二次キャラ聖杯戦争@ ウィキ

作戦会議をしよう

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匿名ユーザー

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「ここが、月海原学園…」
「シロウ、決して気を抜かないように」
「我々が護衛についていますが、既に敵地同然と思っていて下さい」

深夜の月海原学園。
衛宮士郎、アルトリア、ガウェインの三人は半ば臨戦態勢でそこに踏み入った。
ちなみに移動にはこなたや映司が乗っていた乗用車を使った。
目的の場所へ向かおうとしたところで士郎の携帯電話が鳴った。



『衛宮、学園に着いたか?』
「ああ、掲示板を確認したら図書室に行く。
…けどルルーシュ、いくら何でもここまで回りくどいやり方をする必要なんてあるのか?
そりゃ泉を直接行かせるよりは安全かもしれないけどさ」
『馬鹿を言え、別行動中に衛宮切嗣に嵌められた事をもう忘れたのか。
あの時も最善を尽くしたはずが敵に上回られた、いくら慎重にしてもやりすぎということはない』

電話の相手はルルーシュである。
これから学園で調べ物をするにあたって、こなたと交代で指示を出す手筈になっている。
士郎とルルーシュが使っている携帯電話は花村陽介と名無鉄之助が使っているものだ。
盗聴対策になるかはわからないが、一度も衛宮切嗣と接触していない二人の電話の方が安全度が高いと判断した。








一体何故彼らはただの調べ物にこれほどの用心を払っているのか?
以前別行動中にチームが瓦解するほどの打撃を受けたといっても明らかに過剰反応だ。
この行動の理由を語るにはしばらく時間を遡らなければならない。








士郎やルルーシュ達がリインフォースの魔法で死者達と向き合っていたちょうどその頃。
月海原学園では枢木スザクが交戦したサーヴァントの情報収集を行なっていた。
無論彼はキンブリーの錬金術を用いた変装で他のNPCと完全に同一の姿になっていた。
一見すればサーチャーを走査させていてもスザクであることを看破するのは不可能に思える。

しかしそれは変装したスザクの姿だけを見た場合に限った話だ。
変装したスザクの残した足跡は彼本人であることをリインフォースらに疑わせるには十分すぎた。

そもリインフォースのサーチャーは学園のどのあたりを飛び回っていたのか。
簡潔に言えば正門、裏門、玄関、掲示板前、図書室前の五箇所である。
情報を集められる重要施設であるため他より多くのサーチャーが細かく配されていた。
それらの映像を記録し保存した後、多角的な視点で分析出来る者が遠坂邸には何人もいた。
これはスザクらの視点では決して考慮に入れることが出来ない点であったに違いない。



宴会を終えた後、リインフォースはメンバー達の前でこの時の記録を公開した。
彼女だけでは判断がつきかねる部分もあったからだ。
ルルーシュが何かを言いたげにしていたがすぐ飲み込んだようで彼の見解を告げた。

「…やはり怪しいな、この男子生徒。
運営NPCがまっすぐ図書室を目指して十数分もかけてから退出しそのまま校門から出た。
タイミングから考えてもあまりに不自然だ、キャスター、これはやはり…」
「ああ、この男子生徒が学園に入った時間は私達が枢木スザクの一党と交戦してからおよそ四十分後だ。
普通に考えて枢木スザク本人か奴の仲間のマスターのどちらかだろう。
仮にそうだとすればこいつは変装したマスターということになる」
「違和感ならば他にもあるぞ、こいつの歩法、正中線にまるでブレが無い。
我々が朝学園に行った時にこんな歩き方をするNPCなど一人もいなかった」
「いずれにせよ彼が変装したマスターであり、我々の情報を調べていたという前提で事を進めるべきでしょう。
蘇妲己に天海陸、衛宮切嗣と我々は何度も敵の奸計に苦汁を飲まされてきました。
ここからは常に最悪のパターンを想定しておくべきかと」

ガウェインの若干憂いを帯びた言葉に士郎、アルトリア、ルルーシュが特に強く頷く。
本来守るべき人間である金田一一の犠牲の上に今の彼らがある、この反応も至極当然だ。

「すまないがこの時私は索敵に集中していたわけではなかったものでな。
この男子生徒が学園を出た後の動向や拠点の場所までは特定できなかった」
「いや、十分だ。…それにこれがスザクだったとしても、あいつは恐らく……」
「ルルーシュ…」

沈み込むルルーシュの気持ちが陽介には痛いほどよく分かる。
スザクがルルーシュの無二の友であることを士郎や陽介らもつい今しがた遅れて聞かされたところだ。

それ以前にルルーシュが元の世界でのスザクとの関係を話したのはガウェインの他にはアルトリアのみ。
士郎を含めた他の仲間は柳洞寺でのルルーシュの反応から知り合いであることがわかっていた程度だ。
とはいえルルーシュもうっかりしていて話し忘れたわけではない、敢えて話さなかったのだ。



午前中天海陸を詰問した時脳裏にはスザクともう一度手を組めるかもしれないという考えがあった。
だがそれが結果として焦りを生み、最悪の場面でのギアスの行使と失敗につながった。
そしてその時の失敗がその後何を齎したか。



天海陸とイスラ・レヴィノスにはよりつけ入る隙を与えてしまった。
反魔の水晶によるギアス対策も事前情報から決して予測出来ないことではなかったはずだ。
何故なら金田一は最初からイスラの能力の低さに疑問を呈していた。
そこから少しでも想像を膨らませていれば十分防げた筈の事態だった。
ギアスを使うとしても自分達のホームグラウンドである柳洞寺に着いてからで良かった筈だ。

加えてルルーシュの失敗をフォローするためにアルトリアの真名を陸に教える羽目になった。
しかも後にはその状態で士郎とアルトリアが陸やイスラと戦わなければならない状況に陥った。
彼らが陸たちを打倒出来たのはたまたま相性が良かっただけだ、もしアルトリア対策を練られていれば結果は逆だっただろう。

さらにその時の自分はといえば衛宮切嗣の策で金田一と太公望を死なせたショックから勝手な別行動の最中。
それが原因で士郎らを二度も三度も生命の危険に晒してしまった。
先ほど救援が間に合ったのもリインフォースが偶然転移魔法を有していたからでしかない。
そうでなければ救援に向かったとしても相応の痛手を被っただろう。
あれほど簡単に敵を蹴散らせたのは転移を用いたことによる奇襲効果あってこそだ。
一度見られた以上今後数の有利に胡座をかくような事は絶対にあってはならない。



