ベルンの覇王、ゼフィール。
デインの狂王、アシュナード。
王にして屈強の戦士でもある二人の主従は。
何度かの交戦を経て目的地であった教会へと辿り着いていた。

「ようこそ、歴史に名高き王たちよ。歓迎しよう」

彼らを出迎えた神父――言峰綺礼は、正しく中立であった。
令呪やサーヴァントの交換について問えば微細に答える。
しかし他のマスターやサーヴァントの情報は頑として話さない。
あくまで監督役。
それ以上の肩入れはしない。
言峰綺礼としても、開くべき傷、弱さを持ち合わせない二人の王相手に、
さして興味を覚えることなく、ただ監督役としての分を果たすのみであった。

神父から得た情報は、実りある物だった。
ゼフィールが当初、アシュナードから得たサーヴァント変更についての情報は。

  • 対象サーヴァントとそのマスターとの契約を破棄させ、マスターから令呪を奪う
  • 令呪を移植するには神父の協力が必要
  • 現サーヴァントとの契約を破棄する
  • 新たなサーヴァントに契約を同意させる

この四つだ。
しかし新たに神父から、

  • 令呪の移譲は本人の意思が伴えば容易に行える
  • 新たなサーヴァントと契約する際、
 以前のサーヴァントのクラスと違っていても令呪は継続して使用出来る
  • サーヴァントの同意があれば再契約の手順に神父の協力は必要ない

三つの情報を得た。
これは何もライダーが偽りを吐いた訳ではない。
単に、監督役である言峰のみが知る知識であったというだけの事。
要するに。

  • 現サーヴァントとの契約を破棄する
  • 新たなサーヴァントが契約に同意する
  • 令呪が残っている

この三つの条件を満たせば、教会にわざわざ足を運ばずともその場で再契約は可能だ。
敵のマスターを始末し、アシュナードを自害させ、新たなサーヴァントと契約する。
このときアシュナードを自害させるのに一画の令呪が必要である。
しかし新たなサーヴァントに対しても、何らかの服従を強いる必要があるかもしれない。
現在の令呪は二画であり、一画の令呪を所持している事が、
この聖杯戦争の参加条件であることから、少なくとももう一画の令呪が必要となる。
ゼフィールは先ほど戦ったマスターたち――中でもバーサーカーのマスターらしき少女を思い浮かべた。
戦う意志を持った男たちでも眼前に降り立ったゼフィールの威容に呑まれ、動けなかったのだ。
あの少女のような弱き意思の持ち主ならば。
片腕を切り落とすなどして恐怖で縛り、命と引き換えに令呪を差し出させる事も可能であろう。

「ククク…ゼフィールよ、我を葬る算段はついたか?
 ならば次は我に匹敵するほどのサーヴァントを探さねばならんな?
 さて、そんな傑物が早々いるとも思えぬが……。
 いたとして、自らの主を捨てて貴様を選ぶかはまた別。
 中々に無謀な賭けとなろうな」

尚も喜悦を隠さないアシュナードに構わず、ゼフィールは神父に通信手段の是非を確認した。
外はもはや日が昇り始めており、アシュナードの騎竜は人目につきすぎる。
市長へと要請した移動手段もそろそろ確保できているだろう。
ここからは市井に紛れての行動となる。

「ふむ、構わんよ。教会の設備はあくまで備品だ。
 聖杯戦争のバランスを崩す物ではないので使用を制限する理由は無い。
 …しかし電話を使うという事は、ある程度世知に長けた協力者を得たか」
「他言は無用だ、神父よ」
「無論だ。私は監督役である前に聖職者なのでな。
 人の秘密を詳らかにする事に意義など感じぬよ」

どうにも信の置けない神父だが、少なくとも監督役である以上。
同盟関係の暴露などというルール違反にも等しい行為はしないはずである。
先刻ゼフィールが他のマスターについての情報を求めた時も、
そこだけはこの監督役も譲らなかった。
電話なる器物の使い勝手などわからぬため、神父に市庁舎へと繋がせ、
同盟相手である市長を呼び出したが、
彼はどうにも多忙らしく、出たのは市長の部下と名乗るNPCだった

「便利なものよな、このデンワとは。遅滞なく情報を伝達できる…、
 これがあればどのような大戦であろうと軍の統率を乱す事は無かろうよ」

ぽつりと呟くアシュナードの言葉に、
市長の部下と話しながらのため口にこそせぬ物のゼフィールも同意した。
この戦いの舞台には未だゼフィールの理解し得ない物が多くある。
制したとはいえ、先の銃とてその一つだ。
武こそ他の追随を許さぬとはいえ、やはり知と機に置いてはゼフィールらは他者より劣る。
市長との同盟も、今しばらくは必要であろう。

