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一体何度目だろうか。
こうして敵として、親友と向かい合うのは。

ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。
枢木スザク。

かつて共に在った二人は今、武器を手にして戦っている。
最初はルルーシュがギアスを手に入れたあの日、シンジュクゲットーで。
ルルーシュの作戦を力ずくで捻じ伏せるイレギュラー――白兜として。
それからルルーシュが日本を制圧するために展開した数々の作戦でスザクは現れた。
ナリタでの戦いでは、もう一息でコーネリアを捕縛できるというところからひっくり返された。
藤堂ら四聖剣を救出する作戦で初めて白兜のパイロットがスザクだということを知った。
式根島でなんとかスザクを仲間に引き入れようとしたが拒絶され、『生きろ』という呪いを掛けた。
もう一人のギアス使いであるマオとの遭遇やキュウシュウ戦役では共に戦った。
ユーフェミアを殺害した行政特区記念式典、その直後のトウキョウ租界決戦――ブラックリベリオン、ここで対峙は決定的なものとなった。
ルルーシュのゼロとしての軌跡は、スザクとの戦いの軌跡でもある。

「くっ…!」

ルルーシュの動体視力では本気のスザクを追い切れない。
一瞬で視界の外に消えた友の影を追わず、ルルーシュは槍王イルバーンの石突きを地面に叩きつけた。
接触面でイルバーンの魔力が弾けて推進力となり、見えない腕で引っ張られるようにルルーシュの身体は飛ぶ。
進むべきは前方。少なくとも前にだけはスザクがいないのは確定している。
機動性では及ばなくとも、直線方向への加速能力だけを見ればイルバーンのあるルルーシュが優位だ。
一気に30メートル近く移動し、なんとか減速・旋回してルルーシュは向き直る。
予想通り、ルルーシュの頭上から得意の回転蹴りを放とうとしていたスザクが着地した。

「すごいな。それも宝具なのか?」
「いいや、違う。これは…形見だ」

スザクは必殺の蹴りを避けられても些かも動揺していなかった。
まるでこうなるのが当然だと――この程度でルルーシュが倒れるはずがないと、確信しているように。

「その槍、地下室にいた彼…名無、だったか。彼が使っていたな。
 今、君の手にあるということは、彼は死んだのか」
「…ああ。お前たちに攫われた後、ほどなくな」
「そうか…ならルルーシュ、俺を恨んでいるんじゃないか?」

スザクの問いに、迷う――あの時スザクが来なければ、名無は死ななかったかもしれない。
謂わばスザクのせいで名無しは死んだとも言える。
そのことを憎く思う気持ちは、たしかにルルーシュの中にある――が。


「俺にお前を責める資格は無い。俺もお前から大事な人を奪ったのだからな」
「ユフィのことか。そうだな、俺だって君を許せはしない。殺したいくらい憎い。そう思ってる…でも、君にだって俺を責める資格はあるはずだ。
 ナナリーを、君の一番大事な人を奪ったのも…俺なんだから」
「っ…スザク……!」

予想していたことだが、やはりこのスザクはルルーシュの知るスザクではなかった。
この枢木スザクはおそらく、第二次トウキョウ決戦でフレイヤを放った直後から来たスザクだ。
ルルーシュは口を塞いで勝手に飛び出そうとする言葉を押し止めた。

――違うんだスザク、ナナリーは生きているんだ。お前はナナリーを殺していない!――

これを伝えれば、もしかしたらスザクと争わずに済むかもしれない。
昔のようにまた共に歩けるかもしれない。
ナイトオブセブンとしてではなく、ナイトオブゼロ――ルルーシュの騎士として、また一緒に。

(…いいや、駄目だ…! こんな言葉では絶対に、スザクは『救われない』…!)

ナナリー一人が生きていたところで、スザクがトウキョウ租界を壊滅させて大勢の犠牲者を出した事実は変わらない。
おそらく、スザクが聖杯を渇望するのは、あの過ちを清算して日本を取り戻すためだろう。
ならばここでスザクの戦う理由を否定するのは、今のスザクそのものの否定でもある。
スザクと向き合うと決めたのなら、彼を否定してはならない――認めた上で、乗り越えなくては。
そうでなければ、スザクを赦したことにはならない。

「…お前にも仲間がいただろう。お前が柳洞寺を襲ったとき一緒だったアサシンはあの時消滅した。ならそのマスターも死んだはずだ」
「ああ。出夢…匂宮出夢と言うんだ。色々あって、絶望しかけていた俺を救ってくれた…。
 友達って関係じゃないな。でも…そうだな、俺は出夢を仲間と呼びたい。そして出夢は死んだ。君たちに殺された」
「こっちもだ。お前たちのおかげで衛宮が…そして名無が死んだ」
「俺達はお互いに仲間を殺されている」
「だからこそ、退くことも…手を取り合うこともできない」
「そういうことだ、ルルーシュ!」

