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Burning Ambition


「さて、それではお手並み拝見と行こう。
 ――貴様が我の主に、相応しいか否かをな」

――冬木市ハイアットホテル。
間近にあるセンタービルを除けば、冬木市で最も高い建造物であるその屋上で。
二人の王は、無数の照明で輝く夜景を見下ろしていた。
いや、より正確に言うなら睥睨していた。

ゼフィールがジョン・バックスに同盟の見返りの一つとして
「建造物の全高が最も高い拠点を提供せよ」と要請した所、
宿泊施設として早急に案内されたのがこの施設である。

その最上階は、市長の計らいでフロア全体が貸切となり、
休息するにあたり最上の快適な空間を約束している。

――だが、それは市長が王に遇する礼儀という理由だけではなく。
いざとなれば、己のアサシンや他の参加者のサーヴァントを呼び込んで、
最小限の騒乱で彼を暗殺するのにも都合が良いという利点も含んでいた。
市長とて、隠蔽出来るものには限度がある。
ならば、目撃者は出来るだけ少ないに越したことはないのだ。

ゼフィールとて、戦人である以上に魑魅魍魎の跋扈する宮廷を統率する君主。
その見え透いた企図など百も承知ではあるのだが、戦略的優位が警戒に優り。
素知らぬ振りをして、この場の提供を受け入れていた。
――そして今、こうして冬木市を俯瞰する為にこの屋上にいるのである。

ジョン・バックス市長へのこの場を提供させたのも。
今、こうして冬木市を屋上から見下ろしているのも。

全ては理由あってのことであり。
その行動には一切の無駄がない。
いや、この王にとって「意味のない遊び」など取り得ない。

世界の「解放」。その理想の実現の為には、
一々無駄な事にこだわる暇など持ち得ない。
それこそが、エレブ大陸の覇王であるのだから。

そして、その狂王の傲岸不遜な挑発に。
返答すら煩わしいとばかりに、冷たく光る瞳のみをそちらに向け。

「ベルン国王ゼフィールが、我が従僕に令呪をもって命ずる」

――意にも介さぬ態度で、狂王にただ絶対の強制のみを施す。

「――我の汝に対する、全ての問いに対して。
 拒むことなく、黙することなく、滞ることなく。
 汝が持ち、また与えられた全ての知識を用いて、
 詳細かつ速やかに答えるべし」

右手の甲が閃光を放ち、そこに描かれた模様の一画が消え。
サーヴァントに対しての、令呪による枷はここに為された。

ゼフィールには、これまでに迷いがあった。
令呪を何時、如何なる内容で使うべきかを。


――アシュナードの話しが確かであれば。
マスターである証にして、従僕への絶対の命令権であるこの令呪。
全て失えば失格となり、従僕諸共に消滅する。
故に三度ある令呪は事実上、二度しか使えず。
さらに内一度は、この不遜な従僕を優勝後に自害させるために温存せねばならぬ。
そうなれば、己にとって自由に使える令呪は僅か一度しかないのだ。

そして、これは単なる従僕への鞭に留まるものではなく。
使い方次第で主の援助にもなりえる貴重なものであり。
慎重に慎重を重ねるべき、切り札の一画である。
――だが、ゼフィールは即断した。

聖杯戦争に関する全てのルール。
ムーンセルという万能の願望機の力。
冬木市という異世界の都市の概要と法律。
七種あるサーヴァントの特徴とマスターとの関係。
何より、マスターのみが持ちえる令呪の重要性…。

それらの情報は、全てアシュナードより与えられたものではあるが。
己の愉悦の為にどこかで嘘を織り交ぜている可能性がある以上、
嘘を付かれても良い前提で組める戦略は極めて限定されてしまう。

それは己の手足をいつ不意に縛るものか知れたものではなく。
何より、それは真偽の確認に大幅な遅延を強いられる事になり。
戦略の遅延は行動を後手に回らせ、生存すら危ういものとする。

――元より、「兵は神速を尊ぶ」。

入念な事前の諜報活動と電撃戦により、元いる世界でも戦略上の優位を築いた
ベルンの狂気の王は、情報と機動力の重要性をこの場の誰よりも認識していた。

故にこそ、ジョン・バックスやアシュナードといった潜在的な敵に踊らされる事なく。
確実に偽りのない情報を得るために、令呪の力をもってそれをライダーに強制する。
それこそが、令呪の使用に値する極上の効果であるが故に。
そして、その結果は――。

