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空飛ぶバカ、アストレアは目の前の異形がバランスを崩した事など気にも留めない。
剣を構え……クリュサオルで両断する。

ライダーとセイバー、空を飛ぶ2つのサーヴァントを相手に善戦し続けたテレサはついに大きなダメージを受けた。

「ガハァッ!」

足場のない空中で戦っていたため、当然地面まで自由落下する事になる。
空中で錐揉み回転しながらも、たった今自分を奇襲した魔術の使い手が誰か確認する。

(あ…あいつか!?)

アシュヒトが乱入者相手に戦闘しているその近くに4人の新たな参加者を視認する。
うち二人は既に見たことのあるバーサーカーの主従、もう片方はセイバーと思われる主従。
キャスターには見えず、恐らくは魔術を使えるセイバーが自分に魔法を放った形跡がある。
今の状況は、非常にマズい。

「セイバー!?」

自分の従者が大ダメージを受け、ついにアシュヒトの集中は途切れてしまう。
そこを対戦相手の金城は決して見逃さず、魔術師ならここが弱点だろう、とアシュヒトの喉元に拳を叩き込む。

「ガッ!?」

意識が一瞬揺らぎ、片手に持っていた銃を落とす。
2歩、3歩とよろめき、ショッピングモールの壁に倒れこんでしまう。
ノーガードの喉元を狙われたダメージは強く、ここにきて初めてアシュヒトの顔は苦悶に歪む。

セイバーがダメージを負った以外、なんと彼は未だ冷静を保っているのである。

「ゴフッゲホッ…」

彼の表情が歪んだのは己のダメージに苦しんでいるからではなく、喉が使えなくなった事に因る。
従者との会話なら念話で済むかもしれないが、必要なのは今、目の前にいる者達へ情報を伝える事。
ライダーのマスターはどこにいるか彼らは知らない。それを伝えなくてはならない。
今も尚、虎視眈々と自分を狙っているのだろう、それを彼らに伝えなくては……

「ガヒュッ…ガフッ……」

自分が銃を取り落とし、喉を潰されたことで金城は攻撃の手を止めた。
幸運にも相手に殺意はない、伝えるなら今しかない。

「グッ…ガッ……」

やはり音にならない。声帯を損傷しているのか、呼吸がひどく苦しい。
ヒューヒューと自分の喉が鳴り、使い物にならないと知る。



「ガッ……アァッ!……」

肩で息をしながら、なんとか無事な両腕を持ち上げる。
当然金城には警戒されてしまうが、仕方がない。
降参のポーズから——上を指して口を動かす。

ビルの上に敵がいる

最初に金城に蹴られたため、顎も強く痛み、そしてうまく動かない。
肩で息をしているため、指先もうまくライダーのいる摩天楼を指すことができない。

「?」

金城もアシュヒトが何か伝えようとしている事に気付いたらしい。
だがしかし、彼に対して何か云っても、彼にそれを受け取る義務はない。
前述の通り、金城は魔術師に対して強く注意深く接していた。
だからこそ呪文などを唱えられないように顎と喉を潰したのだ。
そして金城からすれば、アシュヒトは自分の目の前で殺人を行った人物。
その人物の発言に耳を貸す必要など何もない。

だが、明晰な持つ金城は決して思考を放棄したりなどしない。

(この男…一度も俺に銃口を向けなかった……?)

何より、ゲームに乗っているこの男が自分を殺さない理由など無い。
しかし、それが何を示すのか金城にはわからない。
もちろん自分が銃口を向けられないように立ち回って戦闘していた事もある。
本当にそれだけか…?

思考を一旦そこで遮り、金城はまた新たな客人へと向き直る。

「また会ったな……近藤!」

既に半額弁当を賭けて戦った仲、近藤剣司との早すぎる再開。
剣司のセイバーとは違う見知らぬ女子を二人従えているが、空気が先程と随分違う。

「こんのぉ〜!!」

先程までひどい目にあわされていた鬱憤からか、詩音はアシュヒトに殴りかかる。
手持ち無沙汰だったので素手で殴りかかり、顔面にグーをお見舞いするもベチッという軽い音しかしない。
フラフラで足元が覚束ない状態でそんな事をするから、当然詩音も倒れこんでしまう。