吼えて、スザクが再度疾走する。
進路上にイルバーンの風を放つ。が、超人的な反射速度でスザクは風を次々とパスしていく。
いかにイルバーンが超越的な力をルルーシュに与えるとしても、ルルーシュ当人は肉弾戦を得手としていない。
持ち前の身体能力に幼い頃からの武術の鍛錬、そしてギアスの呪いが加わった今のスザクは生半には止められない。
スザクの左腕がルルーシュへと向けられる。その掌の部分が開き、覗いたのは鈍く光る銃口だ。
放たれた砲火を、イルバーンが生み出した力場でなんとか受け止める。
スザクのように走って銃弾を避けることなどルルーシュにはとてもできない。
疾走と銃撃を止めないまま、スザクは右腕で剣を抜いた。
接近戦で主導権を握られてはいつか捌ききれなくなると判断し、ルルーシュは再びイルバーンを用いて回避しようとする。
石突きを地面に押し付け、後方へと大きく距離を開けようとし――


「二度同じ手が通用すると思うな、ルルーシュ!」

スザクの両足が文字通り『火を吹いた』。
キャスター、キンブリーがスザクの義足に施したギミック――炸薬により脚力を爆発的に増大させる加速装置。
イルバーンによって高速で移動するルルーシュに追い縋る――否、追い抜くほどの速さを見せる。

「ぐう…うぉぉぉおおおおっ――!」

両足と左腕以外は生身であるスザクには、その殺人的な加速は無視できない苦痛であるはずだ。
しかしギアスを捻じ伏せるほどの精神力を見せる今のスザクなら――その痛みにも耐えられる。
迫るスザクが勢いのままに振り下ろした剣を、ルルーシュはイルバーンを掲げて受け止めた。

「ぐう……っ!」
「捕まえたぞ、ルルーシュ!」

なんとか受け止められた――否、スザクは『わざと受けさせた』。
ルルーシュがスザクに唯一勝る加速力を封じるためだ。
イルバーンによって強化されたとはいえ、ルルーシュとスザクの膂力には元々大きな差がある。
ルルーシュは知らないが、スザクはKMFランスロットの脚を素手で持ち上げるほどの異常な筋力を持っているのだ。
スザクがかける圧力に押し込まれてルルーシュの膝が折れる。片膝を着いたルルーシュを、スザクが見下ろしてくる。

「一度でも喧嘩で俺が君に負けたことがあったか、ルルーシュ…!」
「そういえば、一度もないな…だがっ、これは喧嘩ではない――戦いだ、スザク!」

このままでは押し切られる。
しかしイルバーンを少しでも動かせば、スザクの剣がルルーシュを頭から一刀両断にするだろう。
それをわかっているから、スザクも決して退かず全身の力を剣に込めて押してくる。
ルルーシュにとって絶体絶命の窮地だ。

(だが――条件は揃った……!)

スザクはせっかく詰めた距離を断じて離すものかとひたすら圧してくる。
つまりスザクは至近距離にいる――『眼が合うほどに近くに』。
イルバーンを封じられても、ルルーシュにはまだ一つだけ、この状況から切れるカードがある。

「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが…命じる!」

今にも押し負けそうなルルーシュが取った策は――ギアス。
ルルーシュの左眼が紅く輝く。


「何のつもりだ、ルルーシュ! 俺にはもうギアスが通じないことくらい――」

人の意志と尊厳を踏み躙る卑劣な力、ギアス。
この期に及んでそんなモノに頼るのか――激昂しかけたスザク。
だがその瞬間、強烈な直感がスザクの全身を電撃のように駆け巡る。

危険だ。
このギアスは――危険だ。
『生きる』ためには、このギアスを受けてはならない。

ギアスの呪縛に逆らわず、スザクは全力で地を蹴る。
スザクがルルーシュから飛び離れた直後、ルルーシュの左眼から赤い雷が迸った。
寸前までスザクがいた空間を網の目のような雷が駆け抜ける。
空気を焼く匂いがスザクの鼻をついた。

「…切り札、だったんだがな。あっさり避けられてしまったか」
「ルルーシュ、今のは…?」

窮地を脱したスザク――しかしそれはルルーシュも同じ。
詰めの局面を一手で覆し、態勢を立て直したルルーシュがイルバーンを構える。

「ギアスさ。だが俺だけのギアスじゃない――仲間がくれた力だ」
「仲間…仲間か。君の口からそんな言葉を聞くとはね。ギアスで操っている訳ではないんだな」
「無論だ。あいつは…名無は、俺を信じてこの槍を託してくれた」

