「……何、で?」
「………」

呆然とした少女、泉こなたの呟きが漏れる。
横に立つライダーのサーヴァント、火野映司の表情は苦渋の色合いが強い。
それほどまでに、彼らの眼前に突き出された真実は無情で残酷だった。



図書館でサーヴァントのデータを一通り調べ、これから遠坂邸に向かおうとした矢先。
行く前に映司の提案でもう一度脱落者の名前が書かれた掲示板に目を通した。
そこには、二人にとって最も載っていてはいけない名前が新しく載っていた。

天海陸。つい先ほどお互いの無事を祈って衛宮士郎の援護に向かったこなたと同じ一般人。
勇気を振り絞って鉄火場に赴いた彼はもういないのだと、無機質な掲示板だけが雄弁に語っていた。

「…どうして?だって、だって柳洞寺には士郎君がいるのに…」
「…すまないこなたちゃん、今から俺が言うことを落ち着いて聞いてくれないか?」

苦悶の表情はそのままに、こなたの肩に手を置いた映司が意を決して語りかける。

「今陸君と一緒に出たこの蘇妲己というのが柳洞寺にいたキャスターだと思う。
つまりキャスター自身は確実に倒されたはずなんだ。そして士郎くん達はまだ生きている。
名前が出た順番から言ってキャスターが倒された後で陸くんとセイバーがやられた事は間違いない。
だとしたら、陸くんたちを殺したのは―――」
「士郎君…ってこと?」

震えた声のこなたの問いに映司は沈黙した。
それこそがこれ以上なく明確な答えだった。

「で、でも何で?だって士郎君達はみんなのためにキャスターを倒しに行ったんだよ?
あ、もしかしてキャスターに操られたとか?確かキャスターは人を操る力があるって―――」
「…こなたちゃん、俺はその可能性は低いと思う。
セイバーさんは元より士郎くんは魔術師なんだ。
キャスターのやり口が分かった上で引っかかるとは考えにくい。
考えたくはないけど陸くん達を殺したのが彼らだとしたら、それは自分の意思でやった事だと思う」

やや俯きながら話す映司は、まだ尚も迷っている風だった。
この推論を今のこなたに話して良いのか、少しの沈黙の後迷いを振り切って続きを話すことにした。

「結論から先に言うよ、こなたちゃん。
推測だけど、陸くんとセイバーは俺達を騙していた、多分凛ちゃんを殺したのもあの二人だ。
柳洞寺に行ったのもキャスターと士郎くんの口を封じるためだったのかもしれない」
「ちょ、ちょっと待ってよ映司さん。全然意味わかんないよ!
だって映司さんも見てたでしょ!?操られてたNPCの人とか、りっくんがルルーシュ君の魔術で色々喋らされてたとことか!
それなのにどうやったら私達に嘘なんてつけるの!?」

信じられない、という表情で訴えるこなたの言葉にも映司の顔色は変わらない。
それでも視線はこなたから逸らすことなく、話を続けた。

「さっきのネットカフェで俺が言ったことを覚えてるかい?
陸くんのセイバーはキャスターに近い性質を持ってるっていう話だ。
今にして思えば、彼なら事前に魔術への対策が打てても全くおかしくない。
ルルーシュくんの魔術がどんなに強力だったとしても、サーヴァントが対策すれば防げないはずはないんだ。
もしそうだとすれば、陸くんが魔術をかけられたから何も嘘はつけないっていう大前提は崩れることになる」
「それは…で、でも何で!?何でいきなりりっくんとセイバーさんを悪く言うの!?」
「陸くんの隣に出た名前を見てくれ、イスラ・レヴィノスという名前があるだろう?
俺達サーヴァントにはムーンセルから一定の知識が与えられている。
だからこのイスラという人物の正体や略歴も簡単にだけどわかるんだ。
不死の呪いを解くために、あらゆる組織に接触して、嘘をつき続けて裏切りを重ねたいわゆる反英雄なんだ」



衝撃の事実に絶句しながらも、こなたは何とか冷静に考えようとする。
聖杯にかける願いを持たない自分には同じ願いを持たない映司がサーヴァントとして与えられた。
そして陸のセイバー、イスラ・レヴィノスはあの誠実な人柄からは考えにくいがいわゆる嘘つきであるらしい。
マスターとサーヴァントは相性の良い者同士が選ばれる、と仮定すると陸も―――

「じゃあ…じゃあ全部嘘だったってこと?」
「…もちろん生前が反英雄だったからといってサーヴァントとしても悪人だなんて決めつける気はないよ。
でも、そう考えないと士郎くんとセイバーさんが陸くんたちと殺し合う理由がない。
騙し討ちをしようとして失敗したのか、それ以外の何かがあったのか。
とにかく、陸くんたちの嘘がバレて怒った士郎くんとセイバーさんに殺された可能性が高い」

映司がここまで陸とイスラが嘘をついていると断じるのは、この他にもいくつか根拠あってのことだ。

実は映司は先ほどルルーシュらと初対面の際、イスラに対してごく僅かな違和感を抱いていた。
最初にキャスターに襲われた時の負傷の治癒に加え、こなたに対して行なった治療。
これらを自身の貯蔵魔力だけで賄おうとすれば相当な消耗を強いられるはずである。

ところが先ほどオーズに変身した際に感じたイスラの魔力は、枯渇するどころか充実しているようにすら感じられた。
元々貯蔵魔力に優れたサーヴァントだとしても、マスターが一般人ならそう余力が残るとは考えにくい。
そもそもそこまで魔力量に優れているのなら自らを最弱などと言い切るものだろうか?
そして自前の魔力でないとすれば、一体どこから魔力を調達してきたのか?

