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《A》

東の新都と西の深山町、東西を繋ぐラインである冬木大橋が見えてきた。
軽トラックのハンドルを握るのは衛宮切嗣。
ライダー――門矢士は霊体化させたまま損傷したディケイドライバーの修復に専念させている。
彼らはホテルを出てから一言も言葉を交わしていない。
切嗣はこのライダーを、能力的には扱いやすいと考えていた。
しかし、かつて従えていたセイバーと違い、彼には聖杯戦争中に遂行を望む明確な目的がある。
他のライダーの撃破――とりわけ仮面ライダーという存在への執着を、切嗣は押し量れていなかった。
その結果が先ほどの敗戦である。得たものは少なく、失ったものは多い。
切嗣自身の切り札であるコンテンダーと、令呪一画。
ライダーの 武装の一つ、アタックライド・イリュージョン。
どれも貴重な手札ばかりだ。
ライダーと意思の疎通がうまく行えていればこれらの損失は防げたはずだが――

(だが、だからといって――)
切嗣はこのライダーと信頼関係を結べる気がしなかった。
数々の戦闘を経ていくらか傾向は掴めてきたにせよ、ライダーは未だその心中を全て明かした訳ではない。
切嗣が察するところ――このライダーの性は孤高だ。
ライダーは他人に依存するのを嫌う。それはマスターである切嗣に対しても変わらない。

本来、仮面ライダーディケイドは他の仮面ライダーの信頼を得て力を発揮する存在だ。
しかしこの門矢士は破壊者としての使命に目覚め、仮面ライダーを破壊することだけを至上の命題と している。
力を借りるのではなく――奪い、自らのものとして利用し、使い捨てる――それが今の門矢士の在り方。

無論、切嗣はそんなライダーの過去を知らない。否、知ろうとも思わない。
お互いを信頼していない彼らでは、泉こなたと火野映司のように夢という形で意識が繋がることもない。
ただ現実としてライダーはそこにいて、切嗣のサーヴァントとして存在している。

(どの道、このままでは僕らは危うい)

現在、多くのマスター達に切嗣とライダーは敵対者として認識されている。
柳洞寺で戦った士郎とセイバーは言わずもがな。
ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアとセイバー、ガウェイン。
こなたという少女とライダー、仮面ライダーオーズ。
イリヤを下した鳴上悠、 ランサー、クー・フーリン。
枢木スザクとバーサーカーはおそらく脱落したのだろうが、それは逆にライダーの力を得たバーサーカーすら倒しうる強敵の存在を示している。
敵は数多いるが、味方は事実上ライダーのみだ。
どれほど厭わしいとわかっていても、このライダーとこれ以上関係を悪化させるのは得策ではない。
ならば――

「――ライダー。そのままでいい、聞いてくれ」
視線は軽トラックの進路から外さず、切嗣は言う。
外から見れば車内には切嗣しかいないので、独り言のように見えるだろう。
だがライダーが切嗣を注視する気配は感じた。

「僕は君を信用しない。できない、と言ってもいい」
返答はない。しかし切嗣は、それはお互い様だ――とライダーは思っているのだろう、と予想できた。
ライダーはこれでショックを受けるような腑抜けた輩ではない。

「多分、それは君も同じだろう。たしかに僕は――失策が続いている。
 最初に戦ったランサーでまず貴重な令呪を一画消費した。
 その後の鳴上悠との戦いでは枢木スザクにしてやられた。
 柳洞寺のライダーの始末は首尾よく行ったが、あれで慢心したのかもしれない。
 セイバーとの戦いはもう言う必要もないだろう」
思い返せば情けない限りだ。
最初に遭遇したのがイリヤでさえなかったら、もう少しマシだったはず――と思うことさえ屈辱である 。

「だが、別に僕は君に謝罪したい訳じゃない。
 はっきり言っておこう。僕は君が気に入らない。
 前のセイバーもそうだったが、君もストレスを感じさせるという意味では相当なものだ」
「――ほう、言ってくれるじゃないか。それはつまり、この俺の力をもう必要としないということか?」
さすがに黙っていられず、ライダーが返答した。

