二次キャラ聖杯戦争@ ウィキ

和風唐揚げ弁当390円

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匿名ユーザー

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近藤剣司が引き当てたサーヴァントは、セイバー。聖杯戦争に召喚されるサーヴァントの中でも最優とされるクラスである。
真名をセリスというそのセイバーは、今まで出会った中でも最上位にランクインするほどの美人だった。
が、平時なら鼻の下が伸びたであろうその美貌も今は正直それはどうでもいい事だ。
重要なのは、強いかどうか。この戦いに勝ち残れるかという一点のみ。

剣司は対フェストゥム兵器――ファフナーのパイロットだ。
マンガやゲームではない、命があっけなく散る本物の戦場に身を置いていた経験がある。
殺し殺されする戦場の空気も知っているし、普通の、毎日を平和に過ごすただの民間人よりは多少度胸は据わっているだろう。
だが、それだけだ。
近藤剣司の強さとは、前提としてファフナーあってこそ発揮できるもの。
腕っ節にさほど自信などなく、生身では同級の少年どころか少女にまで歯が立たない。その二人が飛び抜けて強いだけであるが。
ファフナにー乗っていればこそ顕在化する変性意識で臆病になることはないが、それはマイナスがひとつ減っただけで決してプラスではない。
戦友、真壁一騎のように驚異的な身体能力を誇っているわけではなく、皆城総士のように仲間を指揮できるでもない。
この戦いに参加するにあたり、剣司は戦力としてはまったくのゼロ――お荷物だ。

「それは別に構わない。戦うのは私の役割だから」

相棒となるサーヴァントはそう言ってくれた。別に期待はしていない、という顔で。

「ただ、戦う以上は覚悟を持ちなさい」
「覚悟……?」
「敵と戦うのは私。敵を倒すのも私。でも、敵を殺すのはあなた。
 私はセイバー、マスターの剣。私が誰を斬るかは、あなたが決めてあなたが背負うのよ」

この言葉に、剣司はまだ答えを返せないでいる。
敵はフェストゥムではない。戦うべき相手は人間。剣司と同じ、生きた人間だ。
幾多のフェストゥムを屠ってきた経験はあっても、人を殺したことなどあるはずがない。
覚悟はあると、口にするのは簡単だ。
だが実際にその覚悟が剣司の中にあるのかと聞かれたら、無いと答えざるを得ない。

(総士なら、迷わず「ある」って言うんだろうな……)

夜の街を一人彷徨う。無論、側には目立たないよう霊体化したサーヴァントがいるが。
特に言葉を交わすこともなく歩いていくうち、剣司の目の前にきらびやかに輝く一軒のスーパーが現れた。
ポケットには支給されたクレジットカードが入っている。島育ちの剣司は初めて見る、現金の代わりになる魔法のようなカードだ。

「とりあえず、なんか食おう。腹減ってたら頭も回らないよな」

自動ドアへと足を向け、店内に入ろうとする剣司を、

「マスター。可哀想だけど、さっそく覚悟を決める時が来たわ」

音もなく実体化したセリスが留める。
彼女が現れたということはつまり、危険が迫っているということだ。

「こ、このスーパーに他のマスターがいるのか?」
「ええ。これ以上進めば向こうも気付くでしょう……どうする?」

今ならまだ逃げられる。美貌に比例してどこか冷たい感じがするサーヴァントは、そう見えても剣司を気遣ってくれていたらしい。
進むか、退くか。覚悟はできていない。だがこればかりは時間をかけてどうにかなるものでもないとわかってもいた。
時間が解決してくれないのなら、戦いの中で答えを見出すしかない。
目の前の障害から逃げた先に、より良い答えが待っているのか? とても、そうは思えなかった。
だから剣司は、一歩を踏み出すことで返事とした。

「い、行こうぜ。最初から逃げてちゃ……どうにもなんねえよ」
「……わかった。それが主の意志ならば」

どこからか剣と盾を取り出したセリスが、剣司の前に立って颯爽とスーパーへと侵入していく。
戦いが始まる――意識すれば途端に全身の毛穴が開いたかのような不快感を覚える。
この場には指示をくれる総士はいない。自分がサーヴァントに指示を下さねばならない。
ごくりと唾を飲み込む。声が震えていたことをセリスが指摘してこなかったのは情けだろう。
カツカツと歩を進めるセリスの後をついていく。
彼女が足を止めたのは、商品が陳列された棚の列を抜けた先――やや広くスペースを取られた弁当コーナー。