凛が殺害されて以降、陸とイスラは常にこなたや映司と行動を共にしてきた。
NPCから魔力を調達するような様子も時間的余裕もなかったはずだ。



キャスターに襲撃された時、映司が陸を救出するために喫茶店を離れていた間を除けば、だが。



とはいえその時点での映司はまだ陸とイスラをほぼ全面的に信用していた。
なので状況が落ち着いてからこの疑問について個人的にイスラと話そうと思っていた。
結果的にはその前に陸とイスラの方が死んでしまったが。



それだけではない、最初に喫茶店で自分達を襲撃してきたサーヴァントの正体。
遠坂凛のサーヴァントの特徴に衛宮切嗣とキャスター、蘇妲己の内通の真偽。
これらのほとんど全てが陸かイスラの言質によって真実として認識されていたものだ。



だがもし彼らの証言そのものが疑わしいとなれば―――?



映司個人の感情だけで言えばまだ陸とイスラを信じたい。
しかし彼らはもう映司やこなたの手の届かないところへ行ってしまった。
それならばせめて士郎やセイバーに会って真実を確かめたい。
仮に彼らが凶行に走っていたのだとしても、その理由だけでも知りたいとは思う。
だが―――



「こなたちゃん、ここは一度凛ちゃんの家に向かおう。
俺達も色々なことがあって気が動転してる、まずは落ち着ける場所に行かないと」
「映司さん、それは……」

映司が口にしたのは本心とは真逆の提案だった。
こなたから見ても映司の顔にはありありと苦々しさが滲み出ている。
彼が何を思ってこんな事を言うのか、それがわかるからこそこなたには反論することが出来ない。



こなたと映司には士郎とセイバーに対して負い目がある。
ルルーシュが陸に対してギアスを使った際、こなたは陸を庇う発言をした。
そして自分達は凛が死んだ後もずっと陸やイスラと行動を共にし、彼らの言動を全面的に支持してきた。

もし陸とイスラが凛を殺し、それが士郎とセイバーにバレて彼らが殺されたのだとすれば。
知り合いを殺された立場である士郎とセイバーは果たして冷静でいられるだろうか?
状況から言って、こなたと映司も共犯と見倣されている可能性は否定できないのではないか?



今士郎とセイバーに会って、果たして彼らは冷静に話し合ってくれるのか?
仮に問答無用で襲いかかられた場合、彼らと本気で戦えるのか?
そして何よりも―――そんな状況に陥った時、こなたを守りきれるのか?

映司が何より恐れているのはこなたを守れないことだ。
端的に言って、映司がセイバーに負けないよう戦うだけなら問題ない。
だが士郎は別だ、彼がその気になればこなたなど簡単に殺されてしまうだろう。
最初に襲ってきたアサシンのマスターの攻撃からも、こなたを完全に守ることは出来なかったのだ、楽観など出来ない。



普段の映司ならここまで消極的な、保守的な提案は決してしなかっただろう。
しかしここまでの道中での出来事が映司の自信を大きく削ぎ落としていた。

最初のアサシン、トキに対しての苦戦。向こうが正々堂々と戦ってくれるなどの好条件が無ければストレート負けを喫していた。
次のキャスター―――今となっては陸とイスラによる自作自演の可能性が浮上したが―――の襲撃。
その際に軽はずみな行動を取ってしまった事で凛を死なせてしまった事実は映司に大きな影を落としている。
そして先ほどのディケイドとの思いがけない再会と戦闘。
ディケイドのマスターである衛宮切嗣の策にまんまと嵌ってしまい、士郎やルルーシュの仲間を守れなかった。



自分はこの戦いで、何一つとして守れてなどいないのではないか―――?
今の映司は本気でそう考えるほどに弱気になっていた。
多少知識面でのアドバンテージがあるとはいえ庇護対象でしかないこなたがそんな映司にかける言葉は見つからなかった。
重い、重い沈黙の中、二人は会話もなくルルーシュ達が乗ってきた乗用車で遠坂邸を目指した。









まるで物語に出てくるような幽霊屋敷。
それが遠坂邸に着いてすぐに花村陽介が思い浮かべた率直な感想である。

「いやー…何つうか、色々予想以上だな。
ってか、これから拠点にするんだよな、ここ?
何か雰囲気が怖ええし、ツタとか張ってるんですけど!?」
「おいおい何ビビってんだよ花村?
デカいのは良い事じゃん、さっさと入ろうぜ」

現実では滅多とお目にかかれない屋敷の威容に若干尻込みする陽介を尻目に鉄之助が真っ先に門を潜ろうとする。
ほとんど修学旅行に来た学生のテンションと変わらない。


「待て、マスター!」


が、能天気に中に入ろうとする鉄之助をリインフォースが制止した。
彼女は一行の前に出ると何故か警戒した様子で魔力探知を始めた。

「え、いきなりどったのリインちゃん?」
「…やはり間違いない、この屋敷には魔力の残滓がある。
それもここまで強烈な残り香、恐らくキャスターがここを根城にしていたんだろう」
「ちょっ、それヤバいだろ!?」
「いや、どうもここは既に破棄された後のようだしサーヴァントの気配もない。
ただ何らかのトラップが残っている可能性は捨てきれない。
私が先行しよう、アレックスはマスター達を頼む」
「了解した」






