如月SS 忘れ得ぬもの 15-879

如月ちゃんのSSを投下します
色々な二次創作の影響なども含めた独自設定が多数ありますがご了承ください


「あぁ~ん、如月が一番なの?まぁ当然といえば当然ね。いいのいいの、あまり褒めないで」

テストの順位が学年トップということに喜ぶ少女如月。
彼女はこの地区でも評判の天才美少女である。

「みてみて~、この輝く名前。あはっ、もっと近くで見てよ」

如月が学年トップの証である金文字で書かれた自分の名前を指差しながら言う。
だが俺はそれを複雑な感情で見つめるしかなかった。
彼女はなんて頭が良いんだろう。そんな気持ちが心を暗くする。
あまりにも輝いている彼女を見ると馬鹿な自分自身に情けない思いがしてくる。
別に俺は自分の頭が悪いということに劣等感を抱いているわけではない。
勉強以外にも多くの事をやりながら勉強でも優れた成績を残せる彼女の能力が羨ましかった。
休み時間はほとんどの場合心理学についての本を読んでいて、昼休みなどの長い休み時間だと球技をしたりするなど
落ち着いた物腰ながら時に意外と活発な才女であった。
色んな人達のお役に立ちたいらしく、休日はおろか平日もボランティア活動していることがあった。
勉強が出来るというだけで頭が良いという事にはならないだろうが、
色んな所で色んな活動して賞とかも貰いながら学業でも学年トップの成績を叩き出す……
沢山の事を高いレベルで成し遂げられるのは間違いなく頭が良いと言わざるをえないだろう。
そんな輝く彼女を見ていると何だか胸の中がもやもやとしてきた。
別に彼女の事を嫌いだとか気に入らないとか、そういうわけではない。
どうでもいい存在なら軽く流せるものである。
むしろ好きでなければどんなに楽かと思うくらい昔から大好きだった。
大好きだったがゆえに彼女に引き付けられ、そしてその輝きを見せ付けられ、力なき自分の情けなさを付き刺される。
レベルが違いすぎて彼女に釣り合わず、いつか俺から離れてしまうのではないかと思ってしまい、
ある日図書館で一種に勉強していた時、彼女は問題を解けたのに俺は問題を解くことができず、
普通なら泣くなんてことは無いはずなのに
思い詰めていて精神的に追い詰められていたためか、思わず泣き出してしまった。

「ど…どうしたの………かしら……?」

俺が突如泣き出してしまった事には如月もさすがに驚きを隠せなかったようであった。

「お兄さん……答えが空欄…」

横から無表情な女の子が見るからに答えが埋まっていない俺のノートを覗き込んで言った。
覗き込んだ少女の名前は弥生。如月の一つ下の妹であり、姉に優るとも劣らぬ天才美少女だ。
美少女だけど無表情…それも怒っているように見える上に
自分から周りに溶け込もうとすることが少なかったため周りからはいつも気を遣われていた。
如月はそんな引っ込み思案にも見える妹を引っ張っていってくれる優しいお姉さんだった。
ちなみに俺もたまに弥生を引っ張っていくことがあった。
如月と自然に会うためという意図もあったし、俺自身かわいい女の子をほったらかしにしたくない的な思いもあった。

「問題が解けなくて悔しいのね……」
「…………」

俺は何も言えなかった。否定も出来なかった。

「だったら私が勉強を教えてあげるわね。わからないことがあったら遠慮なく聞いてもいいわ」
「本当に……?」
「本当よ」
「……ありがとう……」

こんな情けない俺に優しくしてくれる如月に俺の涙は益々止まらなかった。
でも、それ以来俺の心から暗さが消えていった。
きっと如月が俺の事を悪く思っていないって感じ取れたからかもしれない。
そして夏休みに入った。部活が休みだったある日、朝から図書館で如月と一緒に数学の宿題をしていた。
一緒に宿題と言っても如月は簡単に問題を解き、余った時間で心理学の本を読んで……なくて眠っていた。
如月にしては珍しい。しかし如月の寝顔って穏やかだなあ。いつも笑みを絶やしていなかったからこれは新鮮だ。
俺はいつまでも見ていたかったが宿題をやらねばならないからと涙を飲んで勉強に集中した。
俺は中々問題が解けなかったが、如月に情けない姿は見せられないと
諦めずにわからない問題は後回しにし、教科書を見ながら問題を解いていった。

