「生きているのなら英雄だって殺してみせる」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

生きているのなら英雄だって殺してみせる」(2012/11/24 (土) 15:19:01) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

*生きているのなら英雄だって殺してみせる 狐耳のキャスターらとの戦闘の後、下水道で暫くの間休憩を取った鳴上悠とランサーは、そのまま下水道の中を進んでいた。(キャスターから受けた傷は、ランサーの治癒のルーンによって既に治っている) 但し、その足取りは尋常でなく速かった。ランサーが悠をおぶる形で、下水道をサーヴァントのスピードで突っ走っているためだ。 地上と違い、地下ならば人目を気にする必要は無い。 「んで?次はどこに行くんだよ?」 「学校に行こう。あそこで、さっきのキャスターの情報を探しておきたいからな」 「へいへい。ったく、サーヴァントをタクシー扱いするマスターがいるとは思わなかったぜ」 「サーヴァントタクシー……。そうか、これがサーヴァントの本当の力か………!」 「ちげーよ!振り落とすぞ!」 このように、時折漫才を繰り広げながら二人は一路月海原学園へと向かった。 学校付近のマンホールから地上に戻った二人は、そのまま正門から学園に入り、情報収集のために図書室へ向かった。途中で何人かの生徒とすれ違ったが、サーヴァントを連れている自分に反応しなかったところを見ると、彼らはNPCなのだろう、と悠は結論づけた。 そして、図書室に入って最初に目にしたのは、寝袋に入って仮眠中のNPCらしき少女だった。 「そっとしておこう」 仮眠中の少女をそっとしておき、悠は自身の生き字引級の知識を生かして端末から先ほどのキャスターの情報を検索する。(途中で乱入してきたもう一体のサーヴァントについてはクラスすらわからなかったので諦めた) 検索ワード「獣耳 ピンクはINRAN 奉仕系巫女狐」 検索結果0件 「ですよね」 検索ワード「狐耳 日本三大妖怪 呪術 ピンクはINRAN」 検索結果1件 「玉藻の前」 「……早かったな」 「…まあ、あんだけ特徴丸出しだったらな……」 若干やるせない気持ちになりながらも、出てきた情報を見ていく。 「出自だけじゃなく、ステータスやマスター名まで出てくるのか……」 そこから出てきた予想外の情報量の多さに驚きを覚える。 今回は自分がこのシステムの恩恵を受けられたが、他のマスターにランサーの手掛かりを与えてしまった場合、逆に自分たちの情報が露見する可能性もある。 ここからは、より慎重に行くべきかもしれない。 「やあやあマスターさん、この図書室の使い心地はどう?」 と、先ほど寝袋に入っていた少女が妙に元気よく声を掛けてきた。 「寝てなくて良いのか?」 「ちょ、それは言わないで!マスターが入ってきたのに気付かず寝ているとはこの間目 智識、一生の不覚………!」 「ハイカラな名前だね」 「あ、今ちょっとうるっときた!さっき馬鹿みたいな名前だって言われてへこんでたから……!」 「俺達の他に誰か来たのか?」 「ハッ!私としたことがつい口を……!番長、恐ろしい子……!」 番長というのが誰を指しているのかは全くわからないが、自分たち以外のマスターがここを訪れていた事は確かなようだ。 「ま、まあそれはともかく、一階の掲示板に最初の脱落者の名前が出たから、気が向いたらチェックしてね!」 それだけ言うと、少女は図書室の受付に戻っていった。 ここでの目的は果たした以上、自分たちも移動するべきだろう。 悠は無言で席を立つと、一階へ向かった。 「何だよ、もう逝っちまったのか、あいつら」 掲示板を見た時のランサーの第一声はそれだった。 掲示板に書かれたマスターの名前は天野 雪輝に我妻 由乃。 奇しくも先ほど自分たちと戦闘し、その情報を調べていた相手だった。 「もう一人がさっき乱入してきた方のマスターとは限らないんじゃないか?」 