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「去り行く人と残された絆」(2013/09/14 (土) 23:41:24) の最新版変更点
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「はあっ……」
遠坂邸の与えられた一室に,リインフォースはサーチャーで索敵を行いながらもどこか上の空だった。
同じ部屋に名無がソファーに寝そべりながらエロ本を読みふけっていても怒るどころか気にも留めない様子は、二人の関係を知るものがいれば目を疑うような光景だった。
「さっきからどったのリインちゃん?お腹すいた?」
気になったのか一旦エロ本を置き近づく名無。
真名で呼ぶなと注意するがその声はいつものように覇気がない。
「ほんとにどうしたんだよリ…キャスター。まだ調子がもどんねえの?令呪もう一個使う?」
「やめろ、魔力は十分に回復した。・・・お前のおかげでな。―――それとは別の事情だよ」
「別の事情って?・・・はっ!?もしやついに俺に惚れたか!いやっほう!!」
「ねーよ。」
荒れた口調で即答するがやはり元気がない。
さすがにおかしいと心配になる。やや逡巡したがやがて意を決して問いかける。
「あのさリインちゃん。何か悩みがあるなら話してくれよ。―――そりゃ俺はほかの奴等みたいに頭良くないけどさ、ひょっとしたら力になれるかもしれないぜ?」
口調こそはいつものようにへらへらしたものだったが、その表情は真剣だった。
わずかに驚きながらリインフォースは――――
「いや、別にいい」
あっさりと返した。
「ちょっとリインちゃん!?今のはここで俺に悩みを打ち明けて俺が解決する所だろ!?」
「お前に相談するくらいならサイコロで決めたほうがマシだ。頼りにならなすぎる」
「厳しすぎる!!扱いが雑ってレベルじゃねえぞ!?」
ギャーギャーと喚く名無にさすがに面倒くさくなったのか端的に今悩んでいた事を話す。
「えーとつまり・・・要約すると、殺し合いはしたくないけど願いは叶えたい・・・って事で合ってる?」
「え?あ、うん・・・すごい要約したな」
間違ってはいない・・・むしろこれ以上ないほど端的に判り易い答えだったが、大切な所をスッパリと省略された気持ちになってくる。
「つーかそれって悩むことか?普通に聖杯ほしいでいいじゃん」
「そうもいかないだろう・・・ルルーシュも泉も衛宮も、聖杯の破壊を目的に行動しているんだ。そうなれば必ず衝突が起きる」
なにしろ叶えたい願いがあった花村ですら、聖杯の破壊に動いているのだから・・・
「大体聖杯を手にするということは、今一緒に行動している花村たちを裏切るとゆうことだぞ。お前はそんなことを出来る様な人間じゃあ―――」
「いやいやだからさ」
名無は話す途中で割り込みあっけらかんとこう言った。
「全員で聖杯にたどり着いてさ、聖杯壊す前に――――
横から掠め取っちゃえばいいじゃない」
「・・・・・・・」
何言ってんだコイツ・・・
「何言ってんだコイツ・・・」
「口に出てるぜリインちゃん」
いやだって・・・
「不可能だろうそんなことは・・・他の奴等が許しは―――」
「なんで?花村も衛宮もルルーシュもこなたちゃんだって聖杯いらないんだろ?掠め取るっていうのは無理でも使わしてもらうくらいいいじゃん。どうせ壊すんだし」
あっけらかんと話す名無、その内容は完全に自分の想像を超えた内容だった。
ぶっ飛んだ内容と言い換えても良いかもしれないが・・・
「だいたい槍王の力だってぶっちゃけ掠め取ったみたいなもんだしなー」
「そうだったのか・・・」
おそらく偶然手に入れた力だろうとは思っていたがまさかそんなオチだったとは予想外だった。
「だからさリインちゃん。もっと欲張ってもいいと思うぜ。殺し合いをせずに願いを叶える―――それでいいじゃん。俺だってそのつもりで行動してるしな」
「だけど、でも・・・」