「あれ、だよな」
「あれ、ね」

敵は、てっきりこちらを待ち受けているだろうと思っていた。

「……なんだこれ」
「……現代の買い物は変わっているわね」
「いや、違うと思うよ」

足を止めたのは、どういうわけだか、そこで乱闘騒ぎが起こっていたからだった。

「あれ、サーヴァント?」
「いいえ。普通の人間……いわゆるNPCというやつね」

弁当コーナーに群がる、十数人ほどの人の群れ。
体格のいい坊主頭や顎髭の男、茶髪の女や赤毛のポニーテール、緑のジャージ。男女の別なく、年齢は様々。
その中で一人、目立つやつがいた。
コートの前を全開にして(でも肩から落ちない)、革の手袋をはめた痩身の男。
重力を振り切るように高く舞い、天井を蹴って地へ降り立つ。
長い手足が閃くたびに誰かが吹き飛ぶ。
そいつの鋭い眼光が剣司を掠める。
背筋が泡立つ。直感した。こいつが敵のマスターだ、と。

「少し待て」

怒号飛び交う喧騒の中で、不思議とその男の声はよく通った。
一瞬たりとも止まらず群衆を薙ぎ倒し続ける男は、確実に剣司をマスターとして認識している。
ということはつまり、迎え撃つ準備はされていると思うべきであり、マスターを囮にサーヴァントが仕掛けてくる可能性が大きいということだ。

「なあ、あいつのサーヴァントは!?」

セリスが油断なく剣司を背後に引き寄せ、周囲を見回していく。
その視線が一点で止まり、剣司もそちらを見る。
そこにいるのは、絹糸のような長い金髪、背中から生えた白い翼、セリスに劣らないほどの美貌。
天使だと言われたら違和感なく納得してしまいそうな女だ。

「……あれ、じゃないよな?」
「……あれ、だと思う。多分……?」

その天使(仮)は、弁当コーナーの片隅で一心不乱に口にモノを運んでいた。
ガツガツとかバクバクとか、そんな効果音を付けたくなるくらい豪快な食べっぷりで、次から次へと食べ物を消費している。
剣司たちにも気付いた様子はない。確実に視界には入っているはずだが、それよりも手にしたカツサンドのほうが大事なことだとばかりに食らいつく。
周囲には山と食料が積まれていた。おにぎり、パン、惣菜にジュースと、とにかくすぐ食べられるものはなんでもかき集めてきたという感じで。
だがただ一つ、弁当だけがない。

その弁当はといえば、マスターらしき男が乱闘を繰り広げているちょうどそのエリアにあった。
群衆はどうやら弁当を奪い合っているのだと、剣司はなんとなく直感した。
マスターがストリートファイトしていてサーヴァントが暴食している理由はさっぱりわからないけれど。

「どうなってんだこれ」
「わからないわ……でも、迂闊に動けないわね。私たちはここに誘い込まれたのだから、何らかの罠があるのかも」

備えがあるからこそ敢えて無防備を晒しているかもしれず、マスターが気付いている以上奇襲というわけにもいかない。
セリスが攻撃しようとすれば敵はすぐさま自分のサーヴァントを呼び寄せるだろう。
剣司が戦力として期待できない以上、正面から戦うのは避けたいところだ。

「じゃあどうす……」

その時、マスターと目があった。
顎髭の男を殴り飛ばしつつ、敵マスターがスッと剣司へと腕を向ける。
手のひらを上に、伸ばした人差し指を軽く曲げる……二度、三度。
お前も来い――そう言っているのだ。

「あなた、指名されたようね」
「俺かよ! サーヴァントじゃないのかよ!」
「私が行くと、多分あっちのサーヴァントが飛んでくるわね。私は動けないわ」
「でも、マスター同士が戦っていいもんなのか?」
「別におかしなことじゃないわ。突き詰めればマスターを倒せば勝ちなわけだから」

サーヴァントをすっ飛ばしてマスターを攻略できるなら、確かにそれが最善の手だ。

「で、でもなぁ。俺、自慢じゃないけどあんまケンカ強くないし……」
「なら、逃げる? それも選択肢ではあるわ」

セリスの提案がひどく魅力的に聞こえた。
同時に、心のどこかで、自分はただ後ろで見ていればいいと楽観していたと思い知る。
せっかく戦うと決めたのに、いざ自分が当事者になると突きつけられれば怖気づいてしまう。

(逃げるのか、俺は……いや、決めたんだ! 前に進むって!)

思い出す。何度も何度も畳へと叩き付けられた記憶を。
要咲良に、今もアルヴィスの一室で眠り続ける、剣司にとって一番大切な少女との思い出を。
あの日々を取り戻すためにここにいる。ならばここで退けるはずがない。

(衛……力を貸してくれよ!)