結論から言って、屋敷と周辺に罠らしきものは存在しなかった。
陽介らを先導しつつサーチャーを飛ばして索敵したが、拍子抜けするような結果だった。
一応リインフォースが引き続きサーチャーで調査を行いつつ、一行は広い居間のような場所で休息することになった。


「いやあ…やっと一息つけたって感じだよな。
教会出てからこっちずっと移動したり戦ったりだったから、どっと疲れが来たわ」
「まあ、振り返って考えればかなりの強行軍だったのは事実だろうな。
そう思えば傷を負うことなく拠点を得られたのは大きな収穫だ。
いつまた敵の襲撃が無いとも限らん、今のうちに身体を休めておけマスター」

ソファーにもたれた陽介をぶっきらぼうに労りつつもアレックス自身はある作業を行なっている。
ホームセンターで購入した大量のカメラを屋敷のあちこちに設置しているのである。
人外の力を持つサーヴァント相手に民生品のカメラがどこまで通じるかは怪しいが無駄ではないと信じる他ない。
それに現状索敵を一手に引き受けているリインフォースの負担を少しでも抑えなければならない。
自分達のチームの戦略部分の柱は彼女が担っているも同然なのだから。

「なあアレックス、もっとこう…攻撃的なトラップとか置いた方が良いんじゃねえか?
そりゃサーヴァントには無意味でもマスター相手ならちっとは役に立つかもしれねえじゃんか。
カメラばっかりじゃいざって時ヤバいんじゃねえか?
「では聞こうマスター、お前やお前の友人ならトラップの仕掛けられた屋敷をどう攻略する?」
「え?そりゃ生身で行くのがキツいならペルソナ使って…あ、そういうこと」
「そういうことだ、常人ならいざ知らず異能の力を持つマスター相手に攻撃的な罠など仕掛けても効果は期待できん。
せめて軍事兵器を購入できれば話は別だったのだがな、ホームセンターで手に入るような物品では話にならん。
ならば少しでも監視の目を増やし、有事の際に正確な情報で全員が即応できる体制を整えるべきだ」

幸いにも陽介や鉄之助は戦闘力のあるマスターだ、危機的状況への対応力も悪くないものがある。
それならチャチなトラップに過度の期待を寄せるよりチーム全体の動きを良くする方向性で行くべき。
これがアレックスとリインフォースが話し合いの末に出した結論であった。



「お前というやつは!毎度毎度!一体何をやっているんだ!!!」

二階から突然リインフォースの声らしき怒号が響いてきた。
そして直後にバインドで簀巻きにされた鉄之助が転がってきた。
バインドの魔力光から女性用の下着がはみ出しているあたり何をしていたか丸わかりである。

「名無エ……」
「…毎度のことながらブレない男だ、マスターもあの能天気さをほんの少しは見習っても良いのではないか?」
「…うん、時々あいつが羨ましいと思う時はあるよ。
でもあいつにだけは絶対なりたくねえ……」

ある意味驚異的なバイタリティを持つ鉄之助に呆れる陽介とアレックス。
そんな二人に気付いているのかいないのか、鉄之助が縛られたままモゾモゾと近づいてきた。


「なあなあ、腹減ったし何か出前でも頼もうぜ。
折角のカードなんだしさ、高級寿司でもどうよ?」
「…お前、さっきレストランで散々食いまくった記憶をどこに置いてきたんだよ。
でもまあ、実際色々あって疲れたし腹も減ったもんな。腹が減っては戦はできぬって言うし。
よし、じゃあ俺は大トロ予約な!一度で良いから思いっきり食ってみたかったんだよな!」
「それならいっそ思いきって大トロ五十貫とかどうよ?」
「食えねえよ!?脂っこいネタばっかりそんなに入らねえからな!?
お前はもうちょいバランス考えろよ、バランスを!
あ、玉子も頼んどくか。寿司屋の実力は玉子でわかるってどっかで聞いた気がするし」

会話しつつ、注文するネタを律儀に大学ノートにメモしていく。
こうした気配りや手回しの良さにかけては陽介はかなりのものだ。
もっとも、それが行き過ぎてかえって空回りすることも多いのだが。


「それは良いがマスター、店の電話番号もわからないのにどうやって注文する気だ?」
「いや、携帯サイトでちょっと調べたら普通に出てきたぜ?
…あれ?ってことはこの世界でもインターネットはあるってことだよな?
バーチャル世界でネット使うってのも考えてみりゃ変な話だよな」
「そのあたりは深く考えても仕方あるまい、ムーンセルはよほど我々に文明的な殺し合いをさせたいのだろうよ。
しかしインターネットか、どうにかこれを戦略に組み込む方法はないか…?」


アレックスの何気ない一言に陽介もしばし手を止め考え込む。
例えばパソコンを使って人探しのようなサイトを立ち上げるとする。
そうすれば先ほどの明らかに時代錯誤な風体のマスターのように目立つマスターを探す手掛かりにならないだろうか?

