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《A》


――夢を見ていた。

――それは終わらない戦いの夢だ。

――幾多の戦士が剣を槍を手にして走って行く。

――誰も彼も血走った目をしていて、殺意を漲らせている。

――誰もが敵を求めて戦場へと踊り込んでいく。

――斬る。刺す。突く。射る。打つ。撃つ。払う。焼く。

――あらゆる武器が激しく打ち合わされ、その度に誰かが倒れる。

――炎が燃え盛り、雷が閃き、風が荒れ狂い、光が降り注ぎ、闇が押し寄せる。

――魔術なのだろうか。色とりどりの現象があちらこちらで炸裂し、ヒトをボロ屑のように加工していく。

――中には、武器を持たない者もいた。

――膝をつき、頭を垂れ、必死に命だけは、と嘆願している。
――そいつ らの前に、剣が放られた。生きたければ戦えと、誰かが言った。 

――そいつらは、拒んだ。差し出された剣を取らず、ただただ命だけはと繰り返。

――頭上から、剣が落ちる。断ち割られた頭蓋からは血と脳漿が撒き散らされた。

――それを見た他のやつらは怯え惑い、散り散りに逃げ出した。

――また、誰かが言った。



         踏み潰せ。



――鬨の声がした。血に飢えた獣たちは嬉々として武器を持たない人々に襲いかかった。

――血飛沫が舞う。瞬く間に視界は地獄と化した。

――傍らに、何か巨大なものが降りてくる。



         楽しいだろう?



――巨大なものに乗った誰かに問われた。

――ああ。



         楽しいな。



――俺は、笑ってそう答えた。

――そいつもまた、笑った。



――……ぞ…………楽し……――



――最後の言葉は、聞こえなかった――




《B》


夢を、見ていた。

でも夢から醒めた瞬間、どんな夢を見ていたのか忘れてしまった。
こんな状況でも夢を見る。 
それだけ深い眠りに落ちていた、疲労していたということだ。 

「気が付きましたか、シロウ」

傍らにはセイバーが――衛宮士郎の剣であるアルトリア・ペンドラゴンがいた。
それだけでひどく安心できた。 
夢を見ていたことなど綺麗さっぱり忘れるくらいに。 

「セイバー、ここは一体――」
「シロウ、まだ起き上がらない方 がいい。ここはリンの屋敷です」 

飛び起きようとした士郎を制して、セイバーはこれまでの経緯を順番に説明した。
切嗣との戦いで昏倒した士郎が知らない、新たな仲間と敵のこと――そして、その間に死んだ者たちのこと。 
「――そうか、天海が俺たちを騙してたってことは、泉も気付いていたか」 
「ええ。おかげで諍いなく彼らの助力を得ることが出来ました。目下、我々はこの聖杯戦争における最大戦力と言って差し支えないでしょう」 

衛宮とセイバー、ルルーシュとセイバー、こなたとライダー、花村とランサー、名無とキャスター。
総勢十人もの戦力が志を同じくして集っている。 
強力なサーヴァントであるバーサーカー・ランスロットの襲撃すら、損害なく撥ね退けるほどに。 
「シロウ、その、シンジのことは――」 
「――ああ。遠坂だけじゃなくあいつもいたなんてな。なんか実感が沸かないよ。あいつが生きてて、でもまた死んだなんて」 
「辛いでしょうが、気を強く持ってください。戦いは まだ終わってはいない」 
「うん、わかってる。それより、イリヤを殺したランサーのマスター――鳴上悠だっけ?そいつとその花村ってやつは友達だったんだろ?そっちこそ大丈夫なのか?」 
「――ええ、彼にはランサーがついています。それに何というか――キャスターのマスターですが。彼のおかげで救われているところもありますね」 
「そっか。セイバー、じいさん――いや切嗣は?」 
「健在です。今もこちらを攻撃する隙を伺っていると見て間違いないでしょう」 
「そう、か。じゃあ俺も、覚悟を決めないとな――」 

