提督と妙高姉妹2-754

提督×足柄の続き

 

潮風と窓から差し込む陽光が艦娘の頬をくすぐる。
うすぼんやりと覚醒した彼女は体をよじる。
汗でしっとりと肌に張り付いた布の感触。
対照的にスースーとする下半身の解放感。
切りそろえられた黒髪の下の大きな瞳がうっすらと開かれる。
奇妙な感触がする指先を目の前に持ってくる。
何かの液体が乾いた後と微かな性臭が彼女を急速に覚醒へと押し上げる。
「はうっ、…これって……」
乱れた夜着から零れ落ちた白い双球とあられもなく晒された太腿と淡い翳り。
右足首に丸まっているのは間違いなく下着だ。
「や、やだっ!…わ、わたしったら……」
もぞもぞと布団を手繰り寄せて、妙高型4番艦羽黒は赤面した。
出撃から帰投した昨晩、偶然覗いた提督の部屋で行われた秘め事。
姉の足柄と提督との激しいセックス。
行為が終わると足早に隠密発射された酸素魚雷のごとく彼女は自室に飛び込んだ。
まんじりともせず布団にもぐりこんだが、おさまりがつかない。
耳に残る姉の嬌声と図らずも最後まで見てしまった姉の痴態が瞼の裏から離れない。
意識下で昂ぶっていた戦闘終了後の精神と相まって思わず股間に手をやってしまった。
乳房をまさぐり、幾度も陰核を擦る。
尖った桜色の乳首を弄び、蜜に指を濡らす。
いつしか脳裏に浮かんでいたのは提督の姿。
逞しい彼自身で貫かれる自分を想像した彼女は竜骨が折れんばかりに背をのけぞらす。
まだ未成熟の秘裂から大量の蜜を吐き出し上り詰めてそのまま落ちた。
昨夜の自分の痴態を思い出し赤面する。
そして、提督を”おかず”にしてしまったことも彼女の頬をより熱くした。

「-ぐろ……羽黒?」
布団の外から聞こえる声にひょこりと顔を出す。
太眉に切りそろえられた黒髪-姉、妙高のいつもの優しい笑顔があった。
「どうしたの二日酔い?」
額に当てられた手がひんやりとして気持ちいい。
「ううん、大丈夫」
「そう。出撃後のお休みだからいいけど、そろそろお昼よ」
もそもそと布団の中で身繕いをして起き上がる。
「朝ごはんは出来てるからおあがりなさい。それと1730に提督が執務室に、って」
羽黒はていとくの四文字を聞いてびくりと体を固くする。
「あ、あのー、妙高姉さん?」
「なぁに?」
「あの、その……」
姉の顔を真正面から見れず下を向いて、もじもじと布団を胸の前でこねくり回す。
「提督、何か…言ってなかった?」
真っ赤になった顔で上目使いで尋ねる。
「さあ?特に何も……何かあったの?」
「な、なにも!なんにも無いよ!」
妙に慌てふためく妹の挙動を不審がりながらも妙高は部屋を出た。

「あぅぅ…気付かれちゃったのかな……」
布団を畳みながら呟く。
「司令官さん……」
提督の顔が浮かぶ。
彼女達は兵器だ。戦うための道具に過ぎない。
だが、提督はそんな彼女達、艦娘を自分と同列の仲間として扱ってくれる。
この泊地以外でも各地の鎮守府、基地で連合艦隊の魂を受け継いだ艦娘達が謎の敵、深海棲艦と戦っている。
その中には大破した艦艇を無理矢理進撃させたり、駆逐艦を使い捨てにしている司令官もいると噂では聞いている。
だが、提督は決してそんなことはしていない。
艦隊に小破した艦娘が一隻でもあれば、たとえ勝利が目前でも必ず引き返した。
『帰ろう。帰ればまた来られるから』
那智や足柄、木曾といった積極策を唱える艦娘達が抗議の声をあげても彼は頑として流されることは無かった。
『資源は時間が立てば回復する。戦機はまた作ればいい。だが、君達は私にとって唯一無二の存在だ。代わりはいない』
そう言って、照れたように頭をかくのが常だった。
-提督、私の唯一無二の司令官さん。
羽黒の胸がほうと暖かくなる。
服を整えながら羽黒の頭の中は提督でいっぱいになる。
そうすると今度は艦本式重油専焼缶が燃え上がるように動悸が高まる。
昨晩の足柄の姿が浮かぶ。
-姉さん、あの凛々しい姉さんがあんな……。
私も司令官さんに……。
足柄を自分に置き換えたところで羽黒は頭を振った。
-私は姉さんみたいに美人じゃないし、それに……。
「もしそんな事になったらボイラーが爆発しちゃう!」
そう呟いて、ため息をつく。
そのため息が持つ意味を羽黒はまだ良く理解していなかった。