「…以上だ。過不足なく市長に伝えよ」

通話を終えると、
アシュナードが待っていたとばかりに口を開く。

「さて、これからどうするのだゼフィール。
 当初の予定ではまず情報を集め、
 二日目から攻勢に出るという物だったが」
「変更は無い。
 まずはこの…新都を回り、地の利を把握しておく。
 市長の部下から新たな情報も得た。
 先ほどの道化共は西に行ったようだ。
 日が沈めば蹴散らすのも良かろう」
「クク、さて日が沈むまで我と貴様の契約は続いているかな?」
「知らぬな。…アシュナードよ、貴様に問う。
 サーヴァントは召喚された時点で現代の生活に馴染めるだけの知識が付与されるという。
 では、先ほどの電話…のように、情報を瞬時に遠方に送る手段はいくつある?」

令呪の縛りにより、アシュナードはゼフィールに虚言を返す事は禁じられている。
尤も、それが勝利に向かう方策である限り…アシュナードとしても偽る意味は無い。

「手軽な所では、携帯電話、というものであろうな。
 先刻のように声だけを送るだけでなく、
 文書や瞬間を切り取った映像を伝達することもできる」
「映像も…つまり、我らが軽々に姿を晒せば、
 情報戦に長けた他のマスターには容易く捕捉されるという事か」
「我のラジャイオンならば、是非も無いな。
 少数なら市長が手を回してもみ消す事もできようが…
 あいにくこの世界にはインターネット、なる情報網がある。
 仮にNPCどもが霊体化を解いた我を視認し、携帯電話で写し撮ったとしよう。
 その映像をインターネットに転写すれば、この冬木市のどこにいようと
 我らの姿は容易に確認できるものとなる」
「民草が我らに仇成すと言うか」
「可能性の話だがな。無論、我はそんな失態は犯さぬが…
 あいにく、貴様は世事に疎い。いつ仕損じるかわかったものではなかろうよ」

皮肉を混ぜてくるアシュナードに一顧だにせず、ゼフィールは思考する。
なんとなれば人目など気にする必要はないが、
未だ情報が足りぬこの段階で他のマスターの標的になるのは避けておきたい。
どれだけ多くの敵対者を屠った所で、最終的に勝ち残らねば全て無意味だ。
アシュナードがどれほど強力なサーヴァントであろうと、
そう何度も連戦を制することができると楽観出来はしない。
強者が弱者を一方的に蹂躙する事が世の定めならば、
ゼフィール率いる強大なるベルン軍がエトルリア軍に戦況を覆されるはずは無かった。
どれだけ圧倒的な力を誇ろうとも…無敵の存在など有り得ない。
戦とは、たった一度の仕損じが敗北、そして死へと繋がるもの。

「神父よ。数時間の滞在は可能か?」

目を開いたゼフィールは、傍らで己を見つめる神父へと問いかけた。
アシュナードの騎竜ラジャイオンは言うまでもなく、
ゼフィールその人もまた、甲冑を纏い剣を佩いているため相当に人目を引く。
アシュナードは霊体化させておけばいいが、生身であるゼフィールはそうはいかない。
また、エッケザックスと封印の剣も大っぴらに持ち歩けば目立つ事この上ない。
そのため市長の部下が持ってくる車に当代の衣装と、
剣を隠せるような入れ物も積み込ませるよう指示をした。
慎重を期するなら、市長の使いが到着するまでここで休息するが得策である。
騎竜を操っている瞬間を目撃されれば確実にクラスは特定される。
その程度で崩れるような脆弱な手駒ではないだろうが、
瑕疵を潰しておくに越した事はない。

「本来なら安全地帯としての教会の利用は許可しないが…
 ベルンの王よ、お前だけは格好が格好だからな。
 徒にNPCを刺激しないための滞在であれば、特例として許可しよう。
 ただしこの教会に誰か他のマスターが近づいてきた場合は出て行ってもらう」
「構わぬ。元より安寧など求めておらぬ」
「では寛ぐといい。ふむ、何なら食事を用意するが?
 ちょうど私も昼食の出前を取ろうと思っていたところだ。
 紅洲宴歳館・泰山の激辛麻婆豆腐は一食の価値があるぞ」
「いらぬ」
「そうか…」

