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アーチャーのサーヴァントが夜の街を駆けていく。
その真名を“DIO”——悪の帝王とも評される吸血鬼にして最強のスタンド使い。
DIOは高層ビルの屋上に降り立ち、東の空を仰ぎ見る。

「日の出まであと二時間といったところか——」
DIOは呟く。
サーヴァントになったとはいえDIOの本質は吸血鬼だ。
といっても、それは便宜上の呼称であり世間一般のそれとはやや性質が異なる。
ニンニクや十字架は苦ではない。
心臓に杭を打たれても痛手にはならない。
首だけになってもしばらくは生きていられる。
招かれなくても他人の家に押し入ることができる。
聖書や銀の弾丸にも怯まない。
流れる水の上だって歩みを止めることはない。
世間に知られている吸血鬼の弱点 をすべて克服したようなDIOだが一つだけ——乗り越えられなかったものがある。
吸血鬼とはおしなべて朝日を浴びれば灰になる運命を課せられている。
DIOもまた例外ではなかった。
あと数時間もすれば夜の暗闇は朝の光に駆逐されゆくことだろう。
それまでに身を隠さねばならない。死因が太陽光だなんてことになれば悪のカリスマの沽券に関わる。

「マドカは——ふむ、眠ったようだな。しばらく夢でも見ているといい」
彼のマスター、鹿目まどかは冬木ハイアットホテルの一室に避難させた。
まどかの個性の薄さならNPCの中に混じっておけばさほど危険はない——と最初は思っていたのだが。
早々にバーサーカーのマスターとニアミスしたことで方針の変更を余儀なくさせられたのだ。
ハイアットホテルへは正式にチェックインし、部屋を取っている。
支給されたクレジットカードの効果か、明らかに未成年とわかるまどかでも
ホテルのフロントマンは騒ぐことなく部屋のキーを差し出した。
厳重なセキュリティのあるホテルなら万が一にも他のマスターが偶然押し入ってくることはないだろう。
敵が本気で攻撃してくるのなら話は別だが、魔力反応のないただの人間のまどかが
ホテルの一室でじっとしているのなら発見される道理はない。

「まあ——ムーンセルもここで揉めるようなくだらん仕込みはしないだろう。
 すぐに決着が付く戦いでもない、拠点の確保は容易に行えねばな」
まどかは聖杯戦争という環境と敵マスターとの接触で過度のストレスを感じている。
一般人で あるまどかは決して精神的に強靭ではない。
休息は取れる内に取っておくのが利口というもの。
加えてDIOはまどかをホテルに置いていく際、単独行動中に消費した魔力をまどかから補填しておいた。
魔力消費による急激な疲労に襲われたまどかがきちんと手入れされたホテルのベッドで眠りに落ちるのは必然であっただろう。
そして——睡眠状態であれば魔力の回復も起きている時より早い。
もしこれから戦闘が起きてDIOの魔力が不足しても、眠るまどかから魔力を引っ張ってくることができる。

「さて、どうしたものか。一人くらいは狩っておきたいところだな」
もちろん、あまり大量の魔力を吸収するとまどかの体調に差し障るし、DIOが戦闘中——
つまりは誰かを殺そうとしているとまど かに知られてしまうかもしれない。
そうならないよう基本的には単独行動スキルを駆使して自前の魔力で戦うつもりだが、
緊急時の回線を確保できたことは決してマイナスではない。

「気になるのはあのアサシンのサーヴァントであるが——今から奴を発見するのは骨が折れるな」
アサシンはクラス特性として気配遮断スキルを備える。
索敵能力に優れたアーチャーとはいえ、戦闘状態でないアサシンを発見するのは至難の業だ。
時間をかければ太陽が登る。
DIOが日の出を見ることは死を意味する。
ならいま、アサシンを追うのは得策ではない。
安全を期するならもう地下なり家屋なりに身を隠すべきなのだが——
DIOは未だに一人のサーヴァントも討ち取っていない。
別にDIOが手を下さず とも他のマスター共は勝手に潰し合うだろうが——
何の戦果もないままこのまま休息するのもつまらない。
何より——活動時間が拘束される吸血鬼の特性上、日中は外を出歩くことはできない。
都市部の地下には広大な地下街が広がっているため、何もできないわけではないが——



