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新都のビル群の真ん中に建つ冬木市庁舎。 その最上階の執務室で、一人の男性が傍らに立つ秘書の報告に耳を傾けていた。 「警察、行政からの情報は以上です、市長」 「ご苦労、私はこれから客人との会談に臨む。 暫くの間、職員たちの指揮権は君に預ける」 「はい」 市長と呼ばれた男性は秘書にそう告げ、執務室を出るとエレベーターに乗って数階下のフロアへ向かい、多少の緊張を抑えながら応接室の扉を開いた。 そこには、中世ヨーロッパの王族のような装いの巨漢がいた。傍から見れば時代錯誤甚だしい服装だが、その巨漢には不自然さを感じさせない、一種独特な雰囲気があった。 「……来たか」 重々しく口を開いた巨漢に、市長はやや恭しく答えた。 「遅れて申し訳ない。しかし私も、市政に携わる者としてこなさなければならない仕事がありましてな。 それでは交渉を始めましょう―――陛下」 “冬木市”市長、ジョン・バックスとベルン王国国王、ゼフィール。 彼らが邂逅し、今こうして会談の場を設けている理由、それを語るには暫く時間を遡らなければならない。 ジョン・バックスが聖杯戦争の存在を知ったのは、7月を迎えたばかりの頃だった。 とはいっても、彼自身に聖杯戦争の誘いが来たわけではない。 神の後継者の座を賭けて行われる12人の未来日記所有者による殺し合い。 その参加者である天野雪輝の無差別日記と我妻由乃の雪輝日記に、それぞれ聖杯戦争の存在と、彼らがその戦いに参加するという内容の記述を自身の未来日記、The watcherによって覗き見た事がきっかけである。 この事を知ったバックスは、すぐに時空王デウスに聖杯戦争の存在の有無について問い質した。すると、いくつもの驚くべき事実が明らかとなった。 まず第一に、聖杯の正体ともいえる異世界に存在するとされるムーンセルなるものの存在。 (デウス曰くどのような因果律であろうとも自分達の世界にムーンセルなどというものは存在し得ないから、並行世界ではなく異世界にあたるらしい) そのムーンセルが最近になってデウスに直接接触してきたらしいという事。 自分からデウスに接触できる存在というだけでも驚愕すべき事だが、話はそれだけでは終わらなかった。 ムーンセルは現在生き残っている未来日記ゲームの参加者の中から数名を聖杯戦争に参加させることを要求し、その対価としてデウスにいくつかの情報をもたらした。 そのうちのひとつが、デウスの小間使いであるムルムルの不正行為の数々だった。 今までバックスらが接してきたムルムルは、一言でいえば並行世界の未来においてゲームの勝者となった我妻由乃とともにこの世界にタイムリープしてきた、いうなれば1巡目のムルムルだったのだ。そして、2巡目のムルムルを封印し、ゲームにおいて2巡目の我妻由乃を殺害し、彼女と入れ替わった1巡目の我妻由乃が有利になるよう不正な干渉を行なっていたことも発覚した。(もっとも、これらの不正についてはデウスも薄々は気づいていたようだが) これらの情報を入手したデウスは、ムーンセルからの情報を基に2巡目のムルムルを解放し、彼女の力の封印を解除、1巡目のムルムルの力を剥奪し、その存在を完全に抹消した。 以上の顛末を聞かされたバックスは、自身も聖杯戦争に参加する旨をデウスに告げた。 もし我妻由乃が聖杯戦争に参加しなかった場合、並行世界で自分を破った彼女の前に敗北する可能性が高く、また、如何に寿命が近づいているとはいえ、ムーンセルが接触するまで1巡目のムルムルに対して何ら効果的な対処ができなかったデウスの、ひいては自分の世界の神の力に対して疑念を抱き、未来日記ゲームに参加し続ける意義を半ば失っていたからである。 同時に、デウスの手配によって現実世界の情報端末を通してムーンセルへの接触が可能になった事を告げられたバックスは、聖杯戦争への準備を始めた。 ハッキング技術の高い部下十数名を動員し、聖杯戦争に関するある程度詳細な情報の入手や、会場である冬木市内における市長の肩書きと権限の確保、更には自身の秘書を始めとした部下たちのパーソナルデータを再現したNPCを配置することに成功した。 勿論、普通の端末ではそこまでの改竄を行うことは到底不可能だ。しかし国内第三位の演算能力を持つスーパーコンピュータである「HOLONⅢ」を手中に収めているバックスにとっては、困難ではあっても決して不可能な事ではなかった。 