いるかもわからない友人を気にして身近な仲間を死なせる愚はもう犯せない。
そう考えたルルーシュはスザクの存在が確定するまで彼のことを他人に話さないようにしていた。







「あの怪しい男子生徒がスザク本人かその仲間であるという前提で話を進めるぞ。
あいつが図書室に篭っていた以上こちらのサーヴァントの情報はいくつか漏れたと考えて良い。
問題は誰の情報がどこまで漏れたか、ということだ」
「いや、俺達とあいつらは今まで一回も接触してなかったんだぞ?
その枢木スザクのサーヴァントはバーサーカーだったなら偵察にも向かないはずだ。
切嗣じゃあるまいし、こっちの情報を知るチャンスがあったとは思えないぞ」
「いーや、一緒にいたアサシンの野郎は最初に俺達が戦ってる時に横槍を入れて人を殺しやがった。
少なくともそいつから俺とアレックスの事は聞いてると思うぜ」

士郎や陽介が意見を交わす中退屈そうにしていた鉄之助が何かを閃いたのかずいっと前に出てきた。

「あのさー、俺ちっと気になったんだけど。
あの枢木ってやつ、何でセイバーちゃんっていうか柳洞寺を狙ったんだ?
何つうかこう…俺馬鹿だからよくわかんねえけど出来すぎな気がするんだよな」

「良いところに気がつきました、テツノスケ。
恐らくというか、彼らは間違いなく切嗣と繋がっていると思いますよ」
「えっ!?」

さらりと返答したアルトリアにこなたや映司、士郎らが驚いた様子で食いつく。
動じていないのはこの中ではルルーシュとガウェインだけだ。

「彼らは私とシロウだけでいる時を狙ったかのように襲撃してきました。
しかも私が山門を守りきれなくなったと同時に伏せていたマスターとサーヴァントが動いた。
さらに後方にアサシンも伏せていたことを考えるとルルーシュやコナタの援軍に備えていた可能性が高い」
「そしてそれだけの情報量に一致する人物が他に一人だけいる、衛宮切嗣だ。
花村や名無の存在までは知らなかったというのも共通すると見ていい。
だからこそあの時スザクはあそこまで驚いたのだろう」
「なるほどな、衛宮切嗣は自分達の戦力情報を知った敵を始末したい。
バーサーカーを従える枢木スザクは柳洞寺という陣地が欲しい。
奴らの間で利害が一致していたというわけだな」
「勿論アサシンが情報収集を行なっていた可能性もありますが、その線は考えにくい。
あのサブラクは当初新都で活動し、私達が鳴上悠と交戦した時彼はランスロットの剣を持っていた。
この事から枢木スザクは最初は深山町のどこかにいた可能性が高い。
であればスザクとサブラクのマスターが手を結んだのはある程度時間が経ってからのはずです。
何よりもしサブラクが深山町に長時間いたなら切嗣とディケイドが必ず気付く。
敵のアサシンを放置して我々に矛先を向けるとは思えない」
「逆に俺達や衛宮を襲った時点でスザクやアサシンと組んでいればそれを活かさないわけがない。
だとすればあいつらは組んで時間が経っていないかそもそも同盟関係そのものが希薄なのか…」

アルトリアらの推論を聞く士郎の表情に陰りが募る。
切嗣がいよいよ自分達を本気で殺すつもりでいることを嫌でも実感できてしまうからだ。


「じゃあ…セイバーさんやガウェインさんの事はもう知られちゃってるよね。
切嗣さんと情報交換でもしてたら映司さんの事もきっと…」
「うん、間違いなく調べられたと思う。
それに彼らが調べた事は切嗣さんに伝わったと考えて動いた方が良い」



ともかくどの程度の情報が漏れたかは大体目星がついた。
アルトリア、ガウェイン、映司は真名まで含めてほぼ確実。
アレックスもこれまで見せた戦闘情報から能力を知られた可能性が否めない。
しかしリインフォースだけは正体の核心に迫る情報を見せていないので真名を知られていないと考えて良いという結論になった。



「スザクがこちらの情報を手に入れた以上俺達も残る敵の情報と正体を探る必要がある。
具体的な作戦を決める前に誰かに学園のデータベースを調べてもらおうと思う。
…まあ、人選についてはもう決まっているわけなんだがな」
「それって私のことだよね?
うん、少しぐらい年長らしく頑張って情報集めてくるよ!」
「いいや泉、お前は駄目だ」
「えっ!?な、何で!?」

せっかく良いところを見せる機会を理由なく奪われてはたまったものではない。
長身のルルーシュに精一杯目線を上げて食い下がるこなただがルルーシュは気にも留めない。
代わりに視線を向けた先にいるのは士郎だった。

「…え、もしかして俺か?」
「そのまさかだ、現状を考えるとお前に行ってもらうのがベストなんだ」

そう言われても何故ベストなのか全くわからない。
先ほどこなたにはサーヴァントの情報を詳しく調べる力があると聞いている。
それならばサーヴァントの護衛をつけてこなたに学園に行ってもらう方が良いはずだが。
その点を指摘するとルルーシュは陽介が使っている大学ノートを取り出した。
めくったページに書いてあるのは脱落者の情報だ。



「アサシン、サブラクを倒した今生き残っている参加者は十組二十人。
そして俺達は五組十人で手を組んでいてスザク達にもそれは知れただろう。
サーチャーの映像にサーヴァントは映っていなかったが密かに掲示板ぐらいはチェックしていたはずだ。
では、それを踏まえて奴らはこれからどう動くと思う?」

険しい表情で語るルルーシュに士郎もようやく自分達の現状に気付いた。
生き残っている他のマスターはほぼ全て優勝を狙っていることだろう。
そういったマスターの目に五組で徒党を組む自分達は果たしてどう映るか。
そこまで考えれば次に敵が取る行動も自ずと読める。