「Hmmmm——ん?」
行動を思案していたDIOの目を——掠める影が一つ。
遮蔽物のない高層ビルの屋上、弓兵のクラスが持つ超視覚が、影の正体は自らと同じサーヴァントであると告げている。
脇目もふらず西から東へと跳んでいくそのサーヴァントはDIOに気付いた様子もなく——

「槍——ランサーか。既に幾度か戦っているようだな。マスターも弱っているのか?」
単独行動をし、傷ついたマスターを抱え、自身も消耗しているであろうランサー。
DIOは思案する——あのランサーを討ち取れるだろうか?
DIOは結論する——可能だ、と。

「フフフ——ランサーよ。何を慌てているのか知らんが——
 このDIOに見つかったのが運の尽きというものよ」
DIOは高層ビルの屋上から身を躍ら せる。
一直線に自由落下していくDIO。
目をつけたのは路上に停まっている無人の自動車たち。
DIOはアーチャーのクラス。
物を投擲するのはお手の物だ。
DIOの傍に立つもの——21、あるいは22番めの大アルカナを象徴する力あるヴィジョン——スタンド。
筋骨隆々の異形の戦士——その両拳に砕けぬものはない——たとえダイヤモンドであろうとも。
ザ・ワールドが居並ぶ自動車を片手で軽々と持ち上げる。

「では行くぞランサー。我が無敵のスタンド、ザ・ワールドの力を思い知るがいい」
ザ・ワールドの筋肉がバネのように撓み、1トンを超える自動車が次々に放り投げられ——ランサーの進路上に投射されていく。
ランサーは片手の槍を一閃——自動車が紙のように両断—— 爆発する。
だがDIOは落胆しない。
これしきでランサーを倒せるとは最初から思っていない。
DIOが魔力を込めたナイフならともかく、ただの自動車を投げつけているだけなのだからサーヴァントに通じるはずはない。
この攻撃の目的は誘導だ。
ランサーをDIOの望む戦場へと向かわせるための——

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァ!」
傷ついたマスターを抱えるランサーでは反撃に転ずることもできず——
そしてランサーには通じずとも、燃料に引火し爆発すればマスターはただではすまない。
弾丸はいくらでもある。別にこれでランサーのマスターを倒せるならそれでよし。
路上を疾駆しつつDIOは次々に自動車を天へ投げ放つ。
決してDIOの位置をランサーに悟らせない様に。
身動きの取 れない空中では狙い撃ちにできる。
ランサーは地上へ降下し、自動車爆弾の届かない地下街への階段を降りていった——DIOの狙い通りに。

「フハハハハハァ——! ランサーよ、これでキサマは袋のネズミよォォォ——!」
地下ならば太陽の光は届かない。
戦闘が長引こうとも心配する必要はない——ランサーを追ってDIOもまた地下街へと突入していく。
夜も深き地下街は明かりも最小限に落とされ、人の姿はない。
邪魔するものはない——ここはすでに帝王の狩場——ハンティングフィールドである。

「ほォう——殊勝ではないか。私を迎え撃とうというのか、ランサーよ。」
だが——DIOの予想を裏切り、ランサーはウサギのように逃げたりはしなかった。
地下の広場——存分に暴 れられる空間で、ランサーはDIOを待ち受けていた。
DIOは両五指にナイフを挟む。遠距離攻撃には向いていないが、
弓などと違い片手で、ワンアクションで投擲できる接近戦向けの武器である。

「マスターを隠して一騎打ちとは——古風ではないか。見た目通りの騎士ということか」
「そういうキサマはマスターを伴っておらんな——そして先程の攻撃——なるほど、アーチャーか」
DIOと対峙した蒼の槍兵は——ニヤリと笑う。
それは勝利を確信した笑みだった。