士郎は一度固く目を閉じる。
切嗣との戦いは決して避けられない。 

「よし、じゃあ俺も寝てる場合じゃないな。みんなに挨拶しとかないと。それにセイバーも腹が減ってるだろ?なにか作ってやるよ」

士郎はベッドから立ち上がり、しっかりした足取りで部屋から出て行く。
魔力が供給されるようになっても、食欲が減退する訳ではない。セイバーは微笑んで士郎の後を追った。 




《C》



――時は、遡る。



衛宮士郎が衛宮切嗣と対峙する数時間前。
柳洞寺から遙か東の地にて、一つの戦いが終結した。 

勝ち抜いた者は、因果を司る少女と吸血鬼の帝王。
命を拾った者は、街を治める男と大国を統べる大 統領。 
散ったのは、絆に翻弄された少年とケルトの大英雄、大陸に乱を巻き起こした覇王と狂王。 

本来、この戦いは衛宮士郎には何の関係もないものだった。
命を落とした敗者である鳴上悠とクー・フーリンには浅からぬ縁があれど、その死が直接士郎に影響を与えることはなかった。 
覇王ゼフィールと狂王アシュナードにいたっては存在すらも知らない。 
後から仲間に話を聞いて、そんなやつがいたのかと戦慄する――その程度の関係だったはずだ。 

だが、士郎は紅の暴君を投影して柳洞寺に突き立て、魔力を吸い上げた。


SE.RA.PH内で死んだマスターやサーヴァントはムーンセルによって解体され、その魔力はSE.RA.PHを運営するリソースへと回される。
通常の聖杯戦争のおよそ七倍 の数のサーヴァントが参加しているため、SE.RA.PHを稼働させるリソースは常に逼迫している。 
魔術師やサーヴァントが放出する魔力を循環・再利用させてこのSE.RA.PHは成り立っている。 

未明には、天野雪輝とタマモ 我妻由乃とジョン・ドゥが死んだ。
黎明には、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンと本多忠勝、遠坂凛、近藤剣司とセリス・シェール、金城優とアストレア、アシュヒト・リヒターとテレサが死んだ。 
朝には、間桐雁夜とトキ、園 崎詩音と美樹さやかが死んだ。 
昼には、金田一一と太公望、蘇妲己、佐々木小次郎が死んだ。 
午前には、間桐慎二とラオウが死んだ。 
日中には、鳴上悠とクー・フーリン、ゼフィールとアシュナードが死んだ。 
アサシン、ファニー・ヴァレンタインが生み出した異世界の自分も何度か殺害されたが、それらもまた分解されてSE.RA.PHに取り込まれた。 

彼らを構成していた魔力はSE.RA.PHの空気に溶け、同化し、冬木市を巡る霊脈に乗って循環する。
つまり、士郎が投影・紅の暴君で吸い上げた魔力には、死亡したマスターとサーヴァントらの残滓が含まれている。 
分解されたその残滓に生前の彼らの意思はない。 
ただの資源以上でも以下でもない、純粋な魔力―― 









― ―ふしゅうぅぅぅうううう………………――







――では、なかった。

ランサー、狂王アシュナードは、クー・フーリンのゲイ・ボルクによって貫かれた瞬間、所有する最後の宝具を開放していた。
すなわち、エルランのメダリオン――邪神の魂を封じたとされる、アシュナードの切り札。 
真名を開放すれば狂化と対魔力スキルを得て、さらに一度だけ傷を癒す効果を持つ。 
アシュナードはこの宝具を持って窮地を脱しようとしたが、爆発的に増大した魔力負荷はマスターを失ったアシュナードには致命的だった。 
ゼフィールから魔力を供給されていれば、もう少しは存在を保てただろう。 
だがサーヴァントであるアシュナードと違い、 ゼフィールは大陸でも屈指の武人であれどただの人間。 
心臓を貫かれ、命を永らえることは出来なかった。 
アシュナードの傷は癒やされたが、逆に魔力が枯渇した。 
迫り来る死を何秒か先延ばしにしただけで、結末は変えられなかった。 
――だが、残るものはあった。 