「いや、逃げる時にあの坊主が“由乃”って言ってたのが聞こえたからな。 十中八九間違いねえよ」 「そうか。………知り合い、だったのか?」 「だろうな。何せ賞品は聖杯なんだ、別段有り得ない話じゃねえだろ。 どういう理屈であんなにすぐ合流したのかは知らねえがな」 「知り合い、か……」 そう言って思い出すのは、かつての自称特別捜査隊の仲間たち。 正直に言えば、彼らには参加していてほしくない。 こんな凄惨な殺し合いに身を投じるのは、自分一人で充分だ。 「ったく、あの駄狐はキャスターにしちゃあやる方だったから、再戦を楽しみにしてたってのによ。つくづく俺も運が……!?」 ランサーの言葉が途切れると同時に、猛烈なプレッシャーを感じた。 間違いなくサーヴァントの気配。それも、確実に先ほどのキャスターの比ではないレベルの強敵だ。 正面玄関に向き直ると、そこには黒い霧を纏った騎士らしきサーヴァントがいた。 迷っている暇はない。すぐさまランサーに指示を下す。 「ランサー、校庭に出るぞ!ここじゃ俺達の方が不利だ!」 「あいよ!」 全速力で校舎の中を走り抜け、二人同時に窓ガラスを突き破り、校庭に飛び出した。 しかし、黒い騎士は既にそちらに回り込んでいた。 「■■■■■■■■!!!」 「チッ、ありゃバーサーカーだな。 おいマスター!見ての通り話しの通じるやつじゃねえ、いけるか?」 「ああ。頼む、ランサー」 ランサーが攻撃を仕掛けようとする寸前、素手で戦う不利を悟ったのかバーサーカーは剣らしきものを取り出した。 すると、バーサーカーを覆っていた霧が晴れ、何故か見えなかったステータスが見えるようになった。 「なっ……!?」 悠の口から驚愕の声が漏れる。 バーサーカーのステータスは、あらゆる点においてランサーを凌駕するものだった。 最速のサーヴァントであるランサーの証ともいえる敏捷値すら上回られているのは、完全に予想外だった。 それを証明するように、戦闘を開始したランサーはバーサーカーに対し完全に防戦を強いられていた。 「ペルソナ!」 ランサーを援護すべく、眼鏡を掛け、イザナギを呼び出す。 「“マハタルカジャ”!続けて“マハラクカジャ”!」 二種類の補助魔法をランサーにかける。すると、ランサーの筋力、耐久、魔力値と対魔力スキルが1ランクずつ上昇した。 その効果が表れたのか、戦況は少しずつランサーが持ち直してきていた。 何度目なのかも分からない剣戟の後、ランサーとバーサーカーは互いに距離を取った。 「大丈夫か、ランサー?」 「ま、とりあえずはな。あの野郎、バーサーカーだってのにとんでもねえ技量だ。 まあ、それでこそ戦い甲斐があるってもんだが」 実のところ、ランサーは悠が感じているほど焦っていたわけではない。 むしろ、目の前のバーサーカーのような自身を上回る英雄との戦いこそ、クー・フーリンが渇望していたものだった。 とはいえ、このままではジリ貧なのも事実だ。ランサーとしても、自身のマスターに敗北という結果を献上する気など微塵もない。 すると、悠が念話(先ほどランサーが教えた)である作戦を伝えた。 それを聞いたランサーは、表情を険しくして悠に確認する。 「本気か?言っとくが、あいつはさっきのキャスターとは比べものにならねえ相手だぞ。 それが分からないお前さんでもあるまい」 ランサーの問いに、悠は決然とした表情で答えた。 「大丈夫だ、勝算はある。俺を信じろ、ランサー」 「…わかった。だが、言ったからにはやってみせろよ」 そう言うと、態勢を整え、再度攻撃を仕掛けてきたバーサーカーを迎撃すべく、ランサーは己が魔槍に魔力を通す。 それは即ち、宝具の真名解放を意味していた。 その気配を悟ったバーサーカーは、狂戦士らしからぬ流麗な動作で防御態勢をとる。 「刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)!!」 ランサーの魔槍がバーサーカーに迫る。 バーサーカーは自身の宝具、“無毀なる湖光(アロンダイト)”を構え、防ごうとする。 