「ンン——気に入らんな。ランサーよ、キサマは今この私を——この悪の帝王を見下したか?」
「はっ、自分で帝王だなんて名乗ってりゃ世話ねぇな。キサマはせいぜい裸の王様というところだろうぜ」
「——よかろう、ランサーよ。キサマは——八つ裂きにして犬の餌にしてくれる!」
ランサーのあからさまな嘲笑——このDIOを侮った罪、万死に値する。
ザ・ワールドはまだ使わない。DIOは両手のナイフをランサーに向けて投げ放った。
瞬時にして音速を超えた剣閃の切っ先がランサーに迫る——だがランサーの余裕の笑みは消えない——

「そォら!」
DIOの全力を込めた投げナイフは——ランサーをすり抜けるようにその背後の壁へと突き立ち——あまりの威力に柄まで埋め込まれた。
驚愕するDIOをランサーの必殺の槍が襲う。

「ヌ——!」
「これで——」
「——勝ったと思ったか、ボケがッ!」
心臓を狙った一突きを——DIOは体を捻って何とか回避する。
だが完全にかわし切ることはできず、DIOの胸板に一文字の傷が刻まれた。
ランサーの追撃——今度は回避などできない、本気の攻撃——凄まじい気迫——死の予感——
槍は剣以上の射程——後退は間に合わない——ナイフを構えなおす時間もない——ならば。
ランサーの槍を掴む——筋肉に鎧われた逞しい腕——DIOのものであってDIOのものでない。

「ザ・ワールド——」
「こいつは——!?」
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァァァァァ——!」
「ぐうっ——!」
至近距離に踏み込んだのは、 ランサーの勝機にして、失策——
ランサーの眼前に出現したスタンド、ザ・ワールドが両拳を握る。
あらゆるスタンドの中で最速を誇るザ・ワールドのラッシュ——
敏捷性に優れるランサーとはいえ、すべて躱し切れるものではない。
ランサーは槍を回転させ防ごうとするものの——数十発のパンチを浴び、吹き飛んでいく。
一瞬の交錯。
DIOは胸に深い傷を負い、ランサーは全身にダメージを受けた。
だがお互いに、敵に怯んだ様子は見せない。
DIOは胸から流れる血を拭いもせず、ランサーはダメージなどないとばかりに槍を一振り。

「テメエ——本当にアーチャーか? 格闘戦に対応した心象具現化とはな。
 まったく、俺が会うアーチャーは変な奴ばかりだぜ」
「むう——血が止まらん。 ランサー、キサマのその槍。
 そして私のナイフをすべて躱すとは——」
吸血鬼であるDIOは通常のサーヴァントを優に凌駕する再生能力がある。
だが、胸の傷は何かに邪魔されるように再生が進まない。
そしてDIOのナイフは躱された——というより、
ナイフがランサーに当たることを拒んだかのようにそれぞれがでたらめな軌道を辿った。
アーチャーであるDIOが目標を外すことなど万が一にも有り得ない。
あるとするならそれは——

「ナイフ——違うな。察するなら飛び道具を無効化するスキルでも備えているか。チィ、生意気な」
「手負いと思って油断したか? だがアーチャー、キサマは俺と相性が悪いようだ——
 二度も同じ手は食わん。その首、いただくぞ」
とっさのこととはいえ切り 札のザ・ワールドを見せてしまったのは痛恨だった。
さきほど戦ったバーサーカーなどと違い、このランサーは戦い慣れている。
次からはザ・ワールドをも貫く攻撃を放ってくるだろう。

「首——首か。面白い冗談だ、ランサー。この私の首を取るだと? だが、あいにく——」
もはや手札を伏せておく意味もない。
ザ・ワールドを傍らに出現させ、DIOもナイフを両手に握る。
ランサーが突進してくる。
DIOは右に跳ぶ——本体から10メートルの射程を誇るザ・ワールドは左に。
迷わずDIOを狙うランサーを挟み打つ形になる。
スタンド使いを倒すのなら本体を叩くのが鉄則——だがこのDIOにだけはそのセオリーは通じない。



