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絶望への反抗!柳洞寺に集う超頭脳派たち」(2013/01/24 (木) 14:52:14) の最新版変更点

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*絶望への反抗!柳洞寺に集う超頭脳派たち 追跡対象であるアサシンとそのマスターから離脱した後、キャスターは突如として猛烈な違和感に襲われた。 「あらん?」 瞬間、マスターとのレイラインを通して凛の視界が網膜に映し出された。 どうやら凛は敵のサーヴァントに剣らしき凶器(見たところ格の高い宝具のようだ)で身体を貫かれたようだ。 明らかに致命傷であるばかりか、レイラインから感じられる違和感からして魔力を収奪されているのだろう。 ―――“令呪を以って命じる……!” だがそんな有様にも関わらず彼女は諦めていないようだ。 パスを通してマスターからの最期の命令が念話で届いた。 ―――“衛宮士郎を探し、守りなさい!!” 身体全体に令呪によって齎されたのであろう膨大な魔力が漲る。 それと同時に凛とのパスが完全に絶たれた。間違いなく死んだだろう。 凛の視界からでは下手人の顔までは確認できなかった。 だがこれまで凛から念話で知らされてきた状況から考えるにある程度は犯人像を絞り込める。 とはいえ、キャスターにとって誰が犯人かなどという情報には大した興味などないのだが。 「ご主人様ん……」 それよりも問題は令呪の効力によって今のキャスターの身体は強制的に衛宮士郎を探すための行動を強いられているこの状況だ。 もしキャスターが士郎の位置を知らなかったのならば“衛宮士郎を探す”という名目の下令呪に逆らわない範囲でもう少しは好き勝手な行動が出来ただろう。 だが幸か不幸かキャスターは士郎の現在位置を知ってしまっている。 キャスターの持つ宝具の一つ“金霞帽”。 自らの姿を隠匿しながら広範囲の索敵を可能とするそれは例え気配遮断スキルを持つアサシンであろうとも射程に入ってさえいれば容易に捉えることが出来る。 つい先ほど間桐邸とは別の方角から発された強烈な閃光を目の当たりにしたキャスターはすかさずこの宝具を用いて遠方の戦況を詳細に把握することに成功した。 そしてその中から衛宮士郎と思しき人物を発見した。凛から聞いた外見的特徴から察するにほぼ間違いない。 そして衛宮士郎を含めた三組のマスターとサーヴァントが柳洞寺に引き上げていくところも見届けた。 ここで問題となるのはその面子の中にキャスターの素性を知る者が混じっているという点だ。 「困ったわねぇん…」 だが令呪による強制は彼女の都合など一切考慮しない。 マスターの死によって大幅に能力が低下した今のキャスターが遠坂凛ほどの魔術師が使った令呪に抗うのは困難だ。 よしんば逆らうことが出来たとしても、ただでさえ下がったステータスがさらに低下し身体から零れ落ちていく魔力量は今の比ではなくなる。 つまりキャスターはどう転んでも己の不利を承知で柳洞寺に向かわざるを得ない。まさに八方塞がりであった。 ―――だが。 そんな彼女を取り巻く逆境と困り果てたような口調とは裏腹に魔術師の英霊の顔には薄い笑みが浮かんでいた。 「………」 ルルーシュは柳洞寺の客間の一室で休息がてら出発した後の方針を考えていた。 無論、傍には霊体化したガウェインがついている。 (ガウェインの聖者の数字の効果時間は3時間。 それだけの時間で効率よくこの会場の調査と他マスターの勧誘を進めなければならない) 安全策をとるなら聖者の数字の効果が切れる正午前後に一度柳洞寺に戻るべきだ。 そうなると日中探索に費やせる時間は多くはない。 つまり無駄な行動は極力避けなければならないということだ。 (やはり最初に調べるべきは遠坂邸と間桐邸か。 リスクはあるが話に聞く限り遠坂凛と間桐桜の魔術師としての力量は得難いものだ。 最も上手くいけばこちらの戦力を一気に拡充できる) ルルーシュらの現在の戦略目的はこの電脳空間からの脱出と聖杯の破壊ないし封印だ。 だがそれらを達成するには長時間に渡るムーンセルの調査と脱出のための綿密な作戦立案が必要不可欠。 そしてそれだけの時間と自分達の身の安全を確保するためには出来る限り多くのマスターとサーヴァントを集め、その戦力を以って殺し合いに乗った連中への抑止力とする他ない。 実現できるかどうかも未知数と言わざるを得ないがだからと言って諦めるという選択肢は無い。 「ルルーシュ、ちょっと良いか?」 不意に声を掛けられた。 振り向くと士郎が自分を呼んでいた。 「どうした、何か変わった事でもあったか?」 「ああ、朝飯が出来たから皆呼ぼうと思ってな。 っていうか金田一は腹減ったって泣きついてくるしライダーは床に転がって駄々をこねだすもんだからどうにも放っとけなくてさ…」 「何を考えているんだあいつらは……」 駄々をこねる英雄など聞いたこともない。というかあってほしくない。 頭を抱えるルルーシュだったが実際戦いが始まってから一度も食事を摂っていない。 どのみち腹ごしらえは必要だろう。 集まった場所は講堂だった。 二十人以上は寝泊りできそうなスペースでたった六人が食事をするというのは妙な心地だったがルルーシュ以外に特に気にしている人間はいないようだ。 「おかわり!」 「ああ、わかったわかった。 多めに作ってあるからそんなに焦って食べなくても大丈夫だぞ、金田一」 「わしは茶のおかわりを頼む」 いや、金田一とライダーが適応しすぎているだけだった。 さらにアルトリアもどこか浮かない表情をしているものの箸を休めることは無かった。 そして極めつけは――― 「これほど上質な料理が存在したとは……。 これがあれば我らに敗北は有り得なかった……」 粗食の国、ブリテン出身の騎士ガウェインである。 美味い食事がよほど衝撃的だったのかがっくりと項垂れながら何かを呟いている。 英雄のイメージが崩れそうなので彼から目を逸らしたルルーシュはふと三杯目をおかわりした金田一を見やる。 聖杯戦争という非常事態にも関わらず何事もなかったかのように食事をしている。 こちらもこちらで先ほどまでの真剣さが嘘のような能天気な表情である。 もっともこちらの方が金田一一という少年の素の顔なのだが、何分先ほどまでは初の他マスターとの接触やサーヴァント戦という非常事態が続いていたために一は気を抜くことができなかった。 このため士郎とルルーシュの中で金田一は正義感が強い知的な人物になっていた。 そのイメージもたった今粉砕されたわけだが。 「そういやさ、ルルーシュ」 「何だ?というか食べながら話すな」 「ああ、さっきのギアスってやつの事なんだけど…何ていうかちょっと引っかかることがあるんだ」 そこまで言って口の中のご飯を飲み込んでから改めて自身の考えを話し始めた。 「今俺達はこの聖杯戦争は誰かが仕組んで起こしたものだと考えて動いてるよな? ならそんな奴がアンタのギアスの危険さを見落とすとは考えにくいんだ。 そのギアスって本当に普段通りに使えてるか?」 「当たり前だ、実際にお前に対してギアスは使えただろう。 ギアスはかけられた者の記憶には残らないから疑うのも無理はないが、これといって異常は無い」 断言するルルーシュに対して金田一はかぶりを振って応じた。 「いや、そこを疑うわけじゃないけどさ。 さっき言ったみたいな“死ね”とか“聖杯戦争を棄権しろ”みたいな命令が出来たらそれこそ全体のバランスが崩れるような気がするんだよ。 ただでさえガウェインさんはかなり強いサーヴァントみたいだし、アンタ自身相当頭が良さそうだからその気になればあっという間に聖杯戦争が終わっちまうことだって有り得る。 そんな可能性を“影の主催者”が見逃すとは思えないんだ」 「…何だそのネーミングは」 「ああ、何か適当に言いやすい名前を考えてみたんだ。 話を戻すけど今の俺達はムーンセルっていう電脳世界で作られたデータみたいなものなんだろ?全然そんな実感は湧かないけどさ。 とにかくそれを利用すればアンタに気付かれないようにギアスに何か細工をするとか、それが無理でもNPCや他のマスターに対ギアス専用の対策プログラムみたいなのを用意するぐらいの事はできると思うんだ」 「…なるほど、確かにな。 俺の肉体もギアスもムーンセルによって再現されている以上細工をするなど造作もない、か。 そうなると詳しい検証ができるまでマスターにあまり踏み込んだ内容のギアスを使うのは避けるべきかもしれないな」 金田一に指摘されて初めてその可能性に気付いた。 自分にとってあまりに身近な能力であるために失念してしまっていたが、聖杯戦争のバランスを崩しかねない能力なら例えマスターの能力であろうと何らかの制限が課される可能性は決して見逃して良い事ではない。 だがもし実際にギアスに何らかの制限がある場合、事はそう簡単には済まなくなる。 例えばNPCに対してならどのような制限があるかを検証するのは極めて簡単だ。 彼らは町中の至るところに存在するのだから。 だがマスターに対して聖杯戦争に関する決定的な命令を出せるかどうかは実際に命じてみないことには確かめようもない。 だが確かめる事自体に多大なリスクを伴うのは火を見るより明らか。 かといって事が事だけに士郎で実験するわけにもいかない。 (ならば殺し合いに乗ったマスターを無力化した上でギアスを使うのが確実だが…令呪の存在を考えるとそれもそう簡単にはいかないか。 そして一の言う“影の主催者”とやらは俺がそこまで考えることまで考慮しているはずだ。 なるほど、よく考えられたゲームだ) 「とにかく参考にはなった。ギアスを使う時は細心の注意を払おう」 「ああ、役に立てたなら嬉しいよ。 ってセイバーさん、それ俺の浅漬け!!」 すぐに食事に戻った金田一に溜め息をつきながら、先ほどから拭いきれない違和感について考える。 (こいつは戦争や荒事の経験もない普通の高校生だと自分で言っていたが…解せないな。 聖杯戦争、サーヴァント、それにマスターの脱落。 どれひとつを取ってもただの一般人なら動揺を見せて然るべき事柄ばかりだ。 にも関わらず一は何故こうも自然体でいられる?) ルルーシュが見る限り金田一一はこの異常事態においてあまりに冷静すぎるように思えた。 いや、時折超能力や魔術の存在に驚いたりすることはあるがそれも説明されれば別段騒ぎ立てることなく受け入れている。 よほど能天気なのか、あるいはよほど無神経な性格なのか。 だがルルーシュはそのどちらでもないと踏んでいる。 大空洞で士郎に対して披露した推論にはルルーシュも一定の理があると考えている。 ああした弱者の目線に立った地に足のついた推理はただの高校生に出来るとは考えにくいし、先ほどのイリヤスフィールを失った士郎への配慮にしても腫れ物に触るような態度ではなくごく自然に身内を失った人間を心配する、といった様子だった。 更に言えばそもそも聖杯戦争に対する姿勢そのものもルルーシュの考える一般人のそれとは明らかに逸脱している。 当初情報交換をした時は殺人への拒否感から何となく対主催のスタンスでいるのかとも思ったがそれにしては金田一の言動は積極的に過ぎる。 単なる倫理観や死への恐怖からだけではない、自らの信念を持ち、この殺し合いを打破しようという思考が垣間見える。 これらの点からルルーシュは金田一が相当に“場慣れ”した人間である、少なくとも人の死に慣れすぎているほど慣れていると結論づけた。 (もしやこいつはアッシュフォード時代の俺と同じく自分の経歴を偽っているのか? だが何のために?どんな超常現象があってもおかしくないこの場においてそんな事をするメリットがあるとも思えないが…) 「気になっておるようだな」 不意にライダーに声を掛けられ、思わず彼の方を向いてしまう。 ニヤリと笑っているこの男は今自分が考えていたことを見透かしているとでもいうのか。 「まあそれも仕方あるまい。 何を隠そうこやつは数々の難解な殺人事件を解決したIQ180の名探偵なのだからな! どうやらわかる者にはおぬしの放つオーラというものがわかるようだぞ、一よ!」 ライダーが褒めちぎると同時に金田一が盛大に口に含んだ味噌汁を吹き出した。 ゲホゲホとむせながらライダーを嗜める。 「探偵じゃなくてその真似事! っていうかライダー、その不気味な褒め方はやめてくれよ!」 