「いいや――逆だ。悔しいが、僕は君なしでは望むものを手に入れられない。
 どれほど疎ましく思おうと、君の力が必要なのが腹立たしいのさ」
「なら、何故それを口に出した?俺があんたをどう思うか予想しなかったってことはないだろう」
「今から僕を信頼してくれとか、僕が君を信頼するとか言ったところで白々しいだけだろう。 なら無理に信頼する必要はない。僕は今から君をただの武器だと考える」
「武器だと?」
「そうだ。引き金を引けば銃弾を発射する。指示すればその通りに動く。正確な機械のように」
ライダーは即答しなかった。自由意志を捨てろ、と言っているのだから当然だ。

「――おいマスター、それは」
「君も僕をそう思ってくれ」
ライダーを遮り、切嗣は続ける。

「僕を魔力を供給し、敵のマスターを処理するただの装置だと認識してくれ。
 君が必要だと判断したことは、伝えてくれれば実行しよう。
 同様に、僕が必要と判断し指示したことを実行してくれ」
「割り切れ、ということか」
切嗣の言いたいことを察して、ライダーが要約した。

「ああ、そうだ。現状、僕 らはあまりにも不利な状況にある。
 僕らは消耗し、敵は多く、味方はいない。
 僕が頼れるのは君だけだし、君も僕がいなければ存在できない。
 まずこれは事実だろう?」
「ああ、そうだな」

「そして僕らの目的は聖杯の獲得――これも一致している。
 君が聖杯に何を願おうと僕は興味がないし、僕の願いを君に話す気もない」
「俺もあんたの願いなんて興味ないな」
「聖杯を獲れれば、その過程は問わない。
 そのためには僕らはもうさっきみたいに仕損じることはできない。だから――」
「割り切る。俺は俺のためにあんたを利用し、あんたも自分のために俺を利用する」
冷えきった関係だが、無理に信頼や感情を持ち込んで破綻するよりはマシだ。
セイバーよりは舞弥のスタンスに近い。

「いいだろう――俺もその方がやりやすい。
 だが一つ、オーズの破壊。悪いがこれは譲れない」
「君のそれを制限するのは僕にとっても不都合というのはよくわかっ た。
 優勝するためにはどの道倒さなければいけない相手だ。だからこれからは僕も全力で協力する。
 でも、実行するのは僕も「やれる」と判断した時だけだ。それは了承して貰いたい」
「わかってる。さすがにミスった後で我は通せないさ。
 オーズに遭遇したとしても、先走って襲いかかったりはしない」
ディケイドが一人でオーズに挑むより、マスターのサポートがあった方が勝率が高いのは確か。
戦ってみてオーズが手強いのはもうわかっている。
ならば無駄に意地を張るより、素直に切嗣の援護を受けるべきだ。

「まず、遅くなったが一度詳しく君の能力を聞いておきたい。
 君の願いに興味はないが、戦力は別だからな。
 イリュージョンの時のようなことはもうなし にしよう」
「それを言われると弱いな。ああ、了解だ。
 武器を使いこなすにはまず全容を知っておかなきゃ無理なことだしな」
「新都に入ったらどこかで身を休めよう。
 ガウェインのこともある。日が昇っている時にうろつくのはうまくない」
ライダーを信頼することはできないが、ライダーという武器を効率よく使用するための算段は整った。
もちろん、ライダーにとっての切嗣も同様だ。敵は多いのに、サーヴァントと疑いあっていては話にならない。

「ああ、そうだ――コンテンダーの代わりも調達しないとならない。
 弾丸はまだあるとはいえ銃身がこれじゃあ使いものにならないしな。
 警察署にならライフルはあるか――」
今から深夜まで休めばライダーも十分に回 復するだろう。
暗示とライダーの力を駆使すれば警察署の武器庫への侵入も不可能ではない。

そう思っていた時、コートの内側から携帯電話が鳴った。
すっかり忘れていたが、枢木スザクから受け取ったものだ。
表示されているナンバーは枢木スザクの番号ではない。

「――誰だ」
「枢木です。今、話せますか」
ライダーに周囲を警戒させつつ、通話を繋げる。
そこから聞こえてきた声は、紛れもなくあの枢木スザクのものだった。



《B》

この少女は羽瀬川小鳩と言うらしい。
匂宮出夢が置いていった少女の服を探り、出てきた生徒手帳からスザクは少女の名前を知った。

「中等部二年生、ということは年齢はナナリーと同じくらいか」
とても小学生にしか見えないが、こんな少女まで戦いに参加していることに驚いた。
彼女は未だ目覚める気配がない。出夢が応急処置したとはいえ、傷が治癒したわけではない。
本格的な治療を施さねばいつ絶命してもおかしくないように見える。