(でもよく考えたらネットの情報ってアテにならないことも多いしなあ…。
大体それをやるんなら業者呼んでパソコン設置してもらわなきゃだし、どんだけ時間かかるんだよ。
…やっぱ時間的にキツいか、ちんたらしてたらどんどん殺し合いが進んじまう)


嘆息しつつ、内心で浮かび上がったアイデアを却下した。
時間、これが今陽介らを焦らせる大きな要因になっている。
実際のところ、民間で売られている製品でも攻撃的なトラップを作ることは可能だ。
先ほど学園で例に挙げた某映画などはまさにその代表例なのだから。


しかしそれにはどうしてもある程度の時間が必要になる。
殺し合いが始まってから半日強で多くの参加者が脱落したという事実が鉄之助以外の全員に大なり小なり焦りを齎している。
それ故に即物的な効果を見出しにくい方策を取ることに躊躇を覚えているのだ。
一応トラップに関してはカメラの他に呼び子を設置するなどもしてはいるが。





「あー食った食った。もう一生分くらいの寿司を食った気がするわ」
「だよなー、マジクレジットカード様々だわ。
エロ本も沢山買えるし、俺聖杯戦争に参加して良かったかも」
「お前ってやつはとことん本能だけで生きてるのな……」

数時間後、注文した寿司を食べ尽くした陽介と鉄之助はやや気怠げに感想を漏らした。
調子に乗って特上寿司三人前に加えて単品で注文したウニ、大トロなどもあって相当な量が運ばれてきた。
だが食べ盛りの男子学生の食欲はそんな障害などものともせずあっという間に全て平らげた。


と、そこにずっと二階にいたリインフォースが降りてきた。
何やら緊張した面持ちである。何かを感じたアレックスが「敵が来たか?」と尋ねると難しい表情で答えた。

「…敵かどうかはまだわからない、サーチャーで見た限り車でこちらに近づいてきている。
方向が一致しているだけかとも思ったが、明らかにここを目指しているマスターとサーヴァントがいる」

その言葉に鉄之助でさえ表情が真剣、いや緊張感を帯びたものになる。
当然だ、陽介と鉄之助はここまでお互い以外に出会った全ての参加者から問答無用で攻撃されているのだから。
今までは何とか生き残ってこれたが今度はどうなるかわからない。

だがもし交渉の、仲間になってくれる余地のある人間ならば。
二組だけで行動する事に限界を感じつつある陽介らにとってはこの上ない希望にもなり得る。
そんな期待と不安の入り交じった空気を察したのか察していないのか、鉄之助がニッと笑ってみせた。

「花村も旦那もリインちゃんも、なーに固くなっちゃってんだよ。
仮にゲームに乗ってるような奴なら一回ぶちのめして頭冷やさせりゃいいじゃんか。
今までだって何とかなってきたんだしさ、もっと気楽に行こうぜ気楽に!」
「どさくさに紛れて肩に腕を回すな馬鹿者!お前はもっと緊張感を持て!」


こんな時でも変わらない鉄之助のマイペースさだが、この場に流れる緊張した空気を取り払うには十分だった。
陽介がパンと両手で頬を叩き、気合いを入れ直した。


「うっし、行こうぜ!相手がどんな奴にしろ、信じなきゃ始まんねえもんな」

その言葉に全員が頷き、臨戦態勢を取りつつ外に出る。
こちらに近づいてくる乗用車はもうすぐそばまで来ていた。






「子供……か?」

全員で車に近づき、車から降りてきた二人の男女を見たリインフォースの第一声がそれだった。
マスターらしき少女はどう見ても小学生にしか見えない。しかし鉄槌の騎士のような例もあるので油断はしないが。
陽介と鉄之助もあまりの意外さに目を丸くしており、唯一アレックスだけが戸惑う様子を見せていない。


「待ってください!俺達は殺し合いには乗っていない!
こんな状況だし信じてもらえないかもしれないけど、せめて話だけでも聞いてくれませんか!?」


サーヴァントと思しき青年が少女を庇うように前に出て声を張り上げる。
少女の風貌に呆気にとられていた陽介らも待ち望んでいた言葉を聞いて我に返った。

「…え?あ、ああ、俺らもこんな殺し合いには乗ってないっす!
ええと、もし良かったら中に入って話を…」
「泉!無事か!?」
「えっ!?」

突然横合いから声とともに現れた新たな人物にその場の全員が振り向く。
白を基調とした仰々しい服装の端正な顔の青年に、同じく純白の鎧を纏ったいかにもな騎士のサーヴァントだった。

「うわっ、イケメンが出やがっ……うおお!?何だこのステータス!?」
「何という威圧感だ……!」

マスターに与えられた透視能力で見えた能力値は何と全てがランクEX。
自然と陽介らの警戒は新たに現れた青年と騎士に向けられる。

「ルルーシュ君!?」

泉と呼ばれた少女が驚きの声を発する。どうやらこの二人は知り合いらしい。
ステータスが読み取れない少女のサーヴァントと相まって、アレックスとリインフォースの警戒は一段と高まる。
そんな従者のピリピリとした空気を真っ先に感じ取った陽介が半ば強引に話を切り出した。

「と、とにかくさ。ここにいるみんなやる気は無いってことで良いんだよな?
だったらここで立ち話ってのも何だし、自己紹介とかは家ん中に入ってからにしようぜ、な?」



陽介の必死な様子が伝わったのか、少女と青年らも多少警戒しつつも無言で頷いた。
恐らく事を構えるような事態になっても二組なら切り抜けられるという考えあってのことだろう。
しかしそれでも構わない、陽介や鉄之助は本当に仕掛ける気は全くないのだから。
ホッとするのはまだ早いのだろうが、ようやく出会えた比較的友好的な参加者に一筋の希望が見えた気がした。











居間に案内されたこなたとルルーシュが最初に見たのは空になった寿司桶だった。
それらを大慌てで片付ける陽介と鉄之助にやや脱力しつつもややあって全員で自己紹介と情報交換を行う流れになった。