「無理すんなよ…」
「■■■…」

剣司とさやかが詩音を介抱し、なんとかまた立たせる。



アストレアは勝ち誇っていた。

「勝った!聖杯戦争・完!」

会心のドヤ顔を金城に向けるも、金城はいつのまにか来ていた新たなる来訪者との会話に忙しく、アストレアの事など見ていない。
とりあえず白いオバケを戦闘不能にしたものの、こいつを殺すかどうかはまだ決めていない。
こいつをぎっちょんぎっちょんにした事で、アストレアは満足してしまったのだ。
このアストレア、半額弁当を追い求める金城優に惹かれて顕現したものの、聖杯に願う希望など無い。
そもそも聖杯戦争が何なのかよく理解しておらず、とりあえず他のサーヴァントと戦ったら勝てばいいという程度。
英雄たるものオバケを退治すべきという謎の義務感に駆られて戦闘を開始するも、戦闘が終われば後は何もないのだ。
自分で決めなくてはと思うものの、彼女にとってオバケの処遇などどうでもいいのだ。食料のほうが重要である。

どうしたものか困っていると、見覚えのあるセイバーが話しかけてきた。

「こいつ、どうするの?」

剣と盾を構えたセリスが油断なく白い怪物に近づき、反撃の様子があるか確認する。
頭の悪いアストレアも、見たことのあるセリスに対していきなり剣を構えたりはしない。
足元で転がり、血を吐いている怪物とは違い、セリスは人間だった。
怪物を倒すのは英雄の義務でも、人間を倒すのは義務に含まれていたかどうかわからない。
金城から指示があれば戦うが、その金城はセリスのマスターである近藤と話をしている。
サーヴァントはマスターの指示で戦うものだが、勝手に戦闘を始めて——よかったんだっけ?

頭の上に?を飛ばすアストレアを他所に、セリスは白いモンスターを観察する。

肺を損傷しているのか、無理に何か喋ろうとしてもゲホゲホと血を吐くばかりで言葉にならない。
少しずつ傷は再生しているものの、動けるようになるには時間がかかるだろう。

何か言いたげな表情をした白いモンスターに、セリスは少し、不安を覚える。

(どうしてかしら、殺気を感じない——自分に何か伝えようとしているの?)

回復魔法をかければ、白いモンスターは口を開けるようになるだろう。
だが、この高レベルなモンスターは自分で太刀打ちできる相手ではない。

「う、う、え……ゲホッ」

その様子にただならぬものを感じ、セリスは放置する事だけはまずいと判断し、剣司を呼ぶことに決めた。
自分たちのほかに人のいないショッピングモールは、いつのまにか明かりが消えて静まり返っていた。
剣司達は剣司達で、まだ話し合っている。
白い怪物が今すぐ襲い掛かってくることはないだろうが、それでも急いだほうがいい。そんな気がする。



近藤剣司は金城優に、園崎詩音がこの男に誘拐されていた事、また詩音達が瀕死なので冬木教会に届けたい事を簡潔に伝える。
金城も呼吸の荒い詩音の容態を察し、彼自身も新たな情報を欲していたため冬木教会へ同行すると決めた。
索敵能力の無い金城では、冬木市中のスーパーをハシゴして参加者を探すしかなく、あまりに効率が悪いと考えていた。


『喉をやられました。セイバー、他の参加者にライダーの事を伝えてください』

『こっちも肺をやられた。悪いが今すぐは無理だ』

『仕方ありません、令呪を使います』

状況が一旦、落ち着いた事で、念話によりアシュヒトの主従は情報を交換する。
アシュヒトの主従はまだ緊張を捨ててはいない。
現在、殺意のない参加者(詩音除く)に囲まれている今がライダー主従を倒すチャンスなのだ。
この聖杯戦争に参加してから、多くの参加者に遭遇していたアシュヒトとテレサは、あのライダー達こそが優勝候補だと判断する。
ここで令呪を惜しむことが出来るわけがない。

(令呪を持って命ず、セイバー回復せよ!)

アシュヒトの手の甲から令呪が一角消滅する。
しかし、優も剣司も詩音も、そんな事に気付かない。
もう戦闘は終わったのだから。

「襲撃者って、結局金城の事かよ」

剣司が、ずっと心の中で考えていた事をポツリ、とこぼす。
金城とアストレアが、アシュヒトとテレサを襲った犯人か?