「病院に運ばないと――でも、救急車を呼ぶ訳にも行かないな」
そこまで言って、何を考えているんだ俺は、とスザクは後悔した。
この少女とてマスターであるのなら、倒すべき敵に変わりはない。治療も何も、ここで殺 しておくのが最善であるはずなのだ。
無論、彼女を守るのが現在スザクの生命線である出夢の依頼なのだから、手を出す訳にはいかないのだが。

「まだ、俺の中には甘さが残っているのか――」
同じ日本人の、しかも幼い少女を手に掛けることに躊躇っている。
小鳩の首筋にそっと残った右腕で触れる。
触れれば折れてしまいそうな細い首でも、この骨折した腕ではとてもへし折れない。
つけたばかりの義手も同様だ。まだ慣れていないというのを差し引いてもやはり義肢ではスザクの身体能力は完全には戻らない。
が、それは肉体的な問題だけではない。
精神的にも、今のスザクはこの傷ついた少女を害する覚悟が持てていない。

「ルルーシュ、君ならやれるのか――?」
悪逆非 道の化身、ゼロ。その正体、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。
親友にして仇敵であるルルーシュならどうするだろうか。
おそらく――やるだろう。それしか方法がないのなら。
会えば殺し合うしかないとわかっていても、スザクは今、ルルーシュに会いたいと思う。
自分で満足に動くことすらできないこの無様を晒すことになっても。
あるいは、殺されるのなら他の誰でもなくルルーシュがいい――心の何処かでそう思っているのかもしれない。
嘆息し、小鳩の首から手を離して時計を見る。出夢が再度出発してから一時間ほど過ぎている。
結果がどうなったにせよ、もう戦いは終わっているだろう。
自分がいまだ生存しているところを見ると、バーサーカー――ランスロットもまた存在して いるとみて間違いない。
魔力を搾り出されることもなくなっているため、バーサーカーは戦闘から離脱しているのだろうか。

「ランスロット卿――俺はここにいる。
 まだ俺と共に戦う意志があるなら――どうか、俺のもとに帰って来てくれ」
スザクは魔術師ではない。念話の心得などないし、使えたとしても理性なきバーサーカーには通じる保証もない。
それでも、スザクはバーサーカーのマスターである。
魔力供給という繋がりがあるのだから、バーサーカーが間桐慎二から解放されたのならここに、スザクのもとに戻ってくるはずだ。
それを信じて、バーサーカーが帰還することをただ願う。

「――おーい、おにーさん。寝ちまったのか?」
どれほどそうしていたのか、気がつけば目の前に出夢が立っていた。
傍らにはキャスターがいる。忘れもしない、スザクの両足を吹き飛ばしたやつだ。

「お前は――!」
「おっと、落ち着いてください。私はもうあなたに敵意はありませんよ。
 いえ、間桐慎二に命令されてやったのですから、元々ありはしませんでしたけどね」
「――そうか、この子のサーヴァントがお前か。なら、間桐慎二を倒したのか、出夢」
「そういうことっ。依頼達成だな。
 つってもおにーさんの依頼じゃなくてそっちの小学生の依頼だけどな。ぎゃはっ」
驚いたことに、出夢はまったく傷を負っていない。
彼が健在であるということは、姿は 見えないがアサシンも無事なのだろう。
むしろ隣にいるキャスターのほうが全身ダメージを受けている。
歴戦の勇士であるスザクをしても、まさか出夢がキャスター相手に肉弾戦を演じ競り勝ったとは想像できなかった。