「…………」
「……りっくん」


居間に沈鬱な空気が流れる。とりわけ陽介とこなたが発するその空気は一際重い。
その場にいる全員、鉄之助でさえ言葉を紡ぐことが出来ずにいる。


各々の自己紹介とサーヴァントの簡単な紹介(真名は除く)を終えた後、まずこなたと映司が彼らの視点でこれまでの出来事を語った。
最初に出会ったマスターとサーヴァント・アサシンに襲撃された事。
この遠坂邸の本来の主である遠坂凛にその場を助けられた事。
その後すぐに天海陸とセイバーが現れ三組で行動を共にした事。
レストランで敵の襲撃を受け、凛が死亡した事。
その後は陸らと行動し、ルルーシュとアルトリアに発見され、陸がギアスによる尋問を受けた事。

尚、この時隠しきれないと判断したルルーシュがギアスについて説明し、一時場が騒然となった。
特にアレックスとリインフォースからはかなり強い疑惑の目を向けられることになった。
何故なら士郎や一に自発的にギアスの存在を明かした時とは状況が異なるからだ。
こなたは最初にルルーシュに会った時にギアスを使うところを目にした。
つまり今回の場合必要に迫られてギアスについて説明せざるを得なくなったということ。
これでは自発的にギアスについて話したことを誠意の証であるとは言えないのだ。
一応映司や陽介がアレックスとリインフォースを宥めてその場は丸く収まったが。
閑話休題。

そして衛宮切嗣と仮面ライダーディケイドの襲撃を受けたこと。
それから学園で調べ物を終えてここに向かって来た、というところまで話した。
だが、こなたが図書室でもらったコピー用紙に記した脱落者の一覧を見せた時、顔色を変えた人物がいた。






「おい…こなたちゃん、これ何かの間違いだろ……?
あいつが、悠が、死んじまう、わけが……」


信じ難いという表情で縋るように問いかける陽介に、こなたは沈黙で返す事しかできない。
その様子には真実味しかなく、陽介は嗚咽を漏らしながら俯いてしまった。

「この並び、どうやら死亡した順になっているようだな。
我々はアシュナードと鳴上悠のランサー、双方と新都方面で交戦した。
そして奴らは間違ってもそう簡単に落ちるほど軟弱な敵ではない。
にも関わらずほとんど同時としか思えないタイミングで両方死んだという事は…」
「私達が新都から離れた後にこの二組が戦い、結果相討ちになった、と…?」
「その可能性が高いだろうな……。
アシュナードは恐るべき強敵だがあのランサーの正体はクー・フーリンだ。
それほどの英霊が相討ち覚悟で戦えば十分有り得る結果だ」

主人に代わってアレックスとリインフォースの二人が状況を分析する。
クー・フーリンに殺されかけたルルーシュとガウェインもやや複雑な心境でそれを聞いていた。

(俺達の置かれた状況を思えば喜ぶべきなのだろうが…花村の手前そんな事は口に出せんな。
それに俺でいえばスザクに死なれたようなものだからな)


衛宮士郎はこれを吉報と取るか知人の仇を討てなかったと嘆くだろうか、それはわからない。
いずれにせよ時間が惜しい、陽介は今は放っておくしかないだろう。


「補足も兼ねて次は俺が話そう。泉、お前には辛い話になるだろうが…」


次に話し始めたのはルルーシュだった。
最初に学園で調べ物をしてから衛宮邸で士郎と出会い、行動を共にした事。
その後すぐに柳洞寺にいた金田一と太公望から同盟を持ちかけられチームを組んだ事。
ランサーとそのマスター、鳴上悠とクー・フーリンに士郎の知人が殺され、一時は自分達も全滅寸前まで追い込まれた事。
この時ランサー相手に効果の無いギアスを使ってしまった事と太公望が太極図を使わざるを得ない状況になってしまったのが悔やまれる。
今にして思えば衛宮切嗣は何らかの方法であの戦闘を監視した上で太公望を排除する策を立てたのだろう。

それから柳洞寺に蘇妲己を迎え入れ、こなたと陸の捜索に向かった。
切嗣の襲撃までの出来事に関しては既にこなたと映司が語ったので割愛した。
問題はその後、アルトリアとの電話で得た情報。即ち天海陸の正体と真意である。

曰く、キャスター・蘇妲己は真実遠坂凛のサーヴァントであり何故か最期は士郎達に協力する素振りを見せた。
数々の状況証拠と太公望が遺したというレコーダーから陸を怪しみ、一計を案じて正体を看破した。

ちなみにレコーダーには脱出に繋がる考察もあったらしいがルルーシュは敢えてそれを聞かなかった。
魔術師でありながら機械や兵器の扱いに長けた衛宮切嗣を警戒してのことだ。
もし万が一電話を盗聴され、脱出の情報をあの男が手に入れてしまえばどんな行動に出るかわかったものではない。
こちらが思いもしない手で殺し合いからの脱出を阻まれる可能性は極力減らすべきだ。
そのあたりは士郎らと合流してから直接聞くつもりでいる。
閑話休題。

陸の正体にこなたも最初は信じられないと言わんばかりの態度だったが、ある情報が決め手になった。
レストランに現れたマスターらしき怪人と正体を現した天海陸の変身した姿の外見情報が一致したのである。
この情報とアルトリアが話した反魔の水晶なるアイテムの存在によって陸とイスラの自作自演は決定的となった。


