嫌にそれだけを告げるとギルガメッシュは一方的に通信を切った。
傍若無人、その単語がこれほど当て嵌る男はそういないだろうが人類最古の王ともなれば納得できるものがある。
ゼロもかつて人であった頃は王族の一人であったため、英雄王が誰かに心から靡くことなど有り得ないと初対面の時から見抜いていた。
少々労力を払うだけで自我の権化のようなサーヴァントの暴走を抑制できるのなら安いものである。





「ここにいたか」

ゼロへの注文も自分を協力させるなら当然の貢ぎ物としか考えない男、ギルガメッシュはゼロが用意していた特殊な回廊を利用し月の裏側へと赴いた。
月の裏側にある旧校舎、そのグラウンドの隅で蘇生を受けた、元はディケイドの力の一部である無双龍ドラグレッダーへと何の警戒もなく歩み寄る。
ギルガメッシュの姿は戦闘時の黄金の鎧を着込んだものではなく、かといって何故か彼の蔵の中に入っていた当世風の服でもない。
くすんだ灰色を基調とした騎士風の全身鎧、されどその全身からはとめどなく黄金の気(オーラ)が滲み出ている。
これはギルガメッシュの蔵、“王の財宝(ゲートオブバビロン)”に新たに収まった財宝の一つ、仮面ライダー龍騎のライダーデッキ、より厳密には契約モンスターの力を得る前の原型、ブランク体である。
通常ブランク体のライダーではミラーモンスターには太刀打ちできるものではないのだが、ギルガメッシュは目の前の強豪モンスターの一角であるドラグレッダーを完全に見下した態度でいた。

「あの破壊者の手駒だっただけあってそれなりの面構えよな」

ドラグレッダーは動かない、否、動くことができない。例えブランク体であろうと決して逆らってはならない黄金の王の威圧感を本能で感じ、戦う前から既に屈服していた。
事実としてギルガメッシュが宝剣の数本でも投じればそれで赤竜は再び電子の海の藻屑と消えるだろう。

ギルガメッシュが悠然と蔵から取り出したコントラクトカードを使用、呆気なくドラグレッダーとの間にあまりにも一方的な契約関係が成立した。
同時にくすんだ灰色だった龍騎の全身が血が通ったような、赤と銀に変化し、本来の仮面ライダー龍騎へと変貌した。
参加者との決戦を前に新たな財を手に入れたギルガメッシュは上機嫌に蔵から新たにアドベントカードを取り出した。



そのカードの名はサバイブ・烈火。完全な龍騎となったギルガメッシュが手にすると同時に周囲を炎が渦巻いた。
かつて龍騎の世界を通りすがっただけの門矢士は知る由もないことだが、その世界で仮面ライダーナイトによって倒された仮面ライダーオーディンはサバイブ・無限の力を常に発現させていた。
故に、同じ世界にサバイブ・烈火が存在する、ないしその先の未来で人の手によって作られることは歴史の必然なのである。
であればギルガメッシュの宝物庫に収められているのもまた必然だ。



―――そして今ここに仮面ライダー龍騎がより強大な力を得て蘇る。


サバイブカードに呼応して変形したドラグバイザーツバイにカードを装填(ベントイン)。
顕現したのは身体の随所に金縁が入り、大きく盛り上がった肩部が見る者により力強い印象を与える龍騎の最強フォーム、仮面ライダー龍騎サバイブ。
奇しくも冷気を操る恐竜を模したオーズのプトティラコンボとは対を成す存在である。



「恐竜の仮面ライダーを叩き潰すのであれば同じ仮面ライダーの竜種だな」

満足そうに呟いたギルガメッシュは早々に変身を解き元の姿に戻った。
彼自身非常に珍しいことではあるが、ギルガメッシュは来る対主催の面々との対決に際して綿密なシミュレートを行なっている。
別段龍騎がなくとも現状で完全な勝算があるが、無いよりはある方が戦力が増すのも事実ではある。
この段まで勝ち上がった英雄を相手に慢心は残せどもあからさまな油断を見せるほどギルガメッシュは愚かではない。
彼らが更なる限界を超えた力を発揮すること自体も想定に加えている。