「バーサーカーはどうした?」
「さあ?僕がついた時にはいなかったぜ」
「あのバーサーカーなら間桐慎二に命じられて魂喰いに出かけましたよ」
「へえ、じゃああいつもうブチ殺しちまったし戻ってくるんじゃねーの?」 
「いや――バーサーカーには間桐慎二以外の一切の命令を禁じるという令呪がかけられています。
 間桐慎二本人が死んだとしても、この令呪がある限りバーサーカーが戻ってくることはないでしょうね。
 令呪のキャンセルは一流の魔術師で も不可能です。同じ令呪を使って上書きするしかありませんね」
スザクは愕然と己の右手を見る。残った令呪は一画だ。
これを使えばスザクは消滅する。バーサーカーを取り戻す意味がなくなってしまう。

「そんな――駄目なのか――?」
「令呪ねェ――なあおにーさん、なんだったら僕の令呪を分けてやろうか?」
打ちひしがれるスザクをよそに、出夢はあっさりと言った。
スザクもキャスターも虚を突かれたように彼――彼女を見る。

「ほら、僕まだ三画持ってるし。持ってても多分使わねーと思うんだよね」
「出夢――いいのか?」
「構わねーよ。ここでおにーさんに消えられちゃ契約不履行になるし――旦那?
 悪いけどそういうことでいいかい?」
「――サーヴァント としては到底受け入れられんが、どうせ俺が何を言ってもやるのだろう。
 残念なことに使える令呪は二画ある――断ればもう一つで何をされるか予想もつく。
 どうせ俺は今日一日はもう戦えんのだ。戦える力は必要になる。一画だけなら好きにするといい」
姿を見せないまま、アサシンが返答した。半分諦観の混じったそれは、しかし了承でもある。

「つーことで、ほら。手ぇ出しなよおにーさん。
 やり方知らねーけど多分なんとかなんだろ」
折れた右腕を強引に出夢に握られ、スザクは痛みに顔をしかめる。
出夢がじっと精神を集中させると――やがてその右腕にあった令呪の一画がスザクの右腕に移植された。

「ぎゃはっ、ほら何とかなったろ?」
「本当に、君には何から何まで世話になってばかりだな」
「お世辞はいいっつの。さっさとおにーさんの相棒を呼び戻してやんなよ」
「ああ。
 枢木スザクが令呪を以って命じる――バーサーカー、君を縛る全ての戒めを破戒する!」

出夢から渡されたばかりの令呪を使って、間桐慎二に強制された令呪をキャンセルする――
令呪は滞りなく発動し、スザクの令呪は再び一画となった。

「後はほっときゃ戻ってくるんじゃね?」
「助かったよ、出夢。君はこれからどうするんだ?」
「んー、依頼はおにーさんを勝たせることだからなー。
 そのためには他の奴らを潰して回るのが一番いいんだろうけど、あいにく僕と旦那は殺戮は一 日一時間って決めてんだ。
 さっき一時間使っちまったから、次殺すのはまた日が変わってからだなー。
 ま、夜になるまでおにーさんの護衛がてらここで寝ることにするよ」
「ありがたいよ。で――そのキャスターはどうするんだ?」
出夢とアサシンはスザクにとって味方だが、傍らでじっと成り行きを見守っていたキャスターはそうではない。
足を吹き飛ばされたのは慎二のせいと言えるが、このキャスター自身信用できるかどうかは未知数だ。

「あー、それな。もう依頼は果たしたから僕はどうでもいいっちゃいいんだが」
「おっと、言ったはずです。もう私はあなたの敵ではありませんよ。
 ここに来たのは私のマスターの安否を確認するためと――あなたに謝罪をしようと思いま してね」
「謝罪?」
「ええ。私もあなたの足を台無しにしたことについて、申し訳なく思っていましたのでね。
 そのお詫びと言ってはなんですが――あなたを治療して差し上げようと思いましてね」
「治療だと?自分のマスターを差し置いてか」
治療するならマスターを優先すべきだ。
なのにスザクを先に癒すというのはなにか裏があると感じる。

「もちろん、マスターも治しますよ。ただ、現状私たちの立場は非常に危ういといっていいでしょう。
 マスターでありながら私に打ち勝ったイズムに、アサシン。そこにあなたのバーサーカー。
 誰を相手にしてもしょせんキャスターである私には為す術はありません。
 それ以前に瀕死のマスターがここにいるのですから、我々の 生殺与奪権はあなた方にある。
 いえ、イズムがあなたに従うというなら、あなたがこの中で意思決定権を持っている、というべきでしょう」」
「だから俺を治療して、立場を良くしておきたい――と?」
「そうです。あなたの手足を完全に再生する――ということはできませんが、幸いここには元になる義手義足がある。
 私の錬金術を使えば簡易的な機械鎧(オートメイル)に錬成することができるでしょう」

