§2 平均値の定理

(極大、極小)
f(x) が x で極大とは、x を含む区間 U が(小さくても良いから)存在して、
任意の y∈U に対して f(y)≦f(x) となることと定める。
f(x) が x で極小とは、(中略) f(y)≧f(x) となることと定める。

さらに、x≠y ならば f(x)<f(y) となるとき狭義の極大という。
狭義の極小についても同様。

命題 2.3 (極値の必要条件)
f(x) は微分可能とする。
f(x) が c で極大(小)となれば f'(c)=0
Proof.
まず、 f&#039;(c)=\lim_{h\to+0}\frac{f(c+h)-f(c)}{h}
分母は負、分子は正なので、極限の f'(c) は0以下
また、 f&#039;(c)=\lim_{h\to-0}\frac{f(c+h)-f(c)}{h}
分母は負、分子は負なので、極限の f'(c) は0以上
したがって f'(c) は0以上0以下、すなわち0。 ∥



これから3つの定理を示すが、これらは次のような関係を持っている。
定理 2.4 (ロルの定理)
↓ 応用
定理 2.5 (平均値の定理)
↓ 応用
定理 2.6 (コーシーの平均値の定理)

逆に見れば、
定理 2.4 (ロルの定理)
↑ f(a)=f(b) の場合
定理 2.5 (平均値の定理)
↑ g(x)=x の場合
定理 2.6 (コーシーの平均値の定理)
という関係でもある。

定理 2.4 (ロルの定理)
f(x) が[a, b]で連続、(a, b)で微分可能とし、
f(a)=f(b) であるとする。
このとき、ある点 c∈(a, b) が存在して、f'(c)=0となる。
Proof.
f(x) は連続なので、定理 1.24 (夏学期の大定理) より、[a, b]の点で最大値、最小値をとる。
f(x) が定数関数ならば f'(x)=0 はいたるところで成り立つ。
f(x) が定数関数でないときを考えよう。

最大値と最小値、どちらも(a, b)に存在しないと仮定すると、
最大値と最小値はどちらも x=a, b のどちらかに存在することになるが、
f(a)=f(b) より、最大値=最小値=f(a)。
つまり f(x) は定数関数となり矛盾する。

したがって、最大値と最小値の少なくとも一方は(a, b)に存在する。
それを c と書こう。
c は[a, b]の内点(端ではない)なので、最大なら極大、最小なら極小。
(命題 2.3 より、)どちらにしても f'(c)=0 が成り立つ。 ∥

定理 2.5 (平均値の定理)
f(x) が[a, b]で連続、(a, b)で微分可能とすると、
\frac{f(b)-f(a)}{b-a}=f&#039;(c)
となる c∈(a, b) が存在する。
Proof.
\phi(x)=f(x)-\frac{f(b)-f(a)}{b-a}xとおく。
つまり、φ(x) は2点(a, f(a)), (b, f(b))を通る直線と、f(x)の差である。
このとき、
\begin{align}\phi(a)&amp;=f(a)-\frac{f(b)-f(a)}{b-a}a=\frac{bf(a)-af(a)-af(b)+af(a)}{b-a}=\frac{bf(a)-af(b)}{b-a} \\ \phi(b)&amp;=f(b)-\frac{f(b)-f(a)}{b-a}b=\frac{bf(b)-af(b)-bf(b)+bf(a)}{b-a}=\frac{bf(a)-af(b)}{b-a}\end{align}
なので、φ(a)=φ(b)
よってロルの定理より、ある c∈(a, b) が存在して、φ'(c)=0
ところで φ'(x)を計算すると\phi&#039;(x)=f&#039;(x)-\frac{f(b)-f(a)}{b-a}なので、
φ'(c)=0 よりf&#039;(c)-\frac{f(b)-f(a)}{b-a}=0

定理 2.6 (コーシーの平均値の定理)
f, g が[a, b]で連続、(a, b)で微分可能とする。
さらに、g(a)≠g(b) で、f'(x) と g'(x) は同時に零にならないものとする。
このとき、
 \frac{f(b)-f(a)}{g(b)-g(a)}=\frac{f&#039;(c)}{g&#039;(c)}
となる c∈(a, b) が存在する。
Proof.
 \phi(x)=(g(b)-g(a))f(x)-(f(b)-f(a))g(x) とおくと、
 \phi(b)-\phi(a)=(g(b)-g(a))(f(b)-f(a))-(f(b)-f(a))(g(b)-g(a))=0
よって 定理 2.5 (平均値の定理) が使えて、
φ'(c)=0 なる c∈(a, b) が存在する。
左辺を計算すると、
 \underbrace{(g(b)-g(a))}_{\ne 0}f&#039;(c) = (f(b)-f(a))g&#039;(c)
g'(c)=0 だと f'(c)=0 となり題意に反する。
よって g'(c)≠0 で、 \frac{f(b)-f(a)}{g(b)-g(a)}=\frac{f&#039;(c)}{g&#039;(c)}



お待たせしました!
定理 2.6 (コーシーの平均値の定理) が得られたので次の定理が証明できます!

