相棒と変身と聖者様がみてる



時刻は深夜を回った所。
わずかな街灯に照らされた深山町の一角を、ひとり歩く影。

今は死人のように眠りに落ちている男、間桐雁夜を背負い歩く彼のサーヴァント
であるアサシンは周囲に視線を巡らせながら歩みを進めていた。


彼自身の持つ気配遮断のスキルを併用しつつ夜の闇に紛れれば他のマスターや
サーヴァントに捕捉される心配は滅多な事ではまず無い。
だがこの状態をいつまでも続けている訳にはいかなかった。

自分を含めサーヴァントは例外なくマスターからの魔力供給によって存在を維持している。
そしてそれは実体化し続ける事でも微量ながら魔力を吸い上げるのだ。
今は落ち着いているが、自身のマスターはいつ命を落としてもおかしくない危険な
状態である事をアサシンは十分に承知していた。
だからこそこのまま自分が実体化し続ける状況を継続させる訳にはいかない。
かといって路上に眠らせる訳にもいかなかったため、アサシンはマスターを背負いながら
彼を安静に眠らせられる場所を探す事にしたのだった。


「(どこか少しの間だけでも休める場所があればよいのだが)」

そう思いながらしばしの間周囲を見回しながら歩を進めていたアサシンの目に
止まる場所があった。
そこは先ほど通り過ぎた商店街のはずれにある小さな公園であった。

あそこならばマスターを休ませられるベンチの一つや二つあるはず。
安堵しつつ公園に向かおうとしたアサシンだったが―――――寸前で気づいた。
備え付けられた誘蛾灯に照らされたベンチの下に、二人の人影がある事を。

「(魔力の反応を感じる。間違いない、マスターとそのサーヴァントか)」

何やら会話をしているようだが、幸いにもこちらに気付いた様子はない。
果たして彼らはこの聖杯をめぐる戦争に乗っているのか。
如何なる能力を持ったサーヴァントなのか。
未だ深い眠りに落ちたままのマスターを守りながら戦うのはあまりにも危険である。
故にこのまま彼らをやり過ごす選択も十分ありだが、これから自分が戦うかもしれない
相手の情報を少しでも集めるチャンスでもある。
どうするべきか――――――


思案するアサシンだったが、その思考は思わぬ理由で一時打ち消される事となった。
二人組の片方、サーヴァントであろう人物の魔力反応が増大するのを感じ取ったのである。

――――――もしや、気付かれたか!?

最悪の事態を考え、戦う覚悟を決めかけた時である。

『タカ! トラ! バッタ!』


『♪タ・ト・バ! タトバ タ・ト・バ!!』


どこからともなく流れてきた謎の歌に、一瞬だがアサシンはあっけに取られた。



―――――――時間は、数刻前にさかのぼる。


「おーい火野さーん、コーヒー買ってきたよー」

「あっ、ありがとう……っていうか、俺サーヴァントだから一応食事とかはしなくても
大丈夫なんだけどなぁ」

「まあまあ細かい事は気にしない。長い戦いになるだろうし、今のうちに休んどかないと」


ライダーの宝具である【疾走する騎馬の自販機(ライドベンダー)】を走らせること十数分。
木々が生い茂る森を脱出した二人は無事に人気のある住宅街へとやって来ていた。
道中、他のマスターやサーヴァントに襲われるのではないかとヒヤヒヤしていた
こなただったが、運よくここまで来れたのはまさに僥倖と言えるだろう。

周囲を散策する途中で商店街も通りすがったが、流石に時間も時間だったため店はどこも
閉店しており、ライダーこと映司が希望していた明日のパンツはとりあえず朝まで
保留する事とした。
(本人は「俺の明日が……」と妙にガッカリしていたが、それは今は置いておく)

そして現在。
こなたと映司の二人は途中で見つけた小さな公園でひとまず休むことにし、これからの
方針などを話し合う事にした。

「ところでさぁ、さっき小銭探してた時に見つけたんだけど」

そう言ってこなたが懐から取り出したのは一枚のカード。
明かりに照らして見てみると、どうやらクレジットカードの類である事がわかった。

「これ、私の使ってるクレカとなんかデザイン違うんだよね。これってきっとアレだよ、
こういう戦いとかでよくある支給品の限度額無制限のカード! 言うなればザ●ナースの
ブラックゴールドカード!」

「……まあ、無制限かはともかく、これでお金の心配はない訳か」

英霊としてこの場に呼ばれる以前は少量の小銭と明日のパンツがあれば生きていくには
充分だった映司だが、流石にこの状況においてはそうも言っていられないので財源の確保
その物には素直に安堵した(こなたのネタ発言はともかくとして)。


