父と娘もしくは仇か宝




夜空を翔る一陣の光。
それは小型の飛行機か、
はたまた一瞬の輝きを魅せる流れ星か、
それともUFO?
しかし、その実態は!!

「キャハハハ!! イケイケ~、ランサー!!」

空飛ぶ機動武者with幼女である。
事実だから仕方が無い。

最初こそランサーの規格外ぶりに驚かされてばかりいたイリヤだが、
そこは子供特有の順応性ですぐに受けいれた。
それに加え、寡黙ではあるがランサーも決して無感情と言う訳ではなく、
むしろイリヤに対して好意的な印象を与えさせる。
イリヤの指示に眉一つ変えずに素直に従い、
口元には穏やかな笑みすら浮かべる。
それはバーサーカーとのやり取りの中では存在しなかった感情を伴ったやり取り。
彼女の中での一番がバーサーカーである事は変わりはないのだが、
この大英雄に負けず劣らずの無骨な鉄巨人に心を許すのには充分な要素であった。
彼女の従者である、二人のメイドの様に敬意だけじゃなく愛情を持って接してくる人間は、、
隔離された環境で極端に恵まれてこなかった
彼女にとってはとても稀有であり、代え難い存在なのだ。

しかし、この様に目立つ存在を他の参加者だけならともかく、
一般NPCは気づかないものなのだろうか?

彼・彼女らは上空を飛ぶ彼女達に気づいている筈なのである。
だが、皆一様にあらぬ方向に目を遣り、
「こんな時間に飛行機でも飛んでたのかな?」と
あっさりと納得して自らの生活へと戻っていく。

無論、偶然等ではない。

それはイリヤ自身が行使する魔術の一つ、
『認識から外れる事によって他者に知覚されない』という意識逸らしの魔術。
一見、幼稚に興奮しているだけに思えても様々な魔術を駆使して
その存在を秘匿する事は忘れてはいない。
それは産まれた時から、いや産まれる以前から
『そう在るべき』として望まれた為。
全てはアインツベルンの翁が望む結果を齎すべく
積み重ねられてきた魔術の結晶。
その最高結果がイリヤスフィール・フォン・アインツベルンという
『聖杯の器』である。
人としての生を家柄に望まれず、
両親からの愛情に恵まれず、
それどころか『裏切り者』である実父を
亡き者にする様に教育されてきたのである。
結果として彼女は全身にも及ぶ膨大な魔術刻印と
二十にも満たぬ極端に短い寿命を得る事になった。

第五次聖杯戦争において彼女は最強のマスターと呼ばれ、
その膨大な魔力で規格外とも言うべき英霊、
大英雄ヘラクレスをバーサーカーにするという
大半の魔術師が動かしただけで魔力枯渇するという
とんでもない怪物でもって蹂躙を繰り広げた。
……が、結果として彼女は敗れた。
素養では彼女に到底及ばない一人の少年によって。
そして彼女は得る事が出来た一時ではない安住の地。

家族を。

故に姉として駄目な弟の世話をみてあげるのが、
彼女にとっての今の務めなのである。
一人の“人間”として。

「あっ! いけない、うっかりシロウの家を飛び越しちゃった。
 曲がって、ランサー」

「………!」

新都から飛び立って一時間と経たないかどうかの時間。
その程度の時間で既に彼女は『学園』が目に入る距離まで到達していた。
途中からランサーと曲芸飛行等していた為に
目的の地からは明らかに逸れていたのだが。

「………!!」

ランサーが速度を緩め、方向転換しようとした時、
巨人は不意に肩に乗っていた少女を両手で掴み上げて
抱え込むように抱きしめた。

「えっ? 何、ランサー…キャッ!?」

ランサーの突然の行動に戸惑うイリヤを他所に
寡黙な鉄巨人の表情が柔和なものから厳ついものへと変わる。
それはイリヤ自体はまだ知らないが『戦国最強』と呼ばれたランサー、
本田忠勝の戦の直感のようなものだったのだろう。
そして、其れは当たっていた。
並ぶように現れた輝く巨大な札の列が彼女達の元へと迫る。
そして、