槍王イルバーンは令呪とともに名無鉄之介からルルーシュへと受け継がれた。
世界を滅亡の危機から救った13騎士――サーヴァントをも傷つけ得る、宝具に匹敵する力。
強大な魔力を内包するイルバーンは、手にした者の魔力を大きく引き上げる。
そしてイルバーンをルルーシュに届けたのは、キャスターであるリインフォース。
リインフォースは消滅する間際、自身の魔術回路の一部を改変してイルバーンに付加させた。
以前にルルーシュから聞いたギアスのカタチに合わせ、ルルーシュの意思を絶対遵守とは別の形で発現させるために。

「ガウェインから聞いた話だがな。
 真の英雄は眼で殺す――らしいぞ?」

イルバーンとリインフォースの魔術回路は、霊子ハッカーとしては並程度のルルーシュの力を大きく引き上げた。
ギアスとは意思を視線に乗せて放つ能力だ。
そのギアスを応用し、活用し、魔力を純粋な破壊力として撃ち出す。
ルルーシュが得た新たな力――名付けて、コードキャスト『hadron』。

「まだ収束率が低いが…中々使えるな、これは」
「なるほど、それがギアスに代わる君の力か」
「ああ――だが、こんなものは所詮ただの力だ。俺が信頼するのはこんな力じゃない」


イルバーン、コードキャスト、そしてギアス――いずれも強力な力だが、同時にこれら全てはルルーシュの本当の『剣』ではない。
ルルーシュの力――ルルーシュの騎士は、今やここにいる。
スザクではない。
その名も誉れ高き、円卓の騎士――

「来いっ、ガウェイン!」
「ここに――ルルーシュ」

ルルーシュとスザクの間に、白き騎士が舞い降りる。
かつてのスザクの愛機を彷彿とさせる、穢れ無き純白の騎士。
太陽の剣を携えた――聖杯戦争、最後に残った『セイバー』、ガウェイン。

「サーヴァントか、なら…ランスロット卿!」
「■■■■■■■■――ッ!」

そしてルルーシュのもとにサーヴァントが馳せ参じれば、スザクの元にも同じく。
闇を想起させる漆黒の甲冑を纏う、狂える叛逆の騎士。
その名もまさに――聖杯戦争、最後に残った『バーサーカー』、ランスロット。

伝説に語られる、気高き英傑たちの物語。
かの騎士王に仕えた円卓の騎士、その二人が今同じ戦場に立つ。
しかし友としてではなく、伝説をなぞるように敵として。

ルルーシュとスザク――
ガウェインとランスロット――

背中を預けた友であり、死力を尽くして打ち合った怨敵であり。
同じ関係性を持つ二つの主従が向かい合う。

「遅くなりました、ルルーシュ」
「構わん。やれるな、ガウェイン?」
「無論です」

ランスロットが放つ凶々しい存在感は、ルルーシュの眼でもはっきりとわかる。
おそらくスペックで上を行く相手にガウェインは単独で立ち向かい、こうして持ち堪えてくれていた。
白騎士は全身に傷を追いながらも、しかし一つとして致命の傷は許していない。
王を護る騎士として、王を阻む敵を打ち倒すために、王とともに戦うために。
かつての友を倒す――その命令を、躊躇うことなく受け入れる。

「ガウェイン、一つ伝えておくことがある」
「わかっています。叔父上のことですね」


ガウェインはランスロットと戦いつつも、戦場の動静を朧気ながら感じ取っていた。
アルトリア・ペンドラゴンが離脱し、仮面ライダーディケイドがそれを追って行った後、仮面ライダーオーズも続いた。
残ったガウェインは、ディケイドの残したクウガゴウラムを駆るランスロットに追い回されていた。
そのとき彼方に見えた黄金の輝き――紛れも無くあれは、約束された勝利の剣の光。
しかし輝きは一瞬、解き放たれることなく消えた。
直後、何の前触れもなく、クウガゴウラムは消失した。それは本体であるディケイドの消滅を意味する。
ガウェインは確信した。
アルトリアはディケイドを討ち――そしてアルトリアもまた戦場に倒れたのだと。
かつて剣を捧げた王の落命に、動揺しなかった訳ではない。それはおそらくは、ランスロットもだ。
理性なく暴れ回るだけのバーサーカーが、あの瞬間眼前のガウェインを忘れ彼方を振り仰いでいたのだ。
円卓の騎士は、王を失ったことを同時に理解し――そして同時に、決闘を再開した。
それはまるで、喪失を忘れるかのように。剣戟に興じることで、他のすべてを振り切ろうとするように。