「……あー、もうこれ以上わからん!」
「ん………あら、終わったのかしら?」

如月が目を覚まし、何事もなかったかのように俺のノートを見る。

「……………………結構出来てるわね」
「そうか?答え合わせしなきゃ合ってるかどうかは…」

そう言って俺は一緒に答え合わせをした。驚いた事に如月の言った通り、解いてある問題に関してはほぼ正解していた。

間違っていた問題も如月が解説してくれた。もっとも、如月の言っている事は天才にありがちそうな概念的なものであり、
理論的ではなかったからか俺には全ては理解できなかった。

「はぁ…やっぱりわからない所はどれだけ聞いてもわからん」
「ごめんなさい、お役に立てなくて……」
「いや…気にしないでくれ…俺の頭があまり良くないだけだから…」
「そんなこと無いと思うわ。このドリルの問題、あなたは結構正解していたじゃないの!
 あなたはやろうとしないから出来ないだけでやればデキル子なんですっ!!」

如月はこう見えても結構負けず嫌いな所がある。双子座は負けず嫌い精神とは程遠いはずなのに。
あ、ちなみに如月の名前の由来は戦前の軍艦如月からであり、軍艦如月の進水日、
つまり海に初めて出た日の6月5日に生まれたから如月と名付けたらしい。
一方俺もどっちかと言うと負けず嫌いではある。ただ誰に対してもというわけではなく、
特定の誰かに対してという面が相当強い。
俺の場合、表も裏も蠍座の男だからか蠍座特有の一点集中力が非常にマズい方向に働き、
よりによって大好きな女の子に対する負けず嫌いな心が生まれていた。
俺が好きな子を相手にした時ほど負けず嫌いになる理由は多分その子より劣っていたら
その子から好かれないんじゃないかという思い込んでしまう一種の強迫観念なんじゃないかと最近思えてきた。
はっきり言って面倒臭い人間だ。他の人に対しては負けてもそこまで気にしない……
いや、気にしないというよりもどうでもよくなってしまうといった方が正しいのかもしれない。
好きな子に対しては前述のような理由や、注目してしまうことから優劣を深く考えてしまうのだろう。
もうちょっと気にしないようにすればいいのに……

「そもそもそのやろうとする気とか、そういったものがあまり出にくい時点でやっぱり頭が良いなんて言えないんじゃ…」

頭ではわかっていても心では理解しきれていない所とか治した方がいいのに
つい打ち負かしたくなり俺は続けようとするが…

ぎゅるるるるっ……

「…………」
「…………」

口論の最中急にお腹がなった。ふと気になって時計を見たらなんと既にお昼の時間は過ぎていた。

「……こんな時間まで集中できたなんてやっぱりあなたは頭は悪くないと思うわ。
 それじゃ今日はこのくらいにして、お昼に行きましょ!」

空腹だったからか、俺は如月の言葉に言い返す気も起こらず、如月に誘われるまま昼食を食べに行った。


「しかし如月はどうしてそこまで数学が得意なんだ?羨ましいよ」

オーダーして料理が来るまでの間、俺は如月に率直に疑問を聞いた。

「それはね……砲弾を撃った時の速さと相手の速さを計算したり、
 魚雷を撃った時の水の抵抗がどれ程なのかを計算して確実に相手に攻撃を当てるためよ」
「…………将来自衛隊か軍隊か何かに…」
「な~んちゃって」
「ったく、冗談はやめろよ。心理学について勉強してるってのも俺を上手くおちょくるためとか言うんじゃないだろうなあ」
「それは違うわ。だって心理学とか関係なくあなたはおちょくりやすいですし…」
「何だと!」
「…私が心理学を勉強しているのはね、相手が何を求めているか、何をすれば役に立つかってのがわかりたいからよ」

