【1】 

 「くそ、予想以上にひどいな。」

 叔父である間桐雁夜とトキとの戦闘を終えた慎二は、屋敷の損傷具合を調べるため拠点である間桐邸を周っていた。
 一階を除いて破壊されていたためある程度は覚悟をしていたが、予想以上に被害がひどい。
 これではここをメインの拠点にすることは不可能だろう。
 しかし今移動すれば他の参加者に鉢合わせするかもしれない。
 先ほどの戦いは宝具同士のぶつかり合いでとても目立っていた。
 またライダーとバーサーカーは酷いダメージと魔力消耗をしており自分も疲労がひどい。
 キャスターは無傷だが真正面からの戦いには向かず、また信用も出来ない。
 しかしこのままここに篭っていても大した効果が有るとも思えない。
 リスクを承知で安全地帯まで逃げるか、此処に残り少しでも回復に専念するか・・・

 「移動するぞライダー、ここはもう破棄する。」
 「俺はかまわんが良いのか?」
 「どのみち此処は使い物にならないんだ。もっと安全なところで休息をとるぞ。」

 ああまで派手に音が響いたなら他の参加者が此処に来てもおかしくない。
 移動するリスクと留まるリスクが変わらないならリターンが大きい方をとるのは当然だった。
 最悪キャスターとバーサーカーを捨て駒にすれば自分たちだけは生き残れるという計算もあった。

 「ふん、いいだろう。当てはあるのか小僧?」
 「ああ、今の此処よりもはるかにマシな場所で、拠点にも申し分無い所を知ってるよ。」

 そういって歩き出す慎二。ライダーとキャスターも後に続き、バーサーカーも覚束ない足取りでついてくる。
 補充にも便利な土地に在り、霊脈にも掠めるように立っているため他の場所よりも効率的に回復できる場所。

 「持つべきものはトモダチだよなぁ衛宮ぁ・・・!」

 目指す場所は衛宮邸。



【2】


 「おりょ?いねえじゃねえか。」

 すでに誰もいなくなった間桐邸に現れた人影。
 長い黒髪に小柄な体躯。
 両腕は身体と比べると異様に長い。
 猛禽類を思わせる八重歯が特徴的な美少女。
 《人食い(マンイーター)》の出夢だった。
 スザクのサーウ゛ァントを取り戻すべく移動していた彼女は、バーサーカーを奪った少年が向かって行ったという方角に向け進んでいた。
 その折轟音が聞こえ向かったが、着いたときにはすでに間桐慎二たちは移動していた後だった。 

 「ぎゃははっ!見事にぶっ壊れてるぜ!爆弾でもこうはならねえだろ!」
 「どうするのだマスター、当てがなくなったぞ。」
 「さーて、どうしようかねぇ。・・・ん?」

 辺りを見渡していた出夢は瓦礫の隙間に地下へ下りる階段らしきものを見つけた。
 瓦礫を引っぺがし階段をトントンと下りていく。
 薄暗い部屋の中、異臭が鼻につく。部屋の奥に気配を感じ近づくとそこには鎖に繋がれた少女、羽瀬川小鳩がいた。
 虚ろの瞳、体中に拷問の跡があり正気を失った表情でこちらをぼんやりみていた。
 裏の世界では珍しくない光景に動揺せずに、周りの異物を気にせず近づく。

 「ふーん、見事に死なない程度に痛めつけられてるな。墓森の拷問係になれるんじゃねえか?」

 そのまま近づき顔を覗き込む。

 「よ!こんにちは。ご機嫌いかがってか。」

 まるで今目の前の少女の現状が分かっていないかのように挨拶をする。
 しかし小鳩は何も返事を返さない。しかし出夢はそれに気にすることはなくぎゃはっ!、と笑い

 「介錯して欲しいつうんならしてやるけどどうする?」









 地上から大きな音が聞こえて地下の土倉を揺らした。
 その音にわずかに顔を上げその動きで体中に痛みが走る。
 けれどその痛みはもう慣れきってしまった。
 人は順応する生き物である。与え続けられた苦痛はもはや彼女の一部になってしまった。
 全身を痛みが埋め尽くそうと、心が折れてしまっても、精神が摩耗してしまっても、それでも彼女は生きていた。
 否、生かされていた。もはや現実を認識できてもいないだろう。空想の中で幸せな夢を見ることも出来ない。
 今の彼女にあるのは絶望、虚無、そして激しい憎しみだった。
 やがて一人の男が土倉に下りて来た。自分の目の前で後悔と慟哭をする男は、背後から黒い騎士に貫かれ死んだ。
 そして自分のサーウ゛ァントだった男が下りて来て、赤い石を使いナニカをすると、僅かだか痛みが引いた。
 そしてそのまま消えてしまったかつての従者を見ても、少女は何も反応しない。
 そしてどれくらいたったのだろう。時間の感覚が分からなくなってきた。
 やがて一人の見知らぬ人が降りてきた。
 小鳩よりも年上な、けれども女性というには若い年齢だ。
 少女の現状に顔色ひとつ変えず、ぎゃはっ!、と特徴的な笑い方で顔を覗き込み尋ねる。