龍騎への変身や能力の行使には魔力が必要らしく、変身中は通常形態で二割、サバイブ形態で三割ほど射出できる武具の数が減る。
王の財宝もまた魔力を用いて武装を取り出し射出する都合上避けられない点ではある。………ただし、そのまま扱えば、の話であるが。

そも王の財宝には王律権ダムキナを始めとする魔力を補填し生命力を回復する財が山のように存在している。
例え龍騎への変身が負担となったとしてもそれらの財を用いて魔力を補えばそれで済む話であり、何となれば蔵にある他のサーヴァントと接続されていない令呪で一息に補充でき、早い話が弱点が弱点として機能し得ないのである。

これは別段龍騎に限った話でもなく、例えば強力な斬れ味を誇るが持ち主に呪いを齎す妖刀の場合ギルガメッシュはその呪いを弾くほどの加護を与える財を無数に所持しているため事実上メリットのみを甘受できる。
こういったサーヴァントなら誰しもが持つ欠点、不得手を殆ど帳消しにしてしまう点もギルガメッシュが通常の聖杯戦争に適さないとされた一要因でもある。
それどころかペルソナ使いが用いるような特定の属性攻撃を強化する装具などを使えば龍騎の力はさらに増すだろう。

「さて、これでこちらの準備は整った。
奴らもあと数時間程度は休息に費やすだろう。
気紛れとはいえ我に戦準備などさせたのだ、最低でも我の想像を超える程度の力は見せてもらわねばな」

黄金の王はただ待ち続ける。
この熾烈な戦争を生き抜いた強者たちの命の輝きと、価値を問うために――――――

【月の裏側・旧校舎/日中】

【ギルガメッシュ@Fate/extra CCC】
[状態]:健康
※ムーンセルの知覚領域の拡大によって「王の財宝」内の財宝に各参戦作品の武器、アイテム等が追加されています。
これは人類の歴史の観測者であるギルガメッシュ自身がムーンセルと同質の存在であるためです。
ただし追加される財宝には以下の制約があります。
「クレイモア」、「サモンナイト」など完全な異世界を舞台にした作品のアイテムは出自の一切を問わず追加対象にならない
神造兵装など人の手によらない武器、アイテム等は追加対象にならない。
※魔王ゼロに対して彼なりに考察していますが必ずしもその全てが的中しているとは限りません。
※参加者に対して「乖離剣エア」及びエアの最大出力である「天地乖離す開闢の星」を使用する気はありません。
仮に使ったとしてもエアの権能を解放しないFate/stay night準拠の「天地乖離す開闢の星」になるでしょう。
また基本的に慢心を完全に捨て去るつもりはありませんが状況によっては捨てることもやむ無しと考えています。
とはいえ相手が聖杯戦争を勝ち抜いた強者なので慢心したとしても度合いは最小限に抑えられるでしょう。
※ドラグレッダーと契約したことで仮面ライダー龍騎、及び龍騎サバイブへの変身が可能になりました。
変身者が元から高いステータスのギルガメッシュなので引き出される力は本来のスペック以上のものになるでしょう。















2 愉悦

麻婆豆腐。それは清の時代において生まれた四川料理の一つ。
挽肉と赤唐辛子・花椒に豆板醤などを炒め、鶏がらスープを加え豆腐を煮ることによって完成され酸味、苦味、甘味、辛味、渋味の5つが味わえる。
昨今では料理を扱う娯楽作品において勝負の題材になることも珍しくはない。
それが魔王ゼロが麻婆豆腐について知り得る知識である。だが――――――



(随分とおかしなNPCもいたものだな)

ギルガメッシュとの対談後、今度は言峰神父に連絡を取ったところ、生憎と彼は食事中だった。
明らかに唐辛子を入れすぎて別のものになっている麻婆豆腐をワインと共に美味しそうに食している姿はある意味NPCとは思えない、人間らしすぎる光景だった。
こんな男でも聖杯戦争における監督役候補のNPCとしては最も性能が高いのだからわからないものである。
――――――あるいは、本当にただのNPCではないのかもしれないが。