「オートメイル?」
「機械仕掛けの義肢のことです。生前の私の世界では盛んだった技術でしてね。
 神経を繋ぐので生身の肉体と遜色なく動き、武器を内蔵することもできます。
 一から作るのは骨ですが、その義肢を錬成し、あなたの体と直接融合させれば馴染むのも早いでしょう。
 今の貴方にはうってつけだと思いますよ」
スザクはじっと自分の体を見下ろした。
出夢が用意してくれた義肢は高級品なのだろうが、さすがに生身と同じように扱えるわけではない。
もしキャスターの言う通り、義肢を強化できるのならそれはスザクにとっても願ってもないが――

「私としても、今あなた方と敵対するのは避けたい。マスターが動けない以上すぐにここを離れることもで きない。
 つまりですね――私はあなた方から安全を買いたいのですよ。
 私があなたを治療するのと引き換えに、あなた方には私のマスターが目覚めるまで私たちを守っていただきたい」
「――その子が起きた後はどうする?そのとき改めて戦う、ということでいいのか」
「それも難しい問題でしてね――私はマスターと接触してすぐ間桐慎二に襲撃されたので、あまり話せていないんですよ。
 できれば返答はその時にさせていただきたいのですが」
「今はまだ、確かなことが言えない、か」
「いいんじゃねーの?おにーさん。実際今のままじゃ戦えねーんだしよ。
 とりあえず治すだけ治させて、後のことはそのとき決めりゃイイ」
出夢もまた、キャスターの言葉を後押しする。

「――わかった。提案を呑もう、キャスター。
 だが妙な真似はするな。義肢に爆弾を仕込むようなことをすれば、即座に敵とみなす」
「わかっていますよ。今、下手な小細工をするのは私にとっても不利益ですから」
キャスターがスザクの治療に取り掛かる。
隣に出夢とアサシンがいるのだから、そうそう小細工はしないだろう。
折れた右腕が修復されていくのを横目にしながら、スザクはふと数時間前のことを思い出していた。
今こうして新たな協力者を得たものの、最初に組んだ相手はどうしているのだろう、と。



《C》

「生きていたとは思わなかったよ、枢木」
「何とか切り抜けられましてね。大体半日ぶりですが、そちらの調子はどうです」
「そういうことを聞くということは、同盟はまだ続いていると思っていいのか」
「俺は――いえ、僕はそのつもりで連絡しました。色々提供できる情報もありますしね」
「そうか――だが、済まないが運転中だから長く話せない。落ち着いたらこちらからかけ直す。君の番号は変わったようだが?」
「前の携帯は壊してしまいましてね。衛宮さんの番号は覚えていましたから。
 ああ――すみませんが一つだけ、今聞いておきたいことがあります」
「なんだ?」
「この聖杯戦争から降りる方法。ご存知ですか?」
「――それは、勝ち残る以外で 、ということか」
「ええ。死なずにこの戦いから身を引く方法を、知っていたら教えてもらいたい」
スザクから放たれた予想外の質問は、切嗣を戸惑わせた。
まさか今更になって怖気づいたのか――

「そんな方法はない。通常の聖杯戦争なら教会に駆け込めば助かるかもしれないがな。
 始まれば勝ち残るか、死体になるか。今ここにいる僕らの末路は二つに一つだ。」
「やはり、そうですか。つまらないことを聞きましたね。では、また」
スザクからの通話は唐突に切れる。
その淡白さから、どうも自分の保身を目的にしたわけではないように思えた。

「どう思う、ライダー。枢木が命を惜しんだか――」
「あいつはそんなタマじゃないだろう。
 そうだな――オーズのマスタ ーのような弱者を保護したんじゃないか?
 殺す気にならないから何とかして聖杯戦争から脱出させてやる、とかな」
「有り得ない話ではないか。ここにはどんなマスターが居ても不思議じゃないしな」
ポケットから片手でタバコを取り出し、火を点ける。
橋を渡り終え、新都に入った。
まずは拠点を探し、腰を据える。やるべきことは多い。
ライダーの能力の再確認。
コンテンダーの代わりの調達。
市長の動静を探る。
そして――ここに来て復活した枢木スザクへの対応。
スザクの復帰は切嗣にとっても決して悪い要素ではない。