 「介錯して欲しいつうんならしてやるけどどうする?」




ああ、もう自分は終わるんだ。
 結局自分は何一つ出来ずに終わってしまう。
 けれど、しょうがないのかもしれない。不順な動機で碌な覚悟も無いまま参加したツケが回ったんだ。
 もう、このまま楽に・・・


 “小鳩――――”


 楽に・・・・・?




 “どうした?また泣いてるのか―――?”



 このまま―――死ぬ?



 “泣くなよ!兄ちゃんが守ってやるから―――”


 嫌だ・・・兄に会いたい・・・死にたくない!
















 「たふけて・・・。」

 目の前の少女が言葉を発したのに気づいた出夢は、そのまま顔を近づける。
 死に掛けた少女の命乞いの言葉を聴こうと耳を傾けるが、それは出夢に向けて放った言葉では無かった。


 「たふけて・・・おにいちゃん・・・」


 バキィ!


 引き千切られた鎖が地面に散らばり小鳩の身体が前に倒れこむが、出夢はそっと抱きとめると慎重に小鳩を抱きしめた。

 「ハッ!人識のやつならこういう時傑作とかいうのかねぇ。」

 顔は皮肉気に笑い、けれどその瞳は複雑な感情を宿し小鳩を通して誰かを見ていた。

 「妹かよ・・・。」

 傷が響かぬよう慎重に背中に背負い直し、階段をゆっくりと上り始めた。





【3】


 「それでわざわざ戻ってきたのかい?」

 スザクは片腕を使いなんとか体勢を整えると自分が依頼した殺し屋、匂宮出夢に問いかける。
 当の出夢は気にした様子も無く窓の縁に腰掛けスザクを見返していた。

 「どの道こいつのサーウ゛ァントも取り返すつもりだったんだからよ、細かいことは気にスンナよ。」

 悪びれなく言われハアっとため息をつくと改めて連れてこられた少女を見る。
 傷だらけだった体は処置がされ今はベッドで横になり深い眠りについている。
 最初ボロボロになっている少女を抱えた出夢が玄関から入ったときはこの家の家主の老夫婦は卒倒したがかまわず部屋に上がり的確に処置をしていった。
 彼女が言うには闇医者の知り合いがいてよく治療を受けたときに自然に覚えたらしい。
 けれど、あくまでも応急処置なのでキチンと病院に連れて行ったほうが本当はいいのだろう。
 しかしサーウ゛ァントを連れずに入院し万が一他のマスターに知られたらおしまいなので動かせずにいる。
 (ここも見つかれば終わりなのだが病院よりはまだマシだと判断した)

 「心配しなくてもアサシンの旦那に頼んで探してもらってるからよ。それにそろそろ・・・」


 ―――――ピンポーン―――――

 「お、来たな。」

 そういってそのまま窓から飛び降りた出夢に唖然としながらも、今更心配するだけ無駄だと感じ気にしないことにした。

 「とりあえずはこれで我慢しろよお兄さん。動くくらいはこれで大丈夫だろ。」

 そういって渡されたのは義手と義足だった。あらかじめカードを使って用意してくれていたらしい。
 リハビリは必要だろうがこれで遠くないうちに戦線に復帰できる。

 「すまない、感謝するよ出夢。」
 「気にすんなよお兄さん。どのみち渡すつもりだったんだからよ。」
 「だが・・・」
 「そんなに気にするつーならよお兄さん。交換条件といこうぜ。」
 「条件?」

 その言葉に僅かに身構える。しかし出夢は大したことじゃないんだけどさと頭を掻き。

 「そいつをついでに守って欲しいんだけどよ。もちろん僕が仕事を終わらせる間だけでいいぜ。」
 「それは・・・。いや、わかった。必ず君が戻るまでこの子を守ると約束するよ。」