「なんだよまだ心配なのかよ・・・あ、じゃあこうゆうのはどうだリインちゃん」
そういって名無は私の正面に座り目を合わせる。
「もし他の奴等がリインちゃんの敵になってもさ・・・俺は最後までリインちゃんの味方でいる。なにが起こっても、ずっとリインちゃんの心を支えてやる」
「お前・・・・」
「だからさ、あきらめないでよリインちゃん。きっと大丈夫・・・あきらめなければまた出会えるさ!」
「また・・・出会える・・・・」
もう一度・・・もう一度はやて達に・・・
「信じろよリインちゃん。皆の協力があれば絶対大丈夫だ」
そういって私の手を握る名無の目を、なぜか見ることは出来なくて
「お前の癖に生意気だ」
「アイタ!?」
振り払いデコピンを当てる。手加減したとはいえサーヴァントの力でぶつけられたおでこは赤くなっていた。
その様子に少しスッキリしながら、ソッポを向いてぶっきらぼうに言い放つ。
「でもまぁ―――――ありがとう・・・・マスター」
そう言うと名無はまじまじとリインフォースの顔を見つめた。よく見ると頬がわずかに赤くなっていた。
名無はとても驚いた表情をした後、満面の笑みを浮かべ―――――
「リインちゃんがデレた!!」
「な!!?デレてない!!」
荒れた口調で反論するがまったく聞いていない名無はいやほぉぉう!と部屋を跳ね回る。
いっそバインドで拘束してやろうかと魔力を手に集めたときにドアからノックの音が響いた。
目を向けるのと同時に扉が開かれる。
「こなたとライダー?どうした、何かあったのか?」
「うん、あのね、士郎君が目を覚ましたから皆居間に来てほしいってルルーシュ君が」
「わかった。すぐに行くぞマスター・・・いい加減おちつけ!」
今だ飛び回るマスターにバインドを放ち、泉たちと一緒に名無を引きずるようにして向かった。
「みんなごめん、迷惑かけた。えっとそれと始めまして衛宮士郎です。よろしく」
全員集まった居間で目を覚ました衛宮士郎は頭を下げた。隣にはセイバーが座っている。
すでに顔見知りのルルーシュと泉には申し訳そうに、初対面の花村と名無には礼儀よく挨拶する。
「まったく休みすぎだ。」
「まあまあルルーシュくん。士郎くんも大変だったんだしさ。」
あきれたように返すルルーシュに苦笑しながら宥めるこなた。
「士郎君、セイバーさん。俺はあなた達に謝らなきゃいけない事がある。」
こなたの傍らにいたライダーは士郎とセイバーの方に近づき頭を下げた。
「俺は凛ちゃんを守れなかった。凛ちゃんを殺してしまった陸くんを止められなかった。陸くんが犯人だとわかっていても、士郎くん達と向き合うことから逃げていた。謝って許される事じゃないけどそれでも―――」
「違うよ!映司さんは悪くないよ!元はといえば私が気絶したから助けを呼べなかったんだし、それにりっくんが疑われたとき私がかばったんだよ。悪いのは私のほうだよ。―――ごめんなさい士郎くん。セイバーさん」
「そんな・・・泉やライダーは悪くないだろ。悪いのは全部天海たちだし天海たちだって理由があって殺し合いに乗っていたんだ。二人が責任を感じる事はない」
「士郎の言うとおりです。リクもセイバーも他者を蹴落としても叶えたい願いがあったのでしょう。無論リンを殺したのは許せませんが、どの道もうすでに終わったことです」
士郎とセイバーはそういって二人を慰める。しかしライダーはそれでも申し訳無かった。
本来加害者である天海陸すら、できるなら助けたかったと思っているのだから。
暗くなりそうな空気を払拭するように名無が間に入り声をだす。
「あのさ、せっかくだから改めて自己紹介しないか?特に俺ら衛宮のことよく知らないし」
努めて明るくしようとする名無の意見を、珍しくもルルーシュが賛成した。
「そうだな、衛宮は俺の事はともかく他の奴等とちゃんと自己紹介していないしな。知っておいた方がこれから一緒に行動する上では悪くない案だ」
周りの人間関係をできる限り円滑に進めようとする姿は、ルルーシュを良く知る朽木スザクが見れば驚くだろう。