「…ふう、ご馳走様。さて魔王、遅れて申し訳ない、用件を聞いても?」
『ああ、残るマスターやサーヴァントと戦うにあたって注意しておきたいことがある。
客観的に現時点での戦力を分析すれば、君とギルガメッシュが彼らに劣る要素はないだろう。
無論私としては彼らが君達を打ち破ってくれることこそを期待しているが、同時に私が望むのは残るマスターが魔王の器に相応しいだけの意志と力を持つところにある。
これはあくまで保険だが、例え君達が勝利する展開になったとしても、これと思う者がいれば生かしたまま私の前に連れてきてもらいたい』

ゼロとしては後継者選びに妥協などしたくはないが何分にも余裕と猶予がない。
ここで駄目ならば別世界、より正確には並行世界のムーンセルに渡って同じ手法を繰り返すつもりであるがどれほどの時間がかかるかわからないし、その間に取り返しのつかない事態になってしまう可能性もある。
必要なのは純粋な力以上に意志、すなわち魂だ。

「なるほど、了解した。しかし私はともかく彼の英雄王がそれを良しとするものかどうか…」
『彼にも一応は言い含めてある。あまり過信はできないし反故にされる可能性も勿論あるが……その時は彼にも相応の報いを受けてもらうことになる。
英雄王ほどのサーヴァントであれば彼我の力の差は理解しているとは思うがな』

如何に最強のサーヴァントといえどザ・ゼロのギアスから逃れられるものではないし、サーヴァント程度の存在が魔王を滅ぼす可能性に至っては一考する必要性すらない。
その程度の分すらも弁えぬのであれば次の世界に渡る前に遠慮なく消し去るまで。

『逆に今の彼らの戦力であれば一人も欠けることなく君達を突破したとしても私一人で邪魔なサーヴァントを消すことは問題なくできるがな。
太陽の加護のないガウェイン卿は常識的な範疇に収まる強者でしかなく、仮面ライダーオーズに至ってはルール違反と汚染の件でいつでもペナルティを下せる』
「…?汚染、とは?」

何やら興味を持った様子の言峰にゼロは内心で喋りすぎたか、と舌打ちした。
今の神父やギルガメッシュが時折見せる他者の不幸を肴にする愉悦という感情はゼロにはどうにも理解しがたいものだ。
とはいえ別段知られて困る話でもないのだが。




『少し話は逸れるが、君は衛宮切嗣とライダー、門矢士をどう思う?
精神的な相性ではなく、純粋な戦力として見た場合だ』
「そうだな、監督役としての立場から私見を述べさせてもらうならば、彼らは些か以上に他陣営とのバランスを欠いた主従であったように思える。
火野映司を大きく上回る汎用性に能力制限から脱した騎士王に匹敵する回復力、索敵性能と限定的ながら時間操作・停止能力までもを有し、それらを十全に活かせる戦略・戦術を構築し自らも暗殺者としての力量を持ち合わせるマスター。
運悪く初手でイリヤスフィール・フォン・アインツベルンと出くわさなければ他の全ての参加者よりも大きなアドバンテージを得て今頃優勝していても何らおかしくはなかっただろうよ」
『やはり君は優秀な監督役だよ。その感想は誤りではない。
門矢士は分身や透明化も備え何より速さという点で他の追随を許さずそれらを相手に押しつけつつ自身はほぼ必ず逃走を成功させられる。
有用だが消耗の大きい能力も持ち前の回復力で十分に補填でき、それによって相手との相性や力の強弱を無視して優位を奪える上に力の多様さ故に自分は敵から明確な対策を打たれることもない。
事実として遠坂邸のチーム、というより泉こなたと火野映司は他には有り得ない知識を有するにも関わらず門矢士の操る能力全てを網羅しきることが出来なかった。
つまり彼は対戦相手の創意工夫など笑って吹き飛ばせるだけの汎用性と英雄王すら場合によっては単独で打倒し得る強力な戦術的切り札を多数有しているということだ。だが―――』