「俺があの時…陸くんを取り押さえることが出来ていれば……」

意気消沈してしまったこなたに加え、映司までもが悔しげに俯いてしまった。
情報交換の場で何故こうも精神的にボロボロになる人間が続出するのか。
思わず嫌味の一つも言いそうになってしまったが、先ほどまでの自身の醜態を思い出して踏みとどまった。

(いかんな。他人を指揮するのではなく協調する以上もっとコミュニケーションに気を遣わなければな。
どうやら俺は聖杯を破壊する前にまず真人間にならなければならないようだ)



生前の自分を振り返ると他人との意思疎通が相当に疎かになっていたのは否めない。
特にギアスという、過程を無視してお手軽に他人を従わせる力を手にしてからこの傾向に拍車がかかっていたのだと今ならわかる。
ギアスによって得られた奇跡のような結果があったからこそ、ルルーシュは黒の騎士団で様々な強権を振るうことが出来た。
最低限以下のコミュニケーションでも強引に組織を維持し、引っ張っていけたのだ。

だがその一方、水面下では確実に歪みが生じていたのも事実だ。
特にブラックリベリオンの前、藤堂や四聖剣が参入したあたりでゼロ、ルルーシュへの不信感は表面化し始めていた。
せめてそのあたりで何かしら対策を打っていれば、後の一部幹部の背信行為やあの裏切りも防げたかもしれない。

ルルーシュ自身はシュナイゼルの口車に乗せられて自分を裏切った騎士団幹部を恨んではいない。
ナナリーが死んだ(と思い込んだ)ショックで盛大に醜態を晒した直後のあの状況では誰もが疑心暗鬼になっても仕方ない。
そもそも以前からゼロへの不信感という下地は十分すぎるほど整っていた。



王の力は人を孤独にする。だが孤独のままでは聖杯戦争を打破するなど夢のまた夢。
もしこれが英霊という存在を交えないただの人間同士の殺し合いであったなら。
ルルーシュは生前と同じようにあくまで他人を利用し切り捨てて目的を達成しようとしただろう。

だがこの戦いには全てのマスターにサーヴァントという歴戦の強者がついている。
ともすればルルーシュ以上の見識と絶大な武力、ギアスを受け付けない抗魔力を持つ存在だ。
そのような超越者に対して生前のような傲慢な振る舞いは通用しない。
というか通用しないから太公望には頭が上がらずイスラと陸には出し抜かれたのだ。
だからこそ今後はギアスに頼らず自らの一挙手一投足、一言一句に気を配らなければならない。


「ともかくだ、俺が話せるのはこれだけだ。
名無、今度はお前達の話を聞かせてくれ」
「えっ!?ここで俺に振ってくるの!?」
「お前以外に一体誰がいると言うんだ。
今の花村に説明させるのは酷だろう」
「お、おう…。つっても花村と会ったのは教会だからなあ。
旦那、そこらへんの説明は任した!」
「…まあ仕方あるまい」



まずは名無から。エロ本を大量に買い漁って教会に向かった、以上。



「…………おい」
「すまない、気持ちはわかるがこれが事実なんだ。
頭の悪いマスターに代わって深く謝罪しよう」
「ちょっ、リ…じゃなくてキャスターひでえ!」
「よし説明は終わったな、お前はもう引っ込んでいろ。恥の上塗りだ」
「…何か俺の扱いがぞんざいになってきてる気がする」



その後未だに立ち直れない陽介に代わってアレックスが事情を説明する事になった。
まず新都のコンビニで買い物をした後、教会前でアーチャーとキャスターに襲撃された。
殺さないよう手加減して二騎とも上手く無力化したが、直後にアサシンの奇襲で二組とも殺されてしまった。
時間帯から言って脱落者の一覧に最初に載っている天野雪輝と我妻由乃がそうなのだろう。

教会で名無鉄之助と出会って意気投合し、共に行動し始めた。
それからアシュナードや鳴上悠らとの戦闘を経て深山町の月海原学園に移動。
図書室で調べた情報からアサシンは“壊刃”サブラク、鳴上悠を洗脳したのはDIOと判明した。
その後別のアサシンに鉄之助が襲撃されたもののこれを撃破、そのまま遠坂邸まで移動して今に至る。



「………いや待て、何か妙だぞ」
「…どうした?」

一通り事情を聞いたルルーシュの表情が曇る。何かを見落としている気がする。
陽介とこなたがメモした脱落者一覧を交互に見つめ、数秒後にルルーシュとアレックスの目が同時に大きく見開かれた。


「アレックス、お前達が戦ったアサシンは何か拳法を修めた者特有の動きをしていたか?
もしそうなら泉が調べたラオウという人物のみ襲撃者に該当し得るが…」

この中で唯一真名のみを名乗ったサーヴァントに問いかける。
だがアレックスは即座に首を横に振った。彼もまた違和感に気付いたのだ。

「いや、奴は拳銃とイメージを具現化させる能力を使っていた。
しかも身体能力そのものは非常に低かった、拳法の使い手など有り得ん。
そしてその他の脱落者は我々が学園に来る前に死んだかこちらで正体や脱落した時間がわかる者ばかり。
つまりアサシンは生きている。我々は奴に嵌められたという事か、忌々しい!」