「たわけ、おぬしが自分の事をちゃんと話さぬのが悪いのではないか。 今ルルーシュはおぬしを疑いの目で見ておったのだぞ?」 ライダーの指摘で今度は口を洗うために飲んだお茶を吹き出した。非常に汚い。 実は先ほどの情報交換の際、金田一は聖杯戦争に直接関係ない事だからと考えこれまで巻き込まれてきた殺人事件の事を話していなかったのだ。 「ち、ちょっと待ってくれよ! 俺、何も疑われるような事してないぞ!?」 「ああ、わかった。わかったからその事件とやらについて全て話せ」 嘆息しながら言うルルーシュに釈然としないものを感じながらもこれまで解決してきた殺人事件について簡潔に話した。 詳細に話さないのは数が多すぎて短時間では説明しきれないからである。 話し終わる頃には士郎とルルーシュが揃って溜め息をつくことになった。 「あー…なあ金田一。言いたくないんだけど俺からすると魔術やギアスよりそんなにしょっちゅう事件に巻き込まれる方がよっぽど有り得ないように思えるんだが」 「全くだ。ギアスでもそんな手の込んだ真似は出来ん」 「えー……でも殺人鬼のいる場所に閉じ込められるなんてよくある事なんじゃあ…」 「「それは絶対にない!」」 初めて意気投合した士郎とルルーシュであった。 というより自分達の世界がそんな陰惨な殺人事件とトリックまみれであってほしくない、という本音の発露であったのだが。 ともあれ全体として和気藹々とした空気になっていたのだが、その空気は突然破られた。 「ご、ごごごご御主人!!」 例によって偵察に駆り出されていた四不象が狼狽しながら戻ってきた。 怪訝そうにしていたライダーが四不象に近寄り、何か違和感を感じたのか匂いを嗅ぐとその表情が一気に険しくなった。 「…皆、ここにサーヴァントが近づいてきておる。 それもわしが知る限り最も危険な者が、だ」 「同郷の英雄、ということですか?」 「…まあそんなところだ。 にしてもあやつ、何のためにこんな戦いにしゃしゃり出てきたのか…まあ大体想像できてしまうのが嫌だが。 とにかく全員で行こう。あやつがどんな状態であろうともな」 和やかだった空気は一変した。 ライダーの言う危険な来訪者を迎えるべく六人と一匹が柳洞寺を下っていった。 寺の階段を降りた先で待ち受けていたのは桃色の髪の絶世の美女だった。 マスターたちを庇うように三騎のサーヴァントが前に出る。 目の前の女性の素性を知るライダーはもとより残る二人の英傑も彼女の内に潜む狂性を一目で看破したが故に。 「お久しぶりねん、太公望ちゃん。何千年振りかしらぁん♥ 旧交を温めたいのは山々なのだけれどぉん、わらわはそこの衛宮士郎ちゃんに用があって来たのん♥」 「俺に……?いや、そもそもあんたはどうして俺の名前を知ってるんだ?」 戸惑う士郎の前にライダーが立つ。その表情は未だ厳しい。 「こやつに用事とは一体どういう意味だ、妲己? 今のおぬしの弱々しい気配と関係があるのか?」 ライダーの口から出た目の前のサーヴァントの真名に全員の警戒が高まる。 殷の皇后・蘇妲己といえば(伝承は諸説あるが)紂王を堕落させた傾国の悪女として名高い反英雄だ。 その能力を以ってすれば自分達のマスターを魅了し、傀儡とするなど造作もない。そんな相手を警戒するのはサーヴァントとして当然の心理である。 とはいえ彼らがその気になれば妲己―――恐らくクラスはキャスター―――を倒すのは簡単な事だ。 今の彼女からは刻一刻と魔力が零れ落ちていっている。 その状態がマスターを失い、現界の楔を失ったが故であることは誰の目にも明らかだ。 だというのに当のキャスターはそんな事実など最初から存在しなかったかのように妖しく微笑むばかりだ。 「そうよん。わらわは今は亡きマスターの命令で士郎ちゃんを守るように言われてるのん♥ だからそんなに邪険にしちゃいや~ん♥」 クネクネとわざとらしい踊りを見せるキャスターだったが、士郎はそんなものは目にも映っていなかった。 今は亡きマスターとは誰だ。 そして自分を守れとはどういう意味だ。 いや、本当はわかっている。そんな命令を下すマスターなどほんの僅かしか心当たりは無い。 知らず唇が乾く。嫌な汗が流れる。 だというのにキャスターにその先を促してしまう。 「誰…なんだ?あんたのマスターは…?」 キャスターは一瞬だけ無表情になった。 それが不安をさらに掻きたてた。 「遠坂凛よん。とっても優秀な魔術師だったのだけれどぉん、何者かに殺されてしまったのん。 わらわは別行動を命じられていたのだけれど、ご主人様は死に際にわらわを呼び出すのではなく士郎ちゃんを守るように令呪で命令されたのぉん」 瞬間、視界がグラリと揺れた。 今このサーヴァントは何と言った? 誰が死んだと言った? 「遠、坂が……?」 「シロウ、しっかりして下さい!」 セイバーに肩を掴まれる。 そこでようやく視界が正常に戻った。 今の自分は傍から見て相当危険な状態だったのだろう。 「待て、殺されたとはどういう事だ? もっと詳しい話を聞かせてもらおうか」 動揺の大きい士郎に代わってルルーシュがキャスターに問いかける。 だがキャスターはチッチッチと指を振り、余裕の体を崩さない。 「女の子をそんなに急かしちゃダメよぉん♥ それにわらわ、マスターがいないから消滅寸前の大ピンチだもの。 ご主人様からの使命を果たす前に消えてしまうなんてロワ企画的にも許されないわぁ~ん♥」 「おぬしがそんなタマかい。というか上位世界から圧力がかかるような発言はやめい!」 「まあそれはともかく、契約といっても誰をマスターにするつもりだ? 生憎と俺達は誰もサーヴァントを失ってはいないし進んで貴様に乗り換える気もない。 そもそも貴様の話が全て真実とも限らないだろう。何せキャスターは裏切りのクラスだそうだからな」 「心配には及ばないわん。もうそろそろ“届く”頃だから、ねぇん♥」 クスリと笑ったキャスターの近くから一人の不審な男が現れた。 不審、と一目で判断できたのは男が虚ろな目で右手に包丁を、左手に人間の腕を持っていたからだ。 男は恍惚とした表情でキャスターに歩み寄ると左手に持った腕を差し出した。 「ご苦労さまん♥」 腕を受け取ると懐から扇を取り出し軽く振った。 そこから発生した小さな衝撃波は男を塵一つ残さず消し去った。 「妲己、おぬし……!」 「あんた、それは遠坂の腕か……!?」 「怒っちゃいやぁ~ん♥ただのNPCなんだから構わないでしょぉん? さて、これでわらわ側の再契約に必要な物は揃ったわん。そこでわらわからのお・ね・が・い♥ わらわは今からこの土地をマスター代わりにする術式を行うわん。その代わりわらわはあなたたちに殺し合いを打破するための力を貸す。 とっても良い取り引きでしょぉん?」 キャスターの提案にルルーシュは鼻を鳴らして応じる。 「ふん、随分と都合の良い条件だな。人間ではなく土地と契約することが出来るというのはそれだけの用意をしているところを見ると嘘ではなさそうだが、だからといってこちらがそれを受け入れる理由があるとでも? そもそも俺達が殺し合いに乗っていないという証拠などどこにもあるまい。楽観論にも程があるぞ、キャスター」 キャスターに動じた色はない。 この解答は彼女にとって予想の範疇でしかないのだから。 「わらわは太公望ちゃんを買い被りもしなければ過小評価もしないわん。 怠け者な性分の太公望ちゃんがわざわざ召喚に応じるマスターなら間違いなく殺し合いに乗ってはいないわぁん。 そうでしょぉん、可愛いマスターさん?」 「っ!?」 キャスターに見つめられた金田一は身じろぎひとつできなかった。 ただ視線が合った。たったそれだけの事で顔は赤く染まり、激しい動悸に襲われる。 そのまま正気を失ってしまうのではないかと思った直後にライダーが間に立った。 視界を遮られたことで心も落ち着いたようだ。 「わかった。その交換条件を飲もう、妲己よ。 一、 ルルーシュもそれで良いか?」 「あ、ああ…」 「…まあ仕方あるまい。確かにキャスターを欲してはいたし、何より現状俺達以上にこいつを上手く監視できるグループがあるとも考えにくいしな」 かくして取り引きは成立した。 これが吉と出るか凶と出るか、それは今の段階ではこの場の誰にもわかりはしない。 再契約の術式はつつがなく終わった。 とはいえ通常なら如何にキャスターのサーヴァントといえどこのような変則的な契約を行うには大量の魔力が必要になるし、そもそも何の媒介もなくこのような契約を結ぶことなど出来はしない。 もしそう簡単に出来たとすれば聖杯戦争のルールなど意味を為さなくなるのだから。 だがこのキャスター、蘇妲己はある手段を用いてこれらの条件をクリアした。 実のところキャスターはいくつかの保険を用意していた。 まず遠坂邸に作った神殿には凛に露見しないよう二つの仕掛けを施した。 一つはマスターが死亡した際、自動的に半径数百メートル内のNPCを含む抗魔力の低い者から生命活動に支障がない程度に魔力を収奪する術式。 これによりマスター不在の状態でも一時凌ぎ程度には魔力を得られ、柳洞寺に辿り着くまでの魔力のロスを最小限に抑えることができたのだ。 その気になればより範囲を拡大することもできたのだが、何しろ凛にバレないように設置しなければならなかったため、規模を抑えざるを得なかった。 二つめは遠坂邸の神殿を破棄することになった際、神殿作成に要した魔力の数割をキャスター自身に還元する術式。 彼女は最初から遠坂邸が使い物にならなくなった時の事を考慮していたのだ。 キャスターが神殿を作る際、凛は確かに妙な真似をしないよう監督してはいたのだが、どれほど優秀であろうと所詮彼女は現代の、それも若輩の魔術師に過ぎない。 キャスターが巧妙に仕組んだ術式を全て見抜くなど最初から土台不可能だったのだ。 第二にアサシンのマスター・間桐雁夜を追跡する際に誘惑の術(テンプテーション)で十数名程のNPCを操り、凛たちの様子をそれとなく探らせていた。(もっともレストランの中に入らせたNPCは天海陸のセイバーに皆殺しにされたが) そして凛とのパスが途絶えた直後に残るNPCに凛の令呪が宿った右腕を切り落として持ってくるよう指示した。 マスターの身体が完全に消滅する前ならば令呪を切り離して一時的に保管することは不可能ではない。 本来の月の聖杯戦争ではユリウス・ベルキスク・ハーウェイという男が同様の方法で敵マスターの令呪を確保していたという事例もある。 そして令呪というこれ以上なくマスターとサーヴァントの繋がりを表す物質的な媒介、そしてキャスター自身が持つ高い道具作成能力の二つが組み合わさることによって彼女は円蔵山の地下大空洞を自身の現界の依代とすることに成功した。 とはいえその代償としてキャスター自身円蔵山周辺から大きく動くことはできなくなったが。 (でも、ここまで上手くいくなんて、きっとわらわの日頃の行いがいいからねぇん♥) キャスター自身、令呪をそのまま確保できるとは思っていなかった。 普通なら死んだ敵マスターの令呪は他のマスターに利用されないよう消滅させるか、あるいは回収しておくのがセオリーだ。少なくとも死体が残る地上の聖杯戦争であれば誰もがそうしていただろう。 キャスターもそれは分かっていたのでNPCが凛の腕を持ち帰れる可能性は非常に低いものと見ていたし、そういった事態に備えての策も準備はしていた。 だが実際には下手人は凛の死体を見逃し、キャスターの手にはこうして彼女の元マスターの腕がある。キャスターはこの不可解を単なる幸運だとは考えていない。 既に殺害したマスターの死体を始末するのにそこまでの手間はかからない。ほんの一小節の魔術で事足りる。 逆に言えば下手人にはそんな手間すら省かなければならない何らかの理由があったのだろう。 このムーンセルでの聖杯戦争では敗北したマスターは自動的に消去され、サーヴァントによって殺されたのだとしてもその痕跡ごと抹消される。それを考慮すれば死体を放置するのも悪手と断じることはできない。しかし決して妙手でもない。 にも関わらず凛の死体を自ら始末することもムーンセルによる自動的な消滅を見届けることもせず立ち去った下手人は、ほんの僅かな魔力の行使も、ほんの少し長く現場に留まることすらも嫌ったということだ。 殺人が是とされるこの空間においてはあまりにも不自然な下手人の挙動について、キャスターは既に一つの解を得ている。