「残ったマスター同士で本格的に手を組んで俺達を排除しようとする…よな、どう考えても。
最悪残ったマスター全員で手を組むなんてこともあるかもしれない」

「最悪だのかもしれない、では危機意識がまるで足りないぞ衛宮。
成功するかはともかく、必ず、死にもの狂いでその手を実現させるというぐらいに考えるべきだ。
何しろ残るマスター全員で同盟してもこちらを数で上回ることが出来ないのだからな。
同時に勝つためにいよいよ手段を選ばなくもなるはずだ、例えスザクであってもな」

ルルーシュの言は非常に正しい。
士郎の心にはどこかで最大勢力になった自分達なら大抵の相手はどうにかなる、という意識があった。
が、それは明らかに増長であり傲慢であり致命的な隙だ。
間違っても二度とそんなことは考えるまいと心に誓った。

「言いたいことはわかったけどさ、それと俺が学園に行くのがどう関係するんだ?」
「ああ、大いに関係ある。
お前は見ていないだろうが、さっきスザクと一緒にいたサーヴァントが問題だ。
能力の低さとさっきのマスターの変装という状況証拠から考えてキャスターだろうな。
となれば少しでも勝率を上げるために何かの仕込みは絶対にしていると思っていい。
そして真っ先にその対象になるのは―――NPCだ」
「!そうか―――確かにそうだ。
あの蘇妲己だってNPCを操ってたんだ、絶対に何かはやってる」
「そういうことだ、となればこれから先マスターが外出するだけでも危険が伴う。
中でも戦う力がない俺と泉はこの集団のアキレス腱だ、機会があればまず狙われる。
この中で唯一まともな魔術師であるお前にしか頼めないことなんだ」
「別に俺は普通の魔術師ってわけじゃないんだけどな…でもわかった」

今まで休んでいたのだからここは自分が働くべき時だろう。
頷いて準備をする士郎にルルーシュはアルトリアとガウェインを連れていくように言った。
最高の対魔力と直感を併せ持つアルトリアと魔術戦の素養があるガウェインがこの任務に適しているからだ。
こうして三人は車で月海原学園に向かった。












そして現在、士郎たち三人は図書室の扉を開けて中に入った。
受付にはいつも通り案内役の間目智識がいた。

「あ、マスターさんいらっしゃーい!
って一人は前にも会ったサーヴァントさんじゃん」
「一日ぶりですね、早速ですが士郎殿に端末の使い方を教えていただきたい」

お安い御用、と言って案内をしてくれる間目智識に従って端末を起動する。
士郎は魔術師としては比較的機械への理解があるがパソコンなどを自由に使いこなせるほどではない。



「やっぱり変な感じだよな…」
「?どうかした、マスターさん?」
「あ、いや何でもないぞ」

この異質な聖杯戦争にも大分慣れたつもりだったがやはりこれは違和感が拭えない。
普段通学している学園が似て非なる建物に変わりそれが重要施設として扱われている。
以前の聖杯戦争では基本的に戦闘には関係ない場所だっただけに複雑な気分だ。
しかし感慨に耽ってばかりもいられない、携帯電話を出してルルーシュに掛けた。

「端末を起動したぞ、ルルーシュ」
『わかった、ではすぐに泉に代わる。
とりあえず名無たちが交戦したアサシンから、“D4C”という単語で検索してくれ』
「ああ、やってみる」

キーボードで「アサシン D4C」と入力する。
その結果「スタンド能力“D4C”」と出た、これがアサシンの能力なのだろうか。

『士郎くん、どんな感じ?』
「ああ、今ちょうどアサシンの能力を検索してるところだ」

こなたと会話しながら能力を読み込んでいく。
スタンド能力“D4C”。
精神の力の具現であるスタンド能力の一つでD4Cは第23代アメリカ合衆国大統領ファニー・ヴァレンタインのスタンドである。
同じ場所に隣同士の世界を同時に存在させたり、平行世界へと身体を移動させることが出来る。
何らかの物体の隙間(「扉と壁の間」「国旗と地面の間」等)に挟まれることで発動する。
大統領は隣の世界へと移動することで、どんな重傷を負おうと「隣の世界の自分」と交代して無傷の状態で復活することが出来る。



「こ、これは…」
「何だよこれ、完全に第二魔法の領域じゃないか」
『スタンド…これも何か知ってる気がする…』

本当にアサシンなのかと疑いたくなる規格外の能力だ。
アレックスらが撃退できたことから勝ち目が無いわけではないようだが。
驚いていても仕方ない、続きに目を通していく。

どうやらこの能力は宝具であることから使用には魔力消費を伴うらしい。
ランクや規模の大きさからいって決して気軽に使える能力ではないだろう。
しかし事実上の分身やスタンドヴィジョンによる格闘能力は厄介だ。
何より並行世界の同一人物同士を接触させ殺害する力は反則的だ、防ぐ手立てが無い。
鉄之助に対して使われなかった事から無条件で使えるわけではなさそうなのが救いか。

「…でも、これで相手の真名はわかった」

端末で「アサシン ファニー・ヴァレンタイン」と入力する。
するとマスター名と共にアサシンの詳細なデータが表示された。
ステータスやスキル、それとこの聖杯戦争では封印されている宝具についてもわかった。

「このステータス欄の宝具Aって詐欺じゃないか?
ランクEXの宝具しか持ってないのに何かおかしい気がするんだけど」
「マスターによるマイナスの補正が働いているのかもしれません。
魔力供給が十全でないが故に本来の性能を出し切れていないのでしょう」



得られた情報をしっかりとノートに書き写していく。
書き終えたところでこなたに電話を掛けた。

「アサシンの方はしっかり調べられたぞ、次はDIOだったっけ?
確か花村たちはまだ何か隠された能力があるかもしれないって言ってた気がするけど手掛かりがなあ…」
『手掛かり、手掛かり………あっ!
士郎くん、スタンドで検索して!“DIOのスタンド”で、早く!』
「えっ?あ、ああ、わかった」

何か思いついたのか興奮した調子で言うこなたの指示に従って検索ワードを入力する。
すると「スタンド能力“世界(ザ・ワールド)”と表示された。
これがDIOの隠された能力なのだろうか、とにかく説明文を読むことにする。
だが、そこに書かれた想像を絶する力にすぐに絶句することになった。