ペルソナ、とは言及しなかった。一応許可なく主人の能力を明かさない気遣いぐらいはアレックスにもある。

「いや、でも旦那。あいつは確かに旦那が倒したじゃん。
サーヴァントって致命傷喰らったらおしまいじゃなかった?」
「恐らく蘇生タイプの宝具を持っているか、俺が倒したあの男が囮のようなものだったかのどちらかだろう。
サーヴァントが二騎いるところへ仕掛けた時点で疑問に思うべきだったのだ。
感謝するぞルルーシュ、そして泉。お前達と出会わなければ我々はいずれ奴に敗れていたかもしれん。
それに奴は自分の能力をD4Cとか呼んでいたな、学園で調べれば正体に迫れるかもしれん」

倒したと思い込んでいた敵が健在である、これが判ったのは大きな成果だ。
それがアサシンであれば尚更だ、折を見て学園で調べてみるべきだろう。





「一通り情報は出揃ったが…取り急ぎ対策が必要なのは衛宮切嗣という男だな。
特に警戒するべきは奴らの諜報能力の高さだ。サーヴァントがライダーにも関わらずこれは異常といっていい。
キャスター、蘇妲己との内通という線は衛宮士郎のセイバーの証言で消えた。
にも関わらず奴らはルルーシュのギアスに加え柳洞寺にいた各サーヴァントの能力をも把握していた。
さらに衛宮士郎を襲撃したことから考えて多方面を継続的に監視する手段を有しているのは疑いない」
「俺もそう思います。クウガのペガサスフォームなら索敵にうってつけでしょうけどディケイドもサーヴァントなんです。
いくら何でもクラスの適性を無視した能力、それも宝具を継続的に使えるなんて考えられない。
ならマスターの方が何か町を監視する手段を持ってるはずです」

映司とアレックスの意見を聞いたガウェインが暫し黙考した後、何かを閃いたらしく口を開いた。

「恐らく使い魔(ファミリア)を駆使して情報を得ているのでしょう。
旧来の魔術師(メイガス)の間では非常にポピュラーな魔術ですから。
キャスター、索敵の際に周囲の動物を注視していただけますか?
使い魔は動物を媒介に用いるのが基本、上手くすれば何かしらの発見が得られるかと」
「ああ、わかった」


話を聞きながらマルチタスクでサーチャーを操作していたリインフォースが頷いた。
しばらく後、何か反応があったのか彼女の表情が変わった。

「これは…何か機械を括りつけているのか?
すまない皆、これを見て意見を聞かせてほしい」

そう言うや、全員の目の前に突然モニターが現れ外の風景らしきものが見えた。
サーチャーが撮影した映像を夜天の書に蒐集された魔法の一つを使って他の人間にもわかるよう出力しているのだ。
映像には鳩らしき動物が小型の機械を足に括りつけて飛び回っている様子が映されていた。
今のところサーチャーに気付いている様子はなさそうだ。
これに真っ先に反応したのは元軍人であるアレックスだった。

「これはどうやら小型のカメラのようだな。
それも民間では出回っていない型、恐らく軍用の小型カメラだ。
確実に参加者の持ち込んだ私物だ、ここでは軍用の兵器は購入できないからな」

生前、アメリカの特殊部隊の指揮官だったアレックスには使い魔が括りつけているカメラに見覚えがあった。
同じくルルーシュもゼロとして暗躍し、機械に詳しくなったという経験からアレックスの意見に同調した。
二人の意見を聞いたリインフォースは頷くと、何やら足元に魔方陣らしきものを浮かべた。
全員が訝しげに見ていたその時、映像に変化が訪れた。
空を飛び回っていた件の鳩が何もないところから突然現れた魔力弾に撃ち落とされ、木っ端微塵になった。


「お、おい!何だ今のは…!?キャスター、お前の仕業なのか?」
「次元跳躍魔法だ、これも私の宝具に記録された魔法の一つだとだけ言っておこう」


次元跳躍魔法。これもまた夜天の書に蒐集された魔法である。
本来異なる次元世界に存在する対象を狙い撃つこの魔法ならば、同一の世界に存在する使い魔を撃墜する事など造作もない。
とはいえこの技にも攻撃する直前の魔力反応がわかりやすいという欠点がある。
使い魔ならいざ知らず魔術師やサーヴァントにはとてもではないが命中させられる代物ではない。

「リ、じゃなくてキャスター。いきなりとかちょっと過激すぎじゃね?
俺らみたいに殺し合いに乗ってない奴の使い魔だったら…」
「では聞こうマスター。殺し合いに乗らない人間性の者がわざわざ軍事用のカメラを私物として持ち込んだのか?」
「あー…確かに。乗ってる奴じゃなきゃそんなもん持ってくるわけねえか」
「そういうことだ、それに衛宮切嗣という男は質量兵器の扱いに長けているのだろう?
今の使い魔はこの深山町を飛んでいた、奴の用意したものである可能性は高い」



何故リインフォースのサーチャーだけが一方的に使い魔を補足することが出来たのか。
その理由はサーチャーに高度なステルス性を付与しているからだ。
例えサーヴァントでも監視されている事を前提に入念に索敵しなければ補足できないだけの性能がある。
元々魔力で生成された端末であるサーチャーは魔力資質の無い者には視認できない。
当然、使い魔とはいえ元はただの野生の鳩でもそれは同様だ。
また、次元世界で流通している機械類より技術面で遅れている地球産のカメラでは魔力反応は検知も視認もできない。

鳩を放っていた術者、衛宮切嗣が如何に異端であろうと所詮は現代の魔術師に過ぎない。
元軍人であるアレックスらの知恵を借り、本気になったリインフォースを出し抜くなど到底不可能だ。
この二人は衛宮切嗣の策謀を見抜くにあたって最良の組み合わせであるといえる。