 弱きを助け悪を挫く。
 もう自分は騎士失格の男であっても、この騎士道はまだ捨てたくはないと思った。

 「決まりだな。」

 ニイっと笑い窓際に立つ出夢。

 「んじゃまあそいつのこと頼むぜおにいさん。」

 そのまま縁に立ち身を屈め、

 「ぎゃははははっ!!いくぜおらああああ!!」

 そして一気に跳躍し、町の中へと消えていった。




 【4】

 「だれもいないみたいだな。」

 衛宮邸に到着した慎二たちは中を探索し、だれもいないことを確かめると居間に腰を落ち着けた。
 キャスターは門番をさせてありライダーは霊体化してそばにいる。

 「おい、バーサーカー」

 慎二の呼びかけで姿を現すバーサーカー。
 その姿は出発したときと変わらずにボロボロである。

 「今からテキトーなやつを魂喰いをしてこい。戦えるようになったら戻ってこいよ。」

 バーサーカーは頷くと霊体化し消えていった。おそらく人の多い商店街の方にでも行ったのだろう。

 「さて、暫くは休息だな。お前が回復する間はキャスターとバーサーカーに戦ってもらうとするか。」
 「この拳王がこれしきの傷で遅れをとるとでも?」
 「だ、だれもそんなこと言ってないだろ!」

 僅かに殺気立つラオウの迫力に押され口篭りながら反論する。
 興味を無くしたのか霊体化するラオウ。反抗的な態度に高くない沸点を超えそうになるが深呼吸をし我慢する。
 ライダーの強さは疑っていない。間違いなくトップクラスの実力を持つだろう。
 魔力消費も戦うときは本人の気を使うため実体化の時以外は使わないため燃費はすこぶる良い。
 魔術回路を持たない自分には正直ありがたい性能である。
 だがもっと順応のサーウ゛ァントが良かった。令呪でこちらの言うことは逆らえないとはいえ相性が良いとは決して言えないだろう。

 (くそっ!まあいいさ、全部うまくいってるんだ。傷が治れば衛宮のあのセイバーでも倒せる!いや、あれも令呪を使って僕のものにしてしまえば僕の勝ちは揺るがなくなる!)

 クククと下種な笑いをもらす慎二、ライダーはその様子に不快な感情を隠せなかったがマスターに異を唱えることができない。
 しばらくは静観の構えでいいだろう。せいぜい他の参加者同士で潰し合っていればいい。
 柳洞寺で籠城しているマスターたちのことも気になるが今は下手に動くべきではない。

 (他のマスター達に情報を流してつぶし合わせるの悪くないかもしれないなぁ)
 頭の中で様々な策を立てていく。積極的に戦う必要は無い、潰し合わせて弱ったところを横から思い切り殴りつけるのが自分の戦い方だ。

 「そうさ、僕にはできる!できるんだ!!衛宮にも遠坂だって負けるかよ。勝つのは僕だ!!」

 高揚した気分のまま慎二は宣言する。自身の勝利を、貪欲なまでに勝ち抜く意思を。

 「聖杯を手にするのはぼk「小僧っっ!!!」・・・へ?」

 その言葉は最後まで紡ぐことはできなかった。
 彼が見たのは実体化したラオウが自分を押し倒し背後に庇う後姿。
 そして、天井を突き破って迫る炎と剣の大群だった。







 衛宮邸から離れた屋根の上、壊刃サブラクは佇んでいた。
 三体分のサーウ゛ァントの気配がする場所に気づかれぬ位置で監視し、他の二体が離れたタイミングで狙撃を行った。
 無論居間に残ったのが朽木スザクのサーウ゛ァントの可能性もあったが、他人のサーウ゛ァントを奪うような輩が、自分のサーウ゛ァントを遠ざけ他人のサーウ゛ァントを側に置くとは思えなかったので行動を起こした。
 しかし結果はそこまで芳しいものではなかった。


 「ふむ、しくじったか、まさか気づかれるとは、いや屋根に着弾した音に反応したのか
そして自分たちに到達するまでの僅かな時間でとっさにマスターを庇いダメージを最小限に抑えたか
屋外であればしとめることができただろうに、いやむしろ反応できた事に驚嘆するべきか
並みの相手では確実に今ので終わっていたのだが、なるほどなかなか一縄筋ではいかぬようだ
けれどもこのまま引くつもりもなし、殺し屋二人依頼を執行しようとしよう。」

