§ 連続関数

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§ 連続関数」(2014/02/08 (土) 15:07:03) の最新版変更点

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>連続の定義 f(x)を閉区間[a, b]で定められた実数値関数とする。 >つまり、任意のx∈[a, b]に対して実数f(x)が決められている。 >f(x)は実数なのだからもちろん有限の値である。 #blockquote(){{{定義 1.22 f(x)が[a, b]に含まれる点yで連続であるとは、 (※) xがyに限りなく近づくときf(x)もf(y)に限りなく近づくこと と定める。 f(x)が任意のy∈[a, b]で連続のとき f(x)は[a, b]で連続であるという。 }}} (※)は次のようにも表現できる。 $$\lim_{y\to x} f(y) = f(x)$$ >もちろんyは「xと異なる値をとりながら」「xの両側から」xに近づくのである。 #region(plus ε-δ論法で※を表現) (※)は次のようにも表現できる。 「任意の正の数εに対して、ある正の数δが存在して、 |x-y|<δならば|f(x)-f(y)|<εとなること」 εは|f(x)-f(y)|に課されたいわば宿題。 その宿題をyは、xに近づく努力をδ以上すればクリアできる といったところだろうか。 #endregion ---- これから証明したいことは以下の3つである。 #blockquote(){{{定理 1.23 (中間値の定理) #image2(right,IMG_20130610_184003[1].jpg,width=160,height=120) f(x)が[a, b]で連続、f(a)<0、f(b)>0 とすると、 あるc∈(a, b)においてf(c)=0となる。 }}} #blockquote(){{{定理 1.24 (最大値、最小値の存在) ''(夏学期の大定理)'' #image2(right,IMG_20130610_184157[1].jpg,width=160,height=120) [a, b]上の連続関数は、その区間内に最大値、最小値をもつ。 }}} #blockquote(){{{定理 1.25 #image2(right,IMG_20130610_184427[1].jpg,width=160,height=120) f(x)が[a, b]で連続、内点c∈(a, b)でf(c)>0とする。 このとき、cを含み、任意のx∈Uに対してf(x)>0となるような閉区間Uが存在する。 }}} 定理 1.23と定理 1.25は比較的あっさりと証明できる。 そのあとは、定理 1.24を証明するのに以下の2つを使いたいので証明し、 #blockquote(){{{定理 1.26 (ボルツァーノ=ワイヤシュトラスの定理) 任意の有界な数列a&sub(){n}は、収束する部分列a&sub(){n(k)}をもつ。 言い換えると、 全てのnでa&sub(){n}∈[a, b]のとき、a&sub(){n}の部分列a&sub(){n(k)}で $$\lim_{k \to \infty}a_{n(k)}=c \in[a, b]$$ を満たすものが存在する。 }}} #blockquote(){{{命題 1.27 有界な数の集合A(ただしA≠ø)には上限sup(A)、下限sub(A)が存在する。}}} 最終的には定理 1.24の証明を完成させる。 ---- *定理 1.23、定理 1.25 の証明 #blockquote(){{{定理 1.23 (中間値の定理) f(x)が[a, b]で連続、f(a)<0、f(b)>0 とすると、 あるc∈(a, b)においてf(c)=0となる。 }}} '''Proof.''' >f(c)=0となるcをがんばって見つければよい。 区間[a, b]に対し二分法を用いる。 条件は、 「中点での値が正なら下半分を、負なら上半分を選ぶ」 零ならもちろんその時点で題意を満たすので終了。 得られた区間をI&sub(){n}=[a&sub(){n}, b&sub(){n}]、実数をcとおくと、 lim a&sub(){n}=lim b&sub(){n}=c である。 