「枢木が健在なら――そしてあいつが協力者を得たのなら、セイバー達にぶつけるのもいいかもしれないな。
 あいつのバーサーカーは何故だか騎 士王に異常に執着している。
 うまく誘導すれば勝手に噛み付いてくれるだろう」
「オーズをやるならそのときか――おっと、睨むなよマスター。
 わかってる、もう勝手に突っ走りはしないさ」
「頼むよ。僕らはもう失敗できないんだからな――」

もうすぐ日が沈む。
魔術師殺しの夜が始まる。



《D》

スザクは通話を切った。
この携帯電話は間桐慎二に奪われたものではなく、出夢に頼んで調達してもらったものだ。
軍人という職業柄、切嗣と鳴上悠の携帯のナンバーは当然記憶していた。
聖杯戦争からの離脱の方策を、切嗣なら知っているかと思ったが、そう甘くはない。
出夢と組んだ今、さほど切嗣との同盟に意味は無いが、それでも手札の一つにはなる。

「――!ランスロット卿――」
ふと窓の外を見れば、バーサーカーが佇んでいた。
慎二から施された令呪をキャンセルしたため、魔力パスに沿ってここまで辿り着いたのだろう。
その姿は見るも無残なほどに傷ついている。数刻前のスザクのように、左腕がない。
少しでも魂喰いをしたのか魔力はやや 回復したようだが、体は万全には程遠い。
別室で小鳩の治療を行なっているキャスターと、監視のためについていった出夢とアサシンに襲いかからぬよう、バーサーカーを霊体化させる。
少なくとも動けるくらいに回復するまでは暴れることはないだろう。

「俺が不甲斐ないばかりに、あなたに無理をさせてしまった――今は休んでくれ。また、ともに戦う時まで」

剣は再びスザクの手に戻った。キャスターが治療した手足も滑らかに動く。
着々と戦える準備は整いつつある。

「後は――あの子をどうするか、だな」
スザクが切嗣に聞いたのは、小鳩を殺さず聖杯戦争から脱出させられないか知りたかったからだ。
だが結果は予想していた通り、不可能。
ならばやはり、殺すか―― あるいは一縷の望みを掛けて教会まで行くか。

「あの娘が目覚めるまでに、答えを決めておかないとな――」
もうすぐ夜が来る。
夜になればまた――戦いが始まる。
しかし、戦う力を手にしても、それを扱うスザク自身が迷っていては意味が無い。
相手が自らの意志で戦う戦士ならば迷わない。
だがそうでない相手――無力で幼い、本来なら守るべき少女の命を奪えるのか。
ここで決めなければならない。
ルルーシュと同じかそれ以下の外道に身を落とす道を進むか否かを。
スザクは強く、機械と化した左腕を握り締めた。



《E》

当然、キャスターことキンブリーは親切心からスザクを治療した訳ではない。
もしああしなければスザクは出夢にキンブリーの排除を命じただろうし、そうなればスザクの命令を聞く立場であるらしい出夢も今度こそキンブリーを殺すだろう。
先程は出夢を理想のマスターと思ったが、まさか枢木スザクに従う立場だとは想像できなかった。
だが何にせよ――キンブリーは一時の時間を稼げた。ここからどう転ぶかはまだ定まっていない。
治療の術を持つサーヴァントは希少だ。スザクが勝ち残りを狙うなら、これを売りにして今しばらくの猶予を得ることも不可能ではないだろう。
オートメイルは正直なところ門外漢ではあるが、宝具である賢者の石と持ち前の道具作成スキル を用いることでほぼイメージ通りのものはできた。

匂宮出夢に匹敵する、とまではいかないにせよ、枢木スザクもまた相当に強力なマスターである。
仮にマスターを乗り換えるような事態になった時、出夢が第一候補なのは変わらないが、次点として枢木スザクは申し分ない。
今はスザクと出夢に見せるポーズのために小鳩を治療しているが、このマスターではキンブリーの望む快楽は得られないだろう。