そうして周到に準備を重ねたバックスは電子の海へと赴き、アサシンのサーヴァント、ファニー・ヴァレンタインを召喚した。(天野雪輝と我妻由乃が参加していることを未来日記で知ったのはちょうどこの時である) 正にチートと呼ぶに相応しい所業ではあるが、そもそも聖杯戦争は参加者間における完全に平等な争いが明文化されているわけではない。あくまで平等なのは、それぞれがサーヴァントを召喚し、3画の令呪を宿すという2点のみである。 その後、部下の報告で深夜の街を練り歩くゼフィール主従を発見し、敢えて堂々と姿を現して同盟を持ちかけた。(仮に問答無用で襲いかかられてもアサシンの宝具を用いれば時間稼ぎは十分可能と判断したため) そして承諾を得られた後、その足で市庁舎へ赴き、秘書からの報告を一通り聞き、今に至る。 「では内容をまとめましょう。 私はアサシンと部下たちを使って他のマスターの情報を収集し、有事の際には陛下に彼らの掃討をしていただく。 そしてその対価として、私の権限の及ぶ範囲で陛下の身の安全の確保と情報操作を行う。 これでよろしいか?」 「……構わん。だが、攻撃のタイミングはこちらで決めさせてもらうぞ」 威圧感を一切隠すことなく言い切る金髪の巨漢に、バックスは(少なくとも表面上は)涼しい顔で答えた。 「勿論です。餅は餅屋と言いますからな。 一介の政治屋に過ぎない私などよりも、歴戦の王たる貴方の判断の方が、戦場においてはよほど適切でしょう」 この言葉は本心である。 あくまで同盟に過ぎない以上、完全に信用するのは危険だが、戦場の空気を肌で知っている人間の判断力を利用しない手はない。 ちなみに、同盟をするにあたり、情報交換の一環としてバックスはゼフィールから彼のいたエレブ大陸の世界観について説明されたが、驚きはしてもさほど疑いはしなかった。 事前に手に入れた聖杯戦争の情報から、参加者がそれぞれ異世界から集められていることを知っていたためである。 「では私は失礼します。 まだ先は長い。どうぞごゆるりとお休み下さい」 そう言い残して部屋を出たバックスを無言で見送るゼフィールの隣に、実体化したライダーが現れた。 「良いのか、ゼフィール?あの男、間違いなく我らを利用し尽くす算段だぞ?」 最初に会った時から変わらぬ傲岸さと全てを嘲笑うかのような表情を隠しもせず、試すようにゼフィールに問いかける。 ゼフィールもまた、ライダーへの警戒と嫌悪を隠すことなく言い返す。 「そんな事は分かっている。だが現状、我らはこの見慣れぬ世界の土地勘で圧倒的に他のマスターに遅れを取っている。 なればこそ、他のマスターとの一時の同盟もやむを得まい。否とは言わせんぞ、狂王」 右手の令呪を振りかざしながら告げるゼフィールに、不遜な笑みを崩さぬままライダーは再び霊体化した。 ―――やはり、この男は信用ならん。 単純に現代の世界の情報を得るだけならば自身のサーヴァントに聞けば良い事だ。だがゼフィールはそういった情報提供の面ですらライダーを信用できなかった。 この魔人なら愉悦と称してわざと自分に誤った情報をもたらしてもおかしくない。少なくともゼフィールはそう確信していた。 だからこその他者との同盟。まずは比較的安全な状況下でこの世界について正確な情報を得る。いざという局面でこの狂王に遅れを取らないためにも。 だがこの時、ゼフィールも、そして聖杯から現代知識を得ている筈のライダーも気が付いていなかった。今彼らがいる応接室には監視カメラと盗聴器が仕掛けられており、先ほどのやり取りは全て筒抜けになっていることを。 知識でしか知らないものに、咄嗟に頭が回る者など滅多にいない。機械文明から縁遠い人生を歩んだライダーもまた、その例に漏れなかった。 【新都・冬木市庁舎(応接室)/未明】 【ゼフィール@ファイアーエムブレム 覇者の剣】 [状態]:健康・残令呪使用回数3回 [装備]:エッケザックス@ファイアーエムブレム 覇者の剣 封印の剣@ファイアーエムブレム 覇者の剣 【ライダー(アシュナード)@ファイアーエムブレム 蒼炎の軌跡】 [状態]:健康 応接室を出て執務室へ戻る途中、バックスは先ほどの金髪の覇王のことを思い返していた。 「あれが戦乱の世界を生きた王の威厳、か。全く生きた心地がしないとはこの事か」 先ほどはどうにか平静を装えたが、手は震え服の下には汗が滲んでいた。