f(x)は連続関数であったから、lim f(a&sub(){n})=lim f(b&sub(){n})=f(c) ...(1) >f(c)=0を示そう。 選んだ条件より、a&sub(){n}<0、b&sub(){n}>0 よってlim f(a&sub(){n})≦0、lim f(b&sub(){n})≧0 (1)より、f(c)=0 ∥ #blockquote(){{{定理 1.25 f(x)が[a, b]で連続、内点c∈(a, b)でf(c)>0とする。 このとき、cを含み、任意のx∈Uに対してf(x)>0となるような閉区間Uが存在する。 }}} '''Proof.''' 背理法で証明する。 >「cを含み、任意のx∈Uに対してf(x)>0となるような閉区間Uが存在する」の否定は、 >「cを含む任意の閉区間は、f(x)≦0となるxを含む」 cを含む任意の閉区間は、f(x)≦0となるxを含むと仮定する。 閉区間の列を、cを含んだまま長さが0に収束するようにとると、 どの閉区間も0以下のの値をとる点を含むという仮定から、0以下の値をとる点の列a&sub(){n}を作れる。 f(a&sub(){n})≦0、lim a&sub(){n}=c f(a&sub(){n})≦0よりlim f(a&sub(){n})≦0 ここで、c>0なのでlim f(a&sub(){n})≠0 これはf(x)が連続であることに反する。 ∥ ---- *定理 1.26 の証明 >部分列の定義 a&sub(){n}の部分列とは、a&sub(){n}からいくつかの要素を取り除いてできる数列である。 たとえば、 $$ a_2, a_3, a_5, a_7, a_{11}, \ldots $$はa&sub(){n}の部分列である。 $$ a_4, a_6, a_8, a_9, a_{10}, \ldots $$はa&sub(){n}の部分列である。 >実際「取り除く」ではなく「選び出す」でもいいのだが、 >「いくつかの要素を選び出して」と書かなかったのは、 >順番を入れ替えないということを明確にするためである。 言い換えると、 自然数の増加列n(k) ( n(k)∈N, n(1)<n(2)<n(3)<… ) に対し、a&sub(){k(n)}をa&sub(){n}の部分列という。 #blockquote(){{{定理 1.26 (ボルツァーノ=ワイヤシュトラスの定理) 任意の有界な数列a&sub(){n}は、収束する部分列a&sub(){n(k)}をもつ。 言い換えると、 全てのnでa&sub(){n}∈[a, b]のとき、a&sub(){n}の部分列a&sub(){n(k)}で $$\lim_{k \to \infty}a_{n(k)}=c \in[a, b]$$ を満たすものが存在する。 }}} #region(plus 「含む」の使い方) この先「~が属す」の意味で「~を含む」ということがある。 本当は「属す」と「含む」は使い方がまったく異なる用語なのだが、 今は区別の必要がそんなにないので、大衆が使い慣れているだろう"日本語"「含む」を使って説明する。 #endregion '''Proof.''' >a&sub(){n(k)}が収束するようなn(k)をがんばって作ればよい。 区間[a, b]に対し二分法を用いる。 条件は、 「下半分と上半分のうち、無限に多くのa&sub(){n}を含むものを1つ選ぶ」 >a&sub(){n}は有限数列なので、少なくともどちらか一方には無限個の要素が含まれるはず。 得られた区間をI&sub(){n}、実数をcとおく。 まず、n&sub(){1}=1とする。 選んだ条件よりI&sub(){k+1}には無限個のa&sub(){n}が含まれるので、n(k)より大きな番号のものも存在するはず。 そのようなものを1つ選んでその番号をn(k+1)とする。 このようにすれば a&sub(){n(k+1)} ∈ I&sub(){k+1} かつ n(k) < n(k+1) になる。 a&sub(){1}∈[a, b]=I&sub(){1}なので、a&sub(){n(k)} ∈ I&sub(){k} I&sub(){n}の端点はどちらもcに収束するので、a&sub(){n(k)}もcに収束する。 ∥ ---- *命題 1.27 の証明 >上界、下界、上に有界、下に有界、有界、上限、下限の定義 実数Mが実数の集合Aの上界であるとは、任意のx∈Aに対してx≦Mとなることとする。 