f(x, y) は(全)微分可能とする。
t の一変数関数 φ(t) を、
と定める。
つまり、φ(t) は xy 平面上の点(a, b)から速度(α, β)で t 進んだところの f(x, y) の値。
φ(t) は f(x, y) の断面となっている。
φ(t) を t で微分してみる。
ここで、(a+αt+αh, b+βt+βh) は (a+αt, b+βt) から (αh, βh) だけずれた点だと考えると、
f は微分可能なので、
よって
ここで、第3項は0である。
>なぜならば、
「→0」は、εの定義による。
まとめると、
(方向微分)
これは、関数 f の 点(x, y) の場所を ベクトル(α, β) の方向になぞったときの傾きである。
φ(t) をもっと微分してみる。
命題 2.17 (高階の方向微分の二項展開)
f(x, y) は十分滑らか、すなわち高階の偏導関数
が存在して連続であるとする。(m≫1, k=0, 1, ... ,m)
(つまり、偏導関数 ∂/∂x と ∂/∂y の順序が交換できる。)
このとき、
が成り立つ。
ここで、
は
の略記である。
は二項係数
mC
kのことである。
Proof.
f(x, y) が十分滑らかなとき
もまた十分滑らかな2変数関数であると分かっていれば難なく示せる。
m=k のとき成り立つと仮定する。
とおくと、
gは十分滑らかで、
が成り立つ。
さらに、
とおくと、
仮定より、
したがって、
仮定より、
となり、 m=k+1 でも成り立つ。
帰納法で示された。 ∥
φ(t)を0を中心に展開するテイラーの定理は以下のようである。
ある実数 0<θ<1 が存在して、
ここで、t=1とし、命題 2.17 を適用すると次の定理が得られる。
命題 2.18 (2変数のテーラーの公式)
を満たす実数 0<θ<1 が存在する。
極大、極小、峠ではどれも f
x=f
y=0 となる。
ではどのように区別できるだろうか。
点(a, b) で f
x=f
y=0 となるとき、点(a, b) を中心とした f(x, y) のテイラー展開を考えると、
(α, βの高次項)
つまり、αやβの係数である f
xx(a, b), f
xy(a, b), f
yy(a, b) が 点(a, b) 付近での f の局所的な構造を決定しているのである。
fxx(a, b), fxy(a, b), fyy(a, b) の値を見ただけで極大、極小、峠を区別できたらうれしい……そこで、次は2次形式を学びます。
最終更新:2013年08月29日 19:13