「キャスター」

リインフォースが背後から掛けられた声に振り向くと、ルルーシュとガウェインがいた。
先ほどの話し合いの後、陽介とこなたの状態を慮って場を一時解散させたのである。

「どうした、休んでおかなくて良いのか?」
「いや、その前にお前の力を見込んで一つ頼みがある。
もっとも、セイバーが言い出したことなのだがな」
「?」

やや困惑するリインフォースにガウェインはあるデータフォルダらしきものを手渡した。
中身は何かのプログラムであるらしい、その詳細を一目で読み取ったリインフォースの表情が驚愕に染まった。

「このプログラムは…セイバー、もしやお前の真名は……」
「はい、私はかつてアーサー王の下に集いし円卓の騎士が一人、ガウェインです。
私が見たところ貴女のキャスターとしての能力は霊子ハッカーに似通っている。
貴女にはこの術式を私と貴女で発動出来るよう改良してほしいのです」
「これを使わねばならない相手…仮面ライダーディケイドか?」

話に聞いた彼らの経緯を考えればそう考えるのは自然なことだった。
だがガウェインは否定こそしなかったが、一瞬複雑そうな面持ちになった。

「ええ、それもありますが…他にも我が手で決着を着けねばならない英霊がいます。
彼が我が主の道を阻むのなら、私は今度こそ私心なき剣として彼を討つ。
そのためにこそ貴女の力が必要なのです、キャスター」

迷いを強引に振り切るかのような力強い一言に並々ならぬ決意を感じ取った。
結局拒否できず、データを受け取った後ルルーシュとガウェインは立ち去っていった。



「私は…何をやっているんだ……」

誰にでもなく呟いた言葉は虚空に溶けていく。
元々リインフォースにはささやかだが願望器で叶えたい願いがあった。
だが名無鉄之助というマスターに引き当てられ、花村陽介に出会ってからズルズルとここまで来てしまった。
聖杯を破壊する。チームの行動方針はリインフォースの願いとは真っ向から相反する。
だというのに正面切って方針に反対することもせず、気付けば彼らに積極的に協力してしまっている。
そして何より情けないのはそんな状況に安心感を覚えている自分自身だ。
そして安心を覚える理由も既に見当はついている。

「殺し合いの果てに聖杯に至ったとして、主はやてや守護騎士に私は胸を張って会えるのか…?」

それがリインフォース、祝福の風と名付けられた彼女が抱える迷いの正体。
わかってはいたのだ、自らの願望を叶えるにはどうしようもなく間違った手段であることは。
これは矛盾だ、願いのために人を殺める事を過ちと認識したままで勝ち抜けるはずがない。
かといって主が自分に込めた想いを汚す行為にはどうしても踏み切れない。
結論を出さなければならない、ただ状況に流されるのではなくリインフォース自身の聖杯戦争そのものに対する答えを。


【深山町・遠坂邸/夕方】

【泉こなた@らき☆すた】
 [令呪]:3画
 [状態]:精神的疲労(大)、深い悲しみ
 [装備]:携帯電話
※ルルーシュ、陽介達と情報交換をしました

【ライダー(火野映司)@仮面ライダーOOO/オーズ】
[状態]:健康、強い後悔と無力感

【花村陽介@ペルソナ4】
 [令呪]:3画
[状態]:精神的疲労(大)、悲しみと喪失感
[持ち物]:ミネラルウォーター@現実、カロリーメイト@現実・医薬品一式@現実
 大学ノート@現実・筆記用具一式@現実・電池式充電器@現実・電池@現実
 携帯電話*携帯電話には名無鉄之介の名前が登録されています
 予備の服@現実・食料@現実・スパナ@現実
※聖杯戦争のルールと仕組みを言峰神父から聞きました
(意図的に隠された情報があるかもしれません)
※ルルーシュ、こなた達と情報交換をしました

【ランサー(アレックス)@ARMS】
 [状態]:健康、ARMSの進化(進行度小)
※アサシン(ヴァレンタイン)が生存していることに気付きました

【名無鉄之介@私の救世主さま】
[令呪]:3画
[状態]:健康
[持ち物]:エロ本(大量)@現実・携帯電話@現実(携帯電話には花村陽介の名前が登録されています) 予備の服@現実・鳴上悠のクレジットカード
※聖杯戦争のルールと仕組みを言峰神父から聞きました
(意図的に隠された情報があるかもしれません)
※ルルーシュ、こなた達と情報交換をしました

【キャスター(リインフォース)@魔法少女リリカルなのはA's】
[状態]:健康、自らの行動に迷い
※肉の芽の解除が可能です。ただし全力でやって誰にも邪魔されないのが条件です
※深山町を飛んでいた衛宮切嗣の使い魔を破壊しました
※遠坂邸に工房を作成しました
※深山町の各地にステルス性を高めたサーチャーを複数飛ばしています。主に遠坂邸、柳洞寺周辺、月海原学園を中心に索敵しています
※ガウェインからある術式の改良を依頼されました

【ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア@コードギアス反逆のルルーシュ】
 [令呪]:1画
 [状態]:健康
 [装備]:携帯電話、ニューナンブ
※柳桐寺付近にNPCにギアスをかけました【柳桐寺に近づく奴がいたら連絡する】
※アルトリアから別れてから今までに起こったことの詳細を聞きました
※こなた、陽介達と情報交換をしました

【セイバー(ガウェイン)@Fate/extra】
 [状態]:健康
※リインフォースにある術式の改良を依頼しました

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