「いや違う、眼鏡の男とデカい男がいて、眼鏡がオッサンを殺したから俺は眼鏡と戦った」

金城はアシュヒトと襲撃者のやりとりを知らない。
ただ、ゲームに乗ったアシュヒトがいたから戦っただけ。

「じゃあ、襲撃者ってのはそのデカい男か?」

「いや、その男は無抵抗のまま銃で撃たれて死んだ」

それから先は金城優も多くは語らず、ただ、ショッピングモールの一角にある石畳の血だまりを指差す。
先程まで弁当を食べていた金城はわざわざそんなグロい物を見たくなどない。
折角食欲を満たしたのに、それを無駄にしてしまうのは嫌だったからだ。

「お…おぅ……」

近藤も似たようなもので、血だまりの位置は確認しても、それをまじまじと見たくはない。
彼もまた、折角手に入れた半額弁当を吐き出したくはないのだ。



しかし、生前の業からグロテスクなものは慣れている詩音だけは目を逸らさなかった。

「あれ……子供の死体じゃないですか?」

理由は伏せるが、つい最近子供の惨殺死体を見たばかりの詩音には石畳の血だまり、その内容がわかる。
どう見ても大人の男のものではなく、バラバラで潰れたパーツは複数の子供のもの。
だってほら、手首が4つある。

「銃で撃たれたのは子供じゃない、デカい男だぞ」

金城の訴えの通り、確かにアシュヒトの銃の口径なら大の男をミンチにすることもできる。
だが、転がる死体は詩音の言うとおりならば、子供のものなのだ。

「襲撃者って誰だったんだよ」

もう一度、剣司が同じ疑問を口にする。

「あの白い奴じゃないのか」

金城の見た情報からすれば、アシュヒトと白い怪物が襲撃者。
襲われたのはデカい男と、見知らぬサーヴァント。

どう考えても、襲撃者とその内役が合わない。
単なる得た情報だと、アシュヒト&白セイバーをデカい男&謎サーヴァントが襲い、更に金城が参戦した事になる。
しかしこれだと白セイバーが行方不明になり、謎サーヴァントやデカい男、白い怪物の説明ができなくなる。

「そういえば……」

詩音は最後に会った白いセイバーの事を思い出す。
他に何か言っていたような…それは今ここで大事な情報なのだろうか?

『「どうして見つかったんだ?」』

金城が索敵能力がない事について語っていたため、思い出す。
そうか、索敵能力があればサーヴァントは他のサーヴァントを探せるんだ。
詩音を見つけられなかったバーサーカーには間違いなく無い。

『「こっちにデカい何かが高速で飛んでくる」』

あの白い怪物、そんなに大きくはありませんよね。
そんなに大きい奴がいたのなら、金城は気付くんじゃないのか?

『「おそらくライダー」』

サーヴァントのクラスをよく知らない詩音には、よくわからない単語。
だが、詩音の従者はバーサーカー。金城と剣司の従者はセイバー。
ライダーなんてどこにもいないじゃないか。襲撃者はライダーなのに。

「あれ? 襲撃者はライダーだって言ってたような……」


「ライダー?」

たった今、新たに出された情報に剣司は混乱する。

白い怪物は乗り物に乗っていない。
ライダーはセリス曰く、騎兵のサーヴァント。
乗り物に乗っているのが当然で、それがあれば空だって飛べるはず。

今まで情報が欠落していたため、導き出せなかった最後の1ピース。
パズルが完全に埋まらなくてもその全体像がぼんやりと浮かび上がる。
剣司の天才症候群(サヴァン・シンプトム)である直感が答えを示す。

「デカい男が襲撃者で、そのサーヴァントはライダー」

優と詩音が疑問の目で剣司を見る。
人間の中では勘のいい部類に入る詩音と優でも、そこまでの超直感は持っていない。


「ゲホッ、ゲホゲホッゲホッ!!」

しかし、アシュヒトが大きく咽せ、剣司にそれが正解であると伝えようとする。
ここまで答えが導き出されたのなら、伝わったも同然だった。





主人たちから少し離れた場所でアシュヒトの従者は令呪の力により急速に負傷箇所を再生させる。

「う、う、う、え、か、ら」

セリスとアストレアがテレサの異変に気付き、剣と盾を構えなおす。
だが、やはり白いモンスターから殺気は感じない。
伝えようとするその言葉は何なのか。
白いモンスターの目がカッと見開き、上空を睨む。

「うえから来るぞ、気をつけろッ!」

上?