「時を止める、だと…?」
「………」
「冗談だろ、こんな……」

DIOのスタンド“世界(ザ・ワールド)”。
上級サーヴァントに匹敵するスタンドヴィジョンの格闘能力も凄まじいがそれさえ霞んで見える超級の異能。
それが時間停止、約十秒もの間世界の時を止める圧倒的に過ぎる超能力だ。
しかも生前の特性故か例え単独行動中であろうと数回の発動が可能な異様な燃費。
あの鳴上悠やランサーが敗北するはずだ、まともに戦う権利すら得られないとあっては勝てるはずがない。



『…諦めちゃ駄目だよ士郎くん、とにかくちょっとでも情報を集めよう、ね?』
「…ああ、そうだな」

空元気だろうが励ましがあるだけでも有難い。
こなたの指示に従って改めてDIOの逸話を丁寧に調べていく。
その過程でわかったことだが、驚くべきことにDIOのクラスはアーチャーらしい。
小道具をよく使った逸話からナイフをピックアップしたところクラスと投擲スキルの存在が明らかになった。
ただ未来の士郎自身である英霊エミヤも固有結界が宝具扱いされているので異質なのはお互い様かもしれないが。



DIOの能力を詳細にノートに書き写した後はランスロットとキャスターを調べた。
ランスロットの方は手にした武器を宝具化する異能や元は変装能力であるステータス隠蔽技能などがわかった。
逸話から派生して後天的に宝具化された能力が判明したのは地味ながら大きい進歩だ。

ただキャスターに関しては具体的な情報が少なすぎて絞り込むことが出来なかった。
サーチャーに映っていた変装したマスターからしてそれなり以上の道具作成能力を有しているのは間違いないと思うのだが。



「はぁ……」

情報収集そのものは上手くいったが、正直ため息しか出ない。
残る敵サーヴァント、特にDIOのあまりの反則さには打開策が浮かぶ気がしない。
よしんばDIOに対処出来たとしても切嗣とディケイドもいる、あちらもあちらで頭抜けた能力を保有している。

「シロウ、落ち込んでいても事態は何も好転しません。
まずは一度遠坂邸に戻り、対策を練りましょう。
全員で話し合えば活路も見えてくるはずです」
「…そう、だな。悪いセイバー、深刻に考えすぎたみたいだ」
「ええ、この聖杯戦争は前回とは違う。
私達だけで全てを考え、全ての敵と戦う必要はない」

優しげなセイバーの激励に強く頷き席を立つ。
そうだ、元より衛宮士郎に出来ることなどそれほど多くはなかった。
だがそれがどうしたというのか、周りには支えてくれる仲間が何人もいる。
士郎自身に策が思いつかないなら素直に彼らを頼れば良いだけだ。



「失礼します」
「――――――え?」

扉が開き、女性の声が聞こえてきた。
その声に耳を疑い全身が固まった。





―――待て、この声は。
―――ここで聞こえてはならない声ではないのか。
―――どうして、彼女が。





「マスターの衛宮士郎さん、ですよね。
お呼び止めしてすみません、重要なお話があるので保健室に来ていただけませんか?」
「――――――さく、ら」



間桐桜。
衛宮士郎にとって何より大切な少女がそこにいた。












「ごめんなさい、お忙しい中呼び止めてしまって」
「あ、いや、いいんだ。
それでその…話って一体?」

数分後、四人は学園一階の保健室に場所を移していた。
桜の姿を見て愕然としていた士郎だったが即座にガウェインが注釈を行なった。
曰く、目の前にいる少女はこの学園の健康管理を司る上級AIである間桐桜。
地上にいる桜をモデルにして用意されただけの別人であるという。

言われてみれば確かに明確な相違点があった。
今ここにいる桜はあまりにも髪が長すぎる。
この長さは地上にいる桜のサーヴァント、メドゥーサに近い。
それに言動もどことなく機械的な面がある、AIというのは本当だろう。
どちらにしても心臓に悪いことには変わりないのだが。



「はい、率直に言うと現在衛宮さんの霊子体、アバターの魂を司る部分に異常が発生しています。
私はムーンセルから衛宮さんが学園を訪れた時にこの情報を公開するよう指示されました」
「なっ……!?」

さらりととんでもないことを口にした。
士郎自身も身に覚えがない、一体いつの間にそんな事になったのか。
それに他にも不可解な点がある。

「ちょ、ちょっと待ってくれ。
わからない単語もあるけど、要は魂に異常が起きてるってことで良いんだよな?
一体何時、どこでそんな事になったっていうんだ?」

士郎には魂に異常が発生するような事態には二つ覚えがある。
一つは英霊の身体、その一部分の移植だ。
かつて士郎は左腕を失った際代わりにアーチャーの腕を移植された事がある。
衛宮士郎と英霊エミヤは起源を同じくする者、それ故最も適合率の高い移植だった。
しかし如何に同一人物とはいえ人間と英霊では根本的に魂の比重が異なる。
魔力を抑える聖骸布で移植された腕を覆っても徐々に士郎の魂は侵食されていった。

もう一つは地上の大聖杯に巣食っていた“この世全ての悪(アンリマユ)”。
第五次聖杯戦争を混沌の坩堝に叩き落とした原因だ。
この悪性情報から漏れ出た泥は強大な自我を持つ英霊の属性すら反転させる。



「戦闘のログをチェックしましたが、衛宮さんは昼間に宝具“紅の暴君”を投影されていますよね?
その時柳洞寺の地脈から吸い上げた魔力に強力な悪性情報が混じっていたんです」
「なっ!?」
「…それは、吸い上げた魔力が汚染されていたということですか?
しかし何故?このムーンセルにアンリマユなど存在しないはずです」

一見冷静に見えるがただならぬ表情で桜に詰め寄るアルトリア。
それを当事者でないが故にこの場で最も冷静なガウェインが静かに宥める。
サーヴァントのプレッシャーから解放された桜がほっと一息ついてから質問に応じた。

「原因は今日の日中に脱落したライダーのサーヴァント、アシュナードさんです。
彼が消滅する直前に発動した宝具“エルランのメダリオン”の力で消滅した彼の魂は悪性情報に満ちていたんです。
この冬木市の魔力の流れは全て柳洞寺に行き着くように造られています。
そしてこの聖杯戦争で脱落したマスターとサーヴァントの魔力はこの冬木市の管理・運営に回されます。
衛宮さんはアシュナードさんの残した悪性情報を取り込んでしまったんです」
「なんだって……!?」