とはいえその考えを他人に話す気も毛頭ない。 完全な確証が無いというのもあるが、あまりにも早くネタばらしをしてしまってはゲームはつまらないからだ。 そして現在、ルルーシュら七名はキャスターから遠坂凛の死亡に関する詳しい話を聞くため本堂に集まっていた。 キャスター曰く、凛は最初公園でアサシンとそのマスターに襲撃されていた金田一と同じ一般人のマスター・泉こなたを救出した。 そして程なくしてセイバーのマスター・天海陸と接触。近くのレストランで情報交換を行なっていた。 キャスターが凛から念話で聞かされたのはこれら凛の動向と彼女が見た範囲で判明したセイバー、アサシン、ライダーの能力である。 そしてここからは推測でしかないが、この時何者かの襲撃を受け凛は殺害された。そして天海陸とセイバー、泉こなたとライダーは現在生死不明。 「俺は…桜に何て言えばいいんだっ!!!!」 それらを聞いた士郎は腹の底から搾り出したような苦渋の声を発した。 俯き、歯軋りをする士郎に誰も声を掛けることができない。 しかしだからといって会議を中断しているわけにもいかない。 ルルーシュがその場の全員に話を切り出した。 「とにかく、今最も重要なのは遠坂凛を殺した者の正体と天海陸、泉こなたの生死だ」 「まあ妲己が本当のことを言っておればの話だが…いくらこやつでもこんな無意味な嘘をつくタイプではないし、何より犯人を庇い立てするメリットが無い。 全てを鵜呑みには出来んが、かといって疑い出せば切りがないし一応は真実であることを前提に話しを進めるぞ」 「お言葉ですが主よ、これは敵サーヴァントの仕業と見るべきかと。 残念ながら天海陸と泉こなたも既に脱落しているでしょう」 一見当然と思えるガウェインの指摘にもルルーシュの顔色は優れない。 何かを思案するようなルルーシュの考えを代弁するように金田一が発言した。 「…単純に他のマスターやサーヴァントの仕業だと考えるには、不可解な点が多過ぎるよ。 ただ皆まだ混乱してるし情報も錯綜している。だからまずはわからない点を一つずつハッキリさせていこう」 「ふむ、ではわしからだ。前提として遠坂凛は恐らくサーヴァントによって殺された。 聞く限りの遠坂凛の能力と人物像であれば、マスター相手に何も出来ずに殺されたとは考えにくい。例えそれがあのランサーのマスターであったとしてもな。 ならばどのクラスのサーヴァントに殺されたか、それが問題だ。これがわからぬ限り犯人を絞り込むことすらままならぬのだからな」 ライダーの提示した疑問にすかさずガウェインが応える。 「順当に考えればアサシン、と言いたいところですがキャスターの言う宝具級の剣によって刺されたという情報から判断するにセイバーの可能性も捨てきれません。 いずれにせよこの二クラスのいずれかであることは疑いないでしょう」 「いいえ、ガウェイン。その考えは早計だ。 前々回の第四次聖杯戦争では古今東西あらゆる宝具を投射するアーチャーが存在した。 あの男ほど規格外な英霊はそういないにせよ、剣という情報だけで決めつけるのは危険だ」 このアルトリアの反論にようやく立ち直った士郎も心中で賛同する。 前回の聖杯戦争でアーチャーとして現界した衛宮士郎の可能性の一つ、英霊エミヤ。 あの男もまた刀剣を筆頭に様々な武具を投影できる。 「凶器だけではクラスを完全にクラスを絞り込む事はできない、か。 しかしセイバーが犯人である可能性は依然高いままだともいえる。 …いや、この際だからはっきり言おう。この犯行、内部犯の可能性がある」 ルルーシュの言葉に金田一も頷く。 だが士郎だけはその可能性に納得がいかない。 「待てよルルーシュ。じゃあ遠坂は騙されて殺されたっていうのか? 確かにあいつはたまにうっかりしてるところがあるけど、そうそう騙し討ちされるような間抜けな奴じゃない。 断言はできないけど他のマスターが従えてるセイバー並に強い宝具を持ったアサシンかアサシンじみた能力を持ったセイバーの仕業って考えるのが今のところ一番自然じゃないか」 「そいつはどうかな?犯人は確かに遠坂さんを殺すことに成功したけど、それはあくまで結果論でしかないんだ。 この犯行を別の敵マスターだと考えるとどうしても説明できない壁にぶち当たる。 それは人数だよ。考えてもみてくれ、三人のマスターと二人のサーヴァントが一箇所に集まってるところを襲撃するなんてどう考えても分が悪いぜ」 金田一が示した全く別の視点からの推理に士郎の表情が驚愕に染まった。 そう、凛が殺されたという事実を先に提示されたためにその一点にばかり気を取られていた。 しかし凛を殺したのが他のマスターとサーヴァントだと仮定し、彼らの視点から凛死亡直前の状況を見た場合、固まって行動している凛たちを襲うのは明らかにリスクが大きすぎるのだ。 ルルーシュと金田一はキャスターから話を聞いた時点からこの点に違和感を抱いていた。 聖杯戦争は多くを殺害した者ではなく最後まで生き残った者が優勝するルールだ。 つまり優勝を目指すならかかる労力は最小限に、成果は最大限に挙げていくのが鉄則といえる。 その観点から見れば集団で行動している者達を直接攻撃するのは同盟などによる戦力増強を考慮したとしても明らかに割に合わない。 敢えて仕掛けるなら対軍以上の高ランク宝具で全員を薙ぎ払うのが最も効果的だが、その場合キャスターの説明した凛の死亡時におけるレストラン内の状況と合致しなくなる。 だがそれでも士郎は完全には納得いかないようだ。いや、士郎は凛が信じた天海陸と泉こなたを疑いたくないのだ。 凛がしてきたことが無意味であるとはどうしても考えたくなかった。 「だからこそアサシンやそれに近い能力のセイバーが遠坂を殺したんじゃないのか。 それなら不可能じゃないだろうし、複数のマスターが同盟して襲ったならその中にたまたま対軍宝具を持ったサーヴァントがいなかっただけって線もあるだろう」 「実行が可能な事と実際にサーヴァントにやらせようと考えるかどうかは別の問題だよ。 レストランには少なくとも二人のサーヴァントがいて、遠坂さんのサーヴァントに至っては姿すら確認できないんだぜ? 俺は聖杯戦争、いや、殺し合いなんかに関しちゃ全くの素人だけど、それでももし俺が優勝を狙って動くなら割に合わないリスクを背負ってまで集団で行動してる相手を暗殺なんて真似は自分のサーヴァントにはさせたくないな」 「ぐっ……!」 「そして天海陸のサーヴァントはセイバーで、その能力値はクラスに見合わないほど低い。 何よりも泉こなたと違って天海陸は何の特殊能力もない一般人だと証明できる判断材料が本人の自己申告しかない。これは本当に偶然なんだろうか?」 士郎も流石にこれには異論を挟めなかった。 キャスターによれば泉こなたはアサシンとそのマスターに襲われた際、(サーヴァントは別として)直接攻撃されたにも関わらず殆ど一切の抵抗をしなかったという。 この事から泉こなたに関して言えば“単なる一般人”という本人の申告がある程度は客観的に証明されていると考えられる。 逆に天海陸はアサシンらが撤退してから現れ、その後凛たちに同行していただけであり、一般人であるということを客観的に示す情報が何もない。 これが金田一やルルーシュが天海陸に対して疑惑の目を向けるある意味で一番の理由だ。 勿論泉こなたがルルーシュのように戦闘に向かない異能力を持っている可能性もあるため彼女も完全にシロと決めつけるわけにはいかないのだが。 議論が白熱してきたところでライダーがゴホンと咳払いしてから間に入った。 「仮に天海陸が犯人だとして、何故、どのような手段で遠坂凛を殺したのか。 これらに関していくらか推測は立てられるが、同時にここからは完全に推測のみになってしまうのも間違いない。 これ以上は二人を探し出して直接聞いた方が良かろう。どのみち市街地の探索をするつもりでおったのだしな。というわけでルルーシュよ」 「ああ、少しだけ方針を変えるぞ。だがその前にガウェイン、一つだけ確認したいことがある。 お前の“聖者の数字”が発動している間は他のマスターの目にも見える形でステータスが変化するのか?」 「はい、発動中は能力そのものが完全に変化しますので」 「わかった。おい衛宮士郎、街に出るにあたってお前のセイバーを借り受けたいのだが構わないか?」 「…ああ、俺はそれで良い。お前が言うならちゃんと考えがあるんだろ? セイバーもそれで良いか?」 「はい、シロウがそう言うのであれば。 ルルーシュは完全な信頼は出来ずとも信用に足るマスターだと私も思います」 「決まりだな。9時になったら俺と衛宮士郎のセイバーの二人で件のレストラン周辺を調査し、天海陸たちを探し出す。 ガウェイン、お前はここで待機していろ。切り札とはここぞという時まで取っておくべきものだからな。 この策ならば敵マスターへの備え、キャスターの監視と柳洞寺の防衛。これら全ての条件を一定の水準でクリアできる」 「ちょっと待ってくれルルーシュ。仮に天海陸か泉こなたが遠坂さんを殺した犯人だったとしたら、どうするつもりなんだ?」 まとまりかけた議論に金田一が待ったをかけた。その表情はかつてない真剣味を帯びている。 彼からすれば自分達の取った行動で人命が失われるのは決して看過できない事だ。 とはいえルルーシュからすればこのような疑問を投げかけられるのは想定の範囲内だった。 「心配しなくてもいきなり実力行使に出る気は無い。 今は猫の手も借りたい状況だからな。流石に無条件とはいかないが一応は仲間になってくれるよう説得を試みるつもりだ。 無論、あちらから攻撃された時は相応の対応をさせてもらうがな」 この言葉に金田一も(全面的にではないが)一応の納得を示した。 こうして会議はお開きとなり、ルルーシュは準備があるからと足早にその場を去った。 午前9時前。士郎はすっかり陽の昇った柳洞寺の山門を降りていた。 長い階段を下りきった後に待っていたのは彼のサーヴァントだった。 「セイバー、ルルーシュはどうしたんだ?」 「彼ならこの周辺を歩き回っています。 ギアスの性能確認とこれからの準備を兼ねてNPCにギアスを使って回っているのでしょう」 やや呆れながら答えるアルトリアだが、だからといってルルーシュのやり方に異を唱えようとは思わない。 彼女もまた王。戦の前には相応の用意が必要であることは理解している。 別にここで待たずにギリギリまで休息に専念していても良かったのだが、つい先ほどから彼女自身正体の掴めない嫌な予感とでもいうべきものを感じていた。 そしてアルトリアはそういう時は素直に自身の直感に従うことにしていた。 「投影、開始(トレースオン)」 思いつめた顔をしながら突然魔術を行使した士郎に驚くセイバーだったが、真の驚愕はその後にやってきた。 「これは……私の剣?」 投影によって士郎の手に顕れたのはかつてアルトリアが愛用し、騎士道に背いた行いをしたことから折れてしまった黄金の剣。 銘を“勝利すべき黄金の剣(カリバーン)”。アルトリアという少女の運命を決定づけた選定の剣である。 彼女にとっては“約束された勝利の剣(エクスカリバー)”以上に馴染みのある宝具である。 「さっき投影の練習をしようと思った時に頭の中に浮かんできたんだ。 もしかしたらもう一度セイバーと契約したからかもな。 俺は一緒に行けないけど、せめてこういう事でぐらいセイバーや皆の力になりたいからな。 セイバーが良いと思うように使ってくれ」 もっとも士郎も何の戦略的根拠もなくこの剣を用意したわけではない。 アルトリアの“約束された勝利の剣(エクスカリバー)”は確かに比類なき威力を誇る超宝具だが、それ故に町中で使うには威力、範囲ともに過剰に過ぎる。 更に魔力消費も半端ではない。如何に士郎が魔術師としての力量を上げたとはいえ容易に賄える消耗ではない。 “勝利すべき黄金の剣(カリバーン)”はそんな“約束された勝利の剣(エクスカリバー)”に比べればやや格を落とす剣だが、その分魔力消費をはじめとした真名解放時のリスクも軽減されているし、聖剣の名は伊達ではなく切れ味そのものも並大抵の宝具を上回っている。 無論使えばアルトリアの真名が割れる可能性は跳ね上がるが、この聖杯戦争は地上のそれとは勝手が違う。 ムーンセルという一種の閉鎖空間で、まっとうな魔術師ではない者が参加している事から真名が知られても具体的な対策を打たれる可能性は(地上の聖杯戦争に比べれば)低いといえる。 