閑話休題
「じゃあ私からね。泉こなたです。こう見えて大学生なんだよ」
胸をそらし主張するその姿に士郎は―――
「え!年上!?」
「事実だ。俺も最初驚いた」
「失礼しちゃうなー」
驚き思わず大声を出す士郎に、そんな反応に慣れているのかマイペースに答えるこなた。
実際はある種の自己暗示である。きちんと士郎たちと向き合ったとはいえ、いまだ天海陸の裏切りと死はこなたの心に大きな影を落としている。
こればかりは実際にリクと向き合うか時間が経たねば解決できない問題である。なのでできる限り日常と同じ行動や言動を取ることで平静さを保っていた。
「次は俺なー。名無鉄之介!美少女ハーレムを作るイケメンだ!こっちはマイスウィートハニーのり・・・キャスターだ」
そういってキャスターの肩に手を回そうとする直前、魔力を込めて強化された肘打ちが脇腹に突き刺さり床に突っ伏した。
周りの反応を見る限りいつもどおりのようで士郎以外ノーリアクションだ。
「不本意ながらコイツのサーヴァントのキャスターだ。よろしく」
差し出された手を握り返し軽く握手をすると復活した名無が再び抱きつこうとしていたが、顔面に裏拳を叩き込まれ再びダウンした。
乾いた笑みを浮かべる士郎の前に、ずっと暗い顔でうつむいていた少年―――花村陽介が席から立ち上がり士郎の前で止まった。
その様子に周りの人間・・・明るい名無ですら緊張感を帯びたものに変わった。
そんな周囲の空気に気づいていないのか、あるいは判っていてもそれでも行動を起こしているのか、花村は緊張した面持ちで切り出した。
「花村、陽介・・・です」
途切れ途切れになりながらも、花村は言葉を止めずに―――
「あんたの、いや・・・衛宮の家族を殺した――――鳴上悠の・・・親友だ・・・」
そして辛そうな顔色で。いや、実際に辛いのだろう。顔は青ざめて苦しげに立っていた。
周りの者も心配げに、(花村のサーヴァントだけ特に変わっていなかった)花村と士郎を交互に見ていた。
「あんたはっ、憎んでいるか・・・相棒を、あんたの家族を殺した悠のことをっ・・・・・憎んでっ・・・いるか・・・」
「花村、お前・・・」
「相棒を止めれなかった俺をっ・・・怨んでは・・・いないか・・・・っ」
声を絞り出すように問いかける花村。その視線を逸らさずに向き合う。
「なあ花村。なぜ鳴上はこの戦争に参加したんだ?人を殺してでも叶えたい願いがあったのか?」
「――――あった・・・俺は持っていたし悠にもあった。いや、俺以上に悠は願いを叶えたかったはずなんだ。」
「何なんだ、その理由とは」
黙って話を聞いていたルルーシュが間に入ってくる。
殺されかけた身としては理由くらい知っておきたいのが心情なのかもしれない。
「――――俺は、・・・いや、俺達は――――――――――人を殺したんだ―――――」
それからポツポツと当時の状況の説明を始めた。
連続殺人事件―――シャドウとペルソナ、自称特別捜査隊。増えていく仲間、連れ去られた奈々子。ついに捕まえた犯人。
そして――――奈々子の死と犯人への断罪―――
「だから俺達はあの時、犯人を・・・生天目をテレビの中に突き落として・・・殺した・・・殺しちまった・・・っ」
辛いことを思い出すように。いや、実際は辛いのだろう。トラウマと化している出来事を話しているのだから。それでも花村は話を続けた。
「それ以来俺達はバラバラになった・・・。何やっても楽しくなくて、顔を合わせたら辛くて、あの日のことを今でも夢に見る・・・。だから俺はあの日をやり直したくて・・・・・・聖杯戦争に参加したんだ」
「やり直しを望んだのですか・・・」
セイバーは複雑そうな面持ちで見ていた。他の皆も声を失っている。
「そんなこと考えなきゃよかった・・・逃げずに立ち向かっていたらっ・・・俺達は聖杯で願いを叶えようなんてきっと思わなかった・・・」
ああ・・・ほんとに・・・