陽介らから話には聞いていた最強クラスの実力者であり最も凶悪なサーヴァント。
その名がこんなところで出てきたことに驚きを隠せない。
しかしガウェインは腑に落ちないのか桜への懐疑的な視線を崩さない。

「お待ちを、何故貴女はそれを我々に教えるのですか?
極めて間接的なものとはいえ、士郎殿の魂が汚染されたのはあくまで参加者間のやり取りによるもの。
この事象について貴女が我々に事実を教えることは禁則事項にあたるのでは?」
「はい、本来なら参加者同士で起こった事をNPCが伝えるのは禁止されています。
ですが今回の衛宮さんの魂の異常が起こった本当の原因は別にあるんです。
それが私が衛宮さんに事実を伝えることが出来る理由になっています」



桜の表情は非常に申し訳なさそうな、深刻そのものといった風情だ。
やや間を空けてから意を決したように再び口を開いた。

「ごめんなさい、今回の事は私達運営側の不手際が原因だったんです。
SE.RA.PHには脱落者の負の魔力や想念といった悪性情報を解体・浄化するシステムがあります。
ですが今回の場合そのシステムの出力不足からアシュナードさんの悪性情報を浄化しきれなかった。
本来の想定通りシステムが稼働していれば衛宮さんが悪性情報の影響を受けることは無かったはずなんです。
サーヴァントの悪性情報の解体に二時間以上もかかるなんて本来あってはいけない遅れなんです」
「要するにシステムの不備が参加者に本来有り得ない悪影響を与えてしまった、ということですか」
「はい、付け加えると原因になった情報をこれだけ開示できるのはアシュナードさんが既に脱落しているからでもあります。
脱落した参加者の情報公開についてはムーンセルからの規制が大幅に緩和されますから」

伏し目がちに話す桜を見ているだけでどうもこちらが申し訳ない気持ちになってしまう。
だがそんな事はお構いなしにアルトリアがずいと前に出て桜に詰め寄った。

「マスターの異常を知らせてくれたことには感謝します。
ですが回復出来ないのでは片手落ちだ、この件で学園サイドでの治療はしていただけるのですか?」
「…その、ごめんなさい。
この聖杯戦争では運営側による参加者の治療には強力な規制がかかっているんです。
それでもこういう特例の時には許可が降りるんですがこれは私の権限ではどうすることも……」
「いや、いいんだ。教えてくれただけですごく助かったぞ」

健康管理AIというからには治療が出来るかもしれないと思ったがそう上手くはいかないらしい。
とはいえこちらはそもそも気付いてもいなかったのだから知らせてくれただけ十分に有難い。
こうまで下手に出られてはアルトリアも引き下がるしかなかった。






余談だが月の聖杯戦争では参加するマスターの意志こそが最重要視される。
とはいえ参加者同士の接触による精神干渉などには本来さほどの制約はない。
どのように戦い、勝ち進むかは各マスターの意志と裁量に委ねられているからだ。

だが今回の場合は何の接触もないにも関わらず衛宮士郎にアシュナードの最期の足掻きが大きな影響を及ぼした。
本来想定された参加者同士の接触や闘争以外のところでマスターの意志をねじ曲げる事態が発生した。
しかしこれが参加者にのみ原因があるならば運営AIが士郎に事実を教えるなどということは許可されない。
ムーンセル側の不備が招いた不測の事態であるからこそ士郎が学園を訪れるという条件付きで事実を伝えるという判断がなされたのだった。
閑話休題。






「で、ですが今回のような事が二度と起こらないようにシステムの改善は進めています!
他の上級AIの皆さんと協議した結果柳洞寺に集積する魔力の浄化システムを強化しています。
リソースにも大分余裕が出てきましたから他の部分に悪影響が出ることもありません」

自分達運営の信用に関わると思ったのか慌てた様子で弁解する。
士郎は特に気にしないがアルトリアとガウェインはそうではなかったようだ。
二人とも公正かつ真っ当な運営をお願いしますと言って保健室を出た。

「あー…その、多分これから戦いが激しくなるから気をつけてな、桜」

士郎もそう言い残して保健室を出た。
我ながら不器用な物言いだと思ったが、恋人と似て非なる少女に他に何をどう言えば良いのか思いつかなかった。
とはいえ動揺もようやく落ち着いてきた、とりあえずは遠坂邸に一度戻るべきだろう。












「ういっす、おかえりー」

遠坂邸に帰り着くと真っ先に気がついた陽介が出迎えてくれた。
続いてルルーシュやこなた、アレックスらも待ちかねていたのかそれぞれすぐ居間に集合した。
ちなみに鉄之助だけは熟睡しておりリインフォースに叩き起こされる羽目になった。



そして数分後、居間にサーヴァントを含め全員が集まった。
進行役に選ばれたルルーシュが軽く咳払いしてから口火を切った。

「衛宮が持ち帰ってくれた情報は貴重なものだ。
衛宮の魂が汚染されているという事も含めてな、本当に大丈夫か?」
「…ああ、今のところは大丈夫だ。
似たような事なら前にも経験があるから慣れてるし」

「シロウ、慣れていることと大丈夫なことは全く意味が異なる。
無理を通して悪化した、では元も子もありませんよ」

陽介やこなたらも気遣うような視線を士郎に向けている。
ちなみに昼に投影した“紅の暴君”は真っ先に破却した。
解析したところ剣自体に負の魔力が染み付いてしまっていたのだ。
それが士郎には辛い、またしても仲間に迷惑をかけてしまっている。

「本当にごめん、長い間休んでた上にこんな事になっちまって…」
「士郎君、それは違う。
君とセイバーさんが俺達に代わって戦ってくれていたからこうして皆で集まって手を取り合うことが出来たんだ」
「ライダーの言う通りだ、お前達が天海を倒して俺達が来るまで耐えてくれていたからこそ今がある。
むしろ俺の方こそお前達に謝らなければならないぐらいだ。
俺があの時、勝手な別行動などせずに共に蘇妲己の討伐に行っていれば…。
いや、それが無理でもすぐに柳洞寺に引き返していれば防げたはずの事態だ、本当に済まなかった」
「ルルーシュくん……」