ゼロは敢えてそこで一拍置き、数秒経ってから言葉を紡いだ。


『―――考えてみるがいい。そのような反則の存在がマスターの質と意志を問う月の聖杯戦争への参戦を許されるはずがあるまい?』
「しかし魔王、現に彼は衛宮切嗣のサーヴァントとして招かれた。
これはムーンセルが門矢士の参戦を許容したということに他ならないのでは?
そうでなければ説明が…………まさか」
『察したようだな、衛宮切嗣はアンリマユの汚染を受け、それを緊急的に除去したムーンセルも少なからず影響を受けた。
その衛宮切嗣に配されたサーヴァントがアンリマユの影響を受けないはずはない』

それは少し思考を巡らせればすぐにわかるはずの事だ。
しかし言峰がすぐにその解答に辿り着けなかったのもまた理由あってのことだ。

「だがアンリマユが齎すのは災厄以外に有り得ないはず。
事実今回だけで会場や幾人かのマスター、サーヴァントに悪影響を与えた。
貴方の言いようでは彼だけは恩恵を受けたように聞こえるがそんなことが―――」
『あるのだよ、神父。今回の門矢士は世界の破壊者としての側面が最も強い状態でサーヴァントとして呼び出された。
同じ破壊を齎す存在であるという事と、彼の“本来有り得ない事象を引き起こす”という性質が噛み合いその結果門矢士ただ一人だけがアンリマユの加護と恩寵を一身に受ける存在となった。
逸話を紐解けば仮面ライダーディケイドがそういった有り得ない事象を何度も引き起こしたことは明白だ』

言われて言峰は思案する。確かに伝承を確認する限り門矢士、仮面ライダーディケイドは純粋に強いのは間違いないがそこにはどこか不自然さ、おかしさが常に付いて回っている。
明らかに攻撃に重みや衝撃が足りていないにも関わらずいとも簡単に爆発四散していく怪人たち。
不死の存在でありカードで封印しなければ無力化できないはずのアンデッドを通常の攻撃で殺傷し、龍騎の世界ではライダーデッキなしでミラーワールドに自在に侵入した。
こうしたその世界の常識を無視した特性が聖杯戦争でもアンリマユによって付与されていたとすれば――――――?



『そのうちの最初の一つが魔力の自力回復の効率、時間あたりの早さだ。
元々門矢士にはマスターの供給性能に関係なく宝具によって一定の魔力を生成する力がある……が、それは本来あれほど驚異的な性能ではなく今回の生成力を十とするなら本来は精々一からニの間、現界や通常戦闘を最低限補助する程度のものでしかないはずだった。
この聖杯戦争でNPCからの魔力収奪のルールが設けられ冬木を模した会場に複数の霊脈が存在しているのもマスターやサーヴァントの現場判断を問うためのものだ。
マスターの存在を介せず、会場の設備やNPCもさして利用することなくサーヴァントの自力のみで多くを賄う魔力の生成など公平性の観点から鑑みても許されるはずがあるまい』
「加えるならば衛宮切嗣のマスター性能は魔術師としてあくまで標準レベル。
しかし奴は門矢士への魔力供給に難儀している様子はなくそれはあの決戦においても変わらなかった。
強化形態の解放にクウガペガサスの複数回使用、クロックアップその他の能力連発にクウガゴウラムの維持、さらには時間停止に火野映司へのスーパータトバの譲渡。
考えてみれば、これらをまっとうな方法で賄うならジョン・バックスのように栄養ドリンクを箱買いしうな重をかき込まねばならないはず。
そうでなければDIOと契約する以前に干上がっていなければおかしいということか…」

サーヴァントの活動に不可欠な魔力の確保は参加した全てのマスター、サーヴァントにとって至上命題の一つと呼んでも過言ではない。
実際にこの聖杯戦争では多くの者が魔力の確保に奔走し、創意工夫を凝らした。
例えば杏黄旗を使い早期に地脈から魔力を得た太公望や同じ方法を使おうと策略を巡らせ敵マスターからも魔力を奪った天海陸とイスラ主従に実際に“紅の暴君(キルスレス)”を使用し自身とサーヴァントの魔力を得ることに成功した衛宮士郎。
例えばNPCからの魔力徴収を躊躇わず実行したDIOに間桐慎二。
例えば保険として神殿に多数の仕掛けを施した蘇妲己や戦いを放棄したマスターを賢者の石に変えて口を封じたゾルフ・J・キンブリー。
そして何より一般人かつ高齢の身でありながら栄養ドリンクなど文明の利器や食事による栄養摂取を最大限活用して燃費に劣るサーヴァントの活動を助けたジョン・バックス。