ふざけた話の後に真面目な話をするというのも心理学の応用なのだろうか?
俺は何を言おうか考えている内に頼んでいたメニューがテーブルに並べられた。
料理が出た以上手を付けないのはまずいだろう。俺達は料理を食べはじめた。

「ああ、やっぱこの季節の冷し中華はおいしいなあ」
「…………」

物凄い勢いで美味しそうに冷し中華を食べる俺の姿を見た如月は自分が食べる事も忘れて半ば呆然と俺を見ていた。

「いやあ、食った食った……」
「……とても嬉しそうだったわ……そんなに美味しかったのかしら?」
「ああ、夏はやっぱり冷し中華だよな」

自信満々に言い切った俺の姿に如月は気圧されながらも何だかとても嬉しそうだった。

「そう…よかった、お食事に誘って。さっきまでとっても暗い感じだったのにご飯を食べたら急に元気になっちゃって……
 あなたの笑顔を見てるとこっちまで元気になっちゃうわ」
「そうか……如月、さっきは言い過ぎてごめんな」

俺はさっきの口論の事について謝った。

「別に気にしていないわ。あなただって色々と不安とかあったりしてあんなこと言ったんでしょうし……
 それにお腹が空いていたのですから苛々とするのも不思議じゃないわ」
「だけど平常な時じゃなくて非常時に取る態度や行動こそがその人の本質に近いんじゃないかと思うと…」
「もう!あなたはいつも自分を責めすぎよ!そんな姿ばかりだとこっちまで落ち込んじゃうじゃない!」
「すまない……」

「…それにね、あなたは自分を過小評価し過ぎなのよ。失敗した時の事ばかり考えているし……
 それも大事だけど、まずは何事もやり出す事から始めないと。
 大丈夫よ、あなたはちゃ~んと集中力はあるんだから、
 もっと集中できるようになるときっと結果は出るわ」

力説する如月に俺はもう余計な事は考えないようにしようと思った。

「ところで今度の土曜日はお暇かしら?」
「んー…特に予定はないな」
「じゃあ船に乗ってちょっと離島にでも行かない?」
「離島か…でも俺達だけで行くのも親達に心配を…」
「大丈夫よ、日帰りだから。朝は少し早いけどね」
「そうか……じゃ、行くよ」
「ふふっ、ありがと…」
「ん……弥生ちゃん?」

ふと振り返ると弥生ちゃんが立っていた。

「あ…気にしないで…」
「弥生、あなたも今度の土曜、離島にでも遊びに行かない?」
「いえ…お二人の邪魔を…」
「みんなで一緒に行った方が楽しいと思うよ」
「……わかりました。一緒に行きます…」

弥生ちゃんは少し申し訳なさそうに答えた。
そういえばこの子は昔から相手に気を遣うタイプなんだよな。
自分は気を遣われることを気にしているのに。
しかし弥生ちゃんが気を遣ったということは俺が如月を好きだと気付いているか、
あるいは如月が俺に対して何か思うところがあると思っているのか。

「決まりね。それじゃ、早速水着を買いに行きましょ!あなたも一緒に来て」
「ああ」

如月に誘われて二つ返事で了承した俺。荷物持ちか何かだろうと思いあまり考えなかった。

「見て見て~、この輝く肌。あはっ、もっと近くで見てよ。どうかしら?」

ピンクのビキニを試着した如月はそう言って胸を強調するようなポーズで感想を求めた。

「……うん…綺麗だと思う……」

何だか恥ずかしくてあまりまともに見られない俺だった。

「褒めてくれてありがとう。好きよ…」
「ッ!?」
「な~んちゃって」
「くっ、からかわないでくれ」
「でもよかった、喜んでもらえて。Bカップの水着でかわいい水着ってあまりなかったから」

俺を恥ずかしがらせたいのか、そういったことは結構包み隠さず言っちゃう如月だった。

「あれ?弥生ちゃんは?」

如月と一緒に着替えた弥生ちゃんはどうしたんだろう。

「あ、ほらほら、弥生も隠れてないで見せてよ」

如月はカーテンに隠れていた弥生ちゃんを誘い出した。
弥生ちゃんの水着は水色を基調としたセパレートの水着だった。
チャームポイントの細いお腹も強調されていてなんとも可愛らしい。