予想外のところで生じていた仲間の危機にルルーシュが臍を噛む。
士郎が衛宮切嗣との戦闘中に“紅の暴君”を使わざるを得なくなったのは不可抗力だったと言えよう。
だがその状況を誘発したのは他ならぬ自分だとルルーシュは認識している。

あの時の自分は役立たず同然だったがガウェインはそうではない、万全の状態だった。
すぐ柳洞寺に戻っていれば士郎がそこまで追い込まれることもなかった筈だ。
いやそこで衛宮切嗣を仕留めることも出来たかもしれない、そうすれば後のスザクの襲撃も無かったかもしれないのだ。



「過ぎたことを悔やんだところでどうにもなるまい。
異常が起きてしまったなら治療する術を探せばいい、やる事が一つ増えただけだ」
「だな、にしてもあいつら厄介なもん残しやがって…。
なあキャスター、あんたなら衛宮を治してやったり出来ねえか?」

陽介が視線を向けるもリインフォースはすまなそうに首を横に振った。

「私の扱う魔法は神秘を極める魔術とは対極に位置する科学寄りの技術なんだ。
すまないがこういった事は専門外だ、力にはなれそうにもない」
「マジかよ…じゃあ打つ手なしってことか?」
「今のところはそうなってしまうだろうな…。
花村達が調べたデータによればメダリオンは負の気を爆発的に増大させる宝具らしいな。
これに基づいて考えるなら精神が不安定になったり戦場に出た場合に症状が進行する可能性が高い。
衛宮、くれぐれも気をしっかり持っておくようにな。
お前自身のためにも、俺達の安全と脱出のためにも」



初めて会った時からは考えられない気遣いを見せるルルーシュの言葉に士郎も強く頷いた。
それを見たルルーシュもやや安心したのか本来の本題を切り出した。

「予想外のアクシデントで少し話が逸れたが今から本格的な作戦会議を始めるぞ。
まずこれからの行動方針だがさしあたって目指すのはただ一つ、この会場からの脱出だ。
今キャスターに会場内の構造を調査してもらっている、その中から少しでも隙のある部分を探し出す。
そういった点を見つけ次第転送魔法でここから脱出する」
「賛成だな、殺し合いなどはやりたい者だけにやらせておけば良い。
我々がここから脱出した後残った奴らがどうなるかはわからんが…そんなことは知ったことではないな」
「ですがルルーシュ、先ほども言っていましたが残る五組のマスター達は必ず我々を排除しようとするはずです。
こちらにキャスターがいることが知れた以上そう間を置かずに攻め込んでくるでしょう」
「ああ、わかっている。奴らは何としてでも数を揃えてこちらに対抗しようとするだろう。
それに対して俺達が取るべき手段はただ一つ、専守防衛だ。
残る敵サーヴァントの正体と能力を考えればバラバラに戦っていては勝てない」

士郎が調べてきたサーヴァントのデータが載ったノートは既に全員が回し読みを済ませている。
しかしその表情はいずれも渋い、敵には評価規格外の宝具を持つ者が複数いるのだから当然だ。
これらの強力なサーヴァントに少しでも対抗するには団結をもって当たるしかないとわかってはいるのだが。
とはいえ黙っていても話は進まない、率先して士郎が切り出した。

「ヤバいのは切嗣のディケイドとDIOだよな。
超加速や時間停止なんて使われたら、いや使われただけであっさり有利を取られちまうぞ」
「ああ、私もサーチャーに平行して魔力探知も強化はしているが使われるのを止めることは流石に出来ない。
そいつらが先陣を切って能力を使ってくれば容易く攪乱されてしまう」
「しかもディケイドは透明化に狙撃なんて真似が出来てDIOは鳴上を洗脳した肉の芽があるんだろ?
どうしろってんだよ、さすがの鉄之助様でもお手上げだぜ……」

一度は盛り上がった場の空気が一気にお通夜ムード一歩手前まで落ちてしまった。
現在遠坂邸に集っているサーヴァントの戦力は確かに強大ではある。

対魔力に優れた騎士クラスが四人も揃っていて個々の戦闘力も非常に強大だ。
正面から戦えばどれほど強力な敵も打ち破れる布陣であることは疑いようもない。

が、敵にはそんな常識の通用しない次元違いの能力を持つ者が複数存在する。
アサシンやバーサーカーは強力ではあるがまだマシな部類ではある。
能力や性質、魔力消費など明確な穴が存在しているので十分対抗策を用意できる。
しかしDIOとディケイドはあまりにも強く、そして反則的だ。
時を止める異能とスタンド及び吸血鬼のパワーによる正面からの戦闘能力を併せ持つDIO。
クラス特性を明らかに無視した馬鹿げた汎用性とクロックアップなどの超加速能力を有するディケイド。
最初から対抗策など思いつかせる気がないのではとすら思えてしまう。



「……こうは考えられないか?
DIOとディケイドは最初から私達のような殺し合いに積極的でない者を刈り取るために用意された存在だったと。
クラスの枠を無視して再現された能力の数々も全ては私達へのカウンターだったんじゃないのか?」

悲痛な声で絞り出すように話すリインフォースの言葉を誰も無視は出来なかった。
もしや自分達は最初から絶対に勝てないゲームをさせられていたのではないのか?
今の今までそうと気付かなかったというだけで。





「いいや、まだだ」




だが、泰然と、当然のように否定する者がいた。
この状況でも一切表情の動かないアレックスだ。

「俺が思うに人が真に敗北するのは戦う意志を失った時だけだ。
どれほど絶望的で、困難ばかりが立ち塞がる状況であろうとも、戦う意志が残っている限りはまだ負けではない」

いつものように淡々と告げる言葉には生前の強敵への敬意が込められていた。
勿論それはこの場の誰も詳しくは知らないことだ。
それでもこの場に漂う暗い空気を払う効果はあったらしく、ルルーシュが追従する。

「アレックスの言う通りだ、泉たちは知らないだろうが死んだ一のサーヴァントは宝具を無効化する宝具を持っていた。
これはDIOとディケイドの天敵になり得る宝具だった。
どれだけ強力に見えるサーヴァントにも必ず相性の悪い者や撃破する手段は存在するということだ」
「自慢にもならないけどさ、俺なんてサーヴァントがいないのにサーヴァントと戦わなきゃならない時があったんだ。
その時も遠坂やイリヤが手を貸してくれたから戦い抜くことが出来た。
これだけ味方がいるんだ、何も方法が無いなんてことは無いはずだ」