 そして霊体化し衛宮邸に向かった。標的をしとめる為、暗殺者は動き出す。




5】


 門番の役割をしサーウ゛ァントていたキャスター、キンブリーは驚きを隠せなかった。
 何の気配も前触れもなく何かが屋根を突き破り屋敷を破壊したのだから。
 あれでは中にいたライダーたちもただではすまないだろう。

 「行くしかありませんね。」

 もしこのまま彼らが死んだのならそれは非常に好都合だ。
 だが万が一生きている可能性があるため確認しなければならない。
 止めをさせるならそれに越したことはないが五体満足で無事だった場合あの少年は駆けつけなかった自分に決して信用しないだろう。
 今の現状でも信用はされていないのだがわざわざ評価を下げることは無い。
 それに何らかの貸しを作ることもできるかもしれないのだ。
 様々な考えを頭に浮かべながら屋敷に入ろうとしたその時・・・

 「っっ!!」

 キャスターはとっさに横に転がりこむ。
 しかしかわしきれなかったのか腕を深く切り裂かれてしまった。
 だが治療している暇はなさそうだ。そんなことをした時目の前の人物はその隙を決して見逃さないだろう。
 見た目は少女だった。美少女といっても過言ではないだろう。
 しかし纏う雰囲気は決して普通とは言い難い。軍に在籍し様々な人間を見てきたキャスターは解る。
 あれは怪物だと。目を逸らした瞬間喉元を喰らい付く化け物だと。
 サーウ゛ァントであろうと関係ない。あれはそういうものだと理解した。

 (宝具ですか、少し厄介ですね)

 自分を傷つけたであろうナイフを片手で器用に回しながら、恐らくマスターである少女は笑っていた。
 その笑顔は決して人を安心させるものではなく、むしろ対極に位置する攻撃的な笑みだった。

 「マスターでしょうが、一体何者です?とても人間の身のこなしに思えませんでしたが。」

 その質問に、何がおかしかったのかギャハハハっと笑う少女。
 ひとしきり笑った彼女はまるで舞台役者のように大仰な身振りで返事をする。

 「何者?それは僕にいってんのかよお兄さん。ひゅー、しょうがねえなあ、聞かれたからには自己紹介しねえとなぁ!!ぎゃは!人気者はつらいぜ!!イエーっ!」

 そして哄笑。
 割れんばかりの哄笑。

 「ぎゃはははははははっ!」

 一歩前に近づく。
 焦らすように、脅すように。楽しむように、喜ぶように。
 彼女は高らかに自分の二つ名を宣言する。
 彼女は高らかに自分の忌み名を宣言する。

 「私は殺し屋依頼人は秩序!十四の十字を身に纏い、これより使命を実行する!」

 天に向かって吠えるように《彼》は言った。

 「僕は匂宮出夢・・・・《人喰い》(マンイーター)の出夢さ」



  to be Continued……




 【6】



 「くそ!いったいなにが起きたんだよ!!おいライダー!返事をしろっ!」

 間桐慎二は混乱していた。
 いきなりライダーが実体化したかと思うと突然剣が炎と共に天井を突き破って来たのだ。
 周りの様子を窺おうと身体を動かそうとして

 「痛っ!なんだよいったい・・・」

 目に映ったのは倒壊した屋根に押し潰された自分の足だった
 ソレを自覚したとき、痛みは一気に襲い掛かった。

 「ヒイイイイっ!痛いイタイいたい!!な、なんでぇ!?」

 なぜ自分がこんな目にあっているのか理解できず半狂乱で喚き散らす。

 「なんで!?なんで僕がこんな目にあってんだよっ!?おいライダー!!どこいったんだよ!早く僕を助け――」

 その続きを発することは出来なかった。
 彼にはとても珍しいことだが自分に起こった出来事よりも他者の状況に目を奪われた。


 圧倒的存在感を放っていた巨漢は、見るも無残な姿になっていた。

 筋骨隆々たる体躯は全身に大やけどを負っていた。
 鋭い角付き兜の角は根元から折られ、巨大なマントはボロボロに焼き焦げていた。
 鋼鉄よりも頑強な胸板には2本の剣が突き刺さっており、よく見ると右足にも刀剣が刺さっていた。
 そのの周りにも様々な刀剣類が突き刺さっており、足元にはおびただしい量の血液が散っていた。