実数Lが実数の集合Aの下界であるとは、任意のx∈Aに対してx≧Lとなることとする。 実数の集合Aが上に有界とは、Aに上界Mが存在することとする。 実数の集合Aが下に有界とは、Aに下界Lが存在することとする。 上にも下にも有界であるとき、単に有界という。 Aの上界のうち最小のものを上限sup(A)といい、 Aの下界のうち最大のものを下限inf(A)という。 **(例) 集合A={0, 0.9, 0.99, 0.999, ...}を考える。 >Aの最小値は0だが、最大値は存在しない。 1以上の実数はすべてAの上界である。上界の集合U(A)には最小の元1が存在するので、sup(A)=1 0以下の実数はすべてAの下界である。下界の集合L(A)には最大の元0が存在するので、inf(A)=0 >Aには上限も下限も存在した。 (例)おわり 上界が存在するとき、最小の上界は存在するのだろうか? #blockquote(){{{命題 1.27.改1 (上限性質) 空集合でなく上に有界な数の集合Aには上限sup(A)が存在する。}}} '''Proof.''' >最小の上界をがんばって見つければよい。 Aの上界のひとつをMとする。 Aの元をひとつ選び、それよりも小さい実数L'をとる。 すると、区間[L', M]上にAの元が少なくとも一つ存在する。 区間[L', M]に対し二分法を用いる。 条件は、 「上半分にAの元が存在すれば上半分を選ぶ。」 得られた区間をI&sub(){n}=[a&sub(){n}, b&sub(){n}]、実数をcとおく。 上半分を選ぶのはAの元が上半分に存在するとき。したがって、a&sub(){n}はAの上界でない。 下半分を選ぶのはAの元が上半分に存在しないとき。したがって、b&sub(){n}はAの上界である。 >またこのとき、Aの元が下半分に少なくとも一つ存在するはずなので、分割はいつまでも続けられる。 >まず、cはAの上界であることを示す。 cがAの上界でない、つまり、Aの元xでc<xをみたすものが存在すると仮定する。 n→∞でb&sub(){n}→cなので、nを十分大きくするとc<b&sub(){n}<xとできる。 これは、b&sub(){n}がAの上界であることに反する。 ゆえに、cはAの上界である。 >次に、Aの上界で、cより小さいものがないことを示す。 Aの上界yでy<cをみたすものが存在すると仮定する。 n→∞でa&sub(){n}→cなので、nを十分大きくするとy<a&sub(){n}<cとできる。 すると、yがAの上界であることから、a&sub(){n}もまたAの上界となるが、 これはa&sub(){n}がAの上界でないことに反する。 ゆえに、Aの上界でcより小さいものはない。 ∥ #region(plus 上限性質は公理?) 上限性質はワイエルシュトラスの公理とも呼ばれる。 上限性質は実数の連続性のひとつの表現であり、 「アルキメデス性と区間縮小法の原理を満たす」ことと同値である。&sup(){[1]} ここでは「アルキメデス性と~」を公理としているので、 上限性質は導出しなければ使えない「定理」である。 参考文献 [1] 実数の連続性 - Wikipedia ([[http://ja.wikipedia.org/wiki/実数の連続性>http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%9F%E6%95%B0%E3%81%AE%E9%80%A3%E7%B6%9A%E6%80%A7]]) (2013年4月16日 (火) 03:43(UTC) 版) #endregion #blockquote(){{{命題 1.27 有界な数の集合A(ただしA≠ø)には上限sup(A)、下限sub(A)が存在する。}}} '''Proof.''' 命題 1.27.改1 をAの上界と下界について適用すれば得られる。 ∥ ---- *定理 1.24の証明 #blockquote(){{{定理 1.24 (最大値、最小値の存在) ''(夏学期の大定理)'' [a, b]上の連続関数は、その区間内に最大値、最小値をもつ。 }}} '''Proof.''' f(x)を、[a, b]上で定義された連続関数とし、値域をAとする。 すなわち、$$A=\{f(x)|x\in [a, b]\}$$ >まず、Aが上に有界であることを背理法で示す。 