投影の精度も会心の出来といえるレベルだったが、士郎の表情は優れない。 「…こんな事でしか役に立てないんだよな」 「…シロウ?」 「俺はさ、セイバー。心のどこかで前回の聖杯戦争を戦い抜いた俺達なら何があっても大丈夫だって考えてたんだと思う。 ……けど、そんな油断をしてたせいでイリヤと遠坂は死んだ。イリヤは生きてるかどうかなんてわからなくても、遠坂は確実に助けられた筈なんだ」 気付く機会は与えられていた。 あの二人はこう言っていたではないか。 “…本当にそうかな?俺はさ、こんな殺し合いに参加しよう、しなきゃいけないって本気で考える人間ってのは、相当追い詰められた人だと思うんだ。それこそ、聖杯なんてものに縋らなきゃいけないほど、どうしようもない状況に陥った人が。 そういう人に限って、少ない情報から誤った判断をしてしまって、取り返しのつかない事をしてしまうんだ。…俺、そういう人を何人も見てきたからわかるよ“ “いや、間違っているぞ。ここが聖杯戦争のために用意された空間ということを忘れたか?  それに、魔術師でない者が聖杯戦争の秘匿に気を回すとは思えない“ 魔術を知らない人間が多いこの聖杯戦争には前回のセオリーは通用しない。 そもそも二十五組ものマスターとサーヴァントがいる時点で、この初日からでも戦局が激化する可能性を考慮するべきだったのだ。 正しいのはルルーシュと金田一で、間違っていたのは自分の方だった。 出来るならば凛ならすぐに敗北することは無いなどとタカをくくり、セイバーに巡回を提案していた時の自分を殴ってやりたい。 「金田一やルルーシュには戦う力がない。だから俺はあいつらを守らなきゃって思ってた。 けど同時に、もしかしたら心のどこかで俺はあいつらを見下していたのかもしれない。 でも蓋を開けてみれば…一番足を引っ張ってるのは俺だ」 経験者だからと未熟者のくせに慢心し、イリヤスフィールがいるかもしれないと聞いて先走り仲間の輪を乱した挙句仇のマスターには返り討ちに遭い、その上守るべき対象である金田一に一方的に気を遣われる始末。 士郎はこの聖杯戦争での自身の足跡をそのように自覚していた。 多分に自身への過小評価が混じった感想だが、この短い間に起こった出来事は士郎の中にあった経験者として、そして魔術使いとしてのささやかな自負を木っ端微塵に粉砕するには十分すぎた。 「それだけじゃない。キャスターから死んだのが遠坂だって聞かされた時、俺が最初に思ったことは何だと思う? …死んだのが桜じゃなくて良かった、だ。桜の実の姉が、ずっと俺達を助けてくれてたあの遠坂が死んだっていうのに俺はそんな風に考えちまったんだ……!」 数字にすれば1パーセントにも満たない感情だが、士郎はそういう思考をした自分がいたことを確かに認識していた。 自分が死ぬだけなら怖くはない。しかし原初の誓いを捨ててでも守ると誓った恋人・間桐桜を残して逝くことも、彼女に先立たれるのも耐えられないほどに怖い。 もし死んだのが桜であれば、きっと自分は二度と立ち上がれない。 同時にそんな自己中心的で無力な自分が許せない。握り拳からはいつしか血が滲んでいた。 「シロウ…」 アルトリアには掛ける言葉がなかった。 今の士郎が求めているのは慰めの言葉などではない。 そもそも前回の聖杯戦争で士郎に刃を向けた自分に何かを言う資格はない。 誰がみても気まずい空気を破るように4ドアの乗用車のクラクションの音が聞こえてきた。 そして車の窓から見覚えのある男の顔が見えた。 「遅くなったな。…どうした、お前達?」 生来人間関係の機微に疎いルルーシュは空気の気まずさに気付いていなかった。 まあいいと言いながらポケットから取り出した物体を士郎に投げつけた。 「携帯電話?…っていうかその車もどうしたんだよ」 「なに、親切な人達に出会ってな。しばらく貸してもらえることになった。 連絡にはそれを使え。別行動を取る以上こういうものは必要だろう」 「ああ。……なあルルーシュ、一つ頼んでも良いか?」 しばらく躊躇っていた士郎だがやがて話を切り出した。 「余裕ができたらで良いんだ。間桐邸に行って、桜を…探してくれないか? 本音を言えば俺が今すぐ行きたいけど、これ以上みんなの足を引っ張るわけにはいかない」 「…わかった、あくまで天海陸と泉こなたの捜索が優先だが善処はしよう。 行くぞ騎士王、運転を代われ。確かセイバーのクラスには騎乗スキルがあるんだろう?」 「ええ、行きましょう。…シロウ、どうか自分を責めないでください。 とにかく今は身体を休めてください」 そう言って二人は車に乗り込み、走り去った。 後にはかつて正義の味方を目指していた少年だけが取り残された。 【深山町・柳洞寺/午前】 【衛宮士郎@Fate/ stay night】 [状態]:右手骨折(処置済み)・気絶中・残令呪使用回数3回 [持ち物]:携帯電話@現実 [基本行動方針]:仲間と協力して殺し合いを止め、聖杯を破壊もしくは封印する [思考・行動] 1.ひとまず中に戻り身体を休める 2.桜…無事でいてくれ…… 3.遠坂とイリヤの仇を取りたいが……? 4.もう自分勝手な行動はしない ※参戦時期は桜ルート終了から半年後です。 ※勝利すべき黄金の剣(カリバーン)の投影に成功しました。全て遠き理想郷(アヴァロン)、赤原猟犬(フルンディング)、宝石剣ゼルレッチの投影が可能かどうかは後の書き手さんにお任せします。 ※間桐桜がマスターとして参加しているかもしれないと考えています。 【セイバー(アルトリア・ペンドラゴン)@Fate/ stay night】 [状態]:健康・乗用車に搭乗中 [装備]:勝利すべき黄金の剣(カリバーン)@Fate/ stay night [基本行動方針]:仲間と協力して殺し合いを止め、聖杯を破壊もしくは封印する [思考・行動] 1.ルルーシュと共に市街地へ向かい、天海陸と泉こなたを探す 2.余力があれば間桐邸へ向かい、間桐桜を探す 3.凛……イリヤスフィール…… 4.ランスロットに対して…? ※参戦時期は桜ルートで士郎に倒された後です(記憶は継続しています) 【ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア@コードギアス反逆のルルーシュ】 [状態]:健康・乗用車に搭乗中・残令呪使用回数3回 [持ち物]:携帯電話@現実 [基本行動方針]:聖杯を破壊もしくは封印し、自らの人生を完結させる [思考・行動] 1.市街地へ向かい、天海陸と泉こなたを探す 2.その過程でこの会場内でのギアスの性能を検証する 3.余力があれば間桐邸へ向かい、間桐桜を探す 4.他マスターの襲撃または戦闘中の乱入を警戒する 5.いざという時には令呪でガウェインを呼び出す ※マスター及びサーヴァントへのギアスの行使には何らかの制限が施されている可能性があります。 制限の有無、及び制限の具体的な詳細は後の書き手さんにお任せします。 ※キャスター(蘇妲己)から凛死亡時点でのこなたたちの大まかな位置を聞いていますが現時点でも彼らがそこに留まっているとは限りません。 【セイバー(ガウェイン)@Fate/EXTRA】 [状態]:魔力消費(小) [基本行動方針]:ルルーシュに従い聖杯を破壊もしくは封印する [思考・行動] 1.柳洞寺に待機、敵襲と令呪による呼び出しに備える 2.自らの忠義の在り方について……? 3.ランスロットと敵対した場合は私情を交えず一サーヴァントとして雌雄を決する 【金田一一@金田一少年の事件簿】 [状態]:健康・残令呪使用回数3回・ギアス無効 [基本行動方針]:自らの誇りに懸けてこの聖杯戦争の謎を解明し、殺し合いを打破する [思考・行動] 1.自分にできることをする 2.衛宮さん…大丈夫なのか? 3.ライダーとルルーシュを信じる 4.人殺しには賛同できない ※この聖杯戦争の黒幕に対して“影の主催者”という怪人名をつけました。 円蔵山の地下大空洞。 ライダーとキャスターはそこで密談をしていた。 口火を切ったのはライダーだった。 「さて、ここなら誰も聞いてはおらん。 確認するが妲己…おぬし、遠坂凛をわざと見殺しにしたな?」 キャスターは何も答えない。 ライダーはそれを肯定と受け取った。 「おぬしほどの者がマスターが殺される可能性に気付けなかったとは言わさぬぞ。 遠坂凛の死を予想できなかったと考えるには、おぬしの用意はあまりに周到すぎる」 マスターを殺されたと聞いた時から違和感はあった。 キャスターの宝具“金霞帽”を以ってすればそもそもアサシンとそのマスターを直接追跡する必要などどこにもなかった。 マスターの命令に反することにはなるが、何しろ凛はサーヴァントを伴っていない状態で二組のマスターに接触していたのだ。 天海陸が接触してきてからでも凛の下に戻るには十分な時間があったし、マスターを守るためという名分もある。別行動を取る理由などどこにもなかった。 「やっぱり太公望ちゃんに隠し事はできないわねぇん♥」 そしてキャスターはライダーの推測を認めた。 キャスターは最初から凛の死に備えて神殿に細工を施していた。 勿論、天才的な魔術師である凛が普通に戦っただけで破れると考えていたわけではない。かといって凛はあからさまな驕慢を晒して自滅するようなタイプでもない。 短い時間でキャスターは凛の性格をある程度理解していた。 そしてその結果もしも凛が早期に死亡するようなことがあるとすれば、彼女のお人好しな性格が災いするような出来事、つまり味方だと認識していた者に裏切られた時だろうというところまで見抜いていた。(要するにキャスター自身のことである) だがキャスターは敢えて己のマスターの欠点をカバーしようとは思わなかった。 柳洞寺にいる太公望や衛宮士郎の存在を察知し、凛から泉こなたと天海陸に接触したと念話で聞かされた時、キャスターは令呪で呼び出された場合を除いて凛を見殺しにする決意を固めた。 もし凛が生きて柳洞寺に辿り着いてしまえばキャスターの悪性はたちどころに暴かれ、令呪によって行動を縛られ自身の望むような行動は取れなくなる可能性が高いからだ。 無論、神の視点で見た場合凛を殺そうと決意したのは間違いなく天海陸の意思だ。キャスターとて全ての事象をコントロールできるわけではない。 だが犯人が誰にせよ凛を殺しやすい状況を自ら演出していた事もまた事実。遠坂凛の最大の失策はそもそもキャスターを信じようなどと考えたところにある。 (こやつを引いた時点で遠坂凛の命運は尽きておったな) 「折角の英雄が集まるお祭りイベントなんだものぉん、とびっきりゴージャスな戦争にしたいじゃなぁい♥ チマチマ戦うセオリーに則った聖杯戦争なんてつまらないわぁん。わらわは並みいる英傑たちが一堂に会する全面戦争が見たいのぉん♥ 太公望ちゃんだってわかってた筈でしょぉん?沢山仲間を集めればその分それを疎ましく思うマスターも出てくるって、ねん♥」 「…そうだな、否定はせん。勿論避けられる戦いは避けるつもりだが、恐らくそう上手くはいくまい。 それに悔しいがこの聖杯戦争の黒幕を出し抜くにはおぬしの力を借りる必要がありそうだからな。 だが妲己よ、これだけは言っておくぞ。手を組むのは今回限りだ」 「相変わらずつれないのねぇん♥」 【柳洞寺・地下大空洞/午前】 【ライダー(太公望)@藤崎竜版封神演義】 [状態]:健康・魔力充実 [基本行動方針]:殺し合いに乗っていないマスターを一人でも多く脱出させる(金田一を最優先) 1.柳洞寺に残り敵襲に備える 2.会場を脱出するため、仲間を募る 3.妲己は信用できないが今は手を組むしかない ※杏黄旗により、どこにいても円蔵山から魔力供給が受けられます。 ただし、短時間の内にあまりにも大量の魔力を吸い出した場合、霊脈に異常をきたす可能性があります。 【キャスター(蘇妲己)@藤崎竜版封神演義】 [状態]:魔力消費(小)・令呪 [基本行動方針]:英霊たちのゴージャスな全面戦争をこの目で見たい(ただの暇潰し) 1.衛宮士郎を守る 2.最後まで太公望らに協力する……? ※令呪の内容は以下の通りです。 ・衛宮士郎を探し、守りなさい 時間経過に伴い強制力が低下し、優先度が下がります。 ※遠坂凛の令呪の宿った腕を媒介にして柳洞寺の地下大空洞を臨時のマスター代わりにしています。 代償として行動範囲が円蔵山周辺に限定され、ステータスが以下のように変化しています。 【筋力】E 【耐久】E 【敏捷】E【魔力】B+ 【幸運】A+