「フン、小癪な真似を。だがキサマ、生身でこの俺に敵うと——」
「無駄無駄無駄無駄——」
「む!?」
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄————」
「き、キサマ——!?」
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄——————」
生身ではあっても、吸血鬼。
ヤワな人間風情とは違う——その肉体強度はスタンドとだって殴り合える。
もちろんランサーに接近戦で勝てるほどではないが——少なくとも、瞬殺されることなどない。
爪のように構えたナイフでラッシュを繰り出す。
ランサーの槍を弾く、弾く、弾く。
そして一手目でDIOを倒せなかったランサーを、背後から本命——ザ・ワールドが強襲する。


「——ふるえるぞハート! 凍りつく ほどクール!
 WRYYYYYYYYYYYYYYYYYY!! 刻んでやろうッ! ザ・ワールドのビートッッ!!」
——そして時は凍りつく。
全てが停止する絶対領域——
ザ・ワールドの真骨頂——時間停止能力。
ランサーと言えども逃れるすべはない。
いかに飛び道具が効かずとも——
時間の止まった空間ではあらゆる回避は不可能である。
ランサーに叩き込まれるザ・ワールドの拳撃——そしてDIOのナイフ。
血は吹き出さない。
時間の止まった世界では現象は現実に追いつかない。



「——そして時は動き出す」
動き出した世界——
止まった時の中で行われたすべての現象は、堰を切ったように現実を侵食する。
ランサーは一瞬にして全身をズタボロにされ、崩れ落ちた。

「なん……だと……? 」
「すまんな、ランサーよ。このDIO、今のボディを捨てる気はないのでな。首をとられるわけにはいかんのだよ」
ランサーは己に何が起こったか、理解できていない。
当然だ、時の止まった世界に入門できるのは——DIOと同じく、時間を操る能力を持った者のみ。
これこそがDIOを最強のスタンド使い、そして最強のサーヴァントたらしめる力。
何者にも犯されない、DIOだけの世界。

「よくやったと言ってやろう、ランサーよ。まさかここまで私を手こずらせるとはな。だが——」
「ランサァァァ——!」
悠然とランサーにとどめを刺そうとしたDIOを止めたのは——どこからか飛び出してきた、銀髪の男だった。
その手には武器のつもりか、何の変哲もない鉄パイプが握られている。
DIO の頭部を鉄パイプが打ち据える。
DIOは避けようともせず受けた。
鉄パイプがぐにゃりと曲がる。
サーヴァントに通じるはずもない苦し紛れの攻撃だ、避ける価値もない。

「ほう、ランサーのマスターか。サーヴァントの危機にいてもたってもいられず——というところかな?」
「あ——ああ——」
DIOは微笑む。
さしたる勝算もなくサーヴァントの前に参戦した青年の勇気に、賞賛の意味を込めて。
対照的に青年の顔は歪む。
DIOの最も好む表情——恐怖の感情を貼りつけた顔だ。
優しく、愛撫するようにDIOは青年の首に手を掛ける。

「無謀だったな、ランサーのマスターよ。
 だが心意気は買おう——その眩しいほどの勇気に免じて」
「何を——してやがる! アーチャァァァ— —!」
「私が君を——天国に連れて行ってやろう」
「や、やめ——あぁっ!」
青年の命がけの抵抗を物ともせず、DIOはその鋭い牙を青年の首に突き立て、血を啜る。
吸血鬼の名が示す通りに。
ビクンと青年の体が跳ねるが、DIOの剛力で押さえつけられる。
並の人間ならものの十秒も絶たずに干からびる、DIOの吸血を受け——



「——Um? これはなんだ——マスターだからか? いや、違う——まさか——」
だが、青年は死ななかった。
血を一口飲んだDIOは、まるで塩水を飲んだような顔で——唇を離していた。
傷口から流れる血を一舐め。
青年がビクンと震える。