本来、一般人であるバックスには、あの男のような人種とは正対するだけで身が竦みかねないほどのプレッシャーを感じるのだ。 しかし収穫もあった。盗聴器によって聞こえたサーヴァントとの会話から察するに、あの覇王はサーヴァントとの関係が非常に悪いと見て良い。自身のサーヴァントが信用できないとあらば、序盤のうちはそうそうこちらに牙を剥く余裕は無いはずだ。暫くは寝首を掻かれる心配はしなくとも大丈夫だろう。 そして、視線を自分の未来日記、The watcherへと向ける。そこには、最後にチェックした時から変わらぬ内容だけが書かれていた。天野雪輝と我妻由乃の死を示す記述だけが。 「まさか、彼らがな……」 嘆息しながら呟くその声には、複雑な感情が入り交じっていた。 正直なところ、バックスが聖杯を目指すにあたり、一番の障害になるのは天野雪輝と我妻由乃だと思っていた。未来日記ゲームにおいて、何度も死の予告を覆してきた彼らこそが自分にとっての最大の強敵になるのだと、半ば本気でそう信じていた。 だが、現実はバックスが考えるよりも遥かに無情で残酷だった。この聖杯戦争は、天野雪輝や我妻由乃であっても、数時間と生き残ることを許されない戦いなのだ。 そして、ここから先はバックスもいよいよ覚悟を決めなければならない。彼の未来日記、The watcherは他の未来日記所有者の日記を覗き見る能力だ。即ち、他の所有者がいなくなれば、ただの携帯電話に成り下がることをも意味する。 「だが、私は負けるつもりなどない」 誰に言うでもなく、そう呟く。 その表情は、今までの彼の人生のどの瞬間よりも闘志に満ちていた。 【新都・冬木市庁舎(最上階廊下)/未明】 【ジョン・バックス@未来日記】 [状態]:健康・冬木市市長・残令呪使用回数3回 ※参戦時期は、天野九郎死亡後から、雨流みねねにHOLONⅢ(の一部)を破壊されるまでの間からです。 ※ムーンセルへのハッキング工作により、冬木市市長の役職を得ています。 また、聖杯戦争に関するある程度詳細な情報を得ています。 *投下順で読む [[戻る>和風唐揚げ弁当390円]] [[次へ>]] *時系列順で読む [[戻る>和風唐揚げ弁当390円]] [[次へ>]] *キャラを追って読む |ジョン・バックス|:[[]]| |ゼフィール|:[[]]| |アシュナード|:[[]]|
新都のビル群の真ん中に建つ冬木市庁舎。 その最上階の執務室で、一人の男性が傍らに立つ秘書の報告に耳を傾けていた。 「警察、行政からの情報は以上です、市長」 「ご苦労、私はこれから客人との会談に臨む。 暫くの間、職員たちの指揮権は君に預ける」 「はい」 市長と呼ばれた男性は秘書にそう告げ、執務室を出るとエレベーターに乗って数階下のフロアへ向かい、多少の緊張を抑えながら応接室の扉を開いた。 そこには、中世ヨーロッパの王族のような装いの巨漢がいた。傍から見れば時代錯誤甚だしい服装だが、その巨漢には不自然さを感じさせない、一種独特な雰囲気があった。 「……来たか」 重々しく口を開いた巨漢に、市長はやや恭しく答えた。 「遅れて申し訳ない。しかし私も、市政に携わる者としてこなさなければならない仕事がありましてな。 それでは交渉を始めましょう―――陛下」 “冬木市”市長、ジョン・バックスとベルン王国国王、ゼフィール。 彼らが邂逅し、今こうして会談の場を設けている理由、それを語るには暫く時間を遡らなければならない。 ジョン・バックスが聖杯戦争の存在を知ったのは、7月を迎えたばかりの頃だった。 とはいっても、彼自身に聖杯戦争の誘いが来たわけではない。 神の後継者の座を賭けて行われる12人の未来日記所有者による殺し合い。 その参加者である天野雪輝の無差別日記と我妻由乃の雪輝日記に、それぞれ聖杯戦争の存在と、彼らがその戦いに参加するという内容の記述を自身の未来日記、The watcherによって覗き見た事がきっかけである。 この事を知ったバックスは、すぐに時空王デウスに聖杯戦争の存在の有無について問い質した。すると、いくつもの驚くべき事実が明らかとなった。 まず第一に、聖杯の正体ともいえる異世界に存在するとされるムーンセルなるものの存在。 (デウス曰くどのような因果律であろうとも自分達の世界にムーンセルなどというものは存在し得ないから、並行世界ではなく異世界にあたるらしい) そのムーンセルが最近になってデウスに直接接触してきたらしいという事。 