二次キャラ聖杯戦争@ ウィキ

I'm a liar

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匿名ユーザー

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I'm a liar



これはほんの少し前の出来事。
謂わば、本番前の準備運動。
本来ならば、そうなる筈だった。
実際にはそんな生温いものではなかったけれど。

オレのサーヴァント、真名(こいつらは自分の本名の事をこう言うらしい)
『イスラ・レヴィノス』。
第一印象はハッキリ言ってしまえば同族嫌悪。
俺と同じ『嘘吐き』の空気を自然と感じ取れた。
こいつはその顔にへばり付いたかのような作り笑いでオレに尋ねて来た。

「……で、君はどうするの?」

「で……って何が?」

言葉の意味を図りかねて不審そうに尋ね返すオレをこれ見よがしなまでに
馬鹿にするような顔をして大袈裟なほどに大きく溜息を吐き、
芝居めいた調子のまま俺の従者は口を開く。

「行動方針の事だよ。
 今後の方針も決めないで君は如何する気だったんだい?」

いちいち癪に障る言い方をする奴だけど言っている事自体は最もだ。

「分かってるさ、そんな事はちゃんと分かってるよ!」

こいつがオレに問い質したい事の本質は分かってる。
行動方針なんて言ってはいるが、要は他の参加者を『如何殺したいのか?』、
『オレにその覚悟があるのか?』この二点を確認したいんだろう。
頭の中でこの事柄に思いを巡らせる。
そんな俺の様子を目を細めて眺めながらイスラが言葉を続ける。

「中々に悩んでるようだね、参考までに一つ良い事を教えてあげるよ。
 僕のクラス『セイバー』は全サーヴァント中で最も優秀なサーヴァントであり、
 過去の聖杯戦争においても優勝者の多くはこのクラスのマスターだよ。
 良かったね、君はこの点だけでも優勝に近づいた訳だ」

揚々と喋る言葉はかなりの期待感を持たせるものだが、
どこか含みのある言い方が気になる。

「じゃあ、お前は`“かなり強い”サーヴァントって事なのか?」

疑いを込めた睨むような視線でオレは自分のサーヴァントを見つめる。

「残念、僕のセイバーとしての個人的な能力は下から数えた方が早いだろうね。
 僕がセイバーとして顕現してるのはある特定の事柄が要素なだけで、
 僕個人の純粋な適正だったらキャスターもしくはアサシンと言った所かな?」

オレの疑いに対して逆にこのサーヴァントはハッキリと肯定してみせた。
表情は変えず、へらへらとまるで他人事の様にこのサーヴァントは自分の能力を語る。
威張れる事でも何でもない、要はただ単純に『如何に自分が弱いか』を言っただけだ。

「……諦めろって言いたいのか?」

ギシリと頭の中で鈍い音が響く。
実際に聞こえた訳じゃない、オレが勝手にそう思い込んでいるだけだ。
だから、この怒りで歪む世界もそう見えているだけに過ぎないんだ。

「そういう訳じゃないさ、僕にも『切り札』くらいある。
 それもとびっきりのね」

変わらぬ微笑を貼り付けた顔のまま、『嘘吐き』が『嘘吐き』に語りかけてくる。

……うんざりだ。

「顕現」

聞こえるか聞こえないかはっきりしないほどの声でぼそりと呟く。
言葉は意識となり、意識は行動を成す。
オレの右手に埋め込まれた核が反応し、
オレの今の気分にうってつけの形を形成していく。
この糞ったれな気持ちをぶち壊せる破壊の感情。
謂わば、その顕現。
瞬時に現れた大剣を振るい、『嘘吐き』の首に突きつける。

「御託はウンザリなんだよッ!
 オレはやってやるって言ってんだッ!
 ゴチャゴチャとお前の方こそ如何なんだよ!」

刃旗を顕現した影響で肉体も変容をきたす。
黒だった髪が部分的にメッシュの入ったような白髪へと変色し、
目元には『人ではない証』である赤い稲妻のようなラインが浮き出る。
そんなオレの変化にも、ぶちまけられた感情にも、喉元に迫る大剣にも、
その全てに対してさして動揺せず、イスラが一つ息を吐く。

「本当にそっくりだね……僕と君は」

刃旗使いが生じる絶対的な空間。
意識圏(ケイジ)。
全ての感覚が鋭敏に研ぎ澄まされた中で聞いた
その言葉は今までとは違い、若干の感情が混じった呟き。
同情いや後悔?

