——嘘をつくのが下手な者は全てを嘘で塗り固めようとする
嘘をつくのが上手い者は嘘の中に真実を織り込む——


天海陸が人としての最後の良心を涙と共に流し去ろうとしていた、まさにその時

「 ば く は つ する ーーー!」

叫び声と共に若い男が厨房から転がり出てきた。
男は陸達には目もくれず、更に「火事だー!逃げろー!」と喚きながらNPCの死体の間を入口へと走っていく。

厨房からは乾いた破裂音が響き、ほんの一瞬呆然としていた4人は弾かれたように我に帰る。
まず動いたのはライダーだった。

「逃げよう!」

レストランから脱出してやや離れた場所から様子を伺う。
男の叫び声が響いてから15分ほど経ち、不審に思うには充分すぎる時間が流れた。

「爆発…しなくない?」

重い空気の中で口を開いたのはこなただったが、その疑問は正しく4人で共有するものだった。

「爆発どころか炎も煙も上がらないな…誤報だったのか?」
「でもさっきの人の慌てようは凄かったよね。音もしていたし」

更に突っ込んだ疑問を呈するライダーと応えるこなたの横でセイバーは考えていた。
この突発事態にどう対処するべきかを。
そして、彼は嘘を織り上げる。


「してやられたかもしれないな」

ぽつりと呟いた、そんな風に聞こえるように口火をきる。

「どういうことだセイバー」
「さっきの破裂音、軽すぎたように思えてきてね」
「まあ確かに、爆発というよりは単に何か破裂したような音だったな」
「厨房から音がしたから咄嗟にガス爆発かと思ったけど、ハッタリだったかもしれない」
「ハッタリだと?」

陸はセイバーの真意にはまだ気付いていないながらも上手く話を繋いでくれている。
(これならイケる)そう確信して事実と憶測を紡いでゆく。

「思い出してみれば火事だと騒いだ男も怪しいもんだよ」
「あの男はごくラフな服装だった、従業員の制服やスーツ姿ではなくね。つまり客の1人…それが何故か厨房にいた」
「確かにそうだ。あの時は爆発の危険を重視したから追わなかったが結局爆発は起こらなかった。つまり君はあの男を怪しんでいるんだね?」
「そう、彼いや彼等の目的…いや役割は僕達をあの場から引き離すことだったのかもしれない」

ライダーの反応に手応えを得てより深く切り込んでいく。

「引き離すってどういうことだ?しかも彼等ってことは他にも誰かいたってことか?」
「破裂音だよ。ガス爆発でないとしたら風船か何か、例えば自転車のチューブ辺りを破裂させた奴がいたかもしれない」
「火事だ爆発だと騒いで音まで立ててオレ達をレストランから追いやったってことか…」
「その辺までは間違いないと思ってる。問題は『なぜ』そこまでしたかなんだ」

陸とのやりとりを経、あくまで憶測だと前置いてセイバーは核心たる部分を口にする。

「彼等、いや、彼等を動かしていた奴の目的は遠坂凜の遺体だったのかもしれない」
「遠坂を!?」
「そう、聖杯戦争を知る彼女ならリク、君とは違って何らかの特別な能力を持って可能性はある」
「確かに凜ちゃんは聖杯戦争がどんなものか知っていたみたいだけどさ…」
「敵に襲われた時の対応からも彼女いわば場馴れしているのは分かった。だからその敵が彼女を調べたんじゃないだろうか?」
「実際に火事や爆発を起こさなかったのも調べる時間が欲しかったからだとすれば辻褄は合う」

マスターとしての力量、特殊能力の有無、或いは聖杯戦争そのものについて知りたかったから

そう言葉を結ぶと場は沈黙に包まれた。

「あの騒いだ男は敵のマスターかサーヴァントに頼まれたか操られていたんだろうね」
「だとすると凜ちゃんを殺した奴等はNPCを操る能力があるかもしれないのか」
「周りに他にも操られたNPCがいる可能性もあるしな。警戒しながら移動しよう」

今後の方針へと話を向けるサーヴァント達に向かって今まで黙り込んでいたこなたが口を開く。

「あのさ…凜ちゃんの家に行ってみたいんだ…ダメかな?」
「どういうことだい?」
「あたしってさ、聖杯にお願いなんてないけど、強いて言うなら家に帰りたいんだ
だから凜ちゃんにも帰りたい家があって会いたい家族や友達がいたんじゃないかなって
うまく言えないけどさ、聖杯戦争のことも含めて色々知りたいから、凜ちゃんから教えて貰う代わりにって…やっぱ無理かな」
「俺はいいと思うよ。まあ家探しってことにはなっちゃうけど凜ちゃんに聞く代わりだと思えば、ね。陸くん達はどう?」

よくよく考えた末のものであろう提案を語るこなたと賛同するライダーを横目にセイバーは考える。
(遠坂凜のサーヴァントがマスターの自宅に戻っている可能性があるな…顏を知らないはずとはいえ鉢合わせたら面倒かも)
(だけど僕が弱いのはバレているだろうし陸は一般人だと思わせているしここで離脱するのも却って不審かな)

そして答える。

「僕も反対はしないけど判断はマスターに任せるよ。ただ敵が既に遠坂凜宅を把握している可能性、
つまり戦闘になることも考えておかないといけないけどね」
「…オレ達も行こう、セイバー。遠坂には悪いが、道具なり日記なり役に立つ物は使わせて貰う」

陸の言葉がこなたに同調したように見せてその実自分達の為の宣言であることを察したセイバーは薄く笑った。

「じゃあ決まりだね。僕とリクも遠坂凜の自宅へ同行するよ」

惜別、悔い、決別、さまざまな感情のこもった一瞥をレストランに向けた4人はやがてゆっくりと歩きだす。
誰かが通報したのか、明けゆく空の下で遠くからパトカーのサイレンが響き始めていた。

◆ ◆ ◆

実のところセイバーことイスラ・レヴィノスの推測はほとんどの部分で真実を言い当てている。
『NPCを操って火事と爆発の危険を騒ぎ立て、4人をレストランから引き離す』
『その目的は遠坂凜の遺体』
事実、凜のサーヴァントであるキャスターはNPCを操ってまんまと凜の令呪を右腕ごと手に入れた。
イスラが保身の為についた『やったのは凜を殺した敵』という嘘すら、見殺しという意味では真実となる。
嘘をつくのが上手い者は——


【深山町・商店街/早朝】

【泉こなた@らき☆すた】
【状態】:左腕に大きな噛みつき傷(治療済)(残令呪使用回数:3)

【ライダー(火野映司)@仮面ライダーOOO/オーズ】
【状態】:疲労(小)


【天海陸@ワールドエンブリオ】
[状態]:疲労(小)(残令呪使用回数:3)

【サーヴァント:セイバー(イスラ・レヴィノス)@サモンナイト3】
[状態]:健康、魔力200%

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