そもそも――キンブリーは聖杯にかける願いを持っていない。
生前、ホムンクルスに組みして人間と敵対したときもそうだ。
キンブリーが見たかったのは人間とホムンクルスの存在を賭けた戦いの過程と結果。
過程という流れを無視して結果だけを手にする聖杯には何ら価値を見い出さ ない。
強いて言うならば――この聖杯戦争を誰が勝ち残るのか見届けたい、というのが願いになるのだろうか。
小鳩のような軟弱なマスターでは早々に脱落してしまう。それでは全く楽しめない。
出夢もスザクも、ベクトルは異なるが確固たる己の意思を持って戦っている。
キンブリーにとって好ましい人間たちだ。その行く末を見てみたい。
仮に小鳩が彼らに匹敵するだけの意思を獲得できたのなら、そのときは彼女に従うのも悪くはないが――

(私は傷は癒せても、心までは癒せない。さて、我がマスターは目覚めたときどこに向かうのでしょうか)

意思を示せないのなら淘汰されるだけだ。
壊れていく様を眺めるのも一興ではあるが――その場合、キンブリーとしても身の振り方を 考えねばならない。
事態は小鳩の目覚めによって大きく動くだろう。
その中でキンブリーが取るべき行動で、何が最善か――治療の手は止めず、思考に没頭する。



【深山町・民家/夕方】

【枢木スザク@コードギアス 反逆のルルーシュ】
 [令呪]:1画
 [状態]:疲労(小)、義手・義足を機械鎧化
 [装備]:携帯電話
  ※民家の老夫婦に預けられています
  ※匂宮出夢に《依頼》を行いました
【バーサーカー(ランスロット)@Fate/Zero】
 [状態]:ダメージ(中)、魔力消費(大)、右太腿に刺し傷(通常の回復手段では治癒不可能)、左腕欠損

【羽瀬川小鳩@僕は友達が少ない】
 [令呪]:2画
 [状態]:重症は大体回復、精神崩壊、気絶
【キャスター(ゾルフ・J・キンブリー)@鋼の錬金術師】
 [状態]:疲労(中)、魔力消費(大)、全身ダメージ(中)

【匂宮出夢@戯言シリーズ】
 [令呪 ]:2画
 [状態]:健康
 [装備]:”戯睡郷”メアを所持
  ※《一喰い》《暴飲暴食》の隙を解消し威力も向上しました
  ※ギアス発動下の枢木スザクの動き方を疑似的にではありますが修得しました
【アサシン(”壊刃”サブラク)@灼眼のシャナ】
 [状態]:健康、魔力消費(中)


【新都/夕方】

【衛宮切嗣@Fate/zero】
 [令呪]:1画
 [状態]:固有時制御の反動ダメージ(中)、魔力消費(大)
 [装備]:ワルサー、キャレコ 、携帯電話、鉈、大きな鏡、その他多数(ホームセンターで購入できるもの)
  ※携帯電話には枢木スザクの番号が登録されています。
  ※深山町内にCCDピンホールカメラ付きの使い魔を放ちました。映像は無線機があれば誰でも受信出来ますが、暗号化されています。
  ※トンプソン・コンテンダーが破壊されました。少なくとも自力での修復・復元は不可能です
【ライダー(門矢司)@仮面ライダーディケイド】
 [状態]:ダメージ(小)、魔力消費(中)、隠蔽能力再発動まであと約三時間、ディケイドライバー損傷
  ※ライダーカード≪龍騎≫の力を喪失(コンプリートフォームに変身するだけなら影響なし)。
  ※ライダーカード≪電王・モモタロス≫破壊(コンプリート フォームに変身するだけなら影響なし)。
  ※ライダーカード≪キバ≫の力を喪失(コンプリートフォームに変身するだけなら影響なし)。
  ※ステータス隠蔽能力には以下の制約があります。
  ・コンプリートフォームを発動したか否かに関係なく真名を知ったマスターには一切効果を発揮しない
  ・最後にコンプリートフォームを発動してから六時間経過するまで隠蔽能力は消失する
  ※アタックライド・イリュージョン再使用不可
  ※ディケイドライバーが損傷しています。それに伴い魔力生成機能が一時的に停止しています。修復が完了すると同時に再び稼働します
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