だが無駄だろう。ランサーの“刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)”は運命に干渉し、因果を逆転させて標的の心臓を貫く。 故に、ランサーの魔槍は剣のみで防ごうとするバーサーカーの防御をすり抜け、彼の心臓に命中する――――――筈だった。 「何………!?」 ランサーから驚愕の声が漏れる。 相手の心臓に吸い込まれる筈だった“刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)”は、その効果を発揮する事なく、バーサーカーの剣によって防がれた。 本来、バーサーカーの幸運値はBランク。“刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)”の因果逆転の呪いを打ち消すには至らない数値だ。 しかし、バーサーカーの宝具“無毀なる湖光(アロンダイト)”には彼の全能力を1ランク向上させる効果がある。そして、その中には当然幸運も含まれている。 これにより、バーサーカーは一時的にAランクの幸運値を得たのである。更に、バーサーカーの持つ精霊の加護のスキルもこの結果を後押しした。 しかし、それらが全て槍の主従の思惑通りだったとしたら――― 「イザナギ!」 悠の指示とともに、バーサーカーの死角である天頂方向から太刀を構えたイザナギがバーサーカーを強襲する。 バーサーカーのステータスを見た悠は、この事態を予期し、その上でランサーに宝具の使用を命じたのだ。 そして、物理法則に囚われない三次元的な機動を可能とするペルソナの特性を生かし、予め“チャージ”を終えたイザナギをバーサーカーの真上に配置していた。 これをバーサーカーの不注意と責める事はできない。生前、湖の騎士と謳われた彼をして全身全霊で迎撃しなければならないほど、ランサーの魔槍の呪いは強力なものだったのだ。 しかし、バーサーカーも黙って見ているわけではない。剣を構え、急降下するイザナギを迎え撃とうとする。 「■■■■■■!?」 だがその瞬間、バーサーカーは自身の意思に反して崩れ落ち、片膝をついた。 確かにバーサーカーは外見上は無傷で“刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)”を防ぎ切った。 しかし、“無毀なる湖光(アロンダイト)”は本来防御用の宝具ではない。そんなもので真名解放を行なった宝具を直接受け止めた代償は決して安くはなかった。結果、バーサーカーは身体の内部に甚大なダメージを被り、イザナギを満足に迎撃できない状態に陥った。 「“ブレイブザッパー”!!」 “マハタルカジャ”と“チャージ”による攻撃力の上乗せ、更に上空からの急降下による勢いをも乗せた渾身の一撃がバーサーカーを襲う。 それでもバーサーカーは満身創痍の身体に鞭打ち、どうにか頭上に剣を構え、防御姿勢を取る。悠の予想通りに。 悠の狙いは頭部や心臓などの急所ではなく、人体において最も防御意識の薄い腕だったのだ。生前、神話において名を馳せたバーサーカーも、その法則の例外ではなかった。 「■■■■■■■■■■!!!!」 イザナギの一閃がバーサーカーの右腕をその宝具ごと肘先から断ち切る。 バーサーカーは直前に悠の狙いを察知していたが、ダメージを受けた身体では目前まで迫ったイザナギの攻撃を躱すことは叶わなかった。 マスター相手に片腕を失ったことで、僅かながら動揺を見せたバーサーカーの隙を見逃さず、返す刀でイザナギがバーサーカーの左腕の手首から先を切り飛ばす。 皮肉なことに、バーサーカーの敗因はマスターであるスザクを伴わずに戦闘を行なったことにあった。 もしもこの場に超人的な身体能力を誇るスザクがいれば、彼が悠を押さえ、イザナギによる奇襲を受ける事もなかったのだから。 両腕を失い、ほぼ全ての戦闘力を喪失したバーサーカーにとどめを刺すべく、イザナギが太刀を横一文字に振るう。