「とりあえず今夜は野宿になっても仕方ないとして……朝になったらこれ使って寝泊りできる
場所を確保しないとね。やっぱ拠点作りは基本でしょ。それから食料も必要だし、この町の
散策に他のマスターやサーヴァントの情報も集めないとね。時代は情報戦だよ!」

「な、なんか手馴れてるねこなたちゃん?」

「いやぁ、ただいつもやってるゲームとかで慣れてるだけだけどね。まさかこんな所で
役に立つとはこのリ●クの目をもってしても……いや、これは節穴か」

未だに敵であるマスターやサーヴァントと接触していない事もあるのだろうが、殺し合いの
舞台であるこの場においてマイペースに順応し始めているこなたに映司はある意味関心
せざるを得なかった。
とはいえ彼女自身はこのような戦いとは無縁の生活を送ってきたごく普通の一般人。
サーヴァントとの真っ向斬っての戦いは自身が引き受けるものの、もしも戦闘経験が豊富な
人物や特殊な超能力を持った人物がマスターだった場合、自分の隙を突いてこなた自身が
狙われる可能性も充分ある。
そうなった場合、本当に彼女を守りきる事はできるのだろうか?
自分にはオーズとしての力があるが、もしもそれすら凌駕しかねない力の持ち主が現れた
としたら?

「……火野さん?」

「何? こなたちゃん」

「なんかすごく難しい顔してない? なんか悩みでもあるの?」

「―――あ、いや、何でもないよ。心配させたならゴメン」

「そう? ならいいけど……何かあったなら遠慮しなくていいから言ってね。
なにせ私達はパートナーなんだから! お互い困ったら助け合わなくちゃ!」


サムズアップしながらこなたが答えた言葉を聞き、映司はハッとした。
その言葉に、かつて共に戦った人々の声が脳裏に蘇る。

『火野!なんでも一人で背負い込もうとするな!俺達がいる!俺達の手を掴め!』

『映司くん!』

『映司君大丈夫だから!ドーンと落っこちてきなさい!』

『火野!誰にも頼らないってのは強いことじゃねえぞ!』

『火野さーん!ここですー!』

救いを求める人の元にどこまでも伸びる自分の腕。
その腕を伸ばすための力。
かつて映司は誰よりもそれを欲し、その力を偶然にも手に入れ、その力で人々のために戦ってきた。
だがその中で映司は自身の欲望の叶え方が誤りであることに気付いたのだった。

どこまでも伸びる自分の腕。だが所詮自分一人だけの腕では限界がある。
『手を繋げば』いいのだ。
世界中の人々が手を繋ぎ、絆で繋がる。
そうすれば、それはきっと世界中に繋がる自分の腕になる。
一方的に「助ける」のではなく、互いに「助けあう」こと。
戦いの終わり、映司は彼らのおかげでそれを知る事が出来たのである。

危うくまた履き違える所だった。
今の自分は一人ではない。自分の隣にはマスターである少女、泉こなたがいる。
かつて自分の手を掴んでくれた一人の少女と似た名を持つ彼女が。
それだけで今はとても心強い。

「ありがとう、こなたちゃん。頼りないかもしれないけど、俺頑張ってみるから」

「こちらこそね。なんか火野さん、急にいい顔になってない?」

「えっ、そうかな?」

「そうだ、ひとつお願いがあるんだけど―――――」

迷いが晴れたような表情に戻った映司と改めて握手を交わしたこなたは、ふと思い出した
事を彼に話した。

「火野さんの変身ってやつ、見せてもらってもいいかな?」

「変身!? まあいいけど、何で急に?」

「あ、いや、別にただ興味本位ってわけじゃないよ? もし敵に会った時、自分の
サーヴァントがどんな能力を持ってるとか知っとかないと困ると思ってさ。
いやまあ、変身するのが見たいってのもないってわけじゃないけどさぁ?」

「それもそうか。わかった、じゃあちょっと変身してみせるから見てて」

バツが悪そうに頭をかきながら答えるこなたに苦笑しながら、映司は周囲に人影が
無いことを確認してから懐から何かを取り出した。
それは長方形の筆箱サイズの物体で、挿入口のような物が3か所開いているのが特徴だった。
それを映司が腰に当てると、瞬時にベルト状の物が巻きつき、先の物体はベルトのバックルの
ような状態になった。