*絶望への反抗!柳洞寺に集う超頭脳派たち 追跡対象であるアサシンとそのマスターから離脱した後、キャスターは突如として猛烈な違和感に襲われた。 「あらん?」 瞬間、マスターとのレイラインを通して凛の視界が網膜に映し出された。 どうやら凛は敵のサーヴァントに剣らしき凶器(見たところ格の高い宝具のようだ)で身体を貫かれたようだ。 明らかに致命傷であるばかりか、レイラインから感じられる違和感からして魔力を収奪されているのだろう。 ―――“令呪を以って命じる……!” だがそんな有様にも関わらず彼女は諦めていないようだ。 パスを通してマスターからの最期の命令が念話で届いた。 ―――“衛宮士郎を探し、守りなさい!!” 身体全体に令呪によって齎されたのであろう膨大な魔力が漲る。 それと同時に凛とのパスが完全に絶たれた。間違いなく死んだだろう。 凛の視界からでは下手人の顔までは確認できなかった。 だがこれまで凛から念話で知らされてきた状況から考えるにある程度は犯人像を絞り込める。 とはいえ、キャスターにとって誰が犯人かなどという情報には大した興味などないのだが。 「ご主人様ん……」 それよりも問題は令呪の効力によって今のキャスターの身体は強制的に衛宮士郎を探すための行動を強いられているこの状況だ。 もしキャスターが士郎の位置を知らなかったのならば“衛宮士郎を探す”という名目の下令呪に逆らわない範囲でもう少しは好き勝手な行動が出来ただろう。 だが幸か不幸かキャスターは士郎の現在位置を知ってしまっている。 キャスターの持つ宝具の一つ“金霞帽”。 自らの姿を隠匿しながら広範囲の索敵を可能とするそれは例え気配遮断スキルを持つアサシンであろうとも射程に入ってさえいれば容易に捉えることが出来る。 つい先ほど間桐邸とは別の方角から発された強烈な閃光を目の当たりにしたキャスターはすかさずこの宝具を用いて遠方の戦況を詳細に把握することに成功した。 そしてその中から衛宮士郎と思しき人物を発見した。凛から聞いた外見的特徴から察するにほぼ間違いない。 そして衛宮士郎を含めた三組のマスターとサーヴァントが柳洞寺に引き上げていくところも見届けた。 ここで問題となるのはその面子の中にキャスターの素性を知る者が混じっているという点だ。 「困ったわねぇん…」 だが令呪による強制は彼女の都合など一切考慮しない。 マスターの死によって大幅に能力が低下した今のキャスターが遠坂凛ほどの魔術師が使った令呪に抗うのは困難だ。 よしんば逆らうことが出来たとしても、ただでさえ下がったステータスがさらに低下し身体から零れ落ちていく魔力量は今の比ではなくなる。 つまりキャスターはどう転んでも己の不利を承知で柳洞寺に向かわざるを得ない。まさに八方塞がりであった。 ―――だが。 そんな彼女を取り巻く逆境と困り果てたような口調とは裏腹に魔術師の英霊の顔には薄い笑みが浮かんでいた。 「………」 ルルーシュは柳洞寺の客間の一室で休息がてら出発した後の方針を考えていた。 無論、傍には霊体化したガウェインがついている。 (ガウェインの聖者の数字の効果時間は3時間。 それだけの時間で効率よくこの会場の調査と他マスターの勧誘を進めなければならない) 安全策をとるなら聖者の数字の効果が切れる正午前後に一度柳洞寺に戻るべきだ。 そうなると日中探索に費やせる時間は多くはない。 つまり無駄な行動は極力避けなければならないということだ。 (やはり最初に調べるべきは遠坂邸と間桐邸か。 リスクはあるが話に聞く限り遠坂凛と間桐桜の魔術師としての力量は得難いものだ。 最も上手くいけばこちらの戦力を一気に拡充できる) ルルーシュらの現在の戦略目的はこの電脳空間からの脱出と聖杯の破壊ないし封印だ。 だがそれらを達成するには長時間に渡るムーンセルの調査と脱出のための綿密な作戦立案が必要不可欠。 そしてそれだけの時間と自分達の身の安全を確保するためには出来る限り多くのマスターとサーヴァントを集め、その戦力を以って殺し合いに乗った連中への抑止力とする他ない。 実現できるかどうかも未知数と言わざるを得ないがだからと言って諦めるという選択肢は無い。 「ルルーシュ、ちょっと良いか?」 不意に声を掛けられた。 振り向くと士郎が自分を呼んでいた。 「どうした、何か変わった事でもあったか?」 「ああ、朝飯が出来たから皆呼ぼうと思ってな。 っていうか金田一は腹減ったって泣きついてくるしライダーは床に転がって駄々をこねだすもんだからどうにも放っとけなくてさ…」 「何を考えているんだあいつらは……」 駄々をこねる英雄など聞いたこともない。というかあってほしくない。 頭を抱えるルルーシュだったが実際戦いが始まってから一度も食事を摂っていない。 どのみち腹ごしらえは必要だろう。 集まった場所は講堂だった。 二十人以上は寝泊りできそうなスペースでたった六人が食事をするというのは妙な心地だったがルルーシュ以外に特に気にしている人間はいないようだ。 「おかわり!」 「ああ、わかったわかった。 多めに作ってあるからそんなに焦って食べなくても大丈夫だぞ、金田一」 「わしは茶のおかわりを頼む」 いや、金田一とライダーが適応しすぎているだけだった。 さらにアルトリアもどこか浮かない表情をしているものの箸を休めることは無かった。 そして極めつけは――― 「これほど上質な料理が存在したとは……。 これがあれば我らに敗北は有り得なかった……」 粗食の国、ブリテン出身の騎士ガウェインである。 美味い食事がよほど衝撃的だったのかがっくりと項垂れながら何かを呟いている。 英雄のイメージが崩れそうなので彼から目を逸らしたルルーシュはふと三杯目をおかわりした金田一を見やる。 聖杯戦争という非常事態にも関わらず何事もなかったかのように食事をしている。 こちらもこちらで先ほどまでの真剣さが嘘のような能天気な表情である。 もっともこちらの方が金田一一という少年の素の顔なのだが、何分先ほどまでは初の他マスターとの接触やサーヴァント戦という非常事態が続いていたために一は気を抜くことができなかった。 このため士郎とルルーシュの中で金田一は正義感が強い知的な人物になっていた。 そのイメージもたった今粉砕されたわけだが。 「そういやさ、ルルーシュ」 「何だ?というか食べながら話すな」 「ああ、さっきのギアスってやつの事なんだけど…何ていうかちょっと引っかかることがあるんだ」 そこまで言って口の中のご飯を飲み込んでから改めて自身の考えを話し始めた。 「今俺達はこの聖杯戦争は誰かが仕組んで起こしたものだと考えて動いてるよな? ならそんな奴がアンタのギアスの危険さを見落とすとは考えにくいんだ。 そのギアスって本当に普段通りに使えてるか?」 「当たり前だ、実際にお前に対してギアスは使えただろう。 ギアスはかけられた者の記憶には残らないから疑うのも無理はないが、これといって異常は無い」 断言するルルーシュに対して金田一はかぶりを振って応じた。 「いや、そこを疑うわけじゃないけどさ。 さっき言ったみたいな“死ね”とか“聖杯戦争を棄権しろ”みたいな命令が出来たらそれこそ全体のバランスが崩れるような気がするんだよ。 ただでさえガウェインさんはかなり強いサーヴァントみたいだし、アンタ自身相当頭が良さそうだからその気になればあっという間に聖杯戦争が終わっちまうことだって有り得る。 そんな可能性を“影の主催者”が見逃すとは思えないんだ」 「…何だそのネーミングは」 「ああ、何か適当に言いやすい名前を考えてみたんだ。 話を戻すけど今の俺達はムーンセルっていう電脳世界で作られたデータみたいなものなんだろ?全然そんな実感は湧かないけどさ。 とにかくそれを利用すればアンタに気付かれないようにギアスに何か細工をするとか、それが無理でもNPCや他のマスターに対ギアス専用の対策プログラムみたいなのを用意するぐらいの事はできると思うんだ」 「…なるほど、確かにな。 俺の肉体もギアスもムーンセルによって再現されている以上細工をするなど造作もない、か。 そうなると詳しい検証ができるまでマスターにあまり踏み込んだ内容のギアスを使うのは避けるべきかもしれないな」 金田一に指摘されて初めてその可能性に気付いた。 自分にとってあまりに身近な能力であるために失念してしまっていたが、聖杯戦争のバランスを崩しかねない能力なら例えマスターの能力であろうと何らかの制限が課される可能性は決して見逃して良い事ではない。 だがもし実際にギアスに何らかの制限がある場合、事はそう簡単には済まなくなる。 例えばNPCに対してならどのような制限があるかを検証するのは極めて簡単だ。 彼らは町中の至るところに存在するのだから。 だがマスターに対して聖杯戦争に関する決定的な命令を出せるかどうかは実際に命じてみないことには確かめようもない。 だが確かめる事自体に多大なリスクを伴うのは火を見るより明らか。 かといって事が事だけに士郎で実験するわけにもいかない。 (ならば殺し合いに乗ったマスターを無力化した上でギアスを使うのが確実だが…令呪の存在を考えるとそれもそう簡単にはいかないか。 そして一の言う“影の主催者”とやらは俺がそこまで考えることまで考慮しているはずだ。 なるほど、よく考えられたゲームだ) 「とにかく参考にはなった。ギアスを使う時は細心の注意を払おう」 「ああ、役に立てたなら嬉しいよ。 ってセイバーさん、それ俺の浅漬け!!」 すぐに食事に戻った金田一に溜め息をつきながら、先ほどから拭いきれない違和感について考える。 (こいつは戦争や荒事の経験もない普通の高校生だと自分で言っていたが…解せないな。 聖杯戦争、サーヴァント、それにマスターの脱落。 どれひとつを取ってもただの一般人なら動揺を見せて然るべき事柄ばかりだ。 にも関わらず一は何故こうも自然体でいられる?) ルルーシュが見る限り金田一一はこの異常事態においてあまりに冷静すぎるように思えた。 いや、時折超能力や魔術の存在に驚いたりすることはあるがそれも説明されれば別段騒ぎ立てることなく受け入れている。 よほど能天気なのか、あるいはよほど無神経な性格なのか。 だがルルーシュはそのどちらでもないと踏んでいる。 大空洞で士郎に対して披露した推論にはルルーシュも一定の理があると考えている。 ああした弱者の目線に立った地に足のついた推理はただの高校生に出来るとは考えにくいし、先ほどのイリヤスフィールを失った士郎への配慮にしても腫れ物に触るような態度ではなくごく自然に身内を失った人間を心配する、といった様子だった。 更に言えばそもそも聖杯戦争に対する姿勢そのものもルルーシュの考える一般人のそれとは明らかに逸脱している。 当初情報交換をした時は殺人への拒否感から何となく対主催のスタンスでいるのかとも思ったがそれにしては金田一の言動は積極的に過ぎる。 単なる倫理観や死への恐怖からだけではない、自らの信念を持ち、この殺し合いを打破しようという思考が垣間見える。 これらの点からルルーシュは金田一が相当に“場慣れ”した人間である、少なくとも人の死に慣れすぎているほど慣れていると結論づけた。 (もしやこいつはアッシュフォード時代の俺と同じく自分の経歴を偽っているのか? だが何のために?どんな超常現象があってもおかしくないこの場においてそんな事をするメリットがあるとも思えないが…) 「気になっておるようだな」 不意にライダーに声を掛けられ、思わず彼の方を向いてしまう。 ニヤリと笑っているこの男は今自分が考えていたことを見透かしているとでもいうのか。 「まあそれも仕方あるまい。 何を隠そうこやつは数々の難解な殺人事件を解決したIQ180の名探偵なのだからな! どうやらわかる者にはおぬしの放つオーラというものがわかるようだぞ、一よ!」 ライダーが褒めちぎると同時に金田一が盛大に口に含んだ味噌汁を吹き出した。 ゲホゲホとむせながらライダーを嗜める。 「探偵じゃなくてその真似事! っていうかライダー、その不気味な褒め方はやめてくれよ!」 「たわけ、おぬしが自分の事をちゃんと話さぬのが悪いのではないか。 今ルルーシュはおぬしを疑いの目で見ておったのだぞ?」 ライダーの指摘で今度は口を洗うために飲んだお茶を吹き出した。