 「ライダー!?お、お前・・・大丈夫かよ!?」

 慎二の呼びかけにゆっくりと振り返り―――

 「無事か?小僧・・・」

 そして慎二に近づくと屋根の残骸を取り除き秘孔を付き痛みを取り除いた。
 そしてライダーの手を借り立ち上がった慎二は、青ざめた顔でライダーをみる。

 「ライダーっ!?お前僕を庇って、ていうか傷を塞がないと!いやその前に此処から離れて―――」
 「小僧。」
 「なんだよ!?今必死に整理して―――」
 「来るぞ!」
 その言葉に慎二は理解した。この残状を行なった敵が来ることを。
 そして、それは現れた。

 幾重にも巻かれたマフラーのような布で顔を隠し、硬い長髪と黒マントの背の高い男。
 ステータスはそこまで高くなく全体的にCランクといったところ。
 魔力だけは以上に高いことからキャスタークラスかと当りを付けた。

 「キャスターが随分なマネしてくれたじゃないか。怪我しているとはいえ接近戦で僕のライダーに勝てると思ってんのかよ?」

 挑発気味に笑う慎二だったが、サブラクは取り合わず辺りに散乱した剣を一つ取ると無言のままライダーに突撃した。

 「小僧!離れておれ!」

 そして迎え撃つラオウ。
 拳王の拳が敵を砕かんと振るわれる。対するサブラクも剣を片手に応戦する。
 速度は互角、しかし筋力値ではラオウとサブラクでは隔絶した隔たりがあり、当然のように吹き飛ばされるサブラク。
 その姿にラオウは怒りを露にする。

 「この程度の傷でこの拳王を討ち取れると思うたか!!」

 そのままサブラクが吹き飛ばされた場所に気を放つ。
 あっけない終わりに落胆と、それ以上にそんな輩に傷を負わされたことに怒りを覚えるラオウ。
 下らぬ幕切れであったと背を向けようとし―――

 ヒュン!

 「ぬうっ!?」

 背後から刀剣と炎が迫り来る!

 「ふんっ!」

 気を拳に纏わせ迫り来る刀剣を炎ごと吹き飛ばすラオウ。
 そして放たれた場所に目を向けるとそこには無傷のサブラクが佇んでいた。

 「ほう、面白い。もっとこの拳王を楽しませてみよ!」

 そしてそのままサブラクに突撃し、サブラクもまた剣を構え迎え撃つ。
 伝説の拳法と超一流の剣技、二人の戦いは始まったばかり・・・



 【7】




 「ぎゃははははっ!!」

 「ぬぅ!これほどとは!?」

 《人喰い》匂宮出夢と《紅蓮の錬金術師》ゾルフ・J・キンブリーの戦い。
 押しているのは出夢だった。キンブリーは研究職の国家錬金術師では珍しく、ある程度の戦闘技術を持ち合わせている。
 生前軍に所属していたキンブリーは格闘技の心得もあり、また自らの二つ名である紅蓮に恥じない強力な爆破のスペシャリストである。
 イシュヴァールの戦いでは多くの戦果を残しており修羅場もくぐっている。
 それでもなお、身体能力、戦闘技術、経験値、どれをとっても匂宮出夢には届かない。
 本来彼が得意とするのは中~遠距離での爆破。接近戦で相手の体の一部や周囲のものを爆弾に変えることも可能であるが、そんなものは出夢がさせる暇を与えない。
 キンブリーは知る由も無いが、彼の能力は朽木スザクにより出夢に伝わっている。
 触れたものを爆破する能力ということしかスザクには解らなかったが、それだけで十分だった。
 出夢が取った対策は至極単純。触られないようにするという事だった。

 触れたものを爆弾に変える?そんなモン触れられなきゃすむ話だろ?

 錬金術による爆弾や地雷も、使う暇も無く、マスター相手に防戦一方という有様だった。
 ただのマスターなら問題なかっただろう。しかし相手は化け物じみた運動能力をもつ。
 さらに言えば手にしている短刀は宝具であり自分の身を削り肉を裂く。
 白いスーツは所々真っ赤に染まっていた。

 「おいおいおい!!その程度かよサーウ゛ァントつーのはよぉおお!ボクちゃん全然物足りませんてかあああ!」

 異常に長い腕から短刀が煌めく。キンブリーの胴を裂かんとした刃を紙一重でかわし後ろに下がる。
 そのまま周囲の瓦礫などを爆弾に変えようと試みるが―――

 「させるかボケェェ!!見え見えなんだよ!アホが!!」

 そのまま地面を跳躍しキンブリーの至近距離に入る。しかし間に合わず爆弾に変えられた瓦礫が爆発する瞬間―――

 「【一喰い(イーティング・ワン)】!!」

 出夢の左手がその瓦礫ごと《喰らった》
 これにはさすがのキンブリーも驚きを隠せず一瞬動きが止まる。
 その一瞬は《人喰い》相手には致命的な隙だった―――


 ザシュッ!