彼らは皆、ゲームが開始されてから大なり小なり何らかの労力を支払って魔力を得た。
他サーヴァントの能力を鑑みてもキンブリーの賢者の石は元々供給量に限りがある補助礼装に近いものであるし騎士王アルトリア・ペンドラゴンの魔術炉心もマスター側からの十分な供給なしに機能するものではない。
それに対して衛宮切嗣と門矢士が成した努力、支払った労力はあまりに小さく精々が他の土地と比べれば効率に優るとはいえない衛宮邸での休息のみ。
遠坂邸の同盟軍との決戦時に至っては切嗣は新都で念話や敵マスターの捜索などでサポートしていたのみで魔力供給に関する支援は実のところ何もしていない。
それ故にディケイドライバーに損傷を受けた時には何ら対処策を見い出せず長時間表立った行動が取れなくなった。
そんな状態で切嗣が魔力不足に陥らなかったのは全てアンリマユの加護によるディケイドの自力回復力の底上げ、そして更なる恩寵のおかげだ。

本来衛宮切嗣と門矢士のタッグは数多の手札を持ちながらも魔力が追いつかないという点で他陣営とのバランスが取れるはずだった。
不足しやすい魔力を魂喰いや霊地を拠点にすることによる回復の促進で補い手札を何時、どのようなタイミングでどう切るか、といったことを地道に模索するのが彼らの課題になるはずだったのだ。

『二つ、一部能力の魔力消費、反動ダメージの軽減。つまりクロックアップやクウガペガサス、タイムスカラベにハイパークロックアップとファイズアクセルなどが該当する。
本来の仕様上乱発がきかないはずのクウガペガサスの制約が半ば形骸化し、多くの場面で活用できたのはこれに依るところもある。
加えてたった一日のうちに十回近い超加速能力を使用しながら肉体へのダメージ、反動が自然に回復する程度で済んだのもアンリマユのおかげだ。
さらに言えばコンプリートフォーム発動中のタイムスカラベやハイパークロックアップといった時間操作能力は本来消費コストがより高く設定されていて令呪などの仕込みなしに実戦でまともに使えるようにはなっていないはずだった』
「そうでなければスーパータトバを没収された火野映司との間に理不尽なまでの格差が生まれることになるから、か。
しかし実際にあれほどの激戦の中タイムを使用できたということは魔力の回復も併せて相当な補正が掛かっていたのだろうな…」
『そして三つ、強化形態であるコンプリートフォームそのものだ。
世界の破壊者として呼び出された門矢士が持っているコンプリートフォームは全ての仮面ライダーを破壊し、世界を再生させた果てに手にした最強コンプリートフォームではない。
各ライダーの最終形態を召喚し同時攻撃を行う機能に重点を置かれたそれ以前のコンプリートフォームだ。そうでなければ矛盾が生まれることになる。
故に、カメンライドを介せずディケイド以外のライダーのアタックライド能力を行使する力など本来あるはずがない。
それが出来るのは全最強形態の戦力を発揮できる最強コンプリートフォームの方だからな』
「いや、魔王よ。世界の破壊者として召喚されたなら激情態があるはずでは?」
『無い。あれは内包する力があまりに多様すぎるために聖杯戦争のサーヴァントの器には到底収まりきるものではなく全てオミットされている。
それ故聖杯戦争という舞台でディケイドがカメンライドなしで他のライダーの能力を行使するなら最強コンプリートフォーム以外に無い。
アンリマユの加護によって宝具の拡大解釈が為された結果最強コンプリートフォームと同様の戦力を発揮でき、そのために火野映司のスーパータトバの力を目覚めさせることが出来た。
本来ならスーパータトバの一つ下のプトティラコンボを自在に制御できるようになる程度の力しか発現させることは出来ない』