だが、両腕を失って尚、バーサーカーの体術は健在だった。 バーサーカーは跳躍し、イザナギを踏み台にしてさらに高く跳び、一目散に逃走を試みる。 「逃がすか、たわけ」 だが、それを見逃すほどランサーはお人好しでも無能でもない。 一息にバーサーカーとの距離を詰めると、渾身の突きを繰り出す。 両腕を失い、身体のバランスを取りにくくなったバーサーカーは躱しきれず、右大腿にランサーの槍が突き刺さる。 それでもバーサーカーは霊体化し、ランサーを振り切ってその場を逃れた。 狂戦士が次に向かうのがどこなのか、それは彼自身しか知らない。 【深山町・月海原学園/未明】 【バーサーカー(ランスロット)@Fate Zero】 [状態:ダメージ(大)・両腕欠損(修復中)・右大腿に刺し傷(通常の回復手段では治癒不可能)・宝具“無毀なる湖光(アロンダイト)”喪失 ※バーサーカーがどこに向かうかは次の書き手さんにお任せします。 ※右大腿の傷はゲイボルクによる傷なので、通常の手段では治癒できません。 「すまねえ、マスター。折角のチャンスだったってのにドジを踏んじまった」 ランサーが悠に謝罪する。 バーサーカーを仕留め、自身のマスターにその首級を献上する絶好の機会を逸してしまった。バーサーカーの体技が予想以上のものだった、などというのは言い訳にもならない。 だというのに。 「“そんなモンは気にすんな”」 銀髪のマスターは不敵な笑みすら浮かべてランサーを励ました。 そして、その言葉が先ほどランサー自身が彼に言った言葉だった事を思い出すと、可笑しさのあまりランサーは思わず吹き出した。 まったく、自分としたことがらしくもない事を口にしてしまったものだと思う。生きていればその時の事は引きずらないと言ったのは他ならぬ自分ではないか。 「次も俺達が勝つさ。そうだろ?」 それは驕りや油断などではなく、確かな自信と、サーヴァントである自分を信頼しての事なのだろう。 「だな。また仕切り直しになっただけだ。悪いマスター、みっともねえとこを見せちまったな」 「気にするな、戦友だろ?」 鳴上 悠とランサー。この二人の間には、単なるマスターとサーヴァントの域を越えた絆が芽生えつつあった。 「つうかその剣、バーサーカーのやつだろ? 拾ったのか?」 「ああ、拾っちゃったな。………使うか?」 「いらねーよ!」 【深山町・月海原学園/未明】 【鳴上悠@ペルソナ4】 [状態]:疲労(小)・精神力消耗(小)・残令呪使用回数:3 [持ち物] 無毀なる湖光(アロンダイト)@Fate Zero ※本ロワにおけるペルソナ・イザナギは所謂事故ナギです。 イザナギのスキル構成は以下の通りです。 マハジオ:敵全体に電撃属性のダメージ(ロワ内では広範囲の電撃属性攻撃) ブレイブザッパー:敵単体にダメージ マハタルカジャ:味方全体の物理・魔法攻撃力を上昇させる(味方サーヴァントに対しては一時的に筋力・魔力値を1ランクブーストする) マハラクカジャ:味方全体の物理・魔法防御力を上昇させる(味方サーヴァントに対しては一時的に耐久値を1ランクブーストし、対魔力スキルを1ランク上昇させる。対魔力スキルを有していない場合は、一時的にEランク相当の対魔力スキルを付与する) チャージ:使用後の物理攻撃力が一度だけ2倍以上に上昇する 武道の心得:物理技使用時の消費HPを半減する 疾風吸収:疾風属性の攻撃を受けた時、その攻撃力の分だけ自身のHPを回復する 不屈の闘志:HPが0になった時、HP全快の状態で復帰する(一度発動すると12時間後まで再使用不可) ※バーサーカーの無毀なる湖光(アロンダイト)を拾いました。 持っていても魔力を吸われる事はありませんが、本来の使い手ではないので、ステータス上昇の恩恵は受けられません。 【ランサー(クー・フーリン)@Fate/ stay night】 [状態]:魔力消費(小)