「可愛らしいね」

俺は素直な感想を言った。弥生ちゃんもとっても可愛い。
もし如月がいなかったら俺は弥生ちゃんを一番に好きになっていたかもしれない。
もっとも、如月がいなければ弥生とここまで親しい関係になれたかどうかはわからないが。

「ありが…とう……嬉しい…です……」

恥ずかしがりながらも感謝の気持ちを述べる弥生ちゃん。顔もいつもより少し赤みがかっているような気がした。

「それじゃこれで決まりね」

そう言って如月達は着替え直し始めた。


土曜日、朝早く俺達は船に乗って離島に向かった。

「風が気持ちいいわね…」
「そうだなー。弥生ちゃんもそう思…弥生ちゃん!?」
「…ん……あ……ごめんなさい……」

弥生ちゃんは立ったまま眠っていた。なんとも危なっかしい。

「仕方ないわ、こんなに朝早かったんですもの…ふぁ~…」

あくびをする如月。そういえば目がとろんとしていたなあ。

「あ……ごめんなさい……」
「いや、気にはしてないよ。そういえばこの前図書館で勉強していた時も眠っていたよな。
 如月にしては珍しかったよ。如月はそういう所がしっかりしているからすごいことができるって思っていたからさ」
「突発的なことがあれば予定も狂っちゃうわ」
「そこら辺も含めて余裕あると思っていたけどな。まあいいや。それじゃコーヒーでも飲まないか」
「コーヒーは…ちょっと苦手……」
「それにコーヒーなんて飲んだらお花を摘みに行きたくなっちゃうわ」

俺はわかったようなわからんような、そんな顔をしながら話題を変えた。

「しかし平和だなあ。とても恐怖の大王が世界を滅ぼすとは思えないよ」
「恐怖の大王って…そんなの信じてるんだ」
「ノートルダムとかいう預言者が言っていただろ。1999年の7月に恐怖の大王が世界を滅ぼすとかさ」
「ノートルダム?」
「ああ、ラテン語でノストラダムスと言うんだ。二万年前のアトランティスの人間じゃないと思う」
「よくわからないわ……」

そりゃあ漫画の知識だからだ。それも如月が買うような漫画ではない。
如月が俺の家に来て勝手に読むとかで知ったりする可能性もあるけど。
……ん?海の上に誰か立っている?いやそんなはずはない。きっと蜃気楼だ。そうに違いな…

「え…あれは……」

“それ”をみた如月は驚いた顔だった。そしてその一瞬の後

「危ないっ!」

珍しく声を張り上げた弥生ちゃんが俺達の前に立ち、直後爆発のようなものに吹き飛ばされる。
俺は吹き飛ばされた弥生ちゃんに駆け寄った。弥生ちゃんは痛そうに呻いていた。
よく見たら弥生ちゃんは弥生の通っている学校の制服を着ていた。
だがそれはボロボロな上に金属片みたいなものも散らばっている。

「みんな、逃げて!!」

如月が声をあげて叫ぶ。

「待てよ、一体何が…?」

俺は疑問を聞こうとして、ふと如月が見つめていた方向に目をやった。
そこには異様なまでに白い肌をした女の子…
頭に得体の知れない化け物みたいな帽子を被った女の子が立っていた。彼女も服がボロボロだ。

「まさかもうこんなに…狙いは私達?」
「一体何なんだよ、あれはっ!」
「みんな逃げて!!ここは私が何とかするわ!!」

いつも穏やかな物腰だった如月にはありえないような口調。それに圧倒され、
俺は弥生ちゃんを抱え、回りのみんなと一緒にその場から逃げ出した。
船内に入る直前、如月が心配で如月の方に目をやった。
如月の服はボロボロではあったが、俺達の学校の女子の制服に着替えられていた。
それに船の一部分のような形のものを背負っていた。