心なしか肩を落としたように見える神父を無視する。
教会の壁に背を預け、ゼフィールは目を閉じた。
眠りはしないが、躯は休まる。
先の集団との一戦、ゼフィールは花村陽介なる少年と戦った。
エトルリア軍を率いる若き獅子や、竜族の末裔たる少年とは比ぶべくもない弱者…
だが、あの少年は懸命にもゼフィールと真っ向から戦う事を徹底的に避けた。
ゼフィールが少年の操る未知の魔法を警戒し、百の力の半分を防御に割いていたとすれば、
少年は百の力のすべてを回避に費やしていた。
風を放ち、自身も疾風の如く駆ける少年を討つのは、
決して不可能ではなかったにせよ多大なる消耗を強いられる。
よってあの場では全力を出さず、狂王が敵のサーヴァントを討つに任せたのだが、
あのような結果になるのは些か予想外だった。
微小な怒りを滲ませ沈黙を続けるゼフィールの佇まいには、
狂王も興が乗らないらしく、無言。
静寂の内、どれほど時間が経ったか、

「ゼフィールよ。どうやら来たようだぞ」

アシュナードに言われずとも、教会の外から聞こえてくる駆動音が休息の終わりを告げていた。
体調は万全、消費した魔力もほぼ快復している。
教会を出て、市長の部下から衣装と、大型のゴルフバッグを受け取る。
黒のスーツに着替え、剣と鎧をバッグに隠し、リンカーン・コンチネンタルに積み込んだ。

「本当に動かせるのだろうな?」
「無論だ。ライダーのクラスは伊達ではない」

ゼフィールと同じく黒いスーツに身を包んだアシュナードが、高級車のハンドルを握る。
双方大柄であるため狭い車内に乗るのは難儀したものの、
いざ走り出せばなるほどアシュナードの言葉に嘘はなく、
まるで手足のように初めて乗る車を軽快に操っている。
馬より速い…さすがに竜には劣るが、自動車という運搬手段を
アシュナードのみならずゼフィールも存分に堪能できた。

(これを量産出来れば我が軍の運用も大きく変わる…)

と、思わず軍部の統制者らしい算段をしてしまう。
気が早い。まずはこの戦を制さねばならないというのに。

「ゼフィールよ。特に目的が無いのなら、一度本拠へ帰還するぞ」
「何故だ」
「この自動車という乗り物。移動するだけならいいが、戦闘向きではない。
 速度は中々のものだが、馬ほど小回りが利かん。
 市長はバイクなる物も用意しているのであろう?それを取りに行く」
「バイク…そのバイクとやらは、貴様の戦闘に耐えうるものか?」
「ラジャイオンには及ばんが、この車よりはな。
 あれならばライダーのクラスに恥じぬ戦ができようぞ」

まるで玩具を与えられた子供のように狂王が嗤う。
真実、狂王にとっては遊びなのだろう。

「ああ、貴様はどこぞでこの車の騎手…いや運転手か。
 それを調達するがいい。そのクレジットカードとやらがあれば容易いであろう。
 女子供の如く背にしがみつかれては勝てる戦も勝てんからな」
「…言われるまでもない。御免被るわ」

しかしゼフィールにとってはそうではない…これは勝利すべき戦である。
どこまで行ってもこの狂王とは相容れないと、ベルンの覇王は何度目かの確信を得るのだった。



【新都/昼】

【ゼフィール@ファイアーエムブレム 覇者の剣】
【状態】:健康、魔力消費(小)(残令呪使用回数:2)
【装備】:エッケザックス@ファイアーエムブレム 覇者の剣、封印の剣@ファイアーエムブレム 覇者の剣
     ゴルフバッグ、冬木市の地図
【備考】:自身もサーヴァントのスキル、『恐怖』をマスター相手に使用できると知りました
     ※参戦時期は、ファイアーエムブレム?覇者の剣 十巻のロイ率いるエトルリア軍がベルン城に攻め入る直前からです。
     ※冬木市ハイアットホテルの最上階を拠点としました。アシュナードはキャスターではないので、魔術工房の類は一切存在しません。
     ※優勝すれば、願いが相反するアシュナードを粛清するつもりでいます。
     ※もし可能性があれば、機会あらばサーヴァントの交代を考えています。。
【方針】:冬木市を周り、地の利を把握する

【ライダー(アシュナード)@ファイアーエムブレム 蒼炎の軌跡】
【状態】:魔力消費(小)、リンカーン・コンチネンタルに騎乗
【令呪】:ゼフィールがアシュナードに対する全ての質問に対して、拒絶、沈黙、遅延の一切なく。
     己が持つものと聖杯に与えられた全ての知識を用いて、詳細かつ速やかに答えよ。
【備考】:名無鉄之介の口車をほんの少し、戯れで信じてみる。
     彼のような道化者をそばに置くのもやぶさかではない。

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