戦闘時は別人のように勇敢になる、いなくなってしまった親友。彼の記憶もまた強く脳裏に描き出す。

「……よし、行くぜ。あんたは敵のサーヴァントを頼む」
「了解。もし無理だと思ったら令呪を使ってでも私を呼びなさい。初戦で命を捨てることもないわ」

剣司の手を取りセリスが何事か唱える。少しだけ身体が軽くなったように感じる。強化魔法、と言われた。
未だ乱戦が続く中、一歩ずつマスターへと近づく。
不思議と剣司は誰にも狙われず、並んだ弁当の値札が見える位置まで来れた。
目を引く、半額のシール。そういや家の近所の店でも閉店間近になったら安くなるよなぁとか思う。

「……いや、カードあるんだから別に半額の弁当買わなくてもいいんじゃね?」

純粋な疑問だった。別に誰かに対して言ったわけではない。

「安さを求めているわけではないんでな」

その独り言に、敵マスターが反応してしまった。
相変わらず誰かを殴って蹴ってしているくせに、視線だけは剣司を捉えて離さない。

「待っていた。どうもこのNPCというやつら、生きた狼の感じがしなくてな。退屈していたところだ」
「はあ。え、なんでケンカしてんの?」
「飢えているからだ」
「じゃあ普通に買えばいいじゃん」
「それじゃ腹は満たされん」
「い、意味わかんねえ……わっ!」

放たれた矢のような拳を、剣司は自分でも驚くくらいの俊敏な反応でを受け止めた。ブロックした手が痺れる。

「ほう……! やるじゃないか。さすがに俺と同じマスターなだけはあるな」
「いってえな! なにすんだよ!?」
「お前もここに戦いに来たはずだ。なら、狩るのに遠慮はいらんだろう!」

掴んだ拳をそのままに敵マスターが跳躍した。
空中で逆立ちをするように上下逆さまになった男は、長い足にたっぷりと遠心力を乗せて振り下ろす。
剣司は慌てて手を離ししゃがみこむ。頭上を凄まじい勢いで敵の足が通り過ぎ、背中に冷たい汗が滑り落ちた。
立ち上がろうと顔を上げる。男は蹴り足をさらに振り回して身体を回転させ、もう片方の足で再度剣司を狙ってくる。
異常な滞空時間による二段蹴りが剣司の鼻を直撃し、軽々と吹き飛ばした。

「がっ……ぁぁあっ!」
「少しは骨があると思ったら……この程度か」

鼻が砕けたかもしれない。滝のような鼻血だ。息ができない。
かつて経験したことのない痛みに剣司の脳は悲鳴を上げる。
視線はサーヴァントを、NPCを、助けてくれる存在を求め激しく泳いだ。

「どうした。何故立ち上がらない? 何故向かってこない? 何故、他人に助けを求める?」
「痛ぇ……痛ぇよ……」
「痛みは生きている証だ。お前はまだ生きている。ならば来い! 立ち向かって来い!」

剣司は必死に首を振る。ちっぽけな決意は痛みの前に吹き飛んでしまった。
なんでこんな理不尽な暴力に晒されているのか。
なんで誰も助けてくれないのか。
その場を離れようと無様に這い下がる剣司。見下ろす敵マスターの瞳に浮かんだのは……激しい侮蔑の色だ。

「戦う誇りも、痛みを乗り越える覚悟もない。お前はただの負け犬だ」

吐き捨てられる言葉が刺さる。
だが反感を覚えようもないほどに圧倒的な暴力だ。

「挑戦を忘れた者には停滞と堕落しかない。そんな半端な気持ちで何かが掴めるものか」

失望した。
そう言い捨て、男は身を翻し弁当へと手を伸ばす。
もはや剣司に興味はない、そう背中が示している。

(殺さない……のか? た、助かった)

見逃されるのが屈辱だとは思わなかった。今は一刻も早く、この男から離れたいと思った。

「この分では、聖杯戦争とやらもそう大したことはないな……退屈凌ぎになりそうもない」

だが、何の気なしに呟かれたその言葉が聞こえた瞬間、スイッチが入った気がした。
身体か脳か、多分どこかにある。押したが最後、どんな痛みも葛藤も置き去りにして突っ走ることのできる最後の切り札。

つまり剣司はキレた。

「今……なんて言った……?」

半額弁当を取り上げていた敵マスターが、ピタリと止まる。
未だ背を向けているそいつを「睨みつけ」、剣司はゆっくりと膝をついて立ち上がった。

「退屈凌ぎって……そんな、そんなくだらねえ理由で……ここにいるってのかよ……!」
「俺にとっては、そうだ」

平然と返される。踏みつけられた気がした。
咲良を、衛を、平和だった島の暮らしを取り戻したいという願いを、ただの退屈凌ぎで否定された。
許せはしない。許してはならない。
たとえ勝てないとしても、こいつにだけは絶対に屈服してはならない――

(許せねえ……ッ!)