士郎は思い出す、アルトリアが聖杯の泥に飲まれ敵に回った時の絶望的状況を。
それに比べれば今の状況は遥かに恵まれている、やりようはあると信じている。



「…そう、だな。済まない、弱気になりすぎたようだ」
「しょうがねえよ、俺だって今回ばっかりはビビッたし」

謝罪するリインフォースを鉄之助が優しく励ます。
その光景を見届けたアレックスが微かに笑みを浮かべた後、すぐ真剣味を帯びた顔に戻った。

「対DIOに関しては私に秘策がある、恐らくマスターの令呪が必要だろうがな」
「え、マジでか!?」
「ああ、簡単な話だ。ARMSの学習能力をDIOの時間停止に適用させればいい。
奴の攻撃手段は対人に特化していて貫徹力の高い技は少ない。
つまり時間停止さえ無効化し、かつ一対一なら十分な勝機があるというわけだ」

陽介のみならず、士郎や鉄之助の表情も一気に明るくなる。
こなたに至っては興奮すらした様子でアレックスの案を猛烈に支持した。

「アレックスさん、それいけるよ!
確かDIOって宿敵に時間停止を破られて負けたはずだよ」
「なるほど、我々英霊にとって死因になった伝承を再現されるのは極めて致命的。
逆に言えば敵に対してそれを行えば勝利は確実と言えましょう」
「おお、何だかいけそうな気がしてきたぜ!
…あれ?けど何でそれで俺の令呪が要るんだ?」

アレックスの表情がやや渋くなった。
まるで自分の力不足を恥じるような、そんな様子だった。

「宝具のランクの問題だ、俺の“帽子屋”はランクAであちらは評価規格外。
普通に戦って“帽子屋”が時間停止に耐性を得られる可能性は業腹だが低いと言わざるを得ない。
だがお前の令呪と、俺の意志を合一しかつ時間停止の打破に特化した命令ならば可能性は跳ね上がる」

言われて陽介は自分の左手の甲を見やる、そこには何の欠損もない三画の令呪。
これまで使う機会が巡ってこなかったこの絶対命令権を行使する時がそこまで迫っているということ。

「…正直に言えば、お前がどこかで短気を起こして無駄に令呪を使う可能性はかなり高いと思っていた。
しかし結果としてそうはならなかった、マスターの忍耐がこの機会を呼び寄せたのだ」

静かに語るアレックスはひどく穏やかな表情だった。
生前の強敵たちが宿していた人間の強さと弱さを今生のマスターに見出していた。
それを理解したというわけでもないが、陽介もまた無言で強く頷いた。



「ですが問題はあります、そう都合良く一騎討ちの状況に持ち込めるのですか?」
「だからこそのキャスターの転移魔法だ、敵の存在をキャッチした時点で最も相性の良い者を転移させる。
これ自体はバレているだろうが、それでも手札を有効活用しない手はない」

それは士郎やルルーシュらが敵に対して持つ明確なアドバンテージの一つだ。
リインフォースのサーチャー、魔力探知による索敵と併せれば戦場をある程度こちらでコントロールすることが可能。



「キャスターには最後方で俺達マスターの防衛と念話による司令塔に専心してもらいたい。
それと今から全員で地下室に移動するぞ、ここからは臨戦態勢で臨むべきだ」
「地下?それと臨戦態勢って…一体どういうことだよ?」
「そうか、切嗣の狙撃を警戒しているんだな、ルルーシュ」

納得を得た士郎の発言に「ああ」と頷き返した。
アルトリアから切嗣が狙撃銃を所持していることは既に聞いている。
どこから狙われるかわからない以上対策は打っておくべきだ。

「付け加えればアサシンやディケイドへの対策でもある。
狙撃や建物自体を狙った爆撃は邸宅に篭る俺達には最も効果的な攻撃になる。
だがそれらは地下室に潜ってしまえば無効化できる。
見たところこの家の地下室は魔術工房を兼ねているせいかかなり頑丈なようだ。
そこにキャスターの障壁を併せれば砲撃でいきなり死者が出るということはあるまい」
「はあ、なるほど…色々考えてんだなあんた。
…ってあれ?ちょっと待てよ、戦いになった時俺らはずっと引き篭ってろってこと?
援護とか何かこう…出来ることとかあるだろ」
「確かにお前や名無、衛宮の戦力はサーヴァントの援護にうってつけだが流石に今回はな。
何しろ最大十騎ものサーヴァントが入り乱れる大きな戦いになる。
そこにマスターが割って入るのは自殺行為だ、それならマスター全員で固まって後方にいた方がいい。
むしろこれは俺達マスターが敵から逃げ回る戦いになるかもしれん」

地下室への階段を降りながらルルーシュは説明を続ける。
仲間に対して懇切丁寧に作戦を説明する姿は生前からは考えられないものだ。

「転移の恩恵を受けられるのは何もサーヴァントだけじゃない。
他の敵サーヴァントをこちらで引きつけた後キャスターと俺達マスターが転移すればアサシンの暗殺も無効化できる。
そして転移先として最も有力なのが柳洞寺地下大空洞だ。
あそこは衛宮以外誰も知らなかった地図にも無い場所だからな」
「…いや、ちょっと待てルルーシュ。
切嗣は第四次聖杯戦争にアインツベルン陣営として参加していた。
もしかしたら地下大空洞のことを知ってる、かもしれない」

士郎の指摘にルルーシュがふむ、と考え込む。
聞いた話ではアインツベルンは御三家の中で聖杯を用意する役割を担っていたという。
そしてそのアインツベルンのマスターとして聖杯戦争に臨んだ衛宮切嗣なら確かに地下大空洞を知悉していてもおかしくはない。

だがあの場所が絶好の防衛拠点であることは変わらない。
何しろ入口はたった一つ、さらに洞窟の奥までは完全な一本道。
こちらが最初から奥に転移してしまえば、敵が侵入したとしても有利な条件で迎撃出来る。

「キャスター、柳洞寺のサーチャーを一基増やしてくれないか?
地下大空洞に続く道の偽装を抜けたあたりだ、万が一の待ち伏せや工作があれば早めに察知しておきたい」
「わかった、衛宮、すまないが後で場所を教えてほしい」
「ああ、わかった」