「うぅ……如月……」
「無理するな!」
「でも、如月一人じゃ…」
「本当に何なんだよあれは!」
「あれは…深海棲艦……」
「しんかいせいかん?」
「如月も大破してるから…助けに…行かないと…」
「じゃあ俺が助けに…」
「ダメ!……普通の人間じゃ、深海棲艦には何も……」
「新幹線だか何だか知らないけど、このまま黙っていられるか!」

俺はお約束みたいな言い間違いをしながら弥生ちゃんの制止も無視して如月のもとへ向かった。


先程のギャグ的な言い間違いなど言えるような状況と言えないほどそこは恐ろしい現場であった。
甲板は荒れ果て、如月は服がさっきより破ている状態で倒れていた。
これは映画の撮影かなんかじゃないかと思ったが先程避難勧告が出ていたことを考えたらそれはない。
ならば夢を見ているのか?それも違う。俺は昨日早く眠りについた上に今日はコーヒーを二杯も飲んでいた。
だからこれは今現実に起きている出来事なのだ。
倒れている如月に手に持った杖でトドメを刺さんと言わんばかりに化け物みたいな女は近付いていった。
このままでは如月が!そう思った俺は先程拾っていたデッキブラシを構えながら気付かれぬよう近付いた。
相手は如月に気を取られているのかこちらに気付いてないようだった。デッキブラシに力を込めながら背後から近付く俺。
化け物女が如月にトドメを刺そうと杖を掲げたその瞬間、俺は全力でスイングした。
化け物女は驚いた声をあげながらよろめいた。腕の力だけではなく、腰や全身を使ってスイングしたのだ。
どんな奴でも背後から気付かれぬ内に攻撃されて平静ではいられないものなんだな。
俺はとにかく叩き続けた。好きな女の子を酷い目にあわされて黙っているわけにはいかなかった。
だが攻撃もむなしく俺は化け物に逆に杖で殴り飛ばされた。

「うおぁっ!」

殴り飛ばされる直前辛うじて避けたものの完全には避け切れず攻撃が俺を掠めた。
だがそれでも相当なものだった。少し触れただけなのに衝撃波か何かによって弾き飛ばされた。

「ぐわあぁぁっ!!」

俺は何とか頭は打たなかったものの左手を床に打ち付けてしまった。激しい痛みが走った。
俺は恐怖した。人間ではこの化け物に勝てないと。

「くっそーっ!」

だが俺は自らを奮い立たすかのように声をあげて必死に抵抗した。落ちていた金属片を片っ端から投げつけた。
しかし野球やってるとはいえ狙いをつけて投げたわけじゃないから上手く当たらない。

もっとも、仮に当たったとしても大したダメージは与えられないだろうが……

「くっそっ!!」
「………」

化け物は自らの無力さに叫ぶ俺にトドメを刺そうと杖を振り上げた。その瞬間だった。

ドゴォォォォン!!

化け物の背後で爆発が起きた…いや、化け物の背中が爆発した。
倒れる化け物。その背後には如月と同じ格好…
だがボロボロの如月と違って綺麗な身なりのショートカットの少女が
小さな大砲のようなものを構えながら如月を庇うかのように立っていた。

「間に合った………」
「き……君は……?」
「あなたでは如月を守れない……幸せにできない…………」
「な、何を……」
「やはり私じゃなければ…この子を…」

ショートカットの少女はこちらの質問に答えようとせず、
僅かに蔑むかのような目で俺を見ながら意味のわからぬ独り言を呟いていた。

「そうだ、如月は!?」
「…………」
「大丈夫…少し傷があるけど…
 艤装が大破して激しく見えるけど命に別状はないわ…
 今は気を失っているだけ……」
「……それならいいけど………あいつらは一体何なんだよ!!それに君も!!!」

俺はあまりにも気になる疑問を率直にぶつけるしかないのだった。

「心配かけてごめんね。もう大丈夫よ。弥生も元気になったし」

あれから一週間。俺達の…いや、世界の状況は一変した。
深海棲艦という未知なる化け物が世界各地の海で暴れ回り、海路だけでなく空路すら断絶させられていた。
深海棲艦は既存の兵器等がまったく歯が立たない存在で