*生きているのなら英雄だって殺してみせる 狐耳のキャスターらとの戦闘の後、下水道で暫くの間休憩を取った鳴上悠とランサーは、そのまま下水道の中を進んでいた。(キャスターから受けた傷は、ランサーの治癒のルーンによって既に治っている) 但し、その足取りは尋常でなく速かった。ランサーが悠をおぶる形で、下水道をサーヴァントのスピードで突っ走っているためだ。 地上と違い、地下ならば人目を気にする必要は無い。 「んで?次はどこに行くんだよ?」 「学校に行こう。あそこで、さっきのキャスターの情報を探しておきたいからな」 「へいへい。ったく、サーヴァントをタクシー扱いするマスターがいるとは思わなかったぜ」 「サーヴァントタクシー……。そうか、これがサーヴァントの本当の力か………!」 「ちげーよ!振り落とすぞ!」 このように、時折漫才を繰り広げながら二人は一路月海原学園へと向かった。 学校付近のマンホールから地上に戻った二人は、そのまま正門から学園に入り、情報収集のために図書室へ向かった。途中で何人かの生徒とすれ違ったが、サーヴァントを連れている自分に反応しなかったところを見ると、彼らはNPCなのだろう、と悠は結論づけた。 そして、図書室に入って最初に目にしたのは、寝袋に入って仮眠中のNPCらしき少女だった。 「そっとしておこう」 仮眠中の少女をそっとしておき、悠は自身の生き字引級の知識を生かして端末から先ほどのキャスターの情報を検索する。(途中で乱入してきたもう一体のサーヴァントについてはクラスすらわからなかったので諦めた) 検索ワード「獣耳 ピンクはINRAN 奉仕系巫女狐」 検索結果0件 「ですよね」 検索ワード「狐耳 日本三大妖怪 呪術 ピンクはINRAN」 検索結果1件 「玉藻の前」 「……早かったな」 「…まあ、あんだけ特徴丸出しだったらな……」 若干やるせない気持ちになりながらも、出てきた情報を見ていく。 「出自だけじゃなく、ステータスやマスター名まで出てくるのか……」 そこから出てきた予想外の情報量の多さに驚きを覚える。 今回は自分がこのシステムの恩恵を受けられたが、他のマスターにランサーの手掛かりを与えてしまった場合、逆に自分たちの情報が露見する可能性もある。 ここからは、より慎重に行くべきかもしれない。 「やあやあマスターさん、この図書室の使い心地はどう?」 と、先ほど寝袋に入っていた少女が妙に元気よく声を掛けてきた。 「寝てなくて良いのか?」 「ちょ、それは言わないで!マスターが入ってきたのに気付かず寝ているとはこの間目 智識、一生の不覚………!」 「ハイカラな名前だね」 「あ、今ちょっとうるっときた!さっき馬鹿みたいな名前だって言われてへこんでたから……!」 「俺達の他に誰か来たのか?」 「ハッ!私としたことがつい口を……!番長、恐ろしい子……!」 番長というのが誰を指しているのかは全くわからないが、自分たち以外のマスターがここを訪れていた事は確かなようだ。 「ま、まあそれはともかく、一階の掲示板に最初の脱落者の名前が出たから、気が向いたらチェックしてね!」 それだけ言うと、少女は図書室の受付に戻っていった。 ここでの目的は果たした以上、自分たちも移動するべきだろう。 悠は無言で席を立つと、一階へ向かった。 「何だよ、もう逝っちまったのか、あいつら」 掲示板を見た時のランサーの第一声はそれだった。 掲示板に書かれたマスターの名前は天野 雪輝に我妻 由乃。 奇しくも先ほど自分たちと戦闘し、その情報を調べていた相手だった。 「もう一人がさっき乱入してきた方のマスターとは限らないんじゃないか?」 「いや、逃げる時にあの坊主が“由乃”って言ってたのが聞こえたからな。 十中八九間違いねえよ」 「そうか。………知り合い、だったのか?」 「だろうな。何せ賞品は聖杯なんだ、別段有り得ない話じゃねえだろ。 どういう理屈であんなにすぐ合流したのかは知らねえがな」 「知り合い、か……」 そう言って思い出すのは、かつての自称特別捜査隊の仲間たち。 正直に言えば、彼らには参加していてほしくない。 こんな凄惨な殺し合いに身を投じるのは、自分一人で充分だ。 