「うあぁっ!?」
「ほほう、これはこれは——なるほど——」
二度、三度血を舐め、やがてDIOは得心する。

「ふ——フハハハハハ! なるほどなるほど、そういうことか! スタンド使いは惹かれ合う——」
「あ——え?」
「私と君は! ここで出会う運命だったのだな! ハハ、ハハハハハハハ!」
「な、何を言ってやがる——?」
「ランサーよ、喜ぶがいい! 私はお前を殺しはせん。
 君のマスターは——これから私の友人 となるのだからな! フハハハハハハハハハ!」
哄笑するDIOはランサーにニッコリと笑いかける。
DIOの掌がボコリ、ボコリと盛り上がる——内側から生まれ出る——肉の塊。

「悠——!」
瀕死にもかかわらず、ダメージなど負っていないような俊敏な動きでランサーが飛びかかってくる。
DIOは青年を捕まえたまま悠然とザ・ワールドを生み出し——

「ロードローラーだッ!」
天井まで4メートルもない狭い地下街の中、DIOは宝具を開放する。
それは車というにはあまりにも大きすぎた。
大きく、ぶ厚く、重く、そして大雑把すぎた。
それはまさに重機だった。
かつて空条承太郎との戦いで使用した大型重機、ロードローラーを宝具として昇華させたもの。
それを、一直線に向 かってくるランサーへと放り投げた。

「おおおおおおおおぉぉっ!」
狭い地下街、天井と地面を砕きながら迫ってくるロードローラー。
回避するのは簡単だが大きく横に迂回しなければならない。
ランサーはそんな迂遠な方法を選ばなかった。
全身の力を込めて槍を放つ。
ロードローラーの中心へ突き立ったランサーの槍は——ガラスのように重機を貫き、砕きせしめた。
別にDIOに取っては惜しくもない。
宝具といえど、あんな大雑把なものが戦闘でそうそう使えるはずもないからだ。
正面からDIOの宝具を破壊してのけたランサーが見たものは——

「悠——?」
悠然と手を伸ばすDIOと——

「悠、というのか、君は——もっと君のことを知りたいな。教えてくれないか?」
「はい、DIO様。俺の名前は鳴上悠です」
DIOの手にまるで絹糸のように優しく触れる——彼のマスターの姿だった。



「槍を向けるな、ランサー。我らはもう敵ではない」
「何を言ってやがる! 悠、そいつに何をされた!?」
「落ち着け、ランサー。もういいんだ。戦う必要なんてない」
激するランサーを置き去りに、DIOと悠はまるで旧知の仲のように親しげに手を取り合っていた。
ランサーの視線は悠の額にうごめく醜い肉の塊に注がれていた。

「うん? これが疑問かランサー。これはな、私の体の一部だ。
 こいつで少し、脳を押してやるとだな——なんと! 私と友人になれるのだよ!」
「そうなんだ、ランサー。DIO様は敵じゃない。DIO様は俺たちを天国へと連れて行ってくれるんだ」
「なに——言ってるんだ? 悠?」
「ランサー、俺たちは間違ってたんだ。DIO様に歯向かうなんてどう かしてた。
 こんな戦いで優勝しなくたって、DIO様が俺たちの願いを叶えてくれるんだよ」
満面の笑みで、彼は言う——DIO様こそが救世主——セイヴァーだと。
そこに疑問の色はまったくない。
鳴上悠は心の底から、DIOを心の友だと信じている。

「悠を——支配しやがったのか——!」
「人聞きが悪いな、ランサー。なあ悠、私と君は——友達だよな?」
「はい、DIO様。あなたの言うとおりです」
DIOが悠に与えたもの——それは肉の芽。
吸血鬼DIOの体の一部。
人の脳に寄生し、DIOの忠実な僕へと命令を送る悪魔の芽。

「なあ、悠——私は疲れた。少し休みたいのだが——
 この街は人が多くて騒がしい。そうは思わないか?、」
「その通りです、DIO様。俺が——俺とランサーが、他の マスターを間引いてきます」
「ユウゥ——君は素晴らしいな。私の望みを、口にせずとも察してくれる。
 君こそ私の親友、いや心の友だ」
DIOが悠の頭を撫でる——ランサーの顔が絶望に歪む——心底嬉しそうな悠の顔を見て。