「妙高型4番艦羽黒、出頭しました」
「うん。入って」
1725に執務室に入ると秘書艦を務めている姉-那智とともに提督が出迎えた。
「あのぉ……わ、私…ご、ごめんなさい!」
「へっ?」
顔を真っ赤にして突然、平身低頭する羽黒に提督はポカンとする。
「あの、昨日はその、あの」
「ん、昨日?……ああ、一航戦なら大丈夫だよ。それに仲間を大事に思う羽黒の気持ちは間違ってないよ」
「へっ?」
今度は羽黒がポカンとした顔になる。
昨日の戦闘で不用意に突出した一航戦が敵の艦載機に襲われた。
統制砲雷撃戦突入直前にも関わらず羽黒は反転して空母の盾になろうとした。
提督はその事を気にしているのだと思っている。
「優しさは羽黒の良いところだよ。今度はもう少し視野を広げて考えればいい。私も気を配るようにするから」
デスクを立って羽黒の頭を優しく撫でる。
「あ、あの、その、…夜の……」
「ん?夜?」
羽黒は口からタービンが飛び出してしまいそうにドギマギしながらも昨夜の覗きを謝ろうとする。
「…何やら、意見の食い違いがあるようだが。それよりも、提督」
「あ、ああそうだな」
あきれ顔で間に入った那智に気付いて照れながら机に戻り、ファイルをパラパラとめくる。
「羽黒、大海令だ。我が艦隊は沖ノ島海域の攻略に乗り出す」
「えっ…あの、難攻不落の…」
沖ノ島海域は全世界の鎮守府司令を悩ませている敵の一大集結海域だ。
複雑な航路、濃密な敵の哨戒網、そしてフラッグシップと呼ばれる強大な戦艦、空母。
既に突破に成功した艦隊も無数の屍-轟沈艦娘の尊い犠牲の上にそれを成し遂げたと戦闘詳報にはある。
「いきなりの攻略は難しい。我が艦隊にはその力はまだ無い」
忌々しげに那智が机上の海図を睨む。
「そこでだ。積極的な偵察活動を行うことを私は決めた」
「小規模な機動部隊を組んで敵泊地周辺に遊弋。敵の小規模部隊にヒットアンドアウェイを繰り返す」
海図と編成表を指しながら那智が作戦概要を淡々と告げる。
「敵戦力の減殺と艦隊の練度向上、並びに航路開拓がこの作戦の意味だ」
先ほどの浮かれた気分は引っ込み羽黒の顔に緊張が走る。
「それでだ」
一際厳しい顔で提督は羽黒を見つめた。
「妙高型4隻は部隊の中核として作戦に参加してもらう」
「貴様も察しがつくと思うが、本命の敵泊地攻撃には航空戦力拡充が必須だ」
脳内に艦隊の編成を浮かべ羽黒はうなづいた。
艦隊の航空戦力は赤城、加賀、蒼龍の正規空母が主力だ。
軽空母に分類されてはいるが隼鷹、飛鷹の姉妹も航空機運用能力は高い。
だが、赤城を除く全ての空母が練度十分とは言えない。
艦隊に配属されたのがごく最近であるし、艦載機運用を支えるボーキサイトは慢性的に不足している。
「第5戦隊は一旦解隊。高雄達ともローテーションを組んで母艦航空隊を守ってやってくれ」
準同型艦の高雄型は普段は第四戦隊を編成している。
第五戦隊に比べると練度は低いが艦隊の中でも第二水雷戦隊と並んで有力な部隊だ。
「わ、わかりました…」
少し不安げに返事を返した羽黒に提督は優しい笑顔を見せる。
「姉さん達と離れて不安だろうけど、大丈夫。俺も必ず一緒に出撃するから」
頬を上気させて羽黒は元気に敬礼した。
「正式な命令は明日、全員の前で行う。下がって宜しい」
「失礼します」
妙に軽やかな足取りで執務室を出ていく妹を見て那智はやれやれといった顔をする。
「……罪なお方だ。」
「んっ?何か言ったかい」
「いいえ、何も…それより」
那智は彼女らしからぬ、茶目のある表情で提督の手を取った。
今夜は私に一杯付き合わないか?」

最終更新:2013年10月21日 01:34