「ったく、あの駄狐はキャスターにしちゃあやる方だったから、再戦を楽しみにしてたってのによ。つくづく俺も運が……!?」 ランサーの言葉が途切れると同時に、猛烈なプレッシャーを感じた。 間違いなくサーヴァントの気配。それも、確実に先ほどのキャスターの比ではないレベルの強敵だ。 正面玄関に向き直ると、そこには黒い霧を纏った騎士らしきサーヴァントがいた。 迷っている暇はない。すぐさまランサーに指示を下す。 「ランサー、校庭に出るぞ!ここじゃ俺達の方が不利だ!」 「あいよ!」 全速力で校舎の中を走り抜け、二人同時に窓ガラスを突き破り、校庭に飛び出した。 しかし、黒い騎士は既にそちらに回り込んでいた。 「■■■■■■■■!!!」 「チッ、ありゃバーサーカーだな。 おいマスター!見ての通り話しの通じるやつじゃねえ、いけるか?」 「ああ。頼む、ランサー」 ランサーが攻撃を仕掛けようとする寸前、素手で戦う不利を悟ったのかバーサーカーは剣らしきものを取り出した。 すると、バーサーカーを覆っていた霧が晴れ、何故か見えなかったステータスが見えるようになった。 「なっ……!?」 悠の口から驚愕の声が漏れる。 バーサーカーのステータスは、あらゆる点においてランサーを凌駕するものだった。 最速のサーヴァントであるランサーの証ともいえる敏捷値すら上回られているのは、完全に予想外だった。 それを証明するように、戦闘を開始したランサーはバーサーカーに対し完全に防戦を強いられていた。 「ペルソナ!」 ランサーを援護すべく、眼鏡を掛け、イザナギを呼び出す。 「“マハタルカジャ”!続けて“マハラクカジャ”!」 二種類の補助魔法をランサーにかける。すると、ランサーの筋力、耐久、魔力値と対魔力スキルが1ランクずつ上昇した。 その効果が表れたのか、戦況は少しずつランサーが持ち直してきていた。 何度目なのかも分からない剣戟の後、ランサーとバーサーカーは互いに距離を取った。 「大丈夫か、ランサー?」 「ま、とりあえずはな。あの野郎、バーサーカーだってのにとんでもねえ技量だ。 まあ、それでこそ戦い甲斐があるってもんだが」 実のところ、ランサーは悠が感じているほど焦っていたわけではない。 むしろ、目の前のバーサーカーのような自身を上回る英雄との戦いこそ、クー・フーリンが渇望していたものだった。 とはいえ、このままではジリ貧なのも事実だ。ランサーとしても、自身のマスターに敗北という結果を献上する気など微塵もない。 すると、悠が念話(先ほどランサーが教えた)である作戦を伝えた。 それを聞いたランサーは、表情を険しくして悠に確認する。 「本気か?言っとくが、あいつはさっきのキャスターとは比べものにならねえ相手だぞ。 それが分からないお前さんでもあるまい」 ランサーの問いに、悠は決然とした表情で答えた。 「大丈夫だ、勝算はある。俺を信じろ、ランサー」 「…わかった。だが、言ったからにはやってみせろよ」 そう言うと、態勢を整え、再度攻撃を仕掛けてきたバーサーカーを迎撃すべく、ランサーは己が魔槍に魔力を通す。 それは即ち、宝具の真名解放を意味していた。 その気配を悟ったバーサーカーは、狂戦士らしからぬ流麗な動作で防御態勢をとる。 「刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)!!」 ランサーの魔槍がバーサーカーに迫る。 バーサーカーは自身の宝具、“無毀なる湖光(アロンダイト)”を構え、防ごうとする。 だが無駄だろう。ランサーの“刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)”は運命に干渉し、因果を逆転させて標的の心臓を貫く。 故に、ランサーの魔槍は剣のみで防ごうとするバーサーカーの防御をすり抜け、彼の心臓に命中する――――――筈だった。 「何………!?」 ランサーから驚愕の声が漏れる。 相手の心臓に吸い込まれる筈だった“刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)”は、その効果を発揮する事なく、バーサーカーの剣によって防がれた。 