見上げたセイバー達が見たものは、上空からこちらを狙い、大きく口を開けた黒竜の姿だった。

「ドラゴン!?」

「え?なになに?」

元居た世界で何度か見た事のある光景に、セリスは英雄の盾を構える。
同じくアストレアも、慌ててイージス=エルを空に向ける。

騎竜ラジャイオンの、黒焔のブレスが放たれる。
黒い光の波動が、テレサ、セリス、アストレアを飲み込んだ。



(令呪をもって命ず、セイバーここへ!)

今のテレサでは避けられないと悟ったアシュヒトは2つめの令呪を使用する。

激しい光とその衝撃の余波で、さやかは咄嗟に詩音を庇い、アシュヒトはまた壁に叩きつけられる。
優と剣司は何が起こったのかわからない。

「「セイバー!?」」

光と衝撃が止み、自分達のセイバーが居たはずの場所を黒いレーザーが焼き払ったのを見て、優と剣司は驚愕する。

(間に合いませんでしたか)

「あっ……がっ……」

自分の傍らに、セイバー・テレサが現れる。
だがその姿は多大に黒焔のダメージを受けており、顔の半分以上が焼け爛れ、手足は炭になっていた。
美しい顔は見る影も無いが、だが瞳から闘志だけは未だ消えていない。

「セイバー!? セイバー!!!」
「セイバー、何処にいる!」

命を分けた半身の行方がわからなくなり、近藤剣司の超直感は無情に『セリスは死亡した』と告げる。
金城優は真の襲撃者たる黒竜を睨み、自分の手が全く届かない事に歯噛みする。
自分のサーヴァントが消滅した現実を受け入れたくないのか、彼の頭脳は上空の敵を倒す手段を今尚模索する。

「チェックメイトだ」

その場にはもう一人の男がいた。
黒い光の波動と衝撃に紛れ、隠していた身を晒した最後のマスター。
ベルンの覇王、ゼフィールその人である。

(体が…動かない……!)

彼の存在に気付いた優と剣司は、今更その圧倒的な覇気に気圧される。

(マスター4人とサーヴァント2体か)

彼が斧とも杖ともつかぬ武器を振り翳すと、それは一瞬で大剣に変化する。
そしてその巨躯で大剣を振り回し、最も近くに居た優と剣司を蹂躙する。
一瞬で二人の首を切り飛ばし、その肉体もまた雲散霧消する。

「■■■■■■■■■■!」

「え、きゃっ!?」

回転したそのまま詩音にも斬りかかり、魔法少女に変身しながら詩音を庇いに出てきたバーサーカーをバラバラにする。
詩音はバーサーカーごと弾き飛ばされ、豪奢なブティックのショーウィンドウに激突し、店内へと消えた。



(まだだ…!)

テレサは未だ諦めていない。
令呪による回復の効果は完全には消えておらず、彼女自身の再生能力を加味すれば
すくなくとも手足が動かせる程度までは回復できるかもしれない。

「まさかあの程度で死んでしまうとはな」

破壊し尽くされたショッピングモールを、狂王アシュナードが悠々と歩いてくる。
彼が期待したほど、他の参加者達は強くはなかった。
主人たる覇王ゼフィールの命がなければ、それでも少しは遊べたのかもしれないが……




時をもう一度、撒き戻す。



アサシンの主従と契約した以上、その主従の一番の敵となりかねない索敵の得意なセイバーをここで潰すことに、覇王と狂王は合意した。
だが、いざ戦闘を始めれば、狂王はなかなか敵に止めを刺そうとしない。
確かに、そう簡単に殺せる相手でないことはゼフィールにもわかる。
しかし、そうではない。この狂王は、あの白いセイバー相手に遊んでいるのだ。
考えていることなどわかる。
こうやって時間を稼げば、他の参加者を集めることが出来る。
そうなれば、主人たる自分も積極的な戦闘の許可を出さずにはいられない。
最初から自分のスタンスを崩させようと、この狂王は狙って遊んでいたのだ。
既に令呪を一角使用しているゼフィールでは、もうこれ以上の命令をする事は出来ない。
ふん。なるほど。
ならば。

他の参加者が少しずつ集まり始めた頃、ゼフィールはアシュナードに命令を下す。

『今、この場に集まっている参加者が何名か確認する事』
『他のサーヴァントが混戦に入った場合、アシュナードは命令が出るまでビルの上で待機する事』
『状況を上から常に報告する事』

