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No.11 - (2012/10/15 (月) 18:47:52) のソース

*No.11

「美少女へいへーい! ビビってないで出ておいでー!」

とある世界の片隅で少年は叫ぶ。
美少女最高と!

「大丈夫だよ、俺は紳士だから怖くないよー! ぐへへ……何も悪いことはしないよ! ちょっと触るだけだから!」

口から漏れ出す汚らしい笑い声。面構えは欲望にまみれ、笑みはだらしなく歪んでいる。
どうみても不審者です、本当にありがとうございました。

「うはははははっ! 願いが叶うってやべーじゃん! サイコーじゃん!! 
 つーことはモテないヤロー共の世界を変えることが出来るってことじゃね!? ひゃっはーーーーーーー!」

ちなみに少年は説明をまともに聞いていない。
最初の眠りから目が覚めたばっかりという点に加えて『願いを叶える』という部分しか彼の都合のいい耳は聞き取ることが出来なかったのだ。
そして、勢いに任せて扉を開けてしまった。
運が悪い、気の毒だというよりも救いようのないバカとしか言い様がない。

「とりあえず扉をくぐれば俺に美少女ちゃんが降臨すんだろ! パーフェクト……! マーベラス……! ゴメンよ、皆……俺は一足先に大人の階段を登る!」

妄想乙。まだ出会ってもいないのに少年はまだ見ぬサーヴァントが美少女で加えて両思いと断定している。
サーヴァントが美少女だとは限らないし両思いなどまずあり得ない。
それに願いを叶える資格があるのはあくまで最後の一人。扉をくぐるだけでは何の意味が無い。
この少年やっぱりバカである。

「さあ、さあさあさあ!! この胸に飛び込んでおいで美少女ちゃん!」
「おい……」
「落ち着くんだ、俺! 心頭滅却すれば美少女もまた美し! やべえ、結局は美少女ってことじゃん!?
 はっはっは、何はともあれサイコーだな!」

少年はバカなので声をかけられていることにも気づかない。
サーヴァントにも気づかずに自分の世界に入り込んでいる。
なにせバカだから。

「さてと、ファーストコンタクトはどうするか。最初は情熱的にいっちゃうか!
 君と一緒に夜のアバンチュールを過ごしたいんだ……とか言っちゃって言っちゃって!!
 やっべ、俺超イケメンじゃね!? マジ天才じゃね!?」
「おい……! いい加減に気づけ!」

サーヴァントは少年の後頭部を思い切り叩いて無理矢理にでも気づかせる。
思わぬ衝撃に少年は前へと奇声を上げながら吹っ飛んでいく。
数秒後、少年はゆっくりと起き上がって衝撃の原因たるサーヴァントを視界に入れる。

「美少女きたああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
「…………はぁ?」
「神様ありがとうございますありがとうございます! この名無鉄之介! 猛烈に感動している!
 美少女、美少女! 俺に春が……! 美少女さいっっっこおおおおおおおおおおおおお!」
「…………なぁ、お前」

サーヴァントもとい少女は言う。 

「聖杯戦争って理解してるか?」
「へ? 何それおいしいの? 食えんの?」
「……もう一度言う。聖杯戦争って言葉に聞き覚えはあるか?」
「ないけどそれがどうかしたか!」
「あ、ああ……もう、駄目だ。私の戦いは、終わった……最悪だ……!」

少女は受け入れるには大きすぎるショックにより地面に崩れ落ちる。
あろうことか自分のマスターは聖杯戦争すら理解していない。
これではどう戦えというのだ。もう負けるしかないじゃない!

「え、え~っと……よくわかんないけど元気だしましょう!」
「出せるかぁ!! それもこれも全部お前のせいだ!」
「いきなり嫌われるなんて!? 俺は何処で選択肢を間違えた! 恋愛フラグを折った覚えはないぞ!」
「全部だ全部! 全部間違っている! ああもう、とりあえず説明してやるからそこ座れ!」



説明は省略。かくかくじかじか。



「殺し合い? マジで?」
「そうだ。お前の言う願いは最後の一人ならないと叶わない」

少年、鉄之介は理解の範疇を越えた話に開いた口がふさがらない。
自分よりも数億倍強大な敵を前に啖呵を切ったりボコボコにされたりなど普通の男子高校生では体験しないだろうこともくぐり抜けてきた。
それでも、この聖杯戦争というのは異常だった。
願いのために殺しあう。考えるだけでも冷や汗が噴きだしそうだ。

「辞退とかできない? 死ぬの超怖いし」
「もう遅い! できてたら私だってそうしてる」

拙い。これは非常に拙い。どう足掻いても絶望。勝ち目はゼロ。
サーヴァントである少女は心中で思う。

諦めよう。
自分の願い。もう一度家族に会いたい。それはもはや果たされぬ願いだと。
いじっばりな鉄槌の騎士とも常に冷静沈着な剣の騎士ともおっちょこちょいで少し気弱な湖の騎士とも寡黙ながらも優しい盾の守護獣とも。
――主である八神はやてとも。
少女、リインフォースの願いは泡沫の夢でしかなかったのだ。
そう思っていたのに。 

「しゃーねえ、やるしかねえか」

なぜこの男は力強い笑みを浮かべて立ち上がろうとするのだろうと。
リインフォースは疑問に思った。

「何見てるんだよ? もしかして俺に惚れちゃったりする? ふっ……イケメンは辛いなぁ!」
「いや、それはない」
「…………」
「なんだ、黙ることではないだろう」
「黙るって! 俺にM属性はねえんだよ! そーゆーのは誠治だけでいいの!」
「そうじゃない。お前、この戦いに参加するのか」
「いんや。俺は優勝……戦うこと以外の方法で聖杯を手に入れる。
 つーか、俺らってば本当は戦いたくもねーのに願いのために踊らされてんじゃん。
 気に食わねーんだよ、それ。おかしいっての」

ニヤケ顔はそのままに鉄之介はウインク。
リインフォースは素直に気持ち悪いといい鉄之介はその余りにも冷たい言葉にさめざめと涙を流す。
話が進まないのでリインフォースがなだめることで鉄之介は元の元気を取り戻したが。
そして脱線した話を聖杯戦争に戻す。

「女の子の更衣室をどうやって覗くかに命をかけている俺のキャラじゃねえけどな。
 戦うの嫌だし怖いし。だけど――超えちゃあいけねえラインがあるんだよ。
 つーか願いを叶える権利だって独り占めしないで皆で分けあえばいいじゃん?
 それがダメだったら別の方法考えればいいことだし」
「そんなうまくいくはずがないだろう……最後の一人にならないと願いは叶わない。それは事実だぞ」
「へっ……そんなことは知らねえ見えねえ聞こえねえ! 俺は俺のやりたいようにやるだけだ!
 聖杯はもらう! 美少女ももらう! リインフォースちゃんも俺のもの! COME ON 槍王!」

少年は立ち上がりとある力を呼び出す言の葉を叫ぶ。
『槍王』
それまでに着ていた学生服とは違って身に纏うのは軽装の鎧。
虚空から取り出した槍を片手で握り勢い良く振り回す。

「モテないヤロー共が救われる世界を作りにレッツゴー! ということで景気づけにキスを……!」
「やらんわバカ!」


【参加者No.11 名無鉄之介@私の救世主さま】
【サーヴァント:リインフォース(キャスター)@魔法少女リリカルなのは】 

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