「ルルーシュ、私の王は貴方です。
 たしかに叔父上の死は…悲しい。悔しい。しかし今は、涙に身を浸すときではない。
 叔父上は戦って逝ったのでしょう。ならば生きている我々が足を止めることはかの王への侮辱に他ならない。
 そう、今は――剣を執る時です、ルルーシュ!」

目前にはランスロットがいる。
ガウェインにとって無二の友――無二の敵が。
かつて、伝説の終焉。
ガウェインはアルトリアの息子であるモードレッドに討たれ、アルトリアもまたモードレッドと共に散った。生き残ったのはランスロットだけ。
だがこの聖杯戦争では、伝説の再現はならなかった。
アルトリアが散り、ガウェインとランスロットが残る。
だが手を取り合うことは有り得ない。
ランスロットがバーサーカーであることを差し引いても、それぞれの主が決着を望んでいる。
戦場で流すべきは涙ではなく、敵の血だ。

「…そうか、そうだな。あいつらは俺達が止めなければ――終わらせなければならない。
 それが、俺達ができるたった一つの……」
「そうです、ルルーシュ――故に!」

暴風のごとく吹き荒れるランスロットの双剣へと、ガウェインは恐れることなく踏み込んでいく。
ランスロットの武器は、覇王ゼフィールが携えていた神将器エッケザックスに、封印の剣。
どちらも宝具の域にある業物に相違なく、斬り裂かれればガウェインとて傷を負うだろう。
だが、どんなにランスロットの技量が卓越していて、この二刀を手足のように扱えると言っても――

「友よ、それは貴方の本当の宝具では、ない!」

エッケザックスを弾き、封印の剣を受け止める。
いかに強力な宝具とて、決してランスロット秘蔵の剣である『無毀なる湖光(アロンダイト)』ではないのだ。
英雄が最も力を発揮するのは、生涯を共に駆け抜けた宝具を全力で振るう時に他ならない。
かつてガウェインはアロンダイトを振るうランスロットに敗れたのだ。
聖者の数字が発動しないとて、アロンダイトを持たないランスロットが相手ならば、条件は互角。


アルトリアが討たれ、ルルーシュが共にいる今、もうガウェインが時を稼ぐ必要はない。
ランスロットを討つことだけに、全力を傾けられる――

「はあああああっ――!!」
「■■■■■――ッ!!」

足を止めて、打ち合う。
左右から雷撃の如く襲い来る剣閃を、一つ一つ丁寧に弾き、受け、いなす。
多少ステータスで上回られても、両手で剣を握るガウェインと片手のランスロットとでは、やはり一撃の重さは勝る。
もちろんその代償に、速度と手数は遅れを取る。ルルーシュが見た限り、押されているのはやはりガウェインだ。
止まることなく放たれ続ける斬撃は、もはや空間を断割するシュレッダーそのもの。
放たれる魔力と分子の一つずつを斬り割る剣戟の応酬は、間の空気を加熱し撹拌しやがては気流を生み出す。
気流は魔力を巻き込み、熱を生み、雷を孕んで、切り結ぶ二人を包み込む。
どちらかが競り負けた時、この魔力流は敗者へと一気に注ぎ込まれるのだ。

「ガウェイン……!」
「ランスロット……!」

それぞれの主、ルルーシュとスザクが手を出せる戦いではない。
直前までの彼らの戦いが児戯に等しいほどの、異次元の戦い。
ルルーシュのイルバーンでも、スザクがギアスを制御できるとしても、サーヴァントの戦いに横槍を入れればその瞬間に首が飛ぶだろう。
しかし――ならばこここそが、智を力とするルルーシュが介入する場面。

「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命じる……!」

イルバーンを大地に突き立て、リインフォースから託された魔術回路を励起させる。
槍王から流れ込む魔力を両眼へと集中させる。先ほどは慣れた左眼だけだったが、時間をかければ問題はない。
練り上げた魔力を破壊の力へと変換し、収束し――ギアスを発射台として開放する。

「――ハドロン砲、発射!」

スザクに撃った時とは違う、格段に凝縮された魔力の雷が迸った。
今なお切り結ぶガウェインとランスロット、二人めがけて。

「ルルーシュ、何を…!?」

対面で見ているしかできないスザクが驚愕する。そんなことをすればガウェインをも巻き込んでしまうのに。
が――やはりルルーシュという男は、スザクの想像を超えてくる。
ガウェインの背を撃った雷は瞬時に掻き消え、ランスロットだけを焼いた。