「アーチャー、許さねえ——キサマ、必ずこの俺が——!」
「ランサー、一つ忠告しておこう。この肉の芽は——私を殺しても外すことはできんぞ」
DIOは人の絶望を好む。
ランサーの苦しみがさらに深まるように——悠の肉の芽を撫でつつ。

「な、に?」
「この肉の芽は私の魔力をエネルギー源としている。私を殺せば——
 魔力を絶たれた肉の芽は、新たな餌を求めて宿主を食らう——わかるか?」
ランサーの闘志を最後の一片まで奪うために——DIOは告げる 。

「暴走、するのだよ。脳に留まっていた肉の芽は全身にその触手を伸ばす——
 さて、そうなったらどうなると思う?」
などというDIOとて実は知らぬことだが——
肉の芽を埋め込まれ、魔力を絶たれた者は——人でなくなってしまう。
なんでも治すスタンドでさえ治療できないほどに醜悪な——ただの化物に。

「死ねるのならまだ運がいい。記憶も、思い出も、すべて失って——
 哀れな、ブタ以下の獣になる。ランサー、君はマスターを獣に貶めたいのか?」
「——キサマ」
射殺されそうなランサーの視線を——そよ風のように受け流すDIO。
ハッタリだが、真偽を確かめるすべはランサーにはない。
なにせ彼のマスターの命が秤に乗っているのだから、賭けに出ることもできない。

「まあ、この聖杯戦争には高ランクの対魔力宝具を持つサーヴァントもいるかもしれんな。探してみるかね?」
肉の芽が宝具である以上、それ以上のランクの魔力を打ち消す宝具をぶつけられれば解呪されてしまうのは自明の理。
そう、解除の可能性がないわけではない。
ないが——

「それもいい。だが——悠。君は肉の芽——
 私との絆がなくなることを願うだろうか? だとしたら、私は悲しい——」
「DIO様、それはありえません。俺はDIO様の部下——
 この肉の芽は誇りです。手放すことなんて決してありえない」
ランサーがそう望んでも、彼のマスターはそうは望まない。
果たしているだろうか——マスターは殺す気で攻めてくるのに、
サーヴァントが助けてくれなどといって信じるお人好しが。
いはしまい。かのジョースターの血統のような正義狂いなら話は別だが——



「フフ——安心したよ、悠。
 ならば君の忠誠に——私も報いねばならないな」
DIOが悠に再度手を伸ばす。
悠がDIOの手を取る。
DIOが悠を生かした理由——それは悠の血を吸ったことにより知った、悠の中に眠る力。
血は魂の情報そのもの。
そしてDIOは誰よりも血を理解する吸血鬼。
そして、DIOが操るスタンド——もう一人の自分——運命に立ち向かう力——
悠が操るペルソナと、形こそ違えど本質は同じ。
悠はペルソナを失ったのではない。
ただ、眠らせているだけ——ならば。起こしてやればいい。
肉の芽を通じてDIOは悠に自らの魔力を送信する。
その繋がりは、言うならば絆——コミュニティとよべるもの。
DIOの魔力が悠の全身を駆け巡り、やがて一つの像を成す。
それ は彼があるべき未来で手にするはずだった絆の証——その、マガイモノ。



我は汝……汝は我……
汝、ついに偽りの絆を得たり。

偽りの絆……それは即ち、肉の芽なり。
今こそ、汝には見ゆるべし。
”世界”の究極の力、”伊邪那岐禍津大神”の汝が内に目覚めんことを……



「——イザナギ!」
黒いコートを翻し、鋭い矛を携えた、悠には見覚えのあるシルエット——イザナギの誤った進化の形。
名を——伊邪那岐禍津大神(イザナギノマガツオオカミ)。
だが、悠はそれが間違っているとは気付けない。
なぜなら——伊邪那岐禍津大神は、敬愛するDIOの力を得ることで誕生した、彼だけのペルソナであるからだ。

「それが君のスタンド——いや、ペルソナ、か。 やはり私の感じた通り——君と私は惹かれ合う運命だったようだ」
「DIO様——感謝します。この力で、俺は——」
ランサーは、期待した。
悠が目覚めたその力でDIOに一矢報いてくれることを。
従っているのは演技だと。
だが——