本来、バーサーカーの幸運値はBランク。“刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)”の因果逆転の呪いを打ち消すには至らない数値だ。 しかし、バーサーカーの宝具“無毀なる湖光(アロンダイト)”には彼の全能力を1ランク向上させる効果がある。そして、その中には当然幸運も含まれている。 これにより、バーサーカーは一時的にAランクの幸運値を得たのである。更に、バーサーカーの持つ精霊の加護のスキルもこの結果を後押しした。 しかし、それらが全て槍の主従の思惑通りだったとしたら――― 「イザナギ!」 悠の指示とともに、バーサーカーの死角である天頂方向から太刀を構えたイザナギがバーサーカーを強襲する。 バーサーカーのステータスを見た悠は、この事態を予期し、その上でランサーに宝具の使用を命じたのだ。 そして、物理法則に囚われない三次元的な機動を可能とするペルソナの特性を生かし、予め“チャージ”を終えたイザナギをバーサーカーの真上に配置していた。 これをバーサーカーの不注意と責める事はできない。生前、湖の騎士と謳われた彼をして全身全霊で迎撃しなければならないほど、ランサーの魔槍の呪いは強力なものだったのだ。 しかし、バーサーカーも黙って見ているわけではない。剣を構え、急降下するイザナギを迎え撃とうとする。 「■■■■■■!?」 だがその瞬間、バーサーカーは自身の意思に反して崩れ落ち、片膝をついた。 確かにバーサーカーは外見上は無傷で“刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)”を防ぎ切った。 しかし、“無毀なる湖光(アロンダイト)”は本来防御用の宝具ではない。そんなもので真名解放を行なった宝具を直接受け止めた代償は決して安くはなかった。結果、バーサーカーは身体の内部に甚大なダメージを被り、イザナギを満足に迎撃できない状態に陥った。 「“ブレイブザッパー”!!」 “マハタルカジャ”と“チャージ”による攻撃力の上乗せ、更に上空からの急降下による勢いをも乗せた渾身の一撃がバーサーカーを襲う。 それでもバーサーカーは満身創痍の身体に鞭打ち、どうにか頭上に剣を構え、防御姿勢を取る。悠の予想通りに。 悠の狙いは頭部や心臓などの急所ではなく、人体において最も防御意識の薄い腕だったのだ。生前、神話において名を馳せたバーサーカーも、その法則の例外ではなかった。 「■■■■■■■■■■!!!!」 イザナギの一閃がバーサーカーの右腕をその宝具ごと肘先から断ち切る。 バーサーカーは直前に悠の狙いを察知していたが、ダメージを受けた身体では目前まで迫ったイザナギの攻撃を躱すことは叶わなかった。 マスター相手に片腕を失ったことで、僅かながら動揺を見せたバーサーカーの隙を見逃さず、返す刀でイザナギがバーサーカーの左腕の手首から先を切り飛ばす。 皮肉なことに、バーサーカーの敗因はマスターであるスザクを伴わずに戦闘を行なったことにあった。 もしもこの場に超人的な身体能力を誇るスザクがいれば、彼が悠を押さえ、イザナギによる奇襲を受ける事もなかったのだから。 両腕を失い、ほぼ全ての戦闘力を喪失したバーサーカーにとどめを刺すべく、イザナギが太刀を横一文字に振るう。だが、両腕を失って尚、バーサーカーの体術は健在だった。 バーサーカーは跳躍し、イザナギを踏み台にしてさらに高く跳び、一目散に逃走を試みる。 「逃がすか、たわけ」 だが、それを見逃すほどランサーはお人好しでも無能でもない。 一息にバーサーカーとの距離を詰めると、渾身の突きを繰り出す。 両腕を失い、身体のバランスを取りにくくなったバーサーカーは躱しきれず、右大腿にランサーの槍が突き刺さる。 それでもバーサーカーは霊体化し、ランサーを振り切ってその場を逃れた。 狂戦士が次に向かうのがどこなのか、それは彼自身しか知らない。 