「■■■■■――!?」

セイバーのクラスが備える対魔力は、人間の魔術など容易く弾き返す。
ましてガウェインの対魔力はB。大魔術でさえもキャンセルするほどに強力だ。
ランスロットもまた対魔力を持ち合わせてはいるが、そのランクはE。多少ダメージを削減するだけに留まる。
結果――ランスロットだけが、コードキャストの影響を受け雷に貫かれた。
もちろん、通じると言ってもにわかウィザードであるルルーシュのコードキャストに大した威力などない。
ランスロットの鎧を砕くこともできはしない。
しかし――隙はできた。
眼前で切り結ぶガウェインが必殺の一撃を叩き込むだけの、針の先ほどの刹那の好機が。


「――そこです!」

ガウェインの聖剣が、エッケザックスの鍔元を貫く。
ランスロットが刀身で受けるのも間に合わない。
一瞬の膠着ののち、ガウェインが聖剣を引き抜いて飛び退るとエッケザックスは粉々に砕けて散った。
同時、均衡が崩れて流れ出した魔力流がランスロットを襲う。

「■■■■■■■■…ッ!!」
「ランスロット卿!」

魔術ではない魔力の雷風が、ランスロットの全身を激しく叩く。
斬撃ほどではないにしろ――確かなダメージをその身に刻んだ。
スザクがランスロットに走り寄る。傷は大したことはない…が、傷を修復するために賢者の石から膨大な魔力が汲み上げられていく。
無から有を生み出す賢者の石といえど、内蔵する魔力は決して無限ではない。
ここまでのガウェインとの戦いでかなり消費している…これ以上魔力を消費すると、たとえガウェインを打ち破ったとしても魔力が枯渇してしまうかもしれない。
スザクの中のギアスが警告する。
勝てるとしたらもうここだけ――勝負を掛けるならいまだ、と。

「スザク、きっとお前も俺と同じことを考えているんじゃないか? もう、ここで…」
「ああ…そうだな、ルルーシュ。決着を着けよう」

スザクの直感は正しかった。
競り勝ったルルーシュとガウェインもまた、無傷ではない。
賢者の石のような内燃機関を持たないガウェインは、ルルーシュから魔力を吸い上げるしかない。
コードキャストを使い、なおかつガウェインに魔力を供給し続けているルルーシュもまた、限界が近い。
次の激突で――勝者が決まる。
それはすなわち、ルルーシュとスザクのどちらかが死ぬ――ということだ。
訪れる結果を恐れ、厭い――それでも、二人は同時に決断する。

「令呪をもって命ずる! ガウェイン――宝具を開放し、全力で勝て!」
「令呪よ、俺の願いを叶えろ! ランスロット卿――貴方に勝利を!」

二人の主から放たれる、絶対遵守の令呪。
お互いの手から令呪一画が掻き消え、膨大な魔力となって各々のサーヴァントに宿る。

「御意。我が聖剣は太陽の具現。王命のもと、地上一切を焼き払いましょう――!」
「■■■■■■■■■■――!」

勅命を受け、サーヴァント達が吼える。
ガウェインは『転輪する勝利の剣』を開放し、ランスロットはその手に残る封印の剣に黒い魔力を注ぎ込む。
片や、万物を焼き尽くす太陽の輝き。
片や、万物を飲み込む暗黒の闇。

封印の剣が本来持っている、所有者の意志に呼応して炎を生む力を、ランスロットは完全に支配下に置いている。
振り上げた封印の剣から闇が漏れ出し、伸び、長大な剣となって天を衝く。
その威容は、黒く染まった騎士の王が放つ闇の光に勝るとも劣らない。
さながら、太陽を斬り裂かんばかりに――


「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■――――ッ!!」
「友よ、それが貴方の力…流石です、だが! それでは勝てない――私たちには!」

迎え撃つガウェインはしかし、些かの焦りもない。
今のランスロットの放つ一撃はたしかに強力だろう。おそらくは神造兵装である二つの宝剣に匹敵するほどに。
しかし――どれだけ強力であっても令呪の後押しを得ているとしても、それはランスロットだけの力でしかない。

だがガウェインは違う。
後ろにはルルーシュがいる。
渾身の力で聖剣を放つガウェインを、彼の勝利を信じるだけでなく、共に剣を執ってくれる王が。
そしてこの王は困ったことに――誇らしいことに、陣の後ろでじっとしているような大人しい王ではないのだ。

「スザク――見せてやる、これが、俺達の力……!」

ガウェインがかつての主から学び、リインフォースが改良し、ルルーシュの魔力を燃やして発動する、切り札の中の切り札。
最強のコードキャスト――その名もまさに、決着術式。

「聖剣集う絢爛の城"(ソード・キャメロット)――!」

瞬間――スザクの視界が紅く染まる。
吹き上がる炎の壁が、辺り一面を覆い尽くしていく。
否、それはもはや炎の壁ではない――炎の世界。転移さえも防ぐ灼熱の結界。
数十メートルに渡って展開された決着術式は、ランスロットとその闇の剣を余すところなく囲み込んだ。