刹那の時間とはいえ、アシュナードは確かにメダリオンを開放していたのだから。


エルランのメダリオンは、開放すれば持ち主の【負】の気――すなわち悪性に満ちた魔力を暴走させる。
戦闘能力の向上と引き換えに理性を失くす諸刃の剣である。 
アシュナードだけは例外的に理性を保ったままメダリオンを開放することができたが―― 
データに還ったアシュナードだが、彼の魔力は全て【負】の気に反転してい た。 
とはいえそれもいずれはムーンセルにより浄化され、無色の魔力として落ち着いていただろう。 


しかし。
繰り返す。 
衛宮士郎は、【紅の暴君を投影して柳洞寺に突き立て、魔力を吸い上げた】。 



紅の暴君とは、強大な存在を封じ込めるために創生されたサモナイト石の剣。
本来は適格者と呼ばれる存在にしか扱えない、呪われた魔剣である。 
イスラ・レヴィノスは適格者であり、この聖杯戦争ではただ一人紅の暴君を完全に使いこなせる存在だったといえる。 
とはいえ士郎が投影した紅の暴君は所詮贋作であり、イスラが所持していた紅の暴君のように内部に巨大な意志は宿っていなかった。 

だが――魔力を吸い上げる力は再現されていた。
狂王アシュナードが撒 き散らした【負】の気に満ちた魔力を、存分にその刀身に【封印】してしまったのだ。 

ただ単に【負】の気を浴びる――という程度なら、どうということはなかっただろう。
強い意志の持ち主ならば意 にも介さない程度のものだ。 
だが、士郎は投影した魔剣を通してその魔力を体内に取り込んだ。 
それは量にすれば魔術回路の一端に僅かに引っかかっただけの、微量なもの。 
プールの水に垂らされた一滴の泥は、傍目からは何も変わりなく見える。 
しかし――この泥は、極小といえども確かにアシュナードの残滓。 
もし士郎が【負】の気満ちる戦いの中で精神を弱めれば、瞬く間に泥は増殖して宿主を呑み込むだろう。 




それはイスラ・レヴィノスとアシュナード、二人の反英雄が遺した最後の悪意。
聖杯に呪いあれ。 
絶命の際に置いて願う末期の夢。 


闘争を【負】の気が満ちる場所とすれば、平穏は【正】の気が治める場所であるといえる。
平穏の中にいる今でこそ士 郎の中に芽吹いた種は大人しくしているが、いざ闘争を迎えればどうなるか。 
その答えを――士郎はまだ、知らずにいた。 













――良いぞ。実に良い――



――さあ、貴様も地獄を楽しむがいい――















【深山町・遠坂邸/夜】


【衛宮士郎@Fate/stay night】
[令呪]:2画 
[状態]:疲労(中)、魔術回路への負荷(小)、精神汚染(極小) 
[装備]:携帯電話、ICレコーダー 
※紅の暴君の投影に成功しました。 
 柳洞寺から魔力を汲み出すことが出来ますが、伐剣覚醒を始めとした魔剣の力による恩恵は一切受けられません 
 また、破壊されたり破却した場合は再度投影し、土地に剣を突き立てる必要があります 
※アシュナードの【負】の気を取り込んだため、魂が変質しました。 
 戦いなど【負】の気が満ちる場所に身を置くと変質は更に進行します。 

【セイバー(アルトリア・ペンドラゴン)@Fate/stay night】
[状態]:魔力消費(大) 
[道具]:紅の暴君(投影)@サモンナイト3 、無毀なる湖光(アロンダイト)@Fate Zero 
※ムーンセルに課せられていた能力制限が解除されました 
※ムーンセルから得られる知識制限が解除されました 
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