【深山町・月海原学園/未明】 【バーサーカー(ランスロット)@Fate Zero】 [状態:ダメージ(大)・両腕欠損(修復中)・右大腿に刺し傷(通常の回復手段では治癒不可能)・宝具“無毀なる湖光(アロンダイト)”喪失 ※バーサーカーがどこに向かうかは次の書き手さんにお任せします。 ※右大腿の傷はゲイボルクによる傷なので、通常の手段では治癒できません。 「すまねえ、マスター。折角のチャンスだったってのにドジを踏んじまった」 ランサーが悠に謝罪する。 バーサーカーを仕留め、自身のマスターにその首級を献上する絶好の機会を逸してしまった。バーサーカーの体技が予想以上のものだった、などというのは言い訳にもならない。 だというのに。 「“そんなモンは気にすんな”」 銀髪のマスターは不敵な笑みすら浮かべてランサーを励ました。 そして、その言葉が先ほどランサー自身が彼に言った言葉だった事を思い出すと、可笑しさのあまりランサーは思わず吹き出した。 まったく、自分としたことがらしくもない事を口にしてしまったものだと思う。生きていればその時の事は引きずらないと言ったのは他ならぬ自分ではないか。 「次も俺達が勝つさ。そうだろ?」 それは驕りや油断などではなく、確かな自信と、サーヴァントである自分を信頼しての事なのだろう。 「だな。また仕切り直しになっただけだ。悪いマスター、みっともねえとこを見せちまったな」 「気にするな、戦友だろ?」 鳴上 悠とランサー。この二人の間には、単なるマスターとサーヴァントの域を越えた絆が芽生えつつあった。 「つうかその剣、バーサーカーのやつだろ? 拾ったのか?」 「ああ、拾っちゃったな。………使うか?」 「いらねーよ!」 【深山町・月海原学園/未明】 【鳴上悠@ペルソナ4】 [状態]:疲労(小)・精神力消耗(小)・残令呪使用回数:3 [持ち物] 無毀なる湖光(アロンダイト)@Fate Zero ※本ロワにおけるペルソナ・イザナギは所謂事故ナギです。 イザナギのスキル構成は以下の通りです。 マハジオ:敵全体に電撃属性のダメージ(ロワ内では広範囲の電撃属性攻撃) ブレイブザッパー:敵単体にダメージ マハタルカジャ:味方全体の物理・魔法攻撃力を上昇させる(味方サーヴァントに対しては一時的に筋力・魔力値を1ランクブーストする) マハラクカジャ:味方全体の物理・魔法防御力を上昇させる(味方サーヴァントに対しては一時的に耐久値を1ランクブーストし、対魔力スキルを1ランク上昇させる。対魔力スキルを有していない場合は、一時的にEランク相当の対魔力スキルを付与する) チャージ:使用後の物理攻撃力が一度だけ2倍以上に上昇する 武道の心得:物理技使用時の消費HPを半減する 疾風吸収:疾風属性の攻撃を受けた時、その攻撃力の分だけ自身のHPを回復する 不屈の闘志:HPが0になった時、HP全快の状態で復帰する(一度発動すると12時間後まで再使用不可) ※バーサーカーの無毀なる湖光(アロンダイト)を拾いました。 持っていても魔力を吸われる事はありませんが、本来の使い手ではないので、ステータス上昇の恩恵は受けられません。 【ランサー(クー・フーリン)@Fate/ stay night】 [状態]:魔力消費(小) ---- |BACK||NEXT| |032:[[全てを呑み込んで熱を帯びていく(前編)]]|投下順|034:[[騎士(奇死)]]| |032:[[全てを呑み込んで熱を帯びていく(前編)]]|時系列順|037:[[La Danse Macabre(前編)]]| |BACK|登場キャラ|NEXT| |029:[[初期不良]]|鳴上悠&ランサー|040:[[FINAL DEAD LANCER(前編)]]| |006:[[No.6]]|バーサーカー(ランスロット)|045:[[ナイト・オブ・ナイツ]]| ----

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示:
目安箱バナー