「ククク…、そう来たか?実に、考えたものよ。
 確かにその命令なら、我への枷にして貴様への援助にもなる。
 何よりより確実な情報が約束される。流石は我が主という所か。」

――少なくとも、令呪に関する事において、
アシュナードの言葉に嘘はなかったようだ。

アシュナードはその企図を即座に見抜き、賞賛の声を送る。
その弾んだ声には、己に枷を嵌められたものにも関わらず。
主に対する、掛け値無しの賛辞というものがあった。

「…では、早速だが答えてもらうぞ狂王よ。
 これまでの貴様の説明に、嘘偽りや意図的に伏せた部分があったか否かをな」

これまでの話しを一々聞き返すのも面倒とばかりに。
ベルンの狂王は、己が従僕に簡潔に問い。
デインの狂王は、己が主君に詳細に返す。

「そのようなものなど、一切ない。そもそも我らは勝利する為にここに来たのだ。
 貴様を試す事は有り得ても、致命的な偽りなど交えようものか?
 そのような事をしては、全ての作戦に支障をきたすわ」

その饒舌さは、彼が令呪により強いられたというよりは、
むしろ自ら望んで話すかのような喜色が声より伺え――。
人の王は、さらに魔人を試す。

「では、重ねて問おう。狂王よ。
 貴様はこの聖杯戦争とやらで優勝した際、聖杯に何を望む?
 そして、願いを叶えた後に。このわしをどうするつもりだ?」

「ククク…。我の願いは、既に半ばは叶っているのだがな?」

狂王は肉食獣の笑みを満面に浮かべ、ただ声もなく哂った。

「まずはこの世界に根差す、自律した真の肉体を我は得る。
 貴様に寄生せねば成り立たぬ仮初の存在のままでは、話しにもならぬからな?
 その後にこの聖杯戦争を、世界規模で再現を行う。それこそが我が望みよ。
 世界は闘争と刺激に満ち、不合理なる秩序は残らず一掃されるだろう。
 そして勝者が全てを得、世界を変革する奇跡が与えられるという訳だ。
 …無論、“静寂に満ちた世”とやらを叶えるという自由もある。
 それこそが、真の平等というものであろうが?」

――そして、初めて己が主へと向き直る。

「そして、貴様は用済みだ。どことなりとでも消えるがよい。
 ただ我の前に立ち塞がるなら始末する。それだけの話しよ」

己が主を、徹頭徹尾道具としか見倣さぬその傲慢をなんら隠す事なく。
この暴虐のライダーは己が本心を誇らしげに語る。
それが、主の心証を致命的に悪くするものである事であるにも関わらず。
――ゼフィールは、それをもって令呪の効用を確信した。

「ほう。やはり令呪は効いているようだな」
「…疑っていたか?我の言葉を」

臆面もなく不忠を誇るアシュナードを前に、ゼフィールは短い嘆息を漏らす。
――いや、面従腹逆よりは分かりやすい分マシだと考えるべきか?
ならば、こちらも精々利用すればよいだけの事。

ゼフィールは早々にこの狂える暴君に見切りを付け、
こちらも駒として扱う事に徹する事を決めた。

「…当然だ。貴様の言葉など、全てが信に値せぬ」

だが、これまでの言葉が真であり、これからも真である以上。
今後の戦略は、格段に立てやすくもなった。
ゼフィールは、情報面において今後も一切の偽りがない事を確信すると。
手に持つ冬木市内の地図を見せながら、今後の戦略を己が従僕に語り始めた。

「まずはこの戦場の把握と、各施設からの情報収集を最優先とする。
 あの市長にあらかじめ地図を用意させたが、過信は出来まい?
 初日は夜間は上空より、昼間は地上より各施設と地理の把握に専念。
 一通り市の把握を終えてから、二日目より敵兵の各個撃破に移行する。
 隙あらば初見でも一撃離脱を命じるが、決して深追いだけはするな。
 居場所を含めた我らの情報を、一切敵に与えぬ事の方が重要だからな。
 よって、貴様のライダーとしての機動力を最大限に発揮して貰う」