「これは……!?」
「終わらせろ、ガウェイン! 俺達を縛る全ての因縁を――焼き払い、幕を下ろせ!!」

炎の結界に閉じ込められたランスロットが剣を振り下ろす。
しかしその闇は炎に焼かれ、燃え尽きていく――そして炎の結界は、内部のランスロットを逃さぬよう縮小し、炎の球体へと近づく。

「ええ、ルルーシュ!
 これが我らの道を照らす輝き! この剣は太陽の映し身、もう一振りの星の聖剣――!」

全力を超えた全力を、聖剣が解き放つ。
ここに放たれるは、闇夜を払う太陽の輝き。
勝利をもたらし、明日へ道を眩しく照らす――



「エクスカリバー・ガラティーン――――――!」




.


灼熱の奔流が炎の結界を呑み込み、混じり合い、高め合い――太陽の尖塔となって、ランスロットを焼き尽くす。
肌を焼く熱風から身を護ることもなく、スザクはその光景をひたすらに目に焼き付ける。
己の敗北と、友の勝利と――そして、己が剣の砕ける様を。

「■■■■■■■■■■■■■――――……」
「ランスロット、卿……」

炎が去った後、そこに残っていたのは、もはや狂える騎士ではなかった。
漆黒の鎧を全て焼き払われ、体内の賢者の石も砕かれ――しかしなお、剣を頼りに決して膝をつかない高潔な騎士が、そこにいた。

「…見事だ、ガウェイン。此度は…私の負けのようだ、な」
「ランス、ロット……」

ランスロットは理性を取り戻していた。
それはすなわち――この騎士がもう、遠からず消え行く定めを負ったということだ。
宝具を放ち激しく疲弊したガウェインは、それでも重い体を引きずってランスロットの元へと走る。
その眼前にたどり着くと同時に、ランスロットの脚が光となって消えて、崩れ落ちた。間一髪でガウェインがその体を支える。

「は、はは…私を裁くのは、王ではなく…君だった、か…」
「ランスロット――!」

輪郭すらもう定かではないランスロットの手を、ガウェインが強く握る。
熱を帯びたガウェインの手には、とても冷たい感触しか残らない。

「ランスロット…私は、貴方を…貴方ともう一度ともに……!」
「言うな、友よ――全てを裏切った私が…この地でまた、王と剣を交え…そして君に討たれることができた。
 私にとっては、それが何よりの…ただひとつの、救いなのだ……」
「救い、救いだと? 救われたというのか…貴方は、この私に」
「ああ…戦場で、剣に倒れることができる…あの時はそうはならなかった。君と王はもう、いなかったからな…」

それが生前の、円卓の騎士の終焉のことを言っているのだと、すぐに気づいた。
ガウェインが倒れ、アルトリアが没し――残ったのはランスロットだけ。
ランスロットは騎士として散ることも許されず、ひっそりと孤独に朽ちていくしかなかった。
それに比べれば、この終わりはなんと心躍るものであることか――

「そう…だが一つだけ、心残りがある。
 すまない、我が主…私はもう、貴方の願いを叶えられない」
「いいんです、ランスロット卿。
 俺は…いえ、俺達は全力で戦った。その結果負けた。
 彼らに…彼らの意志の強さに」


視線を巡らせ、ランスロットはスザクを見る。
スザクにも、もはや戦意はなかった。
認めなければならない。ルルーシュとガウェインが、スザクとランスロットの上を行く意志の強さを持っていることを。
敗北を認めないのは、全力を尽くして戦ってくれたランスロットを侮辱することでしかない。
何より――

「スザク、お前は……!」
「ルルーシュ、君でよかった。俺を終わらせてくれるのが、君で…」

この結末は友が、ルルーシュがもたらしたもの。
それならば納得できる。
受け入れ、剣を置くことができる――

「ルルーシュ。君はこれからどうするんだ?」
「…聖杯を破壊する。二度とこんな戦いが起こらないように…俺達を二度と、利用させないために」
「どんな願いでも叶えられるのに、か?」
「誰かに叶えてもらう願いなどに興味はない。自分の手で掴んでこそ、奇跡は価値がある…」
「結果よりも…過程か? ははっ…君らしくないな。まるで昔の俺のようだ」
「そうかもな。俺は、お前のおかげで変われたかもしれない。
 お前がいてくれたから…俺は戦えたんだ」

それは今ルルーシュの眼の前にいるスザクではなく、ナイトオブゼロとして共に戦ったスザクへの言葉だったが――
ルルーシュの中で、もう二人のスザクの差はゼロだ。
等しく友であり、敵であり――そしてやはり、親友なのだ。