Aが上に有界でないと仮定すると、 $$f(n)>2^n$$となるような数列a&sub(){n}∈[a, b]がとれる。 一方、定理 1.26 (ボルツァーノ=ワイヤシュトラスの定理) より、a&sub(){n}の部分列a&sub(){n(k)}で、収束するものが存在する。 すなわち、 $$\lim_{k \to \infty}a_{n(k)} = \alpha \in [a, b]$$ ここで、 $$\lim_{k \to \infty}f(a_{n(k)}) \le \lim_{k \to \infty}2^{n{(k)}} = \infty$$ より、 $$\lim_{k \to \infty}f(a_{n(k)}) = \infty \ne f(\alpha)$$(有限) これはf(x)がx=αで連続でないことを意味するので矛盾。 ゆえにAは上に有界である。 これと命題 1.27.改1 (上限性質) より、Aの上限mが存在する。 >mは上界で、mより小さい上界は存在しないから、mのすぐ下(mを含む)にはAの元が待ち構えている。 >これを数学のことばで表現すると… mは最小の上界だから、 $$m-1/2^n < f(b_n) < m$$となるような数列b&sub(){n}がとれる。 また、定理 1.26 (ボルツァーノ=ワイヤシュトラスの定理) より、b&sub(){n}の部分列b&sub(){n(k)}で、収束するものが存在する。 すなわち、 $$\lim_{k \to \infty}b_{n(k)} = c \in [a, b]$$ ここで、 $$\lim_{k \to \infty}f(b_{n(k)}) \le \lim_{k \to \infty}m-1/2^{n{(k)}} = m$$ だから、はさみうちの原理より、 $$\lim_{k \to \infty}f(b_{n(k)}) = m$$ f(x)は連続なので、$$\lim_{k \to \infty}f(b_{n(k)}) = f(c)$$ ゆえにf(c)=mが成り立ち、f(x)は点cで最大値mをとる。 最小値についても同様のことが成り立つ。 ∥ これで''夏学期の大定理''、定理 1.24 (最大値、最小値の存在) が示された。 >そういえば命題 1.27 を使わなかった気がする。まあ気のせいだろう。 ---- *次:2章 微分法 §1 導関数
>連続の定義 f(x)を閉区間[a, b]で定められた実数値関数とする。 >つまり、任意のx∈[a, b]に対して実数f(x)が決められている。 >f(x)は実数なのだからもちろん有限の値である。 #blockquote(){{{定義 1.22 f(x)が[a, b]に含まれる点yで連続であるとは、 (※) xがyに限りなく近づくときf(x)もf(y)に限りなく近づくこと と定める。 f(x)が任意のy∈[a, b]で連続のとき f(x)は[a, b]で連続であるという。 }}} (※)は次のようにも表現できる。 $$\lim_{y\to x} f(y) = f(x)$$ >もちろんyは「xと異なる値をとりながら」「xの両側から」xに近づくのである。 #region(plus ε-δ論法で※を表現) (※)は次のようにも表現できる。 「任意の正の数εに対して、ある正の数δが存在して、 |x-y|<δならば|f(x)-f(y)|<εとなること」 εは|f(x)-f(y)|に課されたいわば宿題。 その宿題をyは、xに近づく努力をδ以上すればクリアできる といったところだろうか。 #endregion ---- これから証明したいことは以下の3つである。 #blockquote(){{{定理 1.23 (中間値の定理) #image2(right,IMG_20130610_184003[1].jpg,width=160,height=120) f(x)が[a, b]で連続、f(a)<0、f(b)>0 とすると、 あるc∈(a, b)においてf(c)=0となる。 }}} #blockquote(){{{定理 1.24 (最大値、最小値の存在) ''(夏学期の大定理)'' #image2(right,IMG_20130610_184157[1].jpg,width=160,height=120) [a, b]上の連続関数は、その区間内に最大値、最小値をもつ。 }}} #blockquote(){{{定理 1.25 #image2(right,IMG_20130610_184427[1].jpg,width=160,height=120) f(x)が[a, b]で連続、内点c∈(a, b)でf(c)>0とする。 このとき、cを含み、任意のx∈Uに対してf(x)>0となるような閉区間Uが存在する。 }}} 定理 1.23と定理 1.25は比較的あっさりと証明できる。 そのあとは、定理 1.24を証明するのに以下の2つを使いたいので証明し、 #blockquote(){{{定理 1.26 (ボルツァーノ=ワイヤシュトラスの定理) 任意の有界な数列a&sub(){n}は、収束する部分列a&sub(){n(k)}をもつ。 言い換えると、 全てのnでa&sub(){n}∈[a, b]のとき、a&sub(){n}の部分列a&sub(){n(k)}で $$\lim_{k \to \infty}a_{n(k)}=c \in[a, b]$$ を満たすものが存在する。 }}} #blockquote(){{{命題 1.27 有界な数の集合A(ただしA≠ø)には上限sup(A)、下限sub(A)が存在する。}}} 最終的には定理 1.24の証明を完成させる。 ---- *定理 1.23、定理 1.25 の証明 #blockquote(){{{定理 1.23 (中間値の定理) f(x)が[a, b]で連続、f(a)<0、f(b)>0 とすると、 あるc∈(a, b)においてf(c)=0となる。 }}} '''Proof.''' >f(c)=0となるcをがんばって見つければよい。 区間[a, b]に対し二分法を用いる。 条件は、 「中点での値が正なら下半分を、負なら上半分を選ぶ」 零ならもちろんその時点で題意を満たすので終了。 得られた区間をI&sub(){n}=[a&sub(){n}, b&sub(){n}]、実数をcとおくと、 lim a&sub(){n}=lim b&sub(){n}=c である。 f(x)は連続関数であったから、lim f(a&sub(){n})=lim f(b&sub(){n})=f(c) ...(1) >f(c)=0を示そう。 選んだ条件より、a&sub(){n}<0、b&sub(){n}>0 よってlim f(a&sub(){n})≦0、lim f(b&sub(){n})≧0 (1)より、f(c)=0 ∥ #blockquote(){{{定理 1.25 f(x)が[a, b]で連続、内点c∈(a, b)でf(c)>0とする。 このとき、cを含み、任意のx∈Uに対してf(x)>0となるような閉区間Uが存在する。 }}} '''Proof.''' 背理法で証明する。 >「cを含み、任意のx∈Uに対してf(x)>0となるような閉区間Uが存在する」の否定は、 >「cを含む任意の閉区間は、f(x)≦0となるxを含む」 cを含む任意の閉区間は、f(x)≦0となるxを含むと仮定する。 閉区間の列を、cを含んだまま長さが0に収束するようにとると、 どの閉区間も0以下のの値をとる点を含むという仮定から、0以下の値をとる点の列a&sub(){n}を作れる。 f(a&sub(){n})≦0、lim a&sub(){n}=c f(a&sub(){n})≦0よりlim f(a&sub(){n})≦0 ここで、c>0なのでlim f(a&sub(){n})≠0 これはf(x)が連続であることに反する。 ∥ ---- *定理 1.26 の証明 >部分列の定義 a&sub(){n}の部分列とは、a&sub(){n}からいくつかの要素を取り除いてできる数列である。 たとえば、 $$ a_2, a_3, a_5, a_7, a_{11}, \ldots $$はa&sub(){n}の部分列である。 $$ a_4, a_6, a_8, a_9, a_{10}, \ldots $$はa&sub(){n}の部分列である。 >実際「取り除く」ではなく「選び出す」でもいいのだが、 >「いくつかの要素を選び出して」と書かなかったのは、 >順番を入れ替えないということを明確にするためである。 言い換えると、 自然数の増加列n(k) ( n(k)∈N, n(1)<n(2)<n(3)<… ) に対し、a&sub(){k(n)}をa&sub(){n}の部分列という。 #blockquote(){{{定理 1.26 (ボルツァーノ=ワイヤシュトラスの定理) 任意の有界な数列a&sub(){n}は、収束する部分列a&sub(){n(k)}をもつ。 