 出夢の右手に握られた【“戯睡郷”メア】がキンブリーの胴を切り裂き、キンブリーは地に倒れた。

 「グッ!此処までですか・・・」

 まさかこれほどのマスターがいるとは思わなかった。
 サーウァ゛ントに匹敵するマスターがいるとはだれが想像できる。
 もし自分のマスターがあんな小娘ではなく目の前の少女だったら、きっとこんな無残な結末は迎えなかっただろう。
 目の前には人の足、自分を倒した出夢の足だろう。腕を高く上げ短剣を振り上げる。
 訪れる痛みに覚悟を決め・・・止めを刺されないことに疑問に思い顔を上げる。

 「・・・・・っと、危ない危ない。」

 振り上げた短剣を下ろし懐にしまう出夢。

 「思わず止めを刺すところだった・・・殺しちゃあ、だめなんだよな。」

 そのまま膝を曲げしゃがみ込む。なぜ止めを刺さないのか疑問に思っていると・・・

 「あんた羽瀬川小鳩のサーウ゛ァントで間違いないよな?間違ってないよな?うん、僕はさる人物に依頼を受けてここのマスターをぶっ殺しにきたのさ。」

 そいつここにいるよな?

 最終確認するようにこちらに問いかける出夢に無意識に頷くと、その答えに満足したのか家に入っていく。

 「待ってください、あなたに依頼した人物とはいったい・・・。」  
 「おいおいおいおいおいおい。勘弁しろよ、お兄さん。クライアントの名前をホイホイ明かすわけないだろ。」
 「その通りですね。すみません忘れてください・・・」
 「ま、僕に言える範囲でいうなら朽木スザクから僕が依頼を受けたんだけどよ。ほら、あんたが両足吹っ飛ばしたあいつだよ。」
 「・・・・・・・・」

 殺し屋にあるまじき口の軽さだった。
 もし殺し屋が必要でも彼女だけには絶対頼まないだろう。
 殺人教唆で即刻逮捕される。

 「じゃあぼくはもう行くぜ。アサシンの旦那が心配なんでな。」
 「どうぞ、お気をつけて。最低限の役割は果たしましたから、ああバーサーカーが戻ってくる前に終わらせた方がいいですよ。」
 「ん、ドーモ。」

 そういって、匂宮出夢は屋敷の中に入っていった。
 その後ろ姿を、キンブリーは黙って見送った。




 【8】


 間桐慎二は目の前で起こっていることが信じられなかった。
 自分のサーウ゛ァントであるライダーの強さは、不本意ながらも認めていた。
 高ランクのステータスにEXランクの宝具。さらに世紀末の覇者と謳われたその戦闘能力。
 はっきりいえば、心の奥底で感じていたことを口に出せば、自分には不相応なサーウァ゛ントだろう。
 最初に彼を見たとき、優勝を狙えると、聖杯を手に入れることも不可能では無いと思った。
 それほどまでにラオウは圧倒的で、絶対的で、破壊的だった。  
 しかし今のラオウは、体中を真紅に染めあげ見るも無残な姿をしていた。


 最初はラオウの圧勝だった。全身のダメージなど無いかのようにサブラクに拳を打ち込む。
 サブラクも負けじと剣を振るい、ラオウを倒さんと切りかかる。
 しかしながらステータスが違う。敏捷値こそ同じだが、筋力、耐久をラオウが大きく上回りサブラクの剣をその鍛え上げられた肉体で受け止める。
 悲しいかな、サブラクのもつ刀剣類は宝具ですらない。気を纏わせたラオウの拳にぶつかった端から砕かれていく。
 普通ならこの戦い、どうやってもラオウの勝ちだっただろう。

 そう、本来ならだ。

 何事にも例外がある。
 ラオウはトキとの戦いで大きく負傷していた。
 それゆえサブラクの奇襲にもギリギリ反応できたにもかかわらず、迎撃が不十分だったため全身に大きなダメージを負った。
 さらにはサブラクが放った攻撃にはあるスキルが使われている。
 ある意味宝具よりもサブラクを表すにふさわしい能力、自在法“スティグマーダ”
 刀剣により傷をつけた傷全てにかかる自在法。
 与えた傷の治癒を封じ、時と共に広げていく。
 秘孔をついても止まらない出血。加速度的に蓄積される疲労。時と共に広がる傷口。
 時間が立つほどラオウの勝率は下がっていく。
 それを理解していたラオウは気力を振り絞りサブラクを倒さんと挑む。
 しかし何度拳を叩き込もうと、倒れない。
 何度気を放とうと、【壊刃】は砕けない。
 やがて当然のように訪れる結果。もはや立っているのもやっとなラオウと、無傷に佇むサブラクだった。