「そうかい? はは…そうか。そうか…」
「スザク、俺はお前が何を願っていたか知っている。聖杯を使ってでも叶えたい、その想いの強さも…」
 …心配するな。お前の願いはきっと叶う。
 俺やお前がいなくても、世界はきっと――優しい世界になる。賭けてもいい」
「だと…いいな。ああ…」

スザクの全身が、ランスロットと同様に消え始めていく。
ムーンセルによる消去。
衛宮士郎と同じ――無慈悲に執行される、永遠の断絶。
スザクが目を閉じる。滅びを受け入れたように…だが、唇を噛み締めて。

――ルルーシュは、たまらず叫んでいた。

「スザク! お前は…お前はナナリーを殺していない!」
「え……?」
「フレイヤでトウキョウ租界が壊滅したあの日、ナナリーはシュナイゼルによって脱出させられていた!
 だからお前はナナリーを殺していない! ナナリーは生きているんだ!
 お前は俺の大事な人を奪ったりなんてしていない!」

言わないと決めていたのに、気がつけば勝手に言葉が溢れ出てきていた。
ナナリー一人生きていたところでスザクの罪は変わらない。士郎や名無が死んだ事実も消えはしない。
これは死んでいった仲間に対する裏切りにも等しい。
それでも――それでもルルーシュは、スザクがこのまま後悔の中で死んでいくのを許せなかった。
ほんの僅かでも、最後に安らぎを得て眠って欲しい――そう願ってしまった。
かつてユーフェミアを殺したルルーシュは、その痛みを知るがゆえに――スザクへの罰を取り除いてやりたいと思った。
ルルーシュの叫びを聞いたスザクは、目を丸くし、次いで長い長い息を吐いた。


「…そうか。ナナリーは生きて…そう、なのか」

これがスザクへの赦しになるとは思わない。
スザクは本来ゼロレクイエムによって生涯をゼロに捧げる運命を歩むはずだった。
だが、このスザクはここで死ぬ。
ならば最後に一つだけ、ルルーシュがこの枢木スザクにしてやれることが――これだった。

「――ランスロット卿、よろしいですか?」
「ああ…望むようにするといい、我が主。私も…それを、望もう」
「ありがとう…ございます」

スザクは消え往くランスロットに何事か問い、ランスロットは了承した。
頷き、スザクはルルーシュに手を差し出した。

「スザク…?」
「ルルーシュ…この手をとってくれないか? もう、君の顔もよく見えないんだ」

別れの刻はもうすぐそこだ。
ルルーシュはスザクの言葉を一言一句逃すまいと、その手を取る。すると繋いだ手を伝い、熱い何かがルルーシュへと流れこんでくる。
それは、スザクに最後に残った令呪――聖杯戦争の参加権でもあるそれを、スザクはルルーシュに移譲しようとしているのだ。

「スザク、待て、これは――!」
「受け取ってくれ、ルルーシュ。俺も、君に…何かを遺したいんだ」

この令呪が完全にルルーシュに移った時、スザクは消える。
それを理解していてなお、スザクは止める様子はない。
その脳裏には生存を促すギアスがけたたましく響いているだろうに、その呪いを捩じ伏せて、ルルーシュへと想いを伝えようとしている。
ならばルルーシュは――応えなければいけない。

「わかった…スザク。お前も連れて行く。共に行くぞ」
「ありがとう、ルルーシュ。俺の…朱雀という名は、不死鳥、火の鳥だ。
 この令呪が君の行く手を照らすことを…願うよ」

令呪がルルーシュの手で輪郭を形作っていく。
比例するように、スザクの体が急速に光となって消えていく――

「ああ、そうだ。最後にもう一つ…いいかな、ルルーシュ」
「なんだ、スザク」
「ああ…」


か細い声が紡がれ、意味を成す。
それは――

「枢木スザクが、命じる…生きてくれ、ルルーシュ」

それは――ギアス。
かつてルルーシュがスザクにかけた――呪い。
それを今度は、スザクが――ルルーシュへと贈る。
呪いではなく願い――祈りとして。
敵ではなく友として、ただその身を案じるためだけに。

「ス、スザ――」

言いようのない想いがルルーシュの胸を満たす。
スザクに、そのギアスに答える寸前――スザクは消えた。
ルルーシュの手で、令呪が輝いている。
ガウェインを見れば――彼もまた、立ち尽くしている。
その腕の中に、ランスロットはもういない。