遠坂邸の同盟軍が門矢士のデータを調べたにも関わらずカメンライドなしの能力行使を予見できなかったのは彼らに落ち度あってのことではない。
ルルーシュらは敵の戦力の見積もりを見誤ったと同時に見誤ってはいなかった。
データベースで調べたところでディケイドの能力が本来の仕様から外れたものになっているためにデータに載せられていないのだから有効な対策を用意するなど最初から絶対に不可能だったのだ。
とはいえそのおかげでDIOを相手にチェックメイト寸前の状態から巻き返すことが出来たのも間違いの無い事実ではある。

「ふむ、なるほど…。もし本来の性能で戦っていたとすれば、同盟軍との決戦の結果も大きく変わっていたことになる、と?」
『仮に全く同じ行動を取っていたとすればそうだ。決着以前に騎士王との一騎討ちの時点で大量の魔力を消費しオーズと対峙する頃にはほとんど枯渇、タイムスカラベの使用など論ずるまでもない。
だが衛宮切嗣は柔軟なサーヴァント運用が出来るマスターであるし、門矢士自身も魔力が保たないと理解した上で同じ行動を取るほど愚か者ではない。
それはそれで異なる手段、アプローチで状況を打開する策を練ったことだろう。一概に勝敗そのものが変わったとは断言できまい』

だがそのおかげでこちらにとって都合良く事が運んだ、とゼロは内心で一人ごちる。
正直なところ、騎士王の能力制限解除はまだしも封印した聖剣の鞘が復活したのはゼロにとって数少ない、悪い意味で完全な想定外といえる事態だった。
“全て遠き理想郷(アヴァロン)”は元々ルールで認可された宝具であるがゼロにとって危険性の高い宝具でもあったため危険を冒してハッキングを行い厳重に封印していた。
あの鞘を展開されてしまうとザ・ゼロによる干渉すら跳ね除けてしまうためゼロにとって数少ない警戒対象だった。

死ぬのであればむしろ望むところであるが実際に騎士王の聖剣でゼロの命を断ち切ることは不可能。
とはいえゼロとて攻撃を全く受け付けないわけではなくダメージを受け過ぎれば一時的に行動不能には陥ることになる。
そうなればムーンセルへのハッキングも著しく弱まり、異物として発見され放逐されるしかない。
騎士王はゼロの無力化とこの世界からの追放を他のサーヴァントに比べ容易に行う宝具を持っているため細工を行い没収したのだった。



『…まあ代償が全くないというわけではないが』
「それはそうだろう。マスターによるサーヴァントのデータ改竄はある程度は許可されているが門矢士の件はマスターの技能と無関係な上にそもそもルール上の許容範囲を明確に踏み越えた。
出来レースじみた強化を背景にした優勝など到底ムーンセルに受理されるものではない。
さらにアンリマユによるデータ汚染も加わるとなれば門矢士もまた二つの意味で不正なデータとして消去される。
彼が生き残る道があったとすれば自ら異常に気付き、ムーンセルに自己申告を行いデータの復旧、事実上のデチューンを受け容れることだけだった。その機会自体は聖杯戦争中であろうといつでも行使できる権利だからな」
『その通りだ。しかし事実上それは不可能と言っていい。
データの改竄を受けた時点で門矢士の記憶もそれに応じたものに改竄され違和感を感じることすら出来なくなるからだ』
「つまり門矢士が敗北したのは騎士王の聖剣にその身を貫かれた時ではなく……召喚に応じたその瞬間だったというわけだ。
不正行為によりデータを消去されれば当然聖杯戦争中の履歴、仮面ライダーを破壊したという事実も消えて失せる。
門矢士の結末は何も残らず全てが徒労に消える、それ以外の可能性など事実上ありはしなかった。
……何という、何という愉悦っ………!!決戦の前でなければ麻婆豆腐のおかわりを頼んでいるところだ」