 「それほど傷を負おうとも膝をつかんとは、全く恐れ入る
もとは人間だっただろうに人の身でそこまで昇華するとは、人の可能性に驚きを禁じえんな
我がマスター然り、お前然り、人というのは馬鹿に出来ぬものだ
だがこれも戦争、これも闘争、依頼に基づき使命を全うする。」

 そして一歩一歩ラオウに近づくサブラク。
 ラオウは鋭い眼光を向けるがサブラクの歩みは止まらない。

 「なにやってんだよライダー!こんな!こんなところで僕は死んでたまるかよ!逃げるぞ!早くあの黒王号ってやつ出せよ!命令だ!」

 令呪の効力がラオウを縛る。Dランク程度の対魔力しか持たないラオウは、本来ならこの命令に抗えない。


 そう、本来ならだ――――


 令呪は間違いなく機能している。
 しかしラオウは黒王号を出さない。気力だけで令呪に反抗しているのだ。

 「なにしてんだよライダー!早くしろよ!?」

 しかしそれでもラオウが従わない。たとえ勝ち目が無くなろうとも。
 目の前に死が迫ろうとも。

 たとえ死ぬことになろうとも、譲れぬ誇りがあるのだ。
 それを捨ててしまえば、もう自分は自分で無くなる。男には、否、漢には!
 命よりも大事なものがあるのだ。




「このラオウ!!引かぬ!媚びぬ!省みぬ!!!」

 当然ながら今の間桐慎二には、そんな考えは理解できない。
 彼には譲れぬ誇りも死んでも貫く信念も無い。
 そんな物があれば彼はこんな所に立っていないだろう。
 けれどこのままでは自分たちが脱落することは誰の目を見ても明らかだった。
 だが二画目の令呪を逃走用に使っても、逃げた先で無事に済む保証はない。
 間違いなく目の前のサーウァ゛ントは追ってくるだろう。
 最悪他の参加者に討ち取られる可能性も高い。
 ならばこそ―――

 「令呪をもって命じる―――」

 間桐慎二の手から二画目の令呪が発動される。

 「勝て!!ライダァァ!!!」

 瞬間、ラオウの身体に力が漲る。
 そして限界を超えた速度でサブラクに束縛し、遠くへ投げ飛ばす。
 そのまま慎二から大きく離れると、最短動作で最大威力の攻撃を打ち出す。
 何度攻撃を食らわせても倒れない?
 何度気を打ち込んでも倒れない?
 良かろう、ならば肉片一つ残さず消し飛ばすまで―――!!

 「北斗滅天把!!」

 ラオウの放つ全身全霊の一撃が、サブラクを欠片も残さず消し去った。




 「やった!あれなら間違いなく死んだ!ははっ、ざまあ見ろ!僕のライダーは最強なんだ!!」

 衛宮邸から離れた場所で起こった爆音。
 恐らく自分の家を吹き飛ばしたあの技を使ったんだろう。間違いなく終わりである。
 自身のライダーの強さに気分は高揚し、最高にハイの状態になる。

 そして、彼の運命はそこで終わった。

 ゴキッ!!


 ―――――え?――――――

 180度に曲がる首、最後に間桐慎二が映したものは、自分を見下ろす黒髪の少女だった――――





 「小僧!」

 パスが途切れたのを感じ急いで戻った先でラオウが見たものは、ありえないほうに首を曲げた自分のマスター間桐慎二と、それを冷めた目で見下ろす黒髪の少女だった。

 「きさまぁ!」
 「お!あんたがこいつのサーウ゛ァント?ちょーーーと遅かったかな。あんたのマスター殺されたぜ。ていうか僕が殺したんだけどな!ぎゃはははっ!!」

 面白そうに笑う女にラオウの怒りが頂点に達する。
 もはや自分は脱落だ。体が端から崩れていく。限界を超え戦った反動が来たのだ。
 だがせめて、この女だけは!!