言い換えると、 全てのnでa&sub(){n}∈[a, b]のとき、a&sub(){n}の部分列a&sub(){n(k)}で $$\lim_{k \to \infty}a_{n(k)}=c \in[a, b]$$ を満たすものが存在する。 }}} #region(plus 「含む」の使い方) この先「~が属す」の意味で「~を含む」ということがある。 本当は「属す」と「含む」は使い方がまったく異なる用語なのだが、 今は区別の必要がそんなにないので、大衆が使い慣れているだろう"日本語"「含む」を使って説明する。 #endregion '''Proof.''' >a&sub(){n(k)}が収束するようなn(k)をがんばって作ればよい。 区間[a, b]に対し二分法を用いる。 条件は、 「下半分と上半分のうち、無限に多くのa&sub(){n}を含むものを1つ選ぶ」 >a&sub(){n}は有限数列なので、少なくともどちらか一方には無限個の要素が含まれるはず。 得られた区間をI&sub(){n}、実数をcとおく。 まず、n&sub(){1}=1とする。 選んだ条件よりI&sub(){k+1}には無限個のa&sub(){n}が含まれるので、n(k)より大きな番号のものも存在するはず。 そのようなものを1つ選んでその番号をn(k+1)とする。 このようにすれば a&sub(){n(k+1)} ∈ I&sub(){k+1} かつ n(k) < n(k+1) になる。 a&sub(){1}∈[a, b]=I&sub(){1}なので、a&sub(){n(k)} ∈ I&sub(){k} I&sub(){n}の端点はどちらもcに収束するので、a&sub(){n(k)}もcに収束する。 ∥ ---- *命題 1.27 の証明 >上界、下界、上に有界、下に有界、有界、上限、下限の定義 実数Mが実数の集合Aの上界であるとは、任意のx∈Aに対してx≦Mとなることとする。 実数Lが実数の集合Aの下界であるとは、任意のx∈Aに対してx≧Lとなることとする。 実数の集合Aが上に有界とは、Aに上界Mが存在することとする。 実数の集合Aが下に有界とは、Aに下界Lが存在することとする。 上にも下にも有界であるとき、単に有界という。 Aの上界のうち最小のものを上限sup(A)といい、 Aの下界のうち最大のものを下限inf(A)という。 **(例) 集合A={0, 0.9, 0.99, 0.999, ...}を考える。 >Aの最小値は0だが、最大値は存在しない。 1以上の実数はすべてAの上界である。上界の集合U(A)には最小の元1が存在するので、sup(A)=1 0以下の実数はすべてAの下界である。下界の集合L(A)には最大の元0が存在するので、inf(A)=0 >Aには上限も下限も存在した。 (例)おわり 上界が存在するとき、最小の上界は存在するのだろうか? #blockquote(){{{命題 1.27.改1 (上限性質) 空集合でなく上に有界な数の集合Aには上限sup(A)が存在する。}}} '''Proof.''' >最小の上界をがんばって見つければよい。 Aの上界のひとつをMとする。 Aの元をひとつ選び、それよりも小さい実数L'をとる。 すると、区間[L', M]上にAの元が少なくとも一つ存在する。 区間[L', M]に対し二分法を用いる。 条件は、 「上半分にAの元が存在すれば上半分を選ぶ。」 得られた区間をI&sub(){n}=[a&sub(){n}, b&sub(){n}]、実数をcとおく。 上半分を選ぶのはAの元が上半分に存在するとき。したがって、a&sub(){n}はAの上界でない。 下半分を選ぶのはAの元が上半分に存在しないとき。したがって、b&sub(){n}はAの上界である。 >またこのとき、Aの元が下半分に少なくとも一つ存在するはずなので、分割はいつまでも続けられる。 >まず、cはAの上界であることを示す。 cがAの上界でない、つまり、Aの元xでc<xをみたすものが存在すると仮定する。 n→∞でb&sub(){n}→cなので、nを十分大きくするとc<b&sub(){n}<xとできる。 これは、b&sub(){n}がAの上界であることに反する。 ゆえに、cはAの上界である。 >次に、Aの上界で、cより小さいものがないことを示す。 Aの上界yでy<cをみたすものが存在すると仮定する。 n→∞でa&sub(){n}→cなので、nを十分大きくするとy<a&sub(){n}<cとできる。 