「…どのようにして、だ?」

「貴様のクラスには“騎乗スキル”が与えられたのだろう?…それを利用する。
 夜間は貴様の騎竜を、昼間は目立たぬようこの世界の“自動車”を用いる。
 市長には、二人分の当世の衣装も含め、その辺りの手配もさせてある。
 貴様の弁によれば、乗り物でありさえすれば全てを操れるそうだが…。
 それはこの時代、この世界の乗り物にも適用されるのだな?」

「無論。自動車はおろか、戦車や戦闘機の類であろうとも操作は可能だ。
 …しかし、貴様なりに戦略はあったようだな。良いぞ、実に良い。
 せいぜい、この我を失望させてくれるなよ?」

この世界に召喚されてから、僅かな間にしては充分に練り込まれた計画。
こちらの話したクラスの適性やスキルを元にした、最適な用兵と戦術。
これなら、そうそう他の敵兵に遅れを取る事はないだろう。

 ――たとえ情報で遅れを取ろうとも、こと戦争においては一流ということか。

アシュナードがゼフィールをマスターに選んだ理由は他にも多々あるが、
改めて己の観察眼が正しかった事に満足の笑みを浮かべた。

しかし――。

「そして、念のためだ。最後に問おう」

ゼフィールは大きく息を吸い。

「…マスターが失格する事なく、サーヴァントを入れ替える手段はあるか?」

サーヴァントに対する切り捨てにも等しい言葉を、その本人に吐いた。

「…ほう。そう来るのか?だがな、それはほぼ不可能だ」
「“ほぼ”ならば、僅かながらでも可能性はあるというのだな?
 …速やかに答えよ、狂王」

己が従僕に一切の信頼を置かず、むしろ排除する気でないと有り得ぬその問い。
そして、その解決案があろうとも、サーヴァントは己にとって致命的な質問に、
懇切丁寧に答えるなど有り得ない。だが――。

「確かに我が死のうとも、貴様がムーンセルに消されるまでの僅かな猶予時間に、
 新たなサーヴァントを他のマスターから奪い再契約を為せば貴様は生き残る」

――アシュナードには、令呪による強制があった。
故にムーンセルにより与えられた知識と、己が知恵を全て用いて。
この従僕は暴君の恐るべき問いに、全てを答えざるを得ない。

「…だがな、その条件は困難を極めるぞ?
 相手のサーヴァントを奪う以上、マスターとの契約を破棄させ令呪を奪わねばならぬ。
 要は相手マスターの右手首を切り落として失格に追い込み、
 その令呪を全て貴様に移植せよということだ。令呪がなければ契約は為せぬ。
 新しき従僕が同じライダーのクラスなら、契約後に令呪も使いまわす事が
 出来るかもしれぬが、まずは今ある敵の主従契約の破棄こそが肝要となる。
 当然だが、我とも契約解除する必要が生じる。ようは我を滅せば良い訳だ。
 果たして、貴様にその全てがこなせるかな?
 令呪を与えたものか魔術師なら令呪の移植も可能だが、それも貴様には出来まい?」

だが、アシュナードは一切の焦りを見せることなく。
むしろ嘲笑う調子で己がマスターに一切を話す。
――どうあがこうが、そんなことはまず不可能。
その点においては、確信に近い感情を抱いていたから。

「フン。つまりもしそれを望むなら、あの神父の力を借りよという事か。
 実に、癪に触るな」

「そして何より、だ。その新しきサーヴァントの同意を得ることだ。
 元より我らは貴様ら主どもを見定めた上で従僕となる事を選んだ。
 主が死んだか見放してでもいない限り、危険を冒してまで他の主と契約などしまい?」

――まさに、正論である。
故にこそ、この余裕。そして、これら全ての困難を為し得る条件が揃ったところで。
サーヴァントの交代に値する、優勝を狙える程の手駒でなければ為す意味がない。

極小の可能性に気を取られ、一々煩う余裕などない。
――だが、念のため事実関係の確認はすべきか。

「なるほど、話しは分かった。まずは教会へ向かい確認と助力を乞う」
「ほう、我に刃向かうとでも言うのか?」

ゼフィールの、露骨なまでの裏切りの算段に。
アシュナードは気分を害する事なく、むしろ挑発の笑みを浮かべた。

――この男、単なる愚劣では決してない。
本来なら、このような口を聞けば主は死を招く。
何より、主従関係が決定的な破綻をきたす。

だが、彼は公然たる侮辱に一切の躊躇いがない。
ならば、我の実力行使や離反を防ぐ算段など全て出来た上での暴言なのだろう。
それを是が非でも聞きたくなり、デインの狂王は返答を促した。