サーチャーには視覚妨害に対して弱いという欠点がある。
だがその反面気配の感知などに依らない機械的な監視故の利点も存在する。
アサシンなどが持つ気配遮断は決して完璧なものではない。
姿そのものが消えるわけではなくあくまで気配を断って身を隠すだけの技能だ。
つまりサーチャーを工夫して用いればアサシンの発見すら可能とするということ。
事実先の戦闘では気配を断って逃走を図ったサブラクをサーチャーで発見することが出来た。



アクシデントがありながらも防衛戦の準備は着々と進んでいる。
陽介が鳴上悠から託されたというデータファイルも今はガウェインが解析を進めている。
だがルルーシュの表情は優れない、対DIOの策に大きな穴が存在することに気付いているからだ。

(アレックスの情報が漏れている以上対人特化のDIOが素直にアレックスと一対一で戦うものか?
仮に上手くいったとしても速さと手数に優れるディケイドならば容易に戦いに割り込める。
DIOに勝つには一対一でディケイドを押さえ込めるサーヴァントが必要不可欠だ。
普通に考えてディケイドの能力を相殺できるオーズが適任と言えるのだが……)

当然それは切嗣らに読まれている、どころか相手はその状況こそを望んでいる節すらある。
思えばあのディケイドは仮面ライダーであるオーズに執着している様子だった。
ディケイドが破壊した仮面ライダーの力を取り込めるからなのだろうが。

(それにオーズ、火野映司はディケイドに対して非情になりきれない。
泉は令呪を温存しているが、一般人のあいつに的確な令呪使用を期待するべきじゃない。
何より相手を撃つ覚悟がある者と無い者が戦えば、結果は火を見るより明らかだ)

完全に否定するわけではないが、なるべくオーズとディケイドの一対一の対決は避けた方が良いかもしれない。
チーム全体に流れる空気は大きく改善された、だが差し迫る危機への備えが十分とは言い難い。

(最善策で満足していては奴らを上回ることは出来ないだろう。
この上は何かを捨てる覚悟で挑まなければ多くの犠牲は避けられない。
衛宮、花村、名無、泉は生者で俺だけが死人。
それにスザク、お前が最も殺し合いに乗りやすい時期を考慮すれば説得になど応じないのだろうな…。
ならばこの状況で捨て去るものは――――――)

自分の左手を見やる、そこにはただ一画となった令呪が鈍い輝きを発していた。


【深山町・遠坂邸地下室/深夜】

【衛宮士郎@Fate/stay night】
[令呪]:2画
[状態]:健康、精神汚染(極小)
[装備]:携帯電話、ICレコーダー
※紅の暴君は破却しました
※アシュナードの【負】の気を取り込んだため、魂が変質しました。
 戦いなど【負】の気が満ちる場所に身を置くと変質は更に進行します
※魂の変質を自覚しました

【セイバー(アルトリア・ペンドラゴン)@Fate/stay night】
[状態]:魔力消費(大)
[道具]:無毀なる湖光(アロンダイト)@Fate Zero
※ムーンセルに課せられていた能力制限が解除されました
※ムーンセルから得られる知識制限が解除されました

【ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア@コードギアス反逆のルルーシュ】
 [令呪]:1画
 [状態]:健康
 [装備]:携帯電話、ニューナンブ
※枢木スザクが参加していることを知りましたが説得を断念しました
※マスター達は時空を超えて集められたのではないかと考えています
※枢木スザクが自分より過去(第二次トウキョウ決戦前後?)から参戦していると考えています

【セイバー(ガウェイン)@Fate/extra】
 [状態]:魔力消費(大)
※リインフォースにある術式の改良を依頼しました

【泉こなた@らき☆すた】
 [令呪]:3画
 [状態]:健康
 [装備]:携帯電話

【ライダー(火野映司)@仮面ライダーOOO/オーズ】
[状態]:健康、新たな決意

【花村陽介@ペルソナ4】
 [令呪]:3画
[状態]:健康、強い覚悟と決意
[持ち物]:ミネラルウォーター@現実、カロリーメイト@現実・医薬品一式@現実
 大学ノート@現実・筆記用具一式@現実・電池式充電器@現実・電池@現実
 携帯電話*携帯電話には名無鉄之介の名前が登録されています
 予備の服@現実・食料@現実・スパナ@現実
※聖杯戦争のルールと仕組みを言峰神父から聞きました
(意図的に隠された情報があるかもしれません)
※ジライヤがスサノオに転生しました。
※鳴上悠からデータファイルを渡されました。
このファイルの中身を現在ガウェインが解析しています

【ランサー(アレックス)@ARMS】
 [状態]:魔力消費(中)、ARMSの進化(進行度小)
※アサシン(ヴァレンタイン)が生存していることに気付きました

【名無鉄之介@私の救世主さま】
[令呪]:2画
[状態]:健康
[持ち物]:エロ本(大量)@現実・携帯電話@現実(携帯電話には花村陽介の名前が登録されています) 予備の服@現実・鳴上悠のクレジットカード
※聖杯戦争のルールと仕組みを言峰神父から聞きました
(意図的に隠された情報があるかもしれません)

【キャスター(リインフォース)@魔法少女リリカルなのはA's】
[状態]:魔力消費(大)回復中、強い決意
※肉の芽の解除が可能です。ただし全力でやって誰にも邪魔されないのが条件です
※遠坂邸に工房を作成しました 。特別な防衛効果はありませんが土地の魔力をそのまま取り込めます
※深山町の各地にステルス性を高めたサーチャーを複数飛ばしています。主に遠坂邸、柳洞寺周辺、月海原学園、柳洞寺地下大空洞前を中心に索敵しています
※ガウェインからある術式の改良を依頼されました
※転送魔法の使用にかかる魔力消費が本来より増大しています


※今まで月海原学園で調べたサーヴァントデータの内容を全員が共有しています
アーチャー(DIO)、アサシン(ヴァレンタイン)、ライダー(門矢士)、バーサーカー(ランスロット)のデータは詳細に把握しましたが、キャスター(キンブリー)の情報はごく一部に留まっています
※円蔵山の魔力集積地に蓄積していた悪性情報(負の魔力)は完全に浄化されました
また悪性情報の浄化機能が大幅に強化されています

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