『FINAL ATTACKRIDE DE・DE・DE・DECADE』

奇妙な電子音声のような声と共に
まるで札に導かれる様に巨大な閃光が迫りつつあった。



☆   ☆    ☆   ☆   ☆


「通りすがりの――ライダーだ」

そう男は告げた。
インスタントカメラをぶら下げた
如何にも怪しい雰囲気を持った青年。

「ライダーのクラス…そういう事かい?」

衛宮切嗣は自分のサーヴァントの素性を計りかねる。
本来、神話や昔話で語られるような英雄と呼ばれる存在が
霊格をもって顕現したものがサーヴァントなのであるが
如何にもこの英霊は近代的過ぎる上に
魔術礼装と言った物に無縁の格好をしている。
わざとそうしている可能性も在るが召還されたばかりの
サーヴァントではそれは在り得ない。

「仮面ライダー」

「……?」

二度も言わせるなといった雰囲気で男は呟く。

「俺は仮面ライダーだ。 それ以上でも以下でもない。
 そして、他のライダーは俺が全て破壊する」

男はこの話は終わりだと言わんばかりに話を強引に打ち切り、
空間に手を翳すと1機のバイクを出現させる。

「要はあんたを守りながら他の奴を倒せばいいんだろう?
 連絡はするからあんたも好きにしろ」

そう言って男は颯爽とバイクに跨り、エンジンを噴かす。
アクセルを掛ける前に思い出したように切嗣へ向き直ると、

「真名は門矢 士だ、覚えておけ」

それだけを告げて走り去って行った。
取り残された形になった切嗣だが、
慌てるでも怒るでもなく胸元から煙草を取り出して火を点ける。
ふぅと一筋の煙を吐き出して煙草を地面に落とし、踏み消す。

「周囲の魔力探知を行ってからの単独行動か、
 どこぞの王様よりは僕を信用しているようだな」

周囲に魔力反応は感じられない。
無論、何処かに潜んでいる可能性もあるのだが
それを考慮した上でも大丈夫だと踏んだのだろう。
それにそれはこっちにとっても好都合だ。
一緒に連れ立って歩いて仲良く死ぬつもりなど
到底、衛宮切嗣という人物の思考には存在しないのだから。

「王様の次は天邪鬼か……
 引き運はあまり良い方じゃないのかもな」

自嘲気味に笑い、衛宮切嗣は自分の獲物を確認する。
現存での火器は携行していたトンプソン・コンテンダーと
鞄の中に収められているワルサーWA2000とキャリコM950の3丁のみ。
他にこれから準備するにしても最低でも3日はかかるので
暫くはこれで我慢するしかない。
弾薬の方は割りと余裕があり、一々『切り札』を使う必要もないだろう。
先程まで自分のサーヴァントを『らしくない』と考えていた事を思い出し、
くつくつと再び笑う。