すると、yがAの上界であることから、a&sub(){n}もまたAの上界となるが、 これはa&sub(){n}がAの上界でないことに反する。 ゆえに、Aの上界でcより小さいものはない。 ∥ #region(plus 上限性質は公理?) 上限性質はワイエルシュトラスの公理とも呼ばれる。 上限性質は実数の連続性のひとつの表現であり、 「アルキメデス性と区間縮小法の原理を満たす」ことと同値である。&sup(){[1]} ここでは「アルキメデス性と~」を公理としているので、 上限性質は導出しなければ使えない「定理」である。 参考文献 [1] 実数の連続性 - Wikipedia ([[http://ja.wikipedia.org/wiki/実数の連続性>http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%9F%E6%95%B0%E3%81%AE%E9%80%A3%E7%B6%9A%E6%80%A7]]) (2013年4月16日 (火) 03:43(UTC) 版) #endregion #blockquote(){{{命題 1.27 有界な数の集合A(ただしA≠ø)には上限sup(A)、下限sub(A)が存在する。}}} '''Proof.''' 命題 1.27.改1 をAの上界と下界について適用すれば得られる。 ∥ ---- *定理 1.24の証明 #blockquote(){{{定理 1.24 (最大値、最小値の存在) ''(夏学期の大定理)'' [a, b]上の連続関数は、その区間内に最大値、最小値をもつ。 }}} '''Proof.''' f(x)を、[a, b]上で定義された連続関数とし、値域をAとする。 すなわち、$$A=\{f(x)|x\in [a, b]\}$$ >まず、Aが上に有界であることを背理法で示す。 Aが上に有界でないと仮定すると、 $$f(a_n)>2^n$$となるような数列a&sub(){n}∈[a, b]がとれる。 一方、定理 1.26 (ボルツァーノ=ワイヤシュトラスの定理) より、a&sub(){n}の部分列a&sub(){n(k)}で、収束するものが存在する。 すなわち、 $$\lim_{k \to \infty}a_{n(k)} = \alpha \in [a, b]$$ ここで、 $$\lim_{k \to \infty}f(a_{n(k)}) \le \lim_{k \to \infty}2^{n{(k)}} = \infty$$ より、 $$\lim_{k \to \infty}f(a_{n(k)}) = \infty \ne f(\alpha)$$(有限) これはf(x)がx=αで連続でないことを意味するので矛盾。 ゆえにAは上に有界である。 これと命題 1.27.改1 (上限性質) より、Aの上限mが存在する。 >mは上界で、mより小さい上界は存在しないから、mのすぐ下(mを含む)にはAの元が待ち構えている。 >これを数学のことばで表現すると… mは最小の上界だから、 $$m-1/2^n < f(b_n) < m$$となるような数列b&sub(){n}がとれる。 また、定理 1.26 (ボルツァーノ=ワイヤシュトラスの定理) より、b&sub(){n}の部分列b&sub(){n(k)}で、収束するものが存在する。 すなわち、 $$\lim_{k \to \infty}b_{n(k)} = c \in [a, b]$$ ここで、 $$\lim_{k \to \infty}f(b_{n(k)}) \le \lim_{k \to \infty}m-1/2^{n{(k)}} = m$$ だから、はさみうちの原理より、 $$\lim_{k \to \infty}f(b_{n(k)}) = m$$ f(x)は連続なので、$$\lim_{k \to \infty}f(b_{n(k)}) = f(c)$$ ゆえにf(c)=mが成り立ち、f(x)は点cで最大値mをとる。 最小値についても同様のことが成り立つ。 ∥ これで''夏学期の大定理''、定理 1.24 (最大値、最小値の存在) が示された。 >そういえば命題 1.27 を使わなかった気がする。まあ気のせいだろう。 ---- *次:2章 微分法 §1 導関数

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