自分からデウスに接触できる存在というだけでも驚愕すべき事だが、話はそれだけでは終わらなかった。 ムーンセルは現在生き残っている未来日記ゲームの参加者の中から数名を聖杯戦争に参加させることを要求し、その対価としてデウスにいくつかの情報をもたらした。 そのうちのひとつが、デウスの小間使いであるムルムルの不正行為の数々だった。 今までバックスらが接してきたムルムルは、一言でいえば並行世界の未来においてゲームの勝者となった我妻由乃とともにこの世界にタイムリープしてきた、いうなれば1巡目のムルムルだったのだ。そして、2巡目のムルムルを封印し、ゲームにおいて2巡目の我妻由乃を殺害し、彼女と入れ替わった1巡目の我妻由乃が有利になるよう不正な干渉を行なっていたことも発覚した。(もっとも、これらの不正についてはデウスも薄々は気づいていたようだが) これらの情報を入手したデウスは、ムーンセルからの情報を基に2巡目のムルムルを解放し、彼女の力の封印を解除、1巡目のムルムルの力を剥奪し、その存在を完全に抹消した。 以上の顛末を聞かされたバックスは、自身も聖杯戦争に参加する旨をデウスに告げた。 もし我妻由乃が聖杯戦争に参加しなかった場合、並行世界で自分を破った彼女の前に敗北する可能性が高く、また、如何に寿命が近づいているとはいえ、ムーンセルが接触するまで1巡目のムルムルに対して何ら効果的な対処ができなかったデウスの、ひいては自分の世界の神の力に対して疑念を抱き、未来日記ゲームに参加し続ける意義を半ば失っていたからである。 同時に、デウスの手配によって現実世界の情報端末を通してムーンセルへの接触が可能になった事を告げられたバックスは、聖杯戦争への準備を始めた。 ハッキング技術の高い部下十数名を動員し、聖杯戦争に関するある程度詳細な情報の入手や、会場である冬木市内における市長の肩書きと権限の確保、更には自身の秘書を始めとした部下たちのパーソナルデータを再現したNPCを配置することに成功した。 勿論、普通の端末ではそこまでの改竄を行うことは到底不可能だ。しかし国内第三位の演算能力を持つスーパーコンピュータである「HOLONⅢ」を手中に収めているバックスにとっては、困難ではあっても決して不可能な事ではなかった。 そうして周到に準備を重ねたバックスは電子の海へと赴き、アサシンのサーヴァント、ファニー・ヴァレンタインを召喚した。(天野雪輝と我妻由乃が参加していることを未来日記で知ったのはちょうどこの時である) 正にチートと呼ぶに相応しい所業ではあるが、そもそも聖杯戦争は参加者間における完全に平等な争いが明文化されているわけではない。あくまで平等なのは、それぞれがサーヴァントを召喚し、3画の令呪を宿すという2点のみである。 その後、部下の報告で深夜の街を練り歩くゼフィール主従を発見し、敢えて堂々と姿を現して同盟を持ちかけた。(仮に問答無用で襲いかかられてもアサシンの宝具を用いれば時間稼ぎは十分可能と判断したため) そして承諾を得られた後、その足で市庁舎へ赴き、秘書からの報告を一通り聞き、今に至る。 「では内容をまとめましょう。 私はアサシンと部下たちを使って他のマスターの情報を収集し、有事の際には陛下に彼らの掃討をしていただく。 そしてその対価として、私の権限の及ぶ範囲で陛下の身の安全の確保と情報操作を行う。 これでよろしいか?」 「……構わん。だが、攻撃のタイミングはこちらで決めさせてもらうぞ」 威圧感を一切隠すことなく言い切る金髪の巨漢に、バックスは(少なくとも表面上は)涼しい顔で答えた。 「勿論です。餅は餅屋と言いますからな。 一介の政治屋に過ぎない私などよりも、歴戦の王たる貴方の判断の方が、戦場においてはよほど適切でしょう」 この言葉は本心である。 あくまで同盟に過ぎない以上、完全に信用するのは危険だが、戦場の空気を肌で知っている人間の判断力を利用しない手はない。 ちなみに、同盟をするにあたり、情報交換の一環としてバックスはゼフィールから彼のいたエレブ大陸の世界観について説明されたが、驚きはしてもさほど疑いはしなかった。 事前に手に入れた聖杯戦争の情報から、参加者がそれぞれ異世界から集められていることを知っていたためである。 「では私は失礼します。 まだ先は長い。どうぞごゆるりとお休み下さい」 そう言い残して部屋を出たバックスを無言で見送るゼフィールの隣に、実体化したライダーが現れた。 