「らしくない、か…『魔術師殺し』の僕が言える台詞でもないな」

同胞から忌み嫌われる自分もまた魔術師らしくない男なのである。
ありとあらゆる近代火器に精通し、魔術師ならば忌避する
手段でもって魔術師を狩る。

付いた忌み名が『魔術師殺し』。

「だが、今度こそ“負ける”訳には行かないからね」

それは自分へと向けた言葉。
その時、脳内にライダーの声が届く。

『東から変なのが来てるが如何する?』

意外にも律儀に連絡してきたライダーにも驚いたが、
その連絡内容にも驚いた。

「そうか、僕もそちらに向かう。
 君には『足止め』をお願い出来るか?」

念話に応じつつ、即座に自身の戦闘準備を始める。

『だいたい分かった、倒しても構わないんだな?』

「余計な深手を負うのは御免こうむるがね」

妙に自信に満ちたライダーに釘を刺す。
このサーヴァントには謎な部分が多すぎる。
元より信用する気などないが明らかな逸脱行為だけは
制止しておく必要がある。

『……ふぅ、面倒だな。
 分かった、覚えてはおく』

ライダーからの念話が打ち切られるのと同時に
切嗣も準備を終えて行動を開始する。

「さて、新しいサーヴァント殿に期待させて貰おうか」

『魔術師殺し』の目になった切嗣は足を踏み出した。



☆   ☆    ☆   ☆   ☆


理解も及ばぬ内に爆風と爆音が一瞬にして辺りを包み、
宙を飛ぶ鎧武者は撃墜されて墜ちて行く。
学園への坂道を逸れて住宅街の空き地の一角へと激突する。
砂煙が落下点で充満し、これでは助かった者はいないであろうと思えた。

「ケホッ、ケホッ! な、なんなのぉ~?」

墜落地点の中心からイリヤが咽込みながらよろよろと這い出てくる。
その姿は綺麗なもので本人がよろめいてる事以外では
特筆すべき外傷も無いほどである。
そして、砂煙が晴れた其処には関節部から火花を上げてはいるものの
殆ど無傷に近い状態のランサーが膝をついた状態で現れた。

「ありがとう、貴方が庇ってくれたおかげね」

「…………」

先程の謎の攻撃にまともに曝されていれば
イリヤは骨すら残さずに焼き尽くされていた筈である。
だが、咄嗟にこの鉄巨人がその身でイリヤを
庇ったおかげで彼女は無傷で済んだ。
その庇った当人ですら衝撃のダメージ以外負っていないのは
規格外としか言いようが無いが。
ランサーはその無骨な手を動かし、
重さすら感じられないほど優しく彼女の頭を撫でる。

「……ッ!? あ、ありがとう……」

それはいつ以来の行為であろうか、
遠い記憶の中で虚ろに覗く大きな手の記憶。
懐かしく、かつ哀しい思い出を連想される。
そして、その腕がそっとイリヤを自身の背後へ
誘導した事でイリヤは現実に引き戻される。
遠方からバイクの音がこちらへ迫ってくる。
それは迷い無くこちらへと向かってきて、停車した。
向けられたトップライトの明かりが目を眩ませる。

「……アインツベルンへと挑むなんて大した自信ね」

そこに少女の雰囲気は無く、アインツベルンの魔術師としての
姿へと態度を決めたイリヤの威厳を込めた言葉が襲撃者を迎える。
ライトの明かりが消え、襲撃者はヘルメットを脱ぎ捨てて、
バイクから地面へと降り立ってくる。
一見すればモデルのような体型の痩せ型の男。
それが奇妙なベルトを腰に巻きつつ、
ゆっくりとこちらへと近寄ってくる。

「嘘、まさかサーヴァント? ……でもこの魔力量って」

目の前の人物が普通の人間ではない事は
聖杯の器であるイリヤにはすぐに理解できたが、
今度は一つの疑問が湧いてくる。
サーヴァントの癖に“一般の魔術師並みの魔力”しか感じ取れないのである。
先程の攻撃が同じ人物から行われとは到底思えないほどに。
襲撃者はイリヤの言葉など完全に無視を決め込んで
ちらりとランサーへと目を遣り、

そして、

明らかに失望した様子を見せた。

「大方ランサーって所か、外れだな」

一気に興味が失せたように面倒臭げに呟く。
それでも仕方が無いといった様子で一枚のカードを取り出した。
取り出されたカードは異様な魔力を放っており、
それが明らかにただのカードではない事を証明していた。