ファフナーに乗ったとき、剣司はいつも恐怖に支配されていた。
咲良を賭けて一騎に挑んでいたときは、少しの下心や一騎を超えたいという意欲があった。
怒りを抱いて戦ったことはなかった。
今というこの瞬間までは。

「お前には……お前にだけは……!」

血と汗と涙でぐしゃぐしゃになった顔を歪め、剣司は敵マスター目掛け突進する。
男の目が見開かれる。瞬時に剣司へと向き直り、拳を固めて、迎え撃つ。

「ほう……」
「うお、おおおおぉぉっ!」

すれ違い、通り過ぎる。
剣司の渾身の一撃はあっけなく避けられ、代わりに見事なカウンターを顎に決められていた。膝から崩れ落ちる。

「ち……ちく、しょう……」
「いい気迫だった。だが、それだけでは……!?」

敵マスターの言葉が中断される。
視線の先に、先刻彼が手にし、落とした一つの弁当がある。
近藤剣司の、手の中に。

「へへ、へ……いただいたぜ……」
「貴様、最初から俺ではなく……その弁当を奪う気で……!」

驚愕に震える男に嘲笑を返し、剣司はその弁当をしっかりと胸に抱え込んだ。
パッケージが潰れ中身が溢れるが剣司はもはや気付きもしない。
自分の願いを侮辱されたのだから、敵にはそれ以上の屈辱を返さねばならない――これもまた直感だった。
はたして、剣司の出たとこ勝負の作戦は敵マスターに相当の衝撃を与えることに成功していた。

「この俺から弁当を奪うとは、な。訂正しよう。お前は負け犬などではない。立派な狼だ……!」

敵マスターが何か言っていたが、意識朦朧とする剣司はもはや言い返すことも困難だ。
目を開いてもいられない。

「俺は金城優。貴様の名は?」

かろうじて、名を聞かれているんだとわかった。
本名を伝えるのは得策ではないのだが、今の剣司にはそれを判断する意識もなく、勝手に口が動いた。

「近藤、剣司」
「近藤、だな。この場は俺の負けだ。だが、二度はない。次は必ずお前を狩ってみせる。
 今はただ、味わうがいい……勝利の味を、月を冠したその半額弁当を!」

去っていく足音が聞こえ、代わりに近づいてくる足音があった。

「……とりあえず、切り抜けたわね」

セリスの声だ。会ったばかりだというのに、今の剣司はその声にひどく安心を覚えていた。
急速に湧き上がる睡魔に身を委ね、剣司の意識はゆっくりと闇に落ちていく。

「狼、か。確かに、牙は持っていたようね……」

呟くセリスの声は、もう聞こえなかった。


【新都 商店街 スーパー/未明】

【参加者No.15 近藤剣司@蒼穹のファフナー】
[状態]:気絶(残令呪使用回数:3)

【サーヴァント:セイバー(セリス)@FF6】

「近藤、剣司か……」

剣司を叩きのめし、しかし弁当を奪われた男、金城優。
傍目にはどうであれ、弁当を奪われたとなれば狼としては敗北だ。

「聖杯戦争……殺し合い、か」

甘く見ていたのは自分の方だったということ。
あの瞬間、近藤剣司の目を見た瞬間、彼は確かに気圧されていたのだ。
今まで狼として数々の戦いを勝ち抜いてきた魔導師<ウィザード>を以てして、たじろがせるほどの気迫。
半額弁当争奪戦では感じたことのないほどに強烈な殺意。
思い出すだけで背筋が震える。

「この感覚……そう、これは恐怖だ。俺は確かに、近藤に恐れを感じていた……」

半額弁当争奪戦は死闘である。死闘ではあるが、殺し合いではない。
甘く見ていたのだ。この聖杯戦争も所詮争奪戦の延長線上のようなものだと。
認識の差において、彼は近藤剣司に一歩先んじられていた。だからこそ最後の最後でひっくり返される愚を犯した。

「フフ……そうだな。そうでなくては挑み甲斐がないな……!」

ウィザードと言えどもこの場ではただの一人のマスターにすぎない。
頂点に君臨するのではなく、他の全てと食い合って頂点を目指す――挑戦者だ。

「楽しくなってきた。また会おう、近藤剣司」

決意を言葉に込める。
この次はもっといい戦いができるだろう――そんな確信とともに。









「あー、お腹いっぱい! もう食べられないわー」
「…………」

できる、だろうか……?


【新都 商店街/未明】

【参加者NO.24 金城優@ベン・トー】
[状態]:健康(残令呪使用回数:3)

【サーヴァント:セイバー(エンジェロイド・タイプデルタ アストレア)@そらのおとしもの】

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