この三つの命令を出した後、ゼフィールは騎竜から飛び降りてしまった。
予めセイバーとの攻撃の際に、ビルの壁面などに大きな穴を開けさせていた。
それは決して単なるNPCへの威嚇ではなく、最初からゼフィールの足場を作らせる目的であった。
テレサはそれを利用し、何度もアシュナードに向かってきた——アシュナードの作った、彼に有利な間合いへ。


ゼフィールは自分の作った足場を伝い、最後は居合わせたNPCを踏んで、着地する。
わざわざアシュヒトの前に出てきたのは単なるアシュナードへの嫌がらせの為ではない。
今後のために、是非ともここで試しておきたいものがあったのだ。

この聖杯戦争が始まって、ジョン・バックスに同盟を持ちかけられた時。
彼に一つ質問をした。
『この世界にわしとライダーが知らないであろう脅威はあるのか』
答えは『ある』だった。
火薬による重火器と爆弾の簡単な原理と威力の説明。
詳しくは己の英霊から情報を搾り出すとして——

彼らの脅威となり得る現代の武器、それを実際に見てみたかった。

ジョン・バックスとアシュナードからの説明で、
銃身が長いほど命中率と飛距離が増し、その代わり連射性と機動性が下がる。
口径が大きいほど威力が上がり、その代わり発砲の際の反動が大きくなる。
フルオートで敵を連続して穿つマシンガン、遠距離から狙撃するスナイパーライフル、そして小さい玉を放射状に射出するショットガン。
特に有名なものなどを例にあげられた。
なるほど、確かに脅威となり得る。
静寂を愛する彼だからこそ、銃の危険性と有益性を直感で理解する。
銃があれば容易に戦争を起こすことが出来てしまい、逆に銃があれば、すぐに戦争は静寂を迎える。

自分が降り立ったその先にいるこの男は銃とやらを使うのか———
それとも令呪で従者を呼ぶか。それでも一向に構わない。
向かい立つアシュヒトの後ろに他の参加者、金城が居る事もまた都合が良かった。
彼が見たいもの、試したいもの、その全てにとって、アシュヒトと金城は——
実に、好都合だった。

アシュヒトが狙い通り、銃の引き金を絞る。
距離はおよそ20メートル。
アシュヒトの銃、その銃身は、50という口径に比べて長くない。
反動の事も考えれば、威力と連射性にモノを言わせた速射のほうが得意なのだろう。
精密射撃をすればもっと命中率を上げられるのだろうが、今は関係ない。

ジョン・バックスとゼフィール曰く、拳銃は10メートル離れるとほとんど当たらないらしい。
5メートル程度が本来の射程で、30メートルも離れれば狙った場所には当たらない。
彼が凄腕だと仮定しても、あの口径ならば連射の本来の射程は20メートル程度だろう。
だから、ここからがもう一つ試したかった事である。

『恐怖』

アシュナードのステータスを確認した際、命中率と攻撃力に影響を与えると表示された。
ならば———サーヴァントではないにしろ、自分にも同じことは可能なのではないか?
最もサーヴァントに近い存在として、宝具を持ったまま召還された自分。
混沌を愛する恐怖の支配者アシュナードとは鏡合わせの、静寂を愛する恐怖の支配者ゼフィール。
サーヴァント相手には流石に無理であろう。
だがマスター相手になら有効なのではないか?

ジョン・バックスと相対した時、彼の目には確かに、自分に対する恐怖が映っていた。
なるほど、市政に携わる者ならば多少の修羅場は踏んでいるだろう。
その彼がここまで畏怖を抱いた自分だ、他のマスターに通じぬ道理はない。

そうして彼はアシュヒトの面前に、わざとNPCを踏みながら登場した。
これで少しでも自分に対して恐れを抱いてくれればいいのだが。

結果は——成功だった。
早々に土煙に紛れて身を隠したが、本来の目的は果たせた。
あとは、銃を撃った男の後ろに居た、新たな男が『ゼフィールが死んだ』と思ってくれればいいのだが。
人間、最も油断を晒すのは、『勝った』と思った時だ。
勘のいい人間なら、そこを狙う。
後は勝手に混戦してくれればいい。