愉悦に身を震わせる言峰を一瞥もせずゼロは思考する。
知らなかったとはいえ不正に手を染めたサーヴァントである以上いつでもムーンセルに通報し消すことはできた。

尤も、他にもアンリマユの影響で被ったデメリットも小さいながら確かに存在していた。
門矢士はこの世全ての悪に僅かにだが精神を蝕まれ、普段よりもやや短気になり注意力も散漫になりやすくなっていた。
柳洞寺で騎士王相手に度を越した慢心から敗北したのもこうした精神面への影響があってのことで、本来の彼なら焦りがあるとはいえそこで気を抜くようなことはしない。
もし彼が世界の破壊者ではなく、より善性の強い通りすがりの仮面ライダーとして現界していれば、イリヤスフィールを冷徹に見殺すことなくマスターとの間に因縁が生じることもなかっただろう。
また、汚染と不正の残り香はあるサーヴァントにも確実に影響を齎している。




「…となれば、汚染されたディケイドからルール違反であるスーパータトバの力を譲り受けた火野映司もペナルティと無縁ではいられない。そういうことですな、魔王?」
『そうだ、さすがに門矢士との程度の差を考慮すれば消去は不可能だろうが全ステータスと宝具の出力を最低でも二ランクは落とすことになるだろう。
無論、君と英雄王との決戦が終わるまでそのような手出しをしないことは確約する』

ゼロが欲するのはマスターの強き魂であって元々ムーンセル側によって用意された戦闘代行者に過ぎないサーヴァントはマスターに付随する障害でしかない。
これまでも不要と判断したマスターはサーヴァントごと力で葬り去ってきた。
そして障害たるサーヴァントを労せず弱体化できる効率的な手段があるのならゼロは何の躊躇もなくそれを使う。
神父と英雄王との戦いが終わるまでは泉こなたの器量を確かめる意味でも生かす意味はあるが、言ってしまえばそれを過ぎればライダー・火野映司とセイバー・ガウェインは用済みだ。

「お心遣い、感謝する。しかし知らぬ事とはいえ正義の味方の象徴たる天下の仮面ライダーが二人揃って不正行為とはな」
『主催側たる我々にとっても予想外の事態が頻発する、それがこの混沌に満ちた聖杯戦争だ』



そしてそれは今も変わらないが、と思いながら通信を切った。
一体どうすれば魔王の役割を託せる者を見い出せるか、何をすれば自身の想像を越える魂に出会えるのか。
一万飛んで5847回目の試行に失敗し、煮詰まっていた時ゼロは禁じ手ともいえる打開案を実行に移した。
月の裏側へと飛びエデンバイタルの力を最大限注ぎ込み、ムーンセルに他の世界、即ち並行世界を観測させるよう働きかけを行なった。
その賭けに等しい行為は結果として成功し、この度の聖杯戦争はかつてない混沌とした様相を呈した。
代償としてムーンセルの機能には狂いが生じ、あと億年単位は地球を観測できた観測機械としての寿命は百年単位にまで縮まった。

その世界にとって災厄でしかない現象を起こしてでも、急がねばならないほどゼロという存在は長く生きすぎてしまっていた。
恐らくこの世界ではもう同じ試行を行うことは出来ないだろう。
これでもゼロの望む者に出会えぬとあれば次のムーンセルがある世界に渡り再び同じ試行をするまでの事。
それが多くの世界を巻き込む害悪以外の何者でもない思考だと理解していても、魔王ゼロは最早歩みを止めはしない。

(―――そうとも、引き返すべき道はいらない)



とはいえここから先は言峰神父とギルガメッシュの仕事であり今のところゼロが干渉する必要はない。
聖杯戦争が終結した今でさえ、どのような奇跡、番狂わせが起こっても何ら不思議な話ではない。
魔王ゼロが待ち望むのはそうした混沌から生まれた強き者の魂である。

【新都・教会地下/日中】

【言峰綺礼@Fate/extra】
[令呪]:2画
[状態]:健康

【魔王ゼロ@コードギアスナイトメアオブナナリー】
[状態]:健康
※ゼロはムーンセルに通じる秘匿回線を持っており、それを通じて度を越した不正を行なった参加者に対し間接的にペナルティを与えることができます。
現在ペナルティ対象になり得るのは花村陽介と火野映司ですが、今のところゼロは二人に手を出すつもりはありません。

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