「無くしてから気がつくなんてほんとに馬鹿だッ・・・!俺たちだけじゃねえ、衛宮さんたちにも取り返しのつかないことを――――」
「マスター!!」
どんどんとマイナスに陥っておく心を無理やり止めるようにアレックスが話を止めた。
「落ち着けマスターよ。今は他に為すことがあるはずだ。それにお前がそうしてても死者が戻ってくるわけでもない」
なんとか気持ちを落ち着かせるべく慣れない説得をするがあまり効果がみられない
このままでは戦うことも出来なくなるとアレックスが内心焦りを覚えていると――――
「それなら会わせてやろうか・・・」
「―――――え?」
突然言われた提案。
その内容をだれもが理解できずにいると・・・
「下です士郎!」
セイバーの忠告と同時に床一面に魔法陣が敷かれ、そこから現れた触手状の物に全員が捕まるとそのまま陣の中に引きずり込まれていった・・・・
「ちょっとリインちゃんどうしたの!?皆どこ行っちまったんだよ!」
「・・・心配するな、害があるようなものじゃ無い。全員時間が立てば戻ってくる」
「・・・そっか。わかった」
それだけいうと携帯を取り出し何か調べていた。
あまりにもあっさりした態度に逆にこちらが面喰い尋ねる。
「聞かないのかお前は。私が嘘を言っているかもしれないぞ?」
「いいよ。リインちゃんのこと信じてるから」
至極当然のように返しどこかに電話を掛ける名無
「・・・冗談だ。あいつ等は無事だよ・・・今頃自分の傷に向き合っているさ」
それだけ伝えると発動した魔法の制御と索敵の同時進行に意識を集中した。
「ここはいったい・・・」
そこは辺り一面暗闇で覆われていた。
上下左右全てが黒に染まっていて自分が立っているのか浮いているのかそれさえ分からなかった。
周りを見ると名無とキャスター以外全員いて同じように困惑を隠しきれない表情を浮かべていた。
「ガウェイン、これはいったいなんだ」
「おそらく固有結界の一種かと思われます。すでに我々はキャスターの術中に捕らわれているかと・・・」
「脱出する術は?」
「申し訳ございません・・・私には何とも」
「衛宮、お前たちは何か解らないのか?」
「術者のキャスターを倒すか時間が経てば消える・・・とは思うけど・・・」
現時点ではどうすることも出来ない。そう理解すると全員で現状把握に取りかかった。
仮にこれがキャスターの裏切り行為だとしてもタイミングがおかしい。
いくらキャスターが裏切りのクラスとはいえこの場面で裏切るのはあり得ない。
最良なのは衛宮切嗣のような危険人物を全て打破した後自分たちを罠にかけるのが一番賢い選択だ。
ならば他に何か理由があるのか?あるならそれはいったい何なのか?
気になったのが直前にキャスターが言った一言
「それなら会わせてやろうか・・・そう言ってたよな」
「どういう意味なんだろ。普通なら私たちを同じ目に合わせるって意味に取れるけど」
「だけどこなたちゃん。俺たちはまだ全員生きている。仮にキャスターさんが俺たちを殺すつもりならとっくに殺されているはずだよ」
「それならば一体どのような理由なのでしょう。まさか本当に死者に会えるわけが・・・」
コツン・・・コツン・・・
その時サーヴァントが全員戦闘体勢に入り音がした方へ意識を向ける。
マスターたちの方も警戒をし何があっても動けるように集中した。
近付いてくる足音・・・やがてその姿が見え始めたとき、驚きに思考停止に陥るものが現れた。
そこに現れたのは3人の男女だった。
黒い髪をサイドに纏め赤いコートを羽織っていた、気の強そうな少女いた
赤い少女とは対照的に、雪のように白い肌と髪をし、赤い瞳の少女がいた
まるで海藻を思わせるウェイブがかかった髪型をし、意地の悪い笑みを浮かべる少年がいた
「遠坂・・・イリヤ・・・慎二・・・」
驚愕の表情を浮かべる衛宮士郎に答えるように笑みを浮かべる、冬木の御三家がそこにいた}&italic(){}&u(){}
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