アシュヒトは実際には勝った事に慢心などしなかった。ただ、金城の存在に気付かなかっただけ。
金城もまた、漁夫の利を狙ってアシュヒトを狙ったわけではない。

だが、結果は全てゼフィールにとって都合のいいものであった。
アシュヒトと金城は戦闘を始め、アシュナードと戦っていたテレサの相手はアストレアに成り代わる。

「わしを倒すために混戦を望んでいたのであろう、よかろう。くれてやる——」

後はもう、皆殺すだけ。

テレサの敗北を確認し、最優のセイバーが三騎集まったところで、対城宝具に匹敵する攻撃で一掃。
マスター共が慌てふためく中に登場し、マスター共を簡単に屠る。
恐怖の効果はやはり適用されるようで、二人の男は自分を見て身動きさえとれなかった。

途中、あまりにも弱いバーサーカーがいたが、特に問題はない。
主人ごと切り刻み、それで終わる。




残ったのは、いつのまにか焔から逃げ出していた、見る影も無いが白いセイバーと、自分を睨むアシュヒト。

「まさかあの程度で死んでしまうとはな」

破壊し尽くされたショッピングモールを、狂王アシュナードが悠々と歩いてくる。
彼が期待したほど、他の参加者達は強くはなかった。
主人たる覇王ゼフィールの命がなければ、それでも少しは遊べたのかもしれないが……

そうならないように自分が立ち回ったのだ。そうでなくては。

「残ったのはこれだけか」

アシュナードはつまらないものを見る目で、足元のアシュヒトとテレサを見下す。
それでも、アシュナードは芋虫のようなテレサの瞳に闘志を見出し、それを悦ぶ。

「最後まで抗うとはな。だが、力が足りん」


狂王アシュナードのグルグラントが翻り、テレサとアシュヒトの身体を消し飛ばす。

死体が粒子になった事を確認し、メダリオンの炎を確かめる。
アシュナードとゼフィールの他に何の反応も無い。


「流石ではないか、ゼフィール。この場での我が企み、完全に潰えたぞ」

この狂王を黙らせたければ、そう。戦う相手を奪えばいい。
これより先、当分戦闘はないと見込んで狂王は遊んでいたのだろう。
この狂王は、最優のセイバー3騎と最強のバーサーカー1騎相手に己が手で蹂躙したかったのだ。
ならば、本人にとって最も望ましくない形で勝利させてやればいい———

「フハハハハ、ここまで台無しにされては敵わぬ」

それでもさも愉快そうに狂王が嗤う。

だが、ゼフィールの表情は晴れない。

「無駄な手間をかけさせおって……」

周囲の崩れた建造物が、音も無く復元されていく。
まもなく、そこにはゼフィールの愛する静寂だけが残された。

「行くぞ、冬木教会に」







 ◇



「ヒィッ ヒィッ ヒィッ ヒィッ」

参加者は全員死んだわけではない。園崎詩音は、自分が生きている理由がわからなかった。
バーサーカーが死んだ!バーサーカーが死んだ!バーサーカーが死んだ!バーサーカーが死んだ!
詩音の心は錯乱を続け、取り除かれたはずの恐怖と絶望がまた襲ってくる。

ガチガチと詩音は銃を握る。
アシュヒトから没収した、鋼鉄の腕(アイゼン・デア・アルム)である。
キツそうだが、重火器を扱える自分ならと思って、こっそり金城たちに内緒で奪っておいたのだ。
金城も近藤も、誰が襲撃者なのかに夢中で詩音の行動になど目もくれない。
目聡く予備弾もいただき、これなら魔力を使わないと思っていた。
背中に隠しておいたため、ショーウィンドウに叩きつけられた際にすごく痛かったが——
背骨が折れなかっただけマシだろう。


「■■■■■■」

「バーサーカー…」

バーサーカーは生きていた。
魔法少女の姿になる途中で攻撃されたため、再生に随分と時間がかかってしまったようだ。
しかし、再生能力を知らなかった詩音には、降って沸いたような幸いである

「教会…は駄目だ、あいつらが、あいつらが!」

詩音は学生服のさやかに負ぶさり、ブティックを後にする。

「西へ…西へ行ってバーサーカー……」

つ、つよすぎる……
あんな奴ら、かてるわけがない——

直後、極度の緊張と混乱から、詩音は自分が再び気を失う事を実感し——
意識を手放した。


最後に、詩音とさやかがメダリオンに発見されなかった理由は当然、ある。
二人は既に、心が折れてしまっていたからだ。


 ◇


狂王アシュナード様の開く宴に、羊達は選ばれました。
それぞれの抱く殺意、闘志、絶望の炎が、メダリオンを蒼白く燃え上がらせるのです。
あなたの愛する人を失った悲しみも、あなたの勝利を目指す渇望も、等しくアシュナード様の贄となります。