「あなたが天国へ至れるよう、励みます——ご期待には、全力で!」
絶望の先にあるのは、次なる絶望だけなのだ。
悠の心は完全にDIOのに奪われた。
勝ち誇ったDIOの笑み。
勝者が全てを手に入れる——それがこの世の真理。
這い蹲るランサーに目もくれず、DIOと悠は——DIOの傀儡と成り果てた彼のマスターは、熱い抱擁を交わした。

「では——悠。私は行くよ。そうだな、私も携帯電話を買うよ。
 君の携帯のナンバーは覚えた——すぐにかけるよ」
「お待ちしています、DIO様」
悠々とDIOは去る。
背中を向けているのに、ランサーは何もできず見送るしかなかった。



「フフフ——ハハハハハ。こうもうまくいくとは、やはり私こそが世界を統べる帝王なのだなァ。ハハハハハハ!」
休息中もDIOの代わりに動く手駒を手に入れた。
悠からセイバー二組、ライダー二組の情報も手に入れた。
順風満帆だ。
風は嵐の勢いでDIOに吹いている。

「おっと——忘れていた。どこかで食料を調達せねばな。」
ランサーに付けられた傷は未だ閉じない。
が、どこかで適当なNPCから血を吸い尽くせばすぐに完治するだろう。
何も問題はない。




「Hmmmm——すこぶる爽やかな気分だ。
 新しいパンツをはいたばかりの新年の夜明けのようだ——
 おっと、私は太陽は拝めないんだった。ハハハ——フハハハハッ!」




これがDIO。
人間を支配する 、悪の帝王である——






【新都・冬木ハイアットホテル/早朝】

【鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ】
 [状態]:睡眠(残令呪使用回数:3)


【新都・地下街/早朝】

【アーチャー(DIO)@ジョジョの奇妙な冒険】
 [状態]:負傷(軽微)、魔力消費(大)
  ※宝具“ロードローラー”は破壊されました。再召喚は不可能です。
  ※鳴上悠より、彼が交戦した全てのマスター・サーヴァントの情報を得ました。
  ※鳴上悠の携帯電話のナンバーを記憶しています。


【新都/早朝】

【鳴上悠@ペルソナ4】 (残令呪使用回数:2)
 [状態]:肉の芽、疲労(中)、精神力消耗(大)
 [持ち物]:大鹿のルーン石@Fate/stay night、携帯電話
  ※携帯電話には枢木スザクの番号が登録されています。
 [伊邪那岐禍津大神]保有スキル:メギドラ、勝利の息吹、コンセントレイト、大天使の加護、アギラオ、ブフーラ、ジオンガ、ガルーラ
  ※DIOとのコミュニティ“世界”のレベルがMAXになり、ペルソナ“伊邪那岐禍津大神”が覚醒しました(絆アイテム:肉の芽)。
  ※伊邪那岐禍津大神の外見はコートの黒くなった伊邪那岐大神です。ただし肉の芽に支配された状態からの覚醒であるため、能力は弱体化しています。
  ※肉の芽はDIOが死ぬと暴走します。解除するには精密な動作で頭蓋から引き抜くか、Aランク以上の魔力を打ち消す宝具を使用するしかありません。肉の芽が解除されると“伊邪那岐禍津大神”も消 滅します。
  ※スキル:勝利の息吹により、時間経過で体力・魔力が回復します。

【ランサー(クー・フーリン)@Fate/stay night】
 [状態]:魔力消費(大)、ダメージ(大)
  ※原初のルーン発動時のステータスは以下の通りです。
   【筋力】B+ 【耐久】B+ 【敏捷】A 【魔力】A+ 【幸運】E 【宝具】A
  ※参戦時期はセイバールート、ギルガメッシュに倒された後です(記憶は継続しています) 。
  ※令呪の力により、四十八時間後まで枢木スザクとバーサーカーには攻撃できない。ただし、『先に攻撃されて反撃する場合』においてはこの限りではない。
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