「ばか……野郎……っ! 最期になんて、ことを…っ」
「ルルーシュ…」
「わかっている! 生きろだと!? ああ、生きてやろうじゃないか!
 元はといえば俺がお前にかけたギアスだ…俺が背負えないはずはない! そうだろう、ガウェイン!」
「ええ、その通りです我が王よ。我々は生きねばならない――そして勝利せねばならない」
「ああ……やってやるさ!
 世界を壊し、創造する――不可能を可能とする、奇跡を…起こしてみせる――!」

熱が冷め、残ったのは仮面の王と太陽の騎士、二人だけ。
太陽の輝きによって、暗闇は吹き払われた。
夜が明ける――明けて、最後の朝が始まる。



《EXTRA》



「――終わったようですね」

枢木スザクは死んだ。
最後のキャスター、キンブリーは一部始終を見届けた。
約束通り、キンブリーはルルーシュとスザクの戦いに手出ししなかった。
ぶつかり合う二人の意思のどちらが強いか、それを見極めるために。
結果、スザクは敗北し、ルルーシュが生き残った。

「ふむ、中々楽しめましたよスザク。助力の見返りとしては十分です。
 どうぞ、安らかにお眠りなさい」

独りごち、キンブリーは戦場に背を向ける。
スザクの仇討ちをするつもりなどさらさらない。元々そういう関係ではない。
スザクがどういう結末を迎えるか、それだけが興味の対象だったのだ。
それにいくら疲弊しているとはいえ、セイバーを相手にしてキャスターが単騎で勝てる訳もない。
何より――死んではそれ以上楽しめない。それでは詰まらない。

「さて――ではこれからどうしましょうかね。他に何か楽しめそうな人は――」
「キャスター、ここにいたか」

歩き出したスザクの前に、黒い影が現れる。
それはアサシン――同盟を組んだ内の一人、何重にも分身を生み出せる暗殺者のサーヴァントだ。

「おやおや、あなたも見ていましたか。なかなか興味深い決闘だったでしょう?」
「それほど愉快ではない。セイバーが残ったのだぞ」

最優のクラスが生き残ったということは、優勝を目指す彼と彼のマスターにとっては確かに憂慮すべき事態だろう。
聖杯などどうでもいいキンブリーにとっては、それこそどうでもいいことだったが。

「彼らを襲うのですか? 止めはしませんが、お勧めもしませんよ。アーチャーを呼んできたらどうです?」
「こちらにも都合がある。今は奴らに手が出せんし、アーチャーを呼ぶこともできん」
「おや、そうですか。ではさっさと退散することですね。サーヴァントが二体もいれば、見つかってもおかしくありませんよ」
「用件を済ませたらな。キャスター――お前はこれからどうするのだ?」

と、アサシンは問いかけてきた。
問われても正直、キンブリーには何の宛てもない。
強いて言うなら、このままセイバーやアーチャーといった強者に狩られるのは避けたいということくらいだが。

「お前は枢木スザクの支配下にあったが、今は違う。そういう認識でいいか?」
「ええ、まあ間違ってはいませんよ。支配というよりは取引で繋がった関係でしたが」
「そうか、なら――」

そこでアサシンは、キンブリーに向けて手を差し出す。
訝しげに見やるキンブリーへ、誘うように言う。

「同盟はほぼ目標を達成した。だが残る敵を駆逐するためには、我々はあまりに貧弱だ。
 よってキャスター――もう一度協力を求めたい」

告げられた言葉は、さらなる交戦を予告するもの。
突然に降って湧いた指針に、キンブリーの興味は大きく惹かれ――



「詳しい話を伺いましょうか」



この戦いは、まだまだ楽しめそうだ。




【枢木スザク@コードギアス 反逆のルルーシュ  死亡】
【バーサーカー(ランスロット)@Fate/zero  死亡】




【深山町/早朝】

【ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア@コードギアス反逆のルルーシュ】
[令呪]:2画
[状態]:魔力消費(極大)、疲労(大)
[装備]:槍王イルバーン
[道具]:携帯電話、封印の剣@ファイアーエムブレム 覇者の剣
※槍王イルバーンを装備することで、コードキャスト『hadron(R2)』を発動できます。
  hadron(R2) 両眼から放つ魔力砲。収束・拡散発射が可能。
      効果:ダメージ+スタン。

【セイバー(ガウェイン)@Fate/extra】
[状態]:疲労(大)、魔力消費(大)
※『聖者の数字』発動不可



【深山町/早朝】

【キャスター(ゾルフ・J・キンブリー)@鋼の錬金術師】
[状態]:疲労(中)、魔力消費(大)
[装備]:羽瀬川小鳩を練成した賢者の石

【アサシン(ファニー・ヴァレンタイン)@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態](6人目)・魔力消費(極大)・宝具「D4C」無し・気配遮断
[装備]:拳銃
[道具]:携帯電話
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