「フン。わしが今ここで死ねば、貴様もいずれ消えて失せよう?
 貴様こそ、その言葉通り僅かの間に新たな主を探さねばなるまい。
 貴様の機動力なら、瞬く間に神父のいる教会にたどり着くやもしれぬが…。
 今の環境で、それが可能か?それともあの市長にでも泣き付いてみるか?
 奴とアサシンの契約を越える信頼を勝ち得るか、
 アサシンを首尾よく消せれば良いがな。
 何より、貴様は裏切りにすらむしろ愉悦を覚える破綻者だ。
 わしの言葉など、一切に意に介しまい。…違うか?」

ベルンの狂王ゼフィールの、一分の隙もないその計算された論理と観察眼。
それが紛れもなく的を射たものであり、アシュナードはその鋭さに感嘆した。

「ククク…。良いぞ、実に良い。ただ我の顔色を伺うのではなく、
 隙あらばその喉笛に噛み付いてこそ我の主よ。
 やはり、あの脆弱な市長とは格が違うわ」

蒼き魔人は狼狽えない。この主と同じく「人を信じる」という概念がない以上、
裏切りに悲哀や憎悪を感じるなどという感傷など最初から持ち得ないのだから。

そして、その比類なき獰猛さに似合わぬ計算高さも、
裏切りが不可能である事に心の余裕を持たせている。

そして、全ては利害の一致による、何時寝首をかかれるかもしれぬ主従関係。
この極限の緊張感に身を晒す事に、この上無き愉悦を覚えていたが故に。

 ――良いぞ、実に良い。あの“漆黒の騎士”との主従を思い出すではないか?

アシュナードは、むしろその主の反逆にこそ狂喜した。

「つまらぬ世辞は要らぬ。さあ、愚図愚図している暇はない。出陣だ狂王」
「…では、参るとするか?来い、ラジャイオン!」

アシュナードは主の指示に従い、己が騎竜を虚空より呼び出すと――。
二人は間髪入れずにその背に跨り、夜の冬木市を颯爽と天駆けた。

一切の信頼なきにも関わらず、むしろ一切の信頼などなきが故に。
全ては利害の一致として、どこまでも合理的に呼吸を合わせる二人の主従。

その乾き切った主従関係に、楔を打ち込む者は現れるのか?
あるいは、主従が破綻するその機会は与えられるのか?

その可能性がある否かは、未だわからない。
だが、一つだけ確実に言えることがある。

この主従は、たとえ優勝を為しえようとも。
必ず破綻が約束されているという事である。


【新都・冬木市ハイアットホテルの屋上/未明】
【ゼフィール@ファイアーエムブレム 覇者の剣】
[状態]:健康・残令呪使用回数2回
[装備]:エッケザックス@ファイアーエムブレム 覇者の剣
封印の剣@ファイアーエムブレム 覇者の剣
冬木市の地図
※参戦時期は、ファイアーエムブレム―覇者の剣 十巻のロイ率いるエトルリア軍が
 ベルン城に攻め入る直前からです。
※冬木市ハイアットホテルの最上階を拠点としました。
 アシュナードはキャスターではないので、魔術工房の類は一切存在しません。
※ジョン・バックスには拠点の個室にこの世界で違和感のない衣装と自動車を贈るよう、
 あらかじめ要請してあります。それらがいつ頃到着するかは次の書き手にお任せます。
※優勝すれば、願いが相反するアシュナードを粛清するつもりでいます。
※もし可能性があれば、機会あらばサーヴァントの交代を考えています。
※令呪の詳細は以下の通りです。

  • ゼフィールがアシュナードに対する全ての質問に対して、拒絶、沈黙、遅延の一切なく。
 己が持つものと聖杯に与えられた全ての知識を用いて、詳細かつ速やかに答えよ。


【ライダー(アシュナード)@ファイアーエムブレム 蒼炎の軌跡】
[状態]:健康 、令呪

※マスターを利用価値のある手駒程度にしか考えていませんが、
 その能力は高く評価しています。今の所は従順に指示に従うつもりです。
※優勝し肉体を手に入れた場合、令呪の使用よりも早くゼフィールを始末するつもりです。
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