「やる気はあるさ、証拠も見せる」

イスラがそっと大剣に手を当てて退かし、目を閉じる。
意識の集中と共に周りの空気は変容し、
全てがイスラの下へと収束していく。
そして、光と共に現れたのは一振りの剣。
彼を『セイバー』たらしめているその剣を掴み、

――――抜き放つ。

「――紅の暴君(キルスレス)――」

抜き放たれた剣から放たれる閃光で目が眩み、
思わず目を伏せてしまった。
一瞬の暗闇の中でぞくりと背筋に鳥肌が立つ。
見なくても分かる。
目の前には今、『死』そのものが存在しているのだと。
何をする訳でもなく分かってしまう実力差。
柩姫同士の戦いを目撃した時の様に如何に自分達が
無力な存在なのかを本能で知らしめるような。

そう、『絶対的存在』。

「……ハッ…ハハッ…何だよそれ…とっておき所じゃないだろ」

この力なら誰が相手だろうと勝てるに決まってる。
残らず殺し尽くしてその先で……

「取り戻せるんだ、全部。
 天音姉もネーネも!」

ネーネが天音姉になると聞いた時に漏れたソレと同じ。
自分の歪んだ欲望を理解していながらも期待してしまう
人間としての醜い感情。
「笑い」が自然と口元を歪ませる。

「残念だけど、そう単純な話でもないんだけどね」

そんなオレの希望を打ち砕くように目の前の何処か『狐』を
連想させるような形を持った『死』が微笑む。


――――ドクン。

「はっ?」


――――ドクン。

心臓が脈打つ、それもハッキリと分かるほどの異常を伴って。

熱い。
まるで焼けた鉄の棒を強引に飲み込まされたかのように
全身が灼熱のように感じられる。
それと同時に異様なほどの倦怠感も襲ってくる。

――――ドッドッドッドッドッドッドッドッドッ!!

心臓の鼓動は最早幾つ刻まれたのか分からぬほどに高速に高鳴り、
血液が逆流してきたかのように視界が朱に染まる。

「グッ…ガッ……ガァッ!! な、何だ…よ…これ…どう…なってんだよ……」

搾り出すように声を出す。
考えられる原因は一つだけ。
朱に染まる世界の中で一人だけ白く取り残された存在。
異形の『剣』の魔人。
そのサーヴァントは自分の持つ剣とオレの姿を交互に見比べた後、
困ったような表情を浮かべ、剣を光り輝く鞘に収める。

「まぁ、大体予想はついていたんだけどね」

イスラが剣を収めるのと同時にその姿は発光し、
光が消えた時にはその姿はここで出会った時と同じ姿に戻っていた。
それと同時にオレの身体を襲った謎の異変も収まり始める。

「ウグッ…ツゥッ! ハァハァハァハァ……ウッ!?
 ウボェェェッ!!」

膝をつき、急激な体調変化の名残に耐え切れず、
その場に吐瀉物を撒き散らす。

「あ~あ~、ほら床を汚しちゃったじゃないか」

見下すようにオレの傍に来たイスラが
何所か面白そうにそんな俺の様子を眺めている。

「…がやった…か…」

息が乱れ、言葉は途切れる。

「何だい? 如何にも聞き取れないね」

一度は収まりかけていた感情がまた沸々と湧いてくる。
こいつはあの『狐』のような印象といい、
『あの男』を連想させてくる。

「おまえがやったのか、つってんだよ! このクソ野郎ッ!!」

口元を拭い、ふらつく足で何とか立ち上がり、
傍まで来ていたイスラの胸倉に掴み掛る。

「酷いな、苦しいじゃないか?」

「いいから答えろ!!」

そのにやつく顔にもウンザリして来た。
こいつとはあまり話をするべきじゃなかったんだ。

「そうだよ」

「ッ!!」

否定も言い訳もせずに言ってのけたイスラに向けて腕を振りかぶる。
だが、その腕がイスラの顔を歪ませるよりも早く、
その姿は光に変わり、俺の腕は空しく宙を切る。

「なっ?」

「だが同時に君自身の所為でもある」

言葉と共に背後に光が収束し、イスラが再びその形を得る。
オレの行為が無意味だと暗に示しながらイスラは言葉を続ける。

「僕らは基本君達の魔力によって現世に形を得ている。
 存在するだけで魔力を食うんだ。
 そんな中でも特にこの宝具は魔力を食う。
 君を襲った現象は君自身の魔力が
 枯渇しかけていたのを示しているのさ」

魔力。
そんなオカルト染みた言葉に今まで縁も所縁も無かったが、
要するにオレの体力のようなものだろうか?