定理 2.7 (テイラーの定理)
この定理に限り、[a, x], (a, x)は a>x のとき[x, a], (x, a)のこととする。

f(x) が[a, x]で連続、(a, x)で n 回微分可能とする。
 f(x)=f(a)+\frac{f&#039;(a)}{1!}(x-a)+\frac{f&#039; &#039;(a)}{2!}(x-a)^2+\frac{f&#039;&#039;&#039;(a)}{3!}(x-a)^3+\cdots+\frac{f^{(n-1)}(a)}{(n-1)!}(x-a)^{n-1} \  + \  R_n
 R_n=\frac{f^{(n)}(\xi)}{n!}(x-a)^n
をみたす ξ が(a, x)に存在する。

このR_nを剰余項、(またはラグランジュの剰余項)と呼ぶ。
Proof.
φ(x)=Rn, g(x)=(x-a)n とおくことで、
Rn の係数の部分 φ(x)/g(x) について調べたい。

まず、φ(x), g(x) の導関数を計算しておく。
(横長ですいません。1本目の式の最後の項は(n-1)次です)
\renewcommand{\arraystretch}{2.0}\begin{array}{llr}
\phi(x)&=f(x)&-f(a)-\frac{f'(a)}{1!}(x-a)-\frac{f' '(a)}{2!}(x-a)^2-\frac{f'''(a)}{3!}(x-a)^3-\cdots-\frac{f^{(n-1)}(a)}{(n-1)!}(x-a)^{n-1} \\
\phi'(x)&=f'(x)&-f'(a)\quad\quad\quad-\frac{f' '(a)}{1!}(x-a)-\frac{f'''(a)}{2!}(x-a)^2-\cdots-\frac{f^{(n-2)}(a)}{(n-2)!}(x-a)^{n-2} \\
\phi' '(x)&=f' '(x)&-f' '(a)\quad\quad\quad-\frac{f'''(a)}{1!}(x-a)\ -\cdots-\frac{f^{(n-3)}(a)}{(n-3)!}(x-a)^{n-3} \\
 & \vdots & \vdots \quad\quad\quad\quad\quad\quad \\
\end{array}
\begin{align} &amp; \phi^{(n-1)}(x)=f^{(n-1)}(x) -f^{(n-1)}(a) \\ &amp; \phi^{(n)}(x)=f^{(n)}(x) \end{align}

\begin{array}{rcl} g(x) &amp;=&amp; (x-a)^n \\ g&#039;(x) &amp;=&amp; n (x-a)^{n-1} \\ g&#039;&#039;(x) &amp;=&amp; n(n-1) (x-a)^{n-2} \\ &amp;\vdots&amp; \\ g^{(n-1)}(x) &amp;=&amp; n(n-1) \cdots 2(x-a) \\ g^{(n)}(x) &amp;=&amp; n! \end{array}

必要なものを計算してまとめると、
(*)\cdots\begin{cases} \phi(a)=\phi&#039;(a)=\phi&#039;&#039;(a)=\cdots=\phi^{(n-1)}(a)=0 \\ \phi^{(n)}(x)=f^{(n)}(x) \\ g(a)=g&#039;(a)=g&#039;&#039;(a)=\cdots=g^{(n-1)}(a)=0 \\ g^{(n)}(x)=n! \end{cases}

さて、ここから 定理 2.6 (コーシーの平均値の定理) を使う。
使えるかどうかのチェックは後からやります。

 \frac{\phi(x)}{g(x)} \overset{(*)}{=} \frac{\phi(x)-\phi(a)}{g(x)-g(a)} \overset{2.6}{=} \frac{\phi&#039;(c_1)}{g&#039;(c_1)} \overset{(*)}{=} \frac{\phi&#039;(c_1)-\phi&#039;(a)}{g&#039;(c_1)-g&#039;(a)} \overset{2.6}{=}\frac{\phi&#039; &#039;(c_2)}{g&#039; &#039;(c_2)} \overset{(*)}{=} \cdots

   \overset{2.6}{=} \frac{\phi^{(n-1)}(c_{n-1})}{g^{(n-1)}(c_{n-1})} \overset{(*)}{=} \frac{\phi^{(n-1)}(c_{n-1})-\phi^{(n-1)}(a)}{g^{(n-1)}(c_{n-1})-g^{(n-1)}(a)} \overset{2.6}{=} \frac{\phi^{(n)}(c_n)}{g^{(n)}(c_n)} \overset{(*)}{=} \frac{f^{(n)}(c_n)}{n!}

定理 2.6 (コーシーの平均値の定理) をどう使ったかをチェックします。

1回目、「φ, g は[x, a]で連続、(x, a)で微分可能」である必要がありますが、
φ は f-(n-1次式) だからOK。g は明らかにOK。
さらに「g(x)≠g(a) で、φ' と g' は同時に零にならない」ですが、
g(x)≠g(a)はどうみてもOKです。
(*)より φ'(a)=g'(a)=0 ...おっと!?

……大丈夫です。コーシーの平均値の定理では φ' や g' は(x, a)の範囲でしか考えません。
この範囲では g' は零にはなりません。
φ'(a) や g'(a) は範囲外です。やったね!

ゆえに 定理 2.6 は使えて、等号が成り立つ c1∈(x, a) が存在する。

2回目、区間は(c1, a)になりました。
g'(c1)≠g'(a) (=0) であり、g'' は零とならない。OKです。
ゆえに等号が成り立つ c2∈(c1, a) が存在する。

(n-1)回目までは同様にOKです。

n 回目、g(n) は零とならないOKです。
ゆえに等号が成り立つ cn∈(cn-1, a) が存在する。

ということで、
 \frac{\phi(x)}{g(x)} = \frac{f^{(n)}(c_n)}{n!}
となる cn∈(cn-1, a)が存在する。

c1∈(x, a)
c2∈(c1, a)
c3∈(c2, a)
...
cn∈(cn-1, a)

なので、cn∈(x, a)が成り立つ。
この cn こそが ξ である!

 \frac{R_n}{g(x)}=\frac{\phi(x)}{g(x)}=\frac{f^{(n)}(c_n)}{n!}=\frac{f^{(n)}(\xi)}{n!}より、

 R_n = \frac{f^{(n)}(\xi)}{n!}(x-a)^n
                          ∥


お疲れ様でした、それではテイラー展開に進みましょう。



ここからはテーラー展開の例に進んでください。
最終更新:2013年09月01日 00:30