非常に汚い。 実は先ほどの情報交換の際、金田一は聖杯戦争に直接関係ない事だからと考えこれまで巻き込まれてきた殺人事件の事を話していなかったのだ。 「ち、ちょっと待ってくれよ! 俺、何も疑われるような事してないぞ!?」 「ああ、わかった。わかったからその事件とやらについて全て話せ」 嘆息しながら言うルルーシュに釈然としないものを感じながらもこれまで解決してきた殺人事件について簡潔に話した。 詳細に話さないのは数が多すぎて短時間では説明しきれないからである。 話し終わる頃には士郎とルルーシュが揃って溜め息をつくことになった。 「あー…なあ金田一。言いたくないんだけど俺からすると魔術やギアスよりそんなにしょっちゅう事件に巻き込まれる方がよっぽど有り得ないように思えるんだが」 「全くだ。ギアスでもそんな手の込んだ真似は出来ん」 「えー……でも殺人鬼のいる場所に閉じ込められるなんてよくある事なんじゃあ…」 「「それは絶対にない!」」 初めて意気投合した士郎とルルーシュであった。 というより自分達の世界がそんな陰惨な殺人事件とトリックまみれであってほしくない、という本音の発露であったのだが。 ともあれ全体として和気藹々とした空気になっていたのだが、その空気は突然破られた。 「ご、ごごごご御主人!!」 例によって偵察に駆り出されていた四不象が狼狽しながら戻ってきた。 怪訝そうにしていたライダーが四不象に近寄り、何か違和感を感じたのか匂いを嗅ぐとその表情が一気に険しくなった。 「…皆、ここにサーヴァントが近づいてきておる。 それもわしが知る限り最も危険な者が、だ」 「同郷の英雄、ということですか?」 「…まあそんなところだ。 にしてもあやつ、何のためにこんな戦いにしゃしゃり出てきたのか…まあ大体想像できてしまうのが嫌だが。 とにかく全員で行こう。あやつがどんな状態であろうともな」 和やかだった空気は一変した。 ライダーの言う危険な来訪者を迎えるべく六人と一匹が柳洞寺を下っていった。 寺の階段を降りた先で待ち受けていたのは桃色の髪の絶世の美女だった。 マスターたちを庇うように三騎のサーヴァントが前に出る。 目の前の女性の素性を知るライダーはもとより残る二人の英傑も彼女の内に潜む狂性を一目で看破したが故に。 「お久しぶりねん、太公望ちゃん。何千年振りかしらぁん♥ 旧交を温めたいのは山々なのだけれどぉん、わらわはそこの衛宮士郎ちゃんに用があって来たのん♥」 「俺に……?いや、そもそもあんたはどうして俺の名前を知ってるんだ?」 戸惑う士郎の前にライダーが立つ。その表情は未だ厳しい。 「こやつに用事とは一体どういう意味だ、妲己? 今のおぬしの弱々しい気配と関係があるのか?」 ライダーの口から出た目の前のサーヴァントの真名に全員の警戒が高まる。 殷の皇后・蘇妲己といえば(伝承は諸説あるが)紂王を堕落させた傾国の悪女として名高い反英雄だ。 その能力を以ってすれば自分達のマスターを魅了し、傀儡とするなど造作もない。そんな相手を警戒するのはサーヴァントとして当然の心理である。 とはいえ彼らがその気になれば妲己―――恐らくクラスはキャスター―――を倒すのは簡単な事だ。 今の彼女からは刻一刻と魔力が零れ落ちていっている。 その状態がマスターを失い、現界の楔を失ったが故であることは誰の目にも明らかだ。 だというのに当のキャスターはそんな事実など最初から存在しなかったかのように妖しく微笑むばかりだ。 「そうよん。わらわは今は亡きマスターの命令で士郎ちゃんを守るように言われてるのん♥ だからそんなに邪険にしちゃいや~ん♥」 クネクネとわざとらしい踊りを見せるキャスターだったが、士郎はそんなものは目にも映っていなかった。 今は亡きマスターとは誰だ。 そして自分を守れとはどういう意味だ。 いや、本当はわかっている。そんな命令を下すマスターなどほんの僅かしか心当たりは無い。 知らず唇が乾く。嫌な汗が流れる。 だというのにキャスターにその先を促してしまう。 「誰…なんだ?あんたのマスターは…?」 キャスターは一瞬だけ無表情になった。 それが不安をさらに掻きたてた。 「遠坂凛よん。とっても優秀な魔術師だったのだけれどぉん、何者かに殺されてしまったのん。 わらわは別行動を命じられていたのだけれど、ご主人様は死に際にわらわを呼び出すのではなく士郎ちゃんを守るように令呪で命令されたのぉん」 瞬間、視界がグラリと揺れた。 今このサーヴァントは何と言った? 誰が死んだと言った? 「遠、坂が……?」 「シロウ、しっかりして下さい!」 セイバーに肩を掴まれる。 そこでようやく視界が正常に戻った。 今の自分は傍から見て相当危険な状態だったのだろう。 「待て、殺されたとはどういう事だ? もっと詳しい話を聞かせてもらおうか」 動揺の大きい士郎に代わってルルーシュがキャスターに問いかける。 だがキャスターはチッチッチと指を振り、余裕の体を崩さない。 「女の子をそんなに急かしちゃダメよぉん♥ それにわらわ、マスターがいないから消滅寸前の大ピンチだもの。 ご主人様からの使命を果たす前に消えてしまうなんてロワ企画的にも許されないわぁ~ん♥」 「おぬしがそんなタマかい。というか上位世界から圧力がかかるような発言はやめい!」 「まあそれはともかく、契約といっても誰をマスターにするつもりだ? 生憎と俺達は誰もサーヴァントを失ってはいないし進んで貴様に乗り換える気もない。 そもそも貴様の話が全て真実とも限らないだろう。何せキャスターは裏切りのクラスだそうだからな」 「心配には及ばないわん。もうそろそろ“届く”頃だから、ねぇん♥」 クスリと笑ったキャスターの近くから一人の不審な男が現れた。 不審、と一目で判断できたのは男が虚ろな目で右手に包丁を、左手に人間の腕を持っていたからだ。 男は恍惚とした表情でキャスターに歩み寄ると左手に持った腕を差し出した。 「ご苦労さまん♥」 腕を受け取ると懐から扇を取り出し軽く振った。 そこから発生した小さな衝撃波は男を塵一つ残さず消し去った。 「妲己、おぬし……!」 「あんた、それは遠坂の腕か……!?」 「怒っちゃいやぁ~ん♥ただのNPCなんだから構わないでしょぉん? さて、これでわらわ側の再契約に必要な物は揃ったわん。そこでわらわからのお・ね・が・い♥ わらわは今からこの土地をマスター代わりにする術式を行うわん。その代わりわらわはあなたたちに殺し合いを打破するための力を貸す。 とっても良い取り引きでしょぉん?」 キャスターの提案にルルーシュは鼻を鳴らして応じる。 「ふん、随分と都合の良い条件だな。人間ではなく土地と契約することが出来るというのはそれだけの用意をしているところを見ると嘘ではなさそうだが、だからといってこちらがそれを受け入れる理由があるとでも? そもそも俺達が殺し合いに乗っていないという証拠などどこにもあるまい。楽観論にも程があるぞ、キャスター」 キャスターに動じた色はない。 この解答は彼女にとって予想の範疇でしかないのだから。 「わらわは太公望ちゃんを買い被りもしなければ過小評価もしないわん。 怠け者な性分の太公望ちゃんがわざわざ召喚に応じるマスターなら間違いなく殺し合いに乗ってはいないわぁん。 そうでしょぉん、可愛いマスターさん?」 「っ!?」 キャスターに見つめられた金田一は身じろぎひとつできなかった。 ただ視線が合った。たったそれだけの事で顔は赤く染まり、激しい動悸に襲われる。 そのまま正気を失ってしまうのではないかと思った直後にライダーが間に立った。 視界を遮られたことで心も落ち着いたようだ。 「わかった。その交換条件を飲もう、妲己よ。 一、 ルルーシュもそれで良いか?」 「あ、ああ…」 「…まあ仕方あるまい。確かにキャスターを欲してはいたし、何より現状俺達以上にこいつを上手く監視できるグループがあるとも考えにくいしな」 かくして取り引きは成立した。 これが吉と出るか凶と出るか、それは今の段階ではこの場の誰にもわかりはしない。 再契約の術式はつつがなく終わった。 とはいえ通常なら如何にキャスターのサーヴァントといえどこのような変則的な契約を行うには大量の魔力が必要になるし、そもそも何の媒介もなくこのような契約を結ぶことなど出来はしない。 もしそう簡単に出来たとすれば聖杯戦争のルールなど意味を為さなくなるのだから。 だがこのキャスター、蘇妲己はある手段を用いてこれらの条件をクリアした。 実のところキャスターはいくつかの保険を用意していた。 まず遠坂邸に作った神殿には凛に露見しないよう二つの仕掛けを施した。 一つはマスターが死亡した際、自動的に半径数百メートル内のNPCを含む抗魔力の低い者から生命活動に支障がない程度に魔力を収奪する術式。 これによりマスター不在の状態でも一時凌ぎ程度には魔力を得られ、柳洞寺に辿り着くまでの魔力のロスを最小限に抑えることができたのだ。 その気になればより範囲を拡大することもできたのだが、何しろ凛にバレないように設置しなければならなかったため、規模を抑えざるを得なかった。 二つめは遠坂邸の神殿を破棄することになった際、神殿作成に要した魔力の数割をキャスター自身に還元する術式。 彼女は最初から遠坂邸が使い物にならなくなった時の事を考慮していたのだ。 キャスターが神殿を作る際、凛は確かに妙な真似をしないよう監督してはいたのだが、どれほど優秀であろうと所詮彼女は現代の、それも若輩の魔術師に過ぎない。 キャスターが巧妙に仕組んだ術式を全て見抜くなど最初から土台不可能だったのだ。 第二にアサシンのマスター・間桐雁夜を追跡する際に誘惑の術(テンプテーション)で十数名程のNPCを操り、凛たちの様子をそれとなく探らせていた。(もっともレストランの中に入らせたNPCは天海陸のセイバーに皆殺しにされたが) そして凛とのパスが途絶えた直後に残るNPCに凛の令呪が宿った右腕を切り落として持ってくるよう指示した。 マスターの身体が完全に消滅する前ならば令呪を切り離して一時的に保管することは不可能ではない。 本来の月の聖杯戦争ではユリウス・ベルキスク・ハーウェイという男が同様の方法で敵マスターの令呪を確保していたという事例もある。 そして令呪というこれ以上なくマスターとサーヴァントの繋がりを表す物質的な媒介、そしてキャスター自身が持つ高い道具作成能力の二つが組み合わさることによって彼女は円蔵山の地下大空洞を自身の現界の依代とすることに成功した。 とはいえその代償としてキャスター自身円蔵山周辺から大きく動くことはできなくなったが。 (でも、ここまで上手くいくなんて、きっとわらわの日頃の行いがいいからねぇん♥) キャスター自身、令呪をそのまま確保できるとは思っていなかった。 普通なら死んだ敵マスターの令呪は他のマスターに利用されないよう消滅させるか、あるいは回収しておくのがセオリーだ。少なくとも死体が残る地上の聖杯戦争であれば誰もがそうしていただろう。 キャスターもそれは分かっていたのでNPCが凛の腕を持ち帰れる可能性は非常に低いものと見ていたし、そういった事態に備えての策も準備はしていた。 だが実際には下手人は凛の死体を見逃し、キャスターの手にはこうして彼女の元マスターの腕がある。キャスターはこの不可解を単なる幸運だとは考えていない。 既に殺害したマスターの死体を始末するのにそこまでの手間はかからない。ほんの一小節の魔術で事足りる。 逆に言えば下手人にはそんな手間すら省かなければならない何らかの理由があったのだろう。 このムーンセルでの聖杯戦争では敗北したマスターは自動的に消去され、サーヴァントによって殺されたのだとしてもその痕跡ごと抹消される。それを考慮すれば死体を放置するのも悪手と断じることはできない。しかし決して妙手でもない。 にも関わらず凛の死体を自ら始末することもムーンセルによる自動的な消滅を見届けることもせず立ち去った下手人は、ほんの僅かな魔力の行使も、ほんの少し長く現場に留まることすらも嫌ったということだ。 殺人が是とされるこの空間においてはあまりにも不自然な下手人の挙動について、キャスターは既に一つの解を得ている。とはいえその考えを他人に話す気も毛頭ない。 完全な確証が無いというのもあるが、あまりにも早くネタばらしをしてしまってはゲームはつまらないからだ。 