「良いのか、ゼフィール?あの男、間違いなく我らを利用し尽くす算段だぞ?」 最初に会った時から変わらぬ傲岸さと全てを嘲笑うかのような表情を隠しもせず、試すようにゼフィールに問いかける。 ゼフィールもまた、ライダーへの警戒と嫌悪を隠すことなく言い返す。 「そんな事は分かっている。だが現状、我らはこの見慣れぬ世界の土地勘で圧倒的に他のマスターに遅れを取っている。 なればこそ、他のマスターとの一時の同盟もやむを得まい。否とは言わせんぞ、狂王」 右手の令呪を振りかざしながら告げるゼフィールに、不遜な笑みを崩さぬままライダーは再び霊体化した。 ―――やはり、この男は信用ならん。 単純に現代の世界の情報を得るだけならば自身のサーヴァントに聞けば良い事だ。だがゼフィールはそういった情報提供の面ですらライダーを信用できなかった。 この魔人なら愉悦と称してわざと自分に誤った情報をもたらしてもおかしくない。少なくともゼフィールはそう確信していた。 だからこその他者との同盟。まずは比較的安全な状況下でこの世界について正確な情報を得る。いざという局面でこの狂王に遅れを取らないためにも。 だがこの時、ゼフィールも、そして聖杯から現代知識を得ている筈のライダーも気が付いていなかった。今彼らがいる応接室には監視カメラと盗聴器が仕掛けられており、先ほどのやり取りは全て筒抜けになっていることを。 知識でしか知らないものに、咄嗟に頭が回る者など滅多にいない。機械文明から縁遠い人生を歩んだライダーもまた、その例に漏れなかった。 【新都・冬木市庁舎(応接室)/未明】 【ゼフィール@ファイアーエムブレム 覇者の剣】 [状態]:健康・残令呪使用回数3回 [装備]:エッケザックス@ファイアーエムブレム 覇者の剣 封印の剣@ファイアーエムブレム 覇者の剣 【ライダー(アシュナード)@ファイアーエムブレム 蒼炎の軌跡】 [状態]:健康 応接室を出て執務室へ戻る途中、バックスは先ほどの金髪の覇王のことを思い返していた。 「あれが戦乱の世界を生きた王の威厳、か。全く生きた心地がしないとはこの事か」 先ほどはどうにか平静を装えたが、手は震え服の下には汗が滲んでいた。本来、一般人であるバックスには、あの男のような人種とは正対するだけで身が竦みかねないほどのプレッシャーを感じるのだ。 しかし収穫もあった。盗聴器によって聞こえたサーヴァントとの会話から察するに、あの覇王はサーヴァントとの関係が非常に悪いと見て良い。自身のサーヴァントが信用できないとあらば、序盤のうちはそうそうこちらに牙を剥く余裕は無いはずだ。暫くは寝首を掻かれる心配はしなくとも大丈夫だろう。 そして、視線を自分の未来日記、The watcherへと向ける。そこには、最後にチェックした時から変わらぬ内容だけが書かれていた。天野雪輝と我妻由乃の死を示す記述だけが。 「まさか、彼らがな……」 嘆息しながら呟くその声には、複雑な感情が入り交じっていた。 正直なところ、バックスが聖杯を目指すにあたり、一番の障害になるのは天野雪輝と我妻由乃だと思っていた。未来日記ゲームにおいて、何度も死の予告を覆してきた彼らこそが自分にとっての最大の強敵になるのだと、半ば本気でそう信じていた。 だが、現実はバックスが考えるよりも遥かに無情で残酷だった。この聖杯戦争は、天野雪輝や我妻由乃であっても、数時間と生き残ることを許されない戦いなのだ。 そして、ここから先はバックスもいよいよ覚悟を決めなければならない。彼の未来日記、The watcherは他の未来日記所有者の日記を覗き見る能力だ。即ち、他の所有者がいなくなれば、ただの携帯電話に成り下がることをも意味する。 「だが、私は負けるつもりなどない」 誰に言うでもなく、そう呟く。 その表情は、今までの彼の人生のどの瞬間よりも闘志に満ちていた。 【新都・冬木市庁舎(最上階廊下)/未明】 【ジョン・バックス@未来日記】 [状態]:健康・冬木市市長・残令呪使用回数3回 ※参戦時期は、天野九郎死亡後から、雨流みねねにHOLONⅢ(の一部)を破壊されるまでの間からです。 ※ムーンセルへのハッキング工作により、冬木市市長の役職を得ています。 また、聖杯戦争に関するある程度詳細な情報を得ています。

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