「それが貴方の宝具?」

無視された事に若干の苛立ちを覚えつつ、
それでもイリヤは根気よく襲撃者へと語りかける。

「変身」

それすらも無視して襲撃者が自身に巻かれたベルトにカードを通し、
バックル部の左右の突き出た部分を手で閉じた。

『KAMEN RIDE DE・DE・DE・DECADE』

その瞬間、奇妙な声と共に幾つもの鏡像が襲撃者の前に出現し、重なり合う。
一つの鎧のような形となったそれの頭上に複数の鈍く青い光の板が出現し、
頭部へと突き刺さる形で収まる事で奇妙な戦士が其処に姿を現した。

「通りすがりの仮面ライダーだ、覚えていなくていい」

自分のクラスをあっさりと明かしながら、
指を突き出してライダーがポーズを取る。
だが、驚くべき事はその魔力量である。
この姿に変身した途端、ライダーを名乗る襲撃者の魔力量が一気に跳ね上がった。

「魔術礼装を取る事で真価を発揮するタイプのサーヴァント!?」

そんなものは長い歴史を誇るアインツベルンの記録にも残されてはいない。
初めて目にするタイプのサーヴァント。
まったくもって未知の存在の出現にイリヤは目を丸くする。
ライダーが腰に下げていた奇妙な形の武器を手に持ち、
その形状を剣のように変化させる。

「行くぞ」

「…………!」

刺突剣のような見た目の武器を構えてライダーが突っ込んでくる、
それを立ち上がったランサーが迎え撃つ。

「ハァ!」

剣による目にも止まらぬ連撃。
だが、その一つ一つをランサーはそのまま『受け止める』。
刻まれる筈の身体はその部厚い装甲でもって
武器で防ぐまでも無く『弾き返している』のである。

「チィッ!」

攻撃が無意味であると悟るや否やすぐに距離を離し、
すかさず形状を今度は銃のように変形させた武器で
虫も逃さぬような連弾を浴びせかける。

「…………!」

それに対してのランサーの対応は仁王立ち。
必要無いとばかりにどしりと構えたランサーは
浴びせかけられる無数の連弾をものともせずに
巨大な採掘機、所謂ドリルのような形状を先端に備えた
奇妙な形の槍を現出させる。
それを右腕に構え、連弾の事など意に介さずに一息に突き出した。

「うぉ!?」

攻撃中であるにも拘らずにその攻撃相手からカウンターですらない、
ごり押しと言える反撃を喰らい、咄嗟に身を捻る。
だが、回避した筈の攻撃はその衝撃だけでもって装甲の一部を剥がし、
ライダーの身体を吹き飛ばすほどの威力をみせる。

「……す、凄い凄いすっご~いッ!
 ランサー、貴方強いんだね」

ランサーの圧倒的過ぎる強さにイリヤが目を輝かせる。
これほどまでに強力なサーヴァントの場合、
本来はマスターにこんな余裕などある筈も無く、
魔力を捻出する事で精一杯になる筈だが
先にも述べた様に規格外の魔力を持つ少女にとっては問題にすらならない。
規格外のサーヴァントに規格外のマスター、
この二人はまさに最高の相性を持った主従なのである。

「……やれやれ。
 だが、大体分かった」

吹き飛ばされて近くの塀に激突していたライダーが
ガラガラと音を立てながら瓦礫を振り払って立ち上がる。

「貴方も惨めに逃走するなら見逃してあげても構わないわよ?」

嗜虐的な視線を込めてライダーをイリヤは見下すが、
それを相変わらず無視してライダーは新たなカードを取り出す。

(さっきから、いったい何なのあれは?)