そして現在、ルルーシュら七名はキャスターから遠坂凛の死亡に関する詳しい話を聞くため本堂に集まっていた。 キャスター曰く、凛は最初公園でアサシンとそのマスターに襲撃されていた金田一と同じ一般人のマスター・泉こなたを救出した。 そして程なくしてセイバーのマスター・天海陸と接触。近くのレストランで情報交換を行なっていた。 キャスターが凛から念話で聞かされたのはこれら凛の動向と彼女が見た範囲で判明したセイバー、アサシン、ライダーの能力である。 そしてここからは推測でしかないが、この時何者かの襲撃を受け凛は殺害された。そして天海陸とセイバー、泉こなたとライダーは現在生死不明。 「俺は…桜に何て言えばいいんだっ!!!!」 それらを聞いた士郎は腹の底から搾り出したような苦渋の声を発した。 俯き、歯軋りをする士郎に誰も声を掛けることができない。 しかしだからといって会議を中断しているわけにもいかない。 ルルーシュがその場の全員に話を切り出した。 「とにかく、今最も重要なのは遠坂凛を殺した者の正体と天海陸、泉こなたの生死だ」 「まあ妲己が本当のことを言っておればの話だが…いくらこやつでもこんな無意味な嘘をつくタイプではないし、何より犯人を庇い立てするメリットが無い。 全てを鵜呑みには出来んが、かといって疑い出せば切りがないし一応は真実であることを前提に話しを進めるぞ」 「お言葉ですが主よ、これは敵サーヴァントの仕業と見るべきかと。 残念ながら天海陸と泉こなたも既に脱落しているでしょう」 一見当然と思えるガウェインの指摘にもルルーシュの顔色は優れない。 何かを思案するようなルルーシュの考えを代弁するように金田一が発言した。 「…単純に他のマスターやサーヴァントの仕業だと考えるには、不可解な点が多過ぎるよ。 ただ皆まだ混乱してるし情報も錯綜している。だからまずはわからない点を一つずつハッキリさせていこう」 「ふむ、ではわしからだ。前提として遠坂凛は恐らくサーヴァントによって殺された。 聞く限りの遠坂凛の能力と人物像であれば、マスター相手に何も出来ずに殺されたとは考えにくい。例えそれがあのランサーのマスターであったとしてもな。 ならばどのクラスのサーヴァントに殺されたか、それが問題だ。これがわからぬ限り犯人を絞り込むことすらままならぬのだからな」 ライダーの提示した疑問にすかさずガウェインが応える。 「順当に考えればアサシン、と言いたいところですがキャスターの言う宝具級の剣によって刺されたという情報から判断するにセイバーの可能性も捨てきれません。 いずれにせよこの二クラスのいずれかであることは疑いないでしょう」 「いいえ、ガウェイン。その考えは早計だ。 前々回の第四次聖杯戦争では古今東西あらゆる宝具を投射するアーチャーが存在した。 あの男ほど規格外な英霊はそういないにせよ、剣という情報だけで決めつけるのは危険だ」 このアルトリアの反論にようやく立ち直った士郎も心中で賛同する。 前回の聖杯戦争でアーチャーとして現界した衛宮士郎の可能性の一つ、英霊エミヤ。 あの男もまた刀剣を筆頭に様々な武具を投影できる。 「凶器だけではクラスを完全にクラスを絞り込む事はできない、か。 しかしセイバーが犯人である可能性は依然高いままだともいえる。 …いや、この際だからはっきり言おう。この犯行、内部犯の可能性がある」 ルルーシュの言葉に金田一も頷く。 だが士郎だけはその可能性に納得がいかない。 「待てよルルーシュ。じゃあ遠坂は騙されて殺されたっていうのか? 確かにあいつはたまにうっかりしてるところがあるけど、そうそう騙し討ちされるような間抜けな奴じゃない。 断言はできないけど他のマスターが従えてるセイバー並に強い宝具を持ったアサシンかアサシンじみた能力を持ったセイバーの仕業って考えるのが今のところ一番自然じゃないか」 「そいつはどうかな?犯人は確かに遠坂さんを殺すことに成功したけど、それはあくまで結果論でしかないんだ。 この犯行を別の敵マスターだと考えるとどうしても説明できない壁にぶち当たる。 それは人数だよ。考えてもみてくれ、三人のマスターと二人のサーヴァントが一箇所に集まってるところを襲撃するなんてどう考えても分が悪いぜ」 金田一が示した全く別の視点からの推理に士郎の表情が驚愕に染まった。 そう、凛が殺されたという事実を先に提示されたためにその一点にばかり気を取られていた。 しかし凛を殺したのが他のマスターとサーヴァントだと仮定し、彼らの視点から凛死亡直前の状況を見た場合、固まって行動している凛たちを襲うのは明らかにリスクが大きすぎるのだ。 ルルーシュと金田一はキャスターから話を聞いた時点からこの点に違和感を抱いていた。 聖杯戦争は多くを殺害した者ではなく最後まで生き残った者が優勝するルールだ。 つまり優勝を目指すならかかる労力は最小限に、成果は最大限に挙げていくのが鉄則といえる。 その観点から見れば集団で行動している者達を直接攻撃するのは同盟などによる戦力増強を考慮したとしても明らかに割に合わない。 敢えて仕掛けるなら対軍以上の高ランク宝具で全員を薙ぎ払うのが最も効果的だが、その場合キャスターの説明した凛の死亡時におけるレストラン内の状況と合致しなくなる。 だがそれでも士郎は完全には納得いかないようだ。いや、士郎は凛が信じた天海陸と泉こなたを疑いたくないのだ。 凛がしてきたことが無意味であるとはどうしても考えたくなかった。 「だからこそアサシンやそれに近い能力のセイバーが遠坂を殺したんじゃないのか。 それなら不可能じゃないだろうし、複数のマスターが同盟して襲ったならその中にたまたま対軍宝具を持ったサーヴァントがいなかっただけって線もあるだろう」 「実行が可能な事と実際にサーヴァントにやらせようと考えるかどうかは別の問題だよ。 レストランには少なくとも二人のサーヴァントがいて、遠坂さんのサーヴァントに至っては姿すら確認できないんだぜ? 俺は聖杯戦争、いや、殺し合いなんかに関しちゃ全くの素人だけど、それでももし俺が優勝を狙って動くなら割に合わないリスクを背負ってまで集団で行動してる相手を暗殺なんて真似は自分のサーヴァントにはさせたくないな」 「ぐっ……!」 「そして天海陸のサーヴァントはセイバーで、その能力値はクラスに見合わないほど低い。 何よりも泉こなたと違って天海陸は何の特殊能力もない一般人だと証明できる判断材料が本人の自己申告しかない。これは本当に偶然なんだろうか?」 士郎も流石にこれには異論を挟めなかった。 キャスターによれば泉こなたはアサシンとそのマスターに襲われた際、(サーヴァントは別として)直接攻撃されたにも関わらず殆ど一切の抵抗をしなかったという。 この事から泉こなたに関して言えば“単なる一般人”という本人の申告がある程度は客観的に証明されていると考えられる。 逆に天海陸はアサシンらが撤退してから現れ、その後凛たちに同行していただけであり、一般人であるということを客観的に示す情報が何もない。 これが金田一やルルーシュが天海陸に対して疑惑の目を向けるある意味で一番の理由だ。 勿論泉こなたがルルーシュのように戦闘に向かない異能力を持っている可能性もあるため彼女も完全にシロと決めつけるわけにはいかないのだが。 議論が白熱してきたところでライダーがゴホンと咳払いしてから間に入った。 「仮に天海陸が犯人だとして、何故、どのような手段で遠坂凛を殺したのか。 これらに関していくらか推測は立てられるが、同時にここからは完全に推測のみになってしまうのも間違いない。 これ以上は二人を探し出して直接聞いた方が良かろう。どのみち市街地の探索をするつもりでおったのだしな。というわけでルルーシュよ」 「ああ、少しだけ方針を変えるぞ。だがその前にガウェイン、一つだけ確認したいことがある。 お前の“聖者の数字”が発動している間は他のマスターの目にも見える形でステータスが変化するのか?」 「はい、発動中は能力そのものが完全に変化しますので」 「わかった。おい衛宮士郎、街に出るにあたってお前のセイバーを借り受けたいのだが構わないか?」 「…ああ、俺はそれで良い。お前が言うならちゃんと考えがあるんだろ? セイバーもそれで良いか?」 「はい、シロウがそう言うのであれば。 ルルーシュは完全な信頼は出来ずとも信用に足るマスターだと私も思います」 「決まりだな。9時になったら俺と衛宮士郎のセイバーの二人で件のレストラン周辺を調査し、天海陸たちを探し出す。 ガウェイン、お前はここで待機していろ。切り札とはここぞという時まで取っておくべきものだからな。 この策ならば敵マスターへの備え、キャスターの監視と柳洞寺の防衛。これら全ての条件を一定の水準でクリアできる」 「ちょっと待ってくれルルーシュ。仮に天海陸か泉こなたが遠坂さんを殺した犯人だったとしたら、どうするつもりなんだ?」 まとまりかけた議論に金田一が待ったをかけた。その表情はかつてない真剣味を帯びている。 彼からすれば自分達の取った行動で人命が失われるのは決して看過できない事だ。 とはいえルルーシュからすればこのような疑問を投げかけられるのは想定の範囲内だった。 「心配しなくてもいきなり実力行使に出る気は無い。 今は猫の手も借りたい状況だからな。流石に無条件とはいかないが一応は仲間になってくれるよう説得を試みるつもりだ。 無論、あちらから攻撃された時は相応の対応をさせてもらうがな」 この言葉に金田一も(全面的にではないが)一応の納得を示した。 こうして会議はお開きとなり、ルルーシュは準備があるからと足早にその場を去った。 午前9時前。士郎はすっかり陽の昇った柳洞寺の山門を降りていた。 長い階段を下りきった後に待っていたのは彼のサーヴァントだった。 「セイバー、ルルーシュはどうしたんだ?」 「彼ならこの周辺を歩き回っています。 ギアスの性能確認とこれからの準備を兼ねてNPCにギアスを使って回っているのでしょう」 やや呆れながら答えるアルトリアだが、だからといってルルーシュのやり方に異を唱えようとは思わない。 彼女もまた王。戦の前には相応の用意が必要であることは理解している。 別にここで待たずにギリギリまで休息に専念していても良かったのだが、つい先ほどから彼女自身正体の掴めない嫌な予感とでもいうべきものを感じていた。 そしてアルトリアはそういう時は素直に自身の直感に従うことにしていた。 「投影、開始(トレースオン)」 思いつめた顔をしながら突然魔術を行使した士郎に驚くセイバーだったが、真の驚愕はその後にやってきた。 「これは……私の剣?」 投影によって士郎の手に顕れたのはかつてアルトリアが愛用し、騎士道に背いた行いをしたことから折れてしまった黄金の剣。 銘を“勝利すべき黄金の剣(カリバーン)”。アルトリアという少女の運命を決定づけた選定の剣である。 彼女にとっては“約束された勝利の剣(エクスカリバー)”以上に馴染みのある宝具である。 「さっき投影の練習をしようと思った時に頭の中に浮かんできたんだ。 もしかしたらもう一度セイバーと契約したからかもな。 俺は一緒に行けないけど、せめてこういう事でぐらいセイバーや皆の力になりたいからな。 セイバーが良いと思うように使ってくれ」 もっとも士郎も何の戦略的根拠もなくこの剣を用意したわけではない。 アルトリアの“約束された勝利の剣(エクスカリバー)”は確かに比類なき威力を誇る超宝具だが、それ故に町中で使うには威力、範囲ともに過剰に過ぎる。 更に魔力消費も半端ではない。如何に士郎が魔術師としての力量を上げたとはいえ容易に賄える消耗ではない。 “勝利すべき黄金の剣(カリバーン)”はそんな“約束された勝利の剣(エクスカリバー)”に比べればやや格を落とす剣だが、その分魔力消費をはじめとした真名解放時のリスクも軽減されているし、聖剣の名は伊達ではなく切れ味そのものも並大抵の宝具を上回っている。 無論使えばアルトリアの真名が割れる可能性は跳ね上がるが、この聖杯戦争は地上のそれとは勝手が違う。 ムーンセルという一種の閉鎖空間で、まっとうな魔術師ではない者が参加している事から真名が知られても具体的な対策を打たれる可能性は(地上の聖杯戦争に比べれば)低いといえる。 投影の精度も会心の出来といえるレベルだったが、士郎の表情は優れない。 「…こんな事でしか役に立てないんだよな」 「…シロウ?」 「俺はさ、セイバー。