だけど、今はそんな事は如何でもいい。

「つまり、今のは使えないって事か?」

あの力を使えない?
だとしたら、オレはこの先生き残れるのか?

「そうは言ってないさ。
 使い所を間違えるなってだけの事さ。
 間違えれば、君が死ぬ事になると言うだけの話」

こいつは嫌いだ。
そのにやつく顔も態度も気に食わないが
何よりもこいつとオレが何処までも『同類』だと思い知らされる。

他人を信用せず、
嘘で自分を塗り固めて、
その癖、その全てを他人に押し付ける。
オレもこいつも『あの男』も全員一緒なのだと
思い知らされる。

それを認める事をオレはしたくない。

「能力は最弱、切り札も使えない。
 ハン! 実に優秀なサーヴァント様なんだな!」

腹立ち紛れに苦しい嫌味を吐く。
自分の首も絞めている訳でただの当て付けである。

「そうだね、僕はあまりにも弱い。
 だからこそ君は決めなくちゃならない。
 “どうやって殺すのか”を」

ここに来て、初めてイスラから出た明確な害意を持った言葉。
はぐらかされてきた言葉を口に出したイスラの表情は変わらない。
相も変わらずに笑顔のままで、
その姿に思わず背筋が凍りついてしまうほどに。

「奇襲、離間、暗殺、その他諸々。
 取れる手段を全て使わないと僕と君は勝てないんだ。
 だから、“君はどれがいい”?」

このサーヴァントには正々堂々なんて言葉は存在しない。
さっき自分で言っていたじゃないか。

『僕個人の純粋な適正だったらキャスターもしくはアサシンと言った所かな?』

剣士(セイバー)の名を冠したこのサーヴァントの本質は
暗殺者(アサシン)なのである。
勝つ為ならば手段は選ばない。
己の行為に清濁を問わない。

その姿は正に、オレそのものじゃないか。

「ハ…ハハ…アハハハハ!!
 そうだな、俺が間違ってたよ。
 勝ちたいんなら何でもしなきゃな」

認めたくないからこそ認めないといけない事がある。
自分が如何に最低な分類の人間なのかという事を。
俺の言葉を聴き、イスラがどことなく愉快そうに目を細める。

「そう、君と僕は同じだ。
 だからこそ分かるだろ?
 僕達が取るべき手段を」

「嘘吐き」同士が取る手段なんて一つしかない。

「分かってるよ、オレ達以外はどうせ全員敵なんだ。
 騙して、利用して、最後にはオレ達で奪い取る。
 それがオレ達の戦いだ」

パチパチパチと拍手が鳴る。
鳴らしているのは勿論イスラだ。

「百点とは言い難いけれど充分だね。
 必要なのはその覚悟だ。
 僕らは今から堕ちる所まで堕ちるんだから。
 憎まれようと蔑まされようと
 それを受け入れないといけない」

結局、何一つ変わりはしないんだ。
ネーネの為にF・L・A・Gの皆を利用しようとしたあの頃と。
天音姉の為にネーネを利用していた事実と。
だから、オレは嘘をつくだけだ。

全てから逃れる為に。

「じゃあ、行くぞ?」

何処とも知れぬ場所の中でポツリと存在していた扉へと手を掛ける。
この扉を開けば最早引き返すことは出来ない。
引き返す?
今更、何処へ引き返すって言うんだ。
無くしたものは返ってこない。
『奇跡』でも起きない限り。
だから、『奇跡』を奪い取りに行こう。

ガチャリとドアノブを回す。
軽い音を立てて扉はあっさりと開いた。
中に居た時は気づかなかったが、
如何やら何処かの商店街の一店舗の中にオレ達はいたようだ。
顕現は出る前に解いている。
見た目だけならオレは普通の高校生だ。
「ふぅ」と一つだけ息を吐き、眼鏡を掛けなおす。

「先ずは捜さないとな……」

誰に言うでもなく呟く。
捜さないといけないのは獲物だ。
出来る限り、疑う事を知らないようなお人好しを。

『見つけるだけなら意外とすぐに見つかりそうだけれどね』

闇の中にイスラの声だけが聞こえる。
言葉の意味を理解するよりも早く、
ここよりは少し離れた場所で奇妙な『音』が鳴り響いていた。

【深山町・商店街/深夜】
【天海陸@ワールドエンブリオ】
[状態]:健康(残令呪使用回数:3)

【サーヴァント:セイバー(イスラ・レヴィノス)@サモンナイト3】
[状態]:健康



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