伝承において魔力を持った札の話は無い訳ではない。
だが、如何にもあのカードが伝承のそれらと一致するとは到底思えない。
それをライダーは先程と同じ動作でベルトに通すと
またもや奇妙な声が鳴り響く。

『KAMEN RIDE HI・HI・HI・HIBIKI』

そしてまたもやライダーの姿が変化した。
先程までの突起物が目立つ変わったデザインの姿から
全体的に赤が目立つ筋肉質な日本の神話に出てくる
鬼のような姿へとその身を変えたのである。
同時に魔力の質も大幅に変化した。
言ってしまえば、完全に別物である。

「な、何なの……このサーヴァント」

優位なのは自分達の筈であるが、
この未知のサーヴァントにイリヤはたじろぐ。

「次は、これだな」

更に一枚のカードを取り出し、再びベルトに通す。

『ATTACKRIDE ONGEKIBOU REKKA』

声と共に鬼面の付いた撥の様な武器が現れる。

(変化に創造……どんな宝具なのよ、あれ)

ライダーは宝具の所有数が多いクラスと言われてはいるが、
このライダーの数ははっきり言って異常な上に
いまだに終わりすら見えてこない。

「一つ良い事を教えてやる」

今までイリヤの事を無視してきたライダーが
ここに来て初めてイリヤを見据える。

「な、何よ!」

「最後に勝つのは機転の利く奴か、俺ってな」

「…………」

気障な台詞を吐きつつ、ライダーがポーズを取る。
イリヤは呆れている。
ランサーは寡黙である。

「……ォホン!
 行くぞ!」

一瞬、沈黙した空気を誤魔化す様にライダーが撥を構える。
応じる様にランサーも槍を構え、
先程とは違う意味で緊迫した空気が流れる。

「タァッ!」

ライダーが駆け出す。
だが、先程よりもその速度は速くない。
ランサーもドリルを最大限に加速させ、
必殺の一撃の力を蓄える。
ライダーがランサーの間合いに入り込み、

「…………!!」

ランサーの必殺の一撃が繰り出される。

「ハァ!!」

当たればライダーとてその身体を抉り飛ばされるほどの
一撃を撥を持って何とか叩き逸らす。
本命の一撃を避ける事は出来た。
それでも、次には衝撃波がライダーの身体を襲うのである。
先程は抵抗も出来ずに吹き飛ばされた衝撃波を
軽く地揺れが起こるほどに強く地面を踏みしめてライダーが耐える。
その装甲は衝撃波で抉られて無事とは言い難いが
抵抗すら出来なかった筈のライダーが耐え切ってみせた。
そして、残った結果は。
槍を振り切ってしまったランサーと、
その懐に入り込んだライダーという形。
隙だらけとなったランサーへ、
ライダーが横に構えた撥を叩き込む。

「音激打・爆裂強打(ばくれつきょうだ)の型!!」

叩き込まれた打撃は音となり、
巨大な紋となってランサーの身体を大きく揺さぶる。
ランサーの装甲は凹みすら出来ていない。
だが、ランサーの様子がおかしい。
打撃は効いていない筈なのに動きが止まっている。
ライダーがゆっくりとランサーから離れ始める。
それと同時に巨大な紋が爆発し、
ランサーがぐらりと揺れて、その巨体が倒れこんだ。

「ランサーァッ!!」

イリヤの悲痛な叫びが木霊する。
ライダーの打撃は確かにランサーには届かなかった。
だが、その発せられた『清めの音』はランサーの内部へと浸透し、
その霊格へと直接叩き込まれていた。
外側からではなく内側への直接攻撃。
さしもの装甲を誇るランサーでさえ、
この攻撃を発動されてしまえば防ぎようが無いのである。

「…………!」

イリヤの声に応えて、ランサーの眼に再び光が点る。
全身から火花を上げながらも何とか立ち上がろうとするランサー。
先程までの威風堂々といった様子からは一変した
弱弱しい動きにイリヤの眼に涙が溜まる。

「ランサァー……ランサァー……」

ランサーの姿と同じようにイリヤも弱弱しくその名を呼ぶ事しか出来ない。
彼女は魔力量においては規格外であっても
一人の魔術師としては未熟者の少女でしかない。
サーヴァントに抗する事など、このか弱い少女出来る筈は無いのである。