 「北斗剛掌波!」

 最後の力を振り絞り女に向け放つが・・・
 突然現れた黒い男が女を担ぎ攻撃の範囲から逃れる。

 「ばかな・・・お前は・・・」

 確かに自分が倒したサーウ゛ァント―――

 その思考を最後に、世紀末覇者、《拳王》ラオウは聖杯戦争から脱落した――――



 【9】



 「おつかれサブラクの旦那。無事で何よりだぜ。」
 「まさか門番のサーウ゛ァントを倒すとはな、足止めだけで充分だったのだが、
いや、このマスターが規格外なのは今に始まったことではないな、ともあれマスターも無事で何よりだ。」
 「んー、褒められてると解釈しとくぜ。」

 お互いの無事を確かめた二人は会話もそこそこに出発した。
 ラオウを倒した出夢たちはスザクが待つ家まで戻るためだ。
 全力疾走すれば一時間どころか十分もあれば着くのだが、さして急ぐ必要も無いので歩いて戻っていた。

 「こちらとしても助かりましたよ。おかげでマスターの元へ帰ることが出来ます。」
 「僕が頼まれたのは取り戻すところまでだから、後のことはそっちで決めてくれよ。」
 「解ってますよ。ふふふ・・・」

 間桐慎二の死と共に令呪の縛りから開放されたキンブリーは、自分のマスターの所に戻るため出夢たちの同行を申し出た。
 それに出夢も了承し、軽い情報交換を行いながら歩いていた。
 といっても出夢の受けた依頼内容と羽瀬川小鳩の安否くらいしか有益な情報が無かったのだが。

 「さてと、バーサーカーの野郎はどこいったかわかんねぇからな。お前知ってる?」
 「いえ、魂喰いをしに出て行ったのは知っていますが、場所までは・・・」
 「しょうがねえ、一旦おいとくか。もう一時間立っちまったから今日の殺戮は終了だしな。」

 そのまま歩き出す出夢を見ながら、キンブリーは思考する。

 (思いがけない展開になってくれましたね。あの忌々しいマスターをこの手で殺せなかったのはいささか残念ですが、それ以上に素晴らしい出会いを果たせました。)

 正直なところ、羽瀬川小鳩についてはほとんど興味を失っていた。
 ただ自分が限界するのに必要なだけで、そうじゃなかったらとっくに始末していた。

 (イズムですか。正直彼女のような人間がマスターであればよかったのですが。考えに入れておきますか)

 鎖から解き放たれた魔術師のサーウ゛ァント
 彼が今後どのような行動に移るのか、今はまだ誰にもわからない・・・



【深山町/午前】




【匂宮出夢@戯言シリーズ】
【状態:健康、残令呪使用回数3画、”戯睡郷”メアを所持】
※《一喰い》《暴飲暴食》の隙を解消し威力も向上しました
※ギアス発動下の枢木スザクの動き方を疑似的にではありますが修得しました


【アサシン(”壊刃”サブラク)@灼眼のシャナ】
【状態:健康、魔力消費(中)】


【キャスター(ゾルフ・J・キンブリー)@鋼の錬金術師】
【状態:疲労(中)、魔力消費(中)、全身ダメージ(中)】





【深山町・民家/午前】




【枢木スザク@コードギアス 反逆のルルーシュ】
【状態:疲労(小)、右腕骨折(処置済み)、義手・義足、残令呪使用回数1画】
※民家の老夫婦に預けられています
※匂宮出夢に《依頼》を行いました
※義手・義足を装着しました。慣れるにはある程度の時間が必要です
※羽瀬川小鳩を匂宮出夢が戻るまで守ります



【羽瀬川小鳩@僕は友達が少ない】
【状態:鼻腔粉砕骨折、歯全本欠損、呂律が回らない、右手指四本骨折、手足の爪破壊、、腹部にダメ—ジ(小)、額部上下共に骨折(軽)、肋骨骨折、右腕骨折、左足骨折、頬骨粉砕骨折、顔面の骨が所々骨折、両目視力低下(特大)、右耳の聴覚喪失、精神崩壊、気絶、残令呪使用回数2画】
※民家の老夫婦に預けられています
※拷問の傷を匂宮出夢によって治療されました(あくまで応急処置です)
【バーサーカー(ランスロット)@Fate/Zero】
【状態:ダメージ(中)、魔力消費(大)、右太腿に刺し傷(通常の回復手段では治癒不可能)、左腕欠損、】
※魂喰いを行いに何処かへと向かっています
※バーサーカーがどこへ向かったかは次の書き手さんにお任せします。


【間桐慎二@Fate/stay night 死亡】
【ライダー(ラオウ)@北斗の拳 死亡】

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