心のどこかで前回の聖杯戦争を戦い抜いた俺達なら何があっても大丈夫だって考えてたんだと思う。 ……けど、そんな油断をしてたせいでイリヤと遠坂は死んだ。イリヤは生きてるかどうかなんてわからなくても、遠坂は確実に助けられた筈なんだ」 気付く機会は与えられていた。 あの二人はこう言っていたではないか。 “…本当にそうかな?俺はさ、こんな殺し合いに参加しよう、しなきゃいけないって本気で考える人間ってのは、相当追い詰められた人だと思うんだ。それこそ、聖杯なんてものに縋らなきゃいけないほど、どうしようもない状況に陥った人が。 そういう人に限って、少ない情報から誤った判断をしてしまって、取り返しのつかない事をしてしまうんだ。…俺、そういう人を何人も見てきたからわかるよ“ “いや、間違っているぞ。ここが聖杯戦争のために用意された空間ということを忘れたか?  それに、魔術師でない者が聖杯戦争の秘匿に気を回すとは思えない“ 魔術を知らない人間が多いこの聖杯戦争には前回のセオリーは通用しない。 そもそも二十五組ものマスターとサーヴァントがいる時点で、この初日からでも戦局が激化する可能性を考慮するべきだったのだ。 正しいのはルルーシュと金田一で、間違っていたのは自分の方だった。 出来るならば凛ならすぐに敗北することは無いなどとタカをくくり、セイバーに巡回を提案していた時の自分を殴ってやりたい。 「金田一やルルーシュには戦う力がない。だから俺はあいつらを守らなきゃって思ってた。 けど同時に、もしかしたら心のどこかで俺はあいつらを見下していたのかもしれない。 でも蓋を開けてみれば…一番足を引っ張ってるのは俺だ」 経験者だからと未熟者のくせに慢心し、イリヤスフィールがいるかもしれないと聞いて先走り仲間の輪を乱した挙句仇のマスターには返り討ちに遭い、その上守るべき対象である金田一に一方的に気を遣われる始末。 士郎はこの聖杯戦争での自身の足跡をそのように自覚していた。 多分に自身への過小評価が混じった感想だが、この短い間に起こった出来事は士郎の中にあった経験者として、そして魔術使いとしてのささやかな自負を木っ端微塵に粉砕するには十分すぎた。 「それだけじゃない。キャスターから死んだのが遠坂だって聞かされた時、俺が最初に思ったことは何だと思う? …死んだのが桜じゃなくて良かった、だ。桜の実の姉が、ずっと俺達を助けてくれてたあの遠坂が死んだっていうのに俺はそんな風に考えちまったんだ……!」 数字にすれば1パーセントにも満たない感情だが、士郎はそういう思考をした自分がいたことを確かに認識していた。 自分が死ぬだけなら怖くはない。しかし原初の誓いを捨ててでも守ると誓った恋人・間桐桜を残して逝くことも、彼女に先立たれるのも耐えられないほどに怖い。 もし死んだのが桜であれば、きっと自分は二度と立ち上がれない。 同時にそんな自己中心的で無力な自分が許せない。握り拳からはいつしか血が滲んでいた。 「シロウ…」 アルトリアには掛ける言葉がなかった。 今の士郎が求めているのは慰めの言葉などではない。 そもそも前回の聖杯戦争で士郎に刃を向けた自分に何かを言う資格はない。 誰がみても気まずい空気を破るように4ドアの乗用車のクラクションの音が聞こえてきた。 そして車の窓から見覚えのある男の顔が見えた。 「遅くなったな。…どうした、お前達?」 生来人間関係の機微に疎いルルーシュは空気の気まずさに気付いていなかった。 まあいいと言いながらポケットから取り出した物体を士郎に投げつけた。 「携帯電話?…っていうかその車もどうしたんだよ」 「なに、親切な人達に出会ってな。しばらく貸してもらえることになった。 連絡にはそれを使え。別行動を取る以上こういうものは必要だろう」 「ああ。……なあルルーシュ、一つ頼んでも良いか?」 しばらく躊躇っていた士郎だがやがて話を切り出した。 「余裕ができたらで良いんだ。間桐邸に行って、桜を…探してくれないか? 本音を言えば俺が今すぐ行きたいけど、これ以上みんなの足を引っ張るわけにはいかない」 「…わかった、あくまで天海陸と泉こなたの捜索が優先だが善処はしよう。 行くぞ騎士王、運転を代われ。確かセイバーのクラスには騎乗スキルがあるんだろう?」 「ええ、行きましょう。…シロウ、どうか自分を責めないでください。 とにかく今は身体を休めてください」 そう言って二人は車に乗り込み、走り去った。 後にはかつて正義の味方を目指していた少年だけが取り残された。 【深山町・柳洞寺/午前】 【衛宮士郎@Fate/ stay night】 [状態]:右手骨折(処置済み)・残令呪使用回数3回 [持ち物]:携帯電話@現実 [基本行動方針]:仲間と協力して殺し合いを止め、聖杯を破壊もしくは封印する [思考・行動] 1.ひとまず中に戻り身体を休める 2.桜…無事でいてくれ…… 3.遠坂とイリヤの仇を取りたいが……? 4.もう自分勝手な行動はしない ※参戦時期は桜ルート終了から半年後です。 ※勝利すべき黄金の剣(カリバーン)の投影に成功しました。全て遠き理想郷(アヴァロン)、赤原猟犬(フルンディング)、宝石剣ゼルレッチの投影が可能かどうかは後の書き手さんにお任せします。 ※間桐桜がマスターとして参加しているかもしれないと考えています。 【セイバー(アルトリア・ペンドラゴン)@Fate/ stay night】 [状態]:健康・乗用車に搭乗中 [装備]:勝利すべき黄金の剣(カリバーン)@Fate/ stay night [基本行動方針]:仲間と協力して殺し合いを止め、聖杯を破壊もしくは封印する [思考・行動] 1.ルルーシュと共に市街地へ向かい、天海陸と泉こなたを探す 2.余力があれば間桐邸へ向かい、間桐桜を探す 3.凛……イリヤスフィール…… 4.ランスロットに対して…? ※参戦時期は桜ルートで士郎に倒された後です(記憶は継続しています) 【ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア@コードギアス反逆のルルーシュ】 [状態]:健康・乗用車に搭乗中・残令呪使用回数3回 [持ち物]:携帯電話@現実 [基本行動方針]:聖杯を破壊もしくは封印し、自らの人生を完結させる [思考・行動] 1.市街地へ向かい、天海陸と泉こなたを探す 2.その過程でこの会場内でのギアスの性能を検証する 3.余力があれば間桐邸へ向かい、間桐桜を探す 4.他マスターの襲撃または戦闘中の乱入を警戒する 5.いざという時には令呪でガウェインを呼び出す ※マスター及びサーヴァントへのギアスの行使には何らかの制限が施されている可能性があります。 制限の有無、及び制限の具体的な詳細は後の書き手さんにお任せします。 ※キャスター(蘇妲己)から凛死亡時点でのこなたたちの大まかな位置を聞いていますが現時点でも彼らがそこに留まっているとは限りません。 【セイバー(ガウェイン)@Fate/EXTRA】 [状態]:魔力消費(小) [基本行動方針]:ルルーシュに従い聖杯を破壊もしくは封印する [思考・行動] 1.柳洞寺に待機、敵襲と令呪による呼び出しに備える 2.自らの忠義の在り方について……? 3.ランスロットと敵対した場合は私情を交えず一サーヴァントとして雌雄を決する 【金田一一@金田一少年の事件簿】 [状態]:健康・残令呪使用回数3回・ギアス無効 [基本行動方針]:自らの誇りに懸けてこの聖杯戦争の謎を解明し、殺し合いを打破する [思考・行動] 1.自分にできることをする 2.衛宮さん…大丈夫なのか? 3.ライダーとルルーシュを信じる 4.人殺しには賛同できない ※この聖杯戦争の黒幕に対して“影の主催者”という怪人名をつけました。 円蔵山の地下大空洞。 ライダーとキャスターはそこで密談をしていた。 口火を切ったのはライダーだった。 「さて、ここなら誰も聞いてはおらん。 確認するが妲己…おぬし、遠坂凛をわざと見殺しにしたな?」 キャスターは何も答えない。 ライダーはそれを肯定と受け取った。 「おぬしほどの者がマスターが殺される可能性に気付けなかったとは言わさぬぞ。 遠坂凛の死を予想できなかったと考えるには、おぬしの用意はあまりに周到すぎる」 マスターを殺されたと聞いた時から違和感はあった。 キャスターの宝具“金霞帽”を以ってすればそもそもアサシンとそのマスターを直接追跡する必要などどこにもなかった。 マスターの命令に反することにはなるが、何しろ凛はサーヴァントを伴っていない状態で二組のマスターに接触していたのだ。 天海陸が接触してきてからでも凛の下に戻るには十分な時間があったし、マスターを守るためという名分もある。別行動を取る理由などどこにもなかった。 「やっぱり太公望ちゃんに隠し事はできないわねぇん♥」 そしてキャスターはライダーの推測を認めた。 キャスターは最初から凛の死に備えて神殿に細工を施していた。 勿論、天才的な魔術師である凛が普通に戦っただけで破れると考えていたわけではない。かといって凛はあからさまな驕慢を晒して自滅するようなタイプでもない。 短い時間でキャスターは凛の性格をある程度理解していた。 そしてその結果もしも凛が早期に死亡するようなことがあるとすれば、彼女のお人好しな性格が災いするような出来事、つまり味方だと認識していた者に裏切られた時だろうというところまで見抜いていた。(要するにキャスター自身のことである) だがキャスターは敢えて己のマスターの欠点をカバーしようとは思わなかった。 柳洞寺にいる太公望や衛宮士郎の存在を察知し、凛から泉こなたと天海陸に接触したと念話で聞かされた時、キャスターは令呪で呼び出された場合を除いて凛を見殺しにする決意を固めた。 もし凛が生きて柳洞寺に辿り着いてしまえばキャスターの悪性はたちどころに暴かれ、令呪によって行動を縛られ自身の望むような行動は取れなくなる可能性が高いからだ。 無論、神の視点で見た場合凛を殺そうと決意したのは間違いなく天海陸の意思だ。キャスターとて全ての事象をコントロールできるわけではない。 だが犯人が誰にせよ凛を殺しやすい状況を自ら演出していた事もまた事実。遠坂凛の最大の失策はそもそもキャスターを信じようなどと考えたところにある。 (こやつを引いた時点で遠坂凛の命運は尽きておったな) 「折角の英雄が集まるお祭りイベントなんだものぉん、とびっきりゴージャスな戦争にしたいじゃなぁい♥ チマチマ戦うセオリーに則った聖杯戦争なんてつまらないわぁん。わらわは並みいる英傑たちが一堂に会する全面戦争が見たいのぉん♥ 太公望ちゃんだってわかってた筈でしょぉん?沢山仲間を集めればその分それを疎ましく思うマスターも出てくるって、ねん♥」 「…そうだな、否定はせん。勿論避けられる戦いは避けるつもりだが、恐らくそう上手くはいくまい。 それに悔しいがこの聖杯戦争の黒幕を出し抜くにはおぬしの力を借りる必要がありそうだからな。 だが妲己よ、これだけは言っておくぞ。手を組むのは今回限りだ」 「相変わらずつれないのねぇん♥」 【柳洞寺・地下大空洞/午前】 【ライダー(太公望)@藤崎竜版封神演義】 [状態]:健康・魔力充実 [基本行動方針]:殺し合いに乗っていないマスターを一人でも多く脱出させる(金田一を最優先) 1.柳洞寺に残り敵襲に備える 2.会場を脱出するため、仲間を募る 3.妲己は信用できないが今は手を組むしかない ※杏黄旗により、どこにいても円蔵山から魔力供給が受けられます。 ただし、短時間の内にあまりにも大量の魔力を吸い出した場合、霊脈に異常をきたす可能性があります。 【キャスター(蘇妲己)@藤崎竜版封神演義】 [状態]:魔力消費(小)・令呪 [基本行動方針]:英霊たちのゴージャスな全面戦争をこの目で見たい(ただの暇潰し) 1.衛宮士郎を守る 2.最後まで太公望らに協力する……? ※令呪の内容は以下の通りです。 ・衛宮士郎を探し、守りなさい 時間経過に伴い強制力が低下し、優先度が下がります。 ※遠坂凛の令呪の宿った腕を媒介にして柳洞寺の地下大空洞を臨時のマスター代わりにしています。 代償として行動範囲が円蔵山周辺に限定され、ステータスが以下のように変化しています。 【筋力】E 【耐久】E 【敏捷】E【魔力】B+ 【幸運】A+

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