「おおっ、なんかベルトになった! 変身アイテムですねわかります!」

「これは『欲望の王の解放器(オーズドライバー)』、それと変身にはこれを使うんだ」

続いて映司が取り出したのは、黒を基調としたデザインのホルダーのような物。
それを開くと、中には色とりどりの様々なメダルが顔を出した。
それぞれ赤・緑・黄・白・青に分けられたメダルが3枚ずつ収納されており、それぞれの
メダルには鳥や虫などの動物の絵柄が描かれているのが確認できた。
映司の話によるとこれは『強大なる欲望の核(コアメダル)』といい、800年前の
錬金術によって生み出された『グリード』というメダルの怪物の核となるアイテムであり、
このメダルを3枚組み合わせることで映司は様々な姿になり、多種多様な能力を行使できる
のだとこなたは聞かされた。

「へーっ、なんか面白そう。タカにクワガタにライオンに……何これ、ウナギにタコ?
こんなの何に使うわけ?」

興味津々の様子でメダルホルダーを除くこなたは、その内容に一喜一憂しつつ改めて変身の
スタンバイ中の映司に注目しなおす。
そのホルダーの中から映司は3枚のメダルを手に取り、慣れた手つきでベルトの3つの
挿入口に順番にセットしていった。
そしてベルトを起動させるため斜めに動かし、同梱されていた円形のスキャナーのような
道具を手に掴む。
キィーンキィーンと待機音が鳴る中、映司はスキャナーをベルトに滑らせメダルを読み込んで
いった。

キィンキィンキィン!

「変身!!」

すると3つのメダル状のエネルギーが映司の周囲を取り巻き―――――


『タカ! トラ! バッタ!』

『♪タ・ト・バ! タトバ タ・ト・バ!!』

突如響いた謎の歌声と共に、映司の姿は人の物から完全に変化していた。
頭部・腕部・脚部、そして胸部の紋章『オーラングサークル』に3つのメダルのモチーフ
である鷹・虎・飛蝗の意匠を持った異形の超人。
欲望の力を宿したメダルの王たる戦士『仮面ライダーオーズ』。
その基本とも言える姿であり、800年前の王が最初に使用した組み合わせ。
『タトバコンボ』が聖杯戦争の戦場に初めて姿を現した瞬間である。

「うわぁっ、本当に変身した! っていうか……何、今の歌!? 何かどっかで聞いたような
声だったけど気のせいかな!? そもそもタカ・トラ・バッタって何その関連なさそうな
組み合わせ? タカ・ライオン・イルカとか、イーグル・シャーク・パンサーとかなら
まだわかるけど!!」

「ああその、何ていうか……歌は気にしないで?」

「いや気になります、先生!!」

困惑しながらも至極当然でもあるツッコミをこなたから受けつつ、映司はかつて初めて変身した
時に相棒である存在から言われた発言を彼女にもする事となったのだった。

【深山町・商店街外れ・公園/深夜】
【泉こなた@らき☆すた】
【状態】:健康、ちょっとだけ困惑(残令呪使用回数:3)

【ライダー(火野映司)@仮面ライダーOOO/オーズ】
【状態】:健康、仮面ライダーオーズ・タトバコンボに変身中

※公園周辺にオーズドライバーの音声が鳴り響きました。
『もしかしたら』誰か聞いたかもしれません。



サーヴァントが謎の歌と共に異形の姿へと変身する姿を目の当たりにし、アサシンことトキは
驚きながらも再び彼らの様子に目を光らせた。
あの上下3色のサーヴァントが果たしていかなる力を持つ存在なのか。
果たして彼らは己が欲望を叶える為にこの戦いに乗っているのであろうか。
疑問は尽きないが、一つだけ確かな点はあった。

「(……あの二人からは殺気に当たる物がまるで感じられない)」
2千年の歴史を持つ暗殺拳・北斗神拳の伝承者候補であり、激動の世紀末の世界を生きた
自分の感覚に間違いがなければ、おそらくあの二人は――――――

いや、まだ結論を出すには少し早いかもしれない。
そう思いながらもトキは迷っていた。
果たして彼らと接触するか否か。
仮に彼らがこの戦いに乗っていないとしても、自身のマスターが戦いを望めば彼らとの
戦いは避けられないものとなる。
あの異形のサーヴァントには北斗神拳が通じるのだろうか?
とにかく現段階では不確定要素が多すぎる。

「(もうしばらく、様子を見るべきか)」


赤黄緑に彩られた騎兵と、白き暗殺者。
果たして彼らが互いに顔を合わせるのは戦いの開幕を遂げた夜になるのか―――――
全ては神のみぞ知る、である。


【深山町・商店街外れ・公園周辺/深夜】
【間桐雁夜@Fate/Zero】
【状態】:気絶中(残令呪回数:3)

【アサシン(トキ)@北斗の拳】
【状態】:健康、気配遮断スキル発動中




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