「悪いが、止めだ」

いつの間にか最初の姿に戻ったのか、
冷酷にライダーが死刑宣告を告げる。
その手に構えているのは一枚のカード。
最初の一撃を見舞った時と同じ能力を引き出す為のカード。
それを無情にもベルトへと通す。

『FINAL ATTACKRIDE DE・DE・DE・DECADE』

最期を告げる電子音声が鳴り響く。
立ち並ぶ無数の札の列。
その始発点はライダー。
その終末点はランサー。
ライダーが深く屈み込んで力を溜める。
その力をぶつける様にライダーは札の列に飛び込んでいき、
その飛脚は一枚の札を飛び越える毎に力と速度を増していく。

「ランサーッ!!」

イリヤがランサーへと駆け寄ってくる。

「…………!」

ランサーがその身を呈してイリヤだけでも庇いきろうとする。

だが、

「…………」

「…………」

「…………?」

来る筈の終わりが来ない事で恐る恐るイリヤが眼を開ける。
肝心の人物の姿が見えない。
ライダーがランサーへと到達する前にその姿が突如として掻き消えていた。

「な、何だったのよぅ……本当にぃ」

へなへなとへたり込んでイリヤが思わず泣き出してしまい、

「…………!?」

ランサーは如何していいか分からずにオロオロしていた。


【深山町・学園北西住宅街/深夜】
【イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@Fate/stay night】
[状態]:健康 (残令呪使用回数:3)

【サーヴァント:ランサー(本多忠勝)@戦国BASARA】
[状態]:霊格損傷(中)


「どういう事だ?」

ムスッとした態度で変身を解いたライダーが自分のマスターを問い質す。
その言葉と視線の先で切嗣が荒い息をつき、
一つ消費されてしまった令呪を見つめている。

「僕だってどういう事か知りたいさ……」

ライダーによるランサーへの止めは切嗣による、
『今すぐ戻れ』という令呪による命令で
強制中断されているのである。

ライダーの戦闘開始の合図が来た頃には
切嗣も狙撃地点の確保を開始していた。
ライダーの戦闘が佳境に入る頃、
切嗣もスコープで相手のマスターの姿を捉えていた。
そこで、在り得ない筈の姿を見て、
息が止まるような思いに陥ってしまったのだが。

「……イ…リヤ?」

小さくその少女の、実の娘の名前を呟いて切嗣は困惑する。
居る筈がない。
居てはいけない筈なのである。
彼女が聖杯戦争に繰り出されない為に
“自分はこの聖杯戦争に参加”したのだから。

唖然としている切嗣を尻目に戦いはライダーへと傾いた様である。
ライダーがランサーへと止めをさそうとする。
これでランサーが消滅し、無傷のままイリヤが脱落するのなら
それはそれでいいのかもしれない。
だが、イリヤはランサーへと駆け寄り、
ライダーはそれを無視している。
思わず令呪へと命令していた。

「戻れ、ライダー。 今すぐにだ!!」

間一髪の所で命令は間に合った。
ライダーはキックの姿勢のまま、
そのまま近くの壁へと激突したが。

…………………。

「ライダー、あのランサーのマスターには手を出すな」

切嗣がライダーを見ずに言葉だけを告げる。

「……ふぅ、大体分かった」

それだけを応えるとライダーはバイクに跨り、
一人で勝手に走り去っていく。
その姿を見ずに煙草を震える指で取り出そうとして
パラパラと取りこぼしていく。
煙草を箱ごと握りつぶし、地面へと叩きつける。

「クソッ、どうなっているんだ、いったい!?」

顔に手を当てて、切嗣は悲痛な叫びを上げた。

【深山町・学園北東住宅街/深夜】
【衛宮切嗣@Fate/zero)】
[状態]:健康 (残令呪使用回数:2)

【サーヴァント:ライダー(門矢士)@仮面ライダーディケイド】
[状態]:全身に掠り傷(軽症)、魔力消費(中)



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