覇王ゼフィール様は静寂を渇望しました。
狂王アシュナード様は戦乱を渇望しました。
お二方の渇望は、あまり満たされませんでした。

アシュヒト・リヒター様は恋人の復活を渇望しました。
微笑のテレサ様は己が復活を渇望しました。
残念ながらアシュナード様に切り刻まれ、お亡くなりになりました。

魔法使い金城優様は強者との戦いを渇望しました。
エンジェロイド・タイプΔアストレア様はお弁当を渇望しました。
残念ながら盾が小さすぎて身を守りきれず、お亡くなりになりました。

雛見沢の園崎詩音様は恋人の復活を渇望しました。
魔法少女の美樹さやか様には絶望しかありません。
果たして生き残れるのでしょうか?

竜宮島の近藤剣司様は思い人の復活を渇望しました。
セリス・シェール様には絶望しかありません。
残念ながら黒竜の焔は物理攻撃で吸収できず、お亡くなりになりました。


「弱者に夢を見る権利などない。そうは思わんか?ゼフィール」



【新都・ショッピングモール/黎明】

【ゼフィール@ファイアーエムブレム 覇者の剣】
【状態】:健康、疲労小 魔力消費中(残令呪使用回数:2)
【装備】:エッケザックス@ファイアーエムブレム 覇者の剣
     封印の剣@ファイアーエムブレム 覇者の剣
     冬木市の地図
【備考】:自身もサーヴァントのスキル、『恐怖』をマスター相手に使用できると知りました
     ※参戦時期は、ファイアーエムブレム—覇者の剣 十巻のロイ率いるエトルリア軍がベルン城に攻め入る直前からです。
     ※冬木市ハイアットホテルの最上階を拠点としました。アシュナードはキャスターではないので、魔術工房の類は一切存在しません。
     ※ジョン・バックスには拠点の個室にこの世界で違和感のない衣装と自動車を贈るよう、
      あらかじめ要請してあります。それらがいつ頃到着するかは次の書き手にお任せます。
     ※優勝すれば、願いが相反するアシュナードを粛清するつもりでいます。
     ※もし可能性があれば、機会あらばサーヴァントの交代を考えています。
     ※令呪の詳細は以下の通りです。
【方針】:冬木教会へ向かい、言峰神父に助力を申請する

【ライダー(アシュナード)@ファイアーエムブレム 蒼炎の軌跡】
【状態】:疲労小 魔力消費中
【令呪】:ゼフィールがアシュナードに対する全ての質問に対して、拒絶、沈黙、遅延の一切なく。
     己が持つものと聖杯に与えられた全ての知識を用いて、詳細かつ速やかに答えよ。


【園崎詩音@ひぐらしのなく頃に】
【状態】:気絶 疲労(大)全身に小さな裂傷と打撲(残令呪使用回数:3)
    :雛見沢症候群が発症しました。現在はL4です。
【装備】:鋼鉄の腕(アイゼン・デア・アルム)@エンバーミング
     鋼鉄の腕の予備弾@鋼鉄の腕(アイゼン・デア・アルム)
     ※残弾の数などは次の書き手にお任せします。
【方針】:深山町へ逃げる。冬木教会か、月海原学園で情報を得る。

【バーサーカー(美樹さやか):@魔法少女まどか☆マギカ】
【状態】:ソウルジェムの濁り中 学生服姿
【備考】:学生服姿でいる場合、魔力消費などが極端に下がりますが、ステータスも激減します。
     ステータスは下降時、筋力E 耐久E 敏捷E 魔力E 幸運Eとなります。
     この状態で攻撃を受けると、再生の時間が長くかかります。

【アシュヒト・リヒター@エンバーミング 死亡】
【テレサ@クレイモア 死亡】
【近藤剣司@蒼穹のファフナー 死亡】
【セリス・シェール@FinalFantasyVI 死亡】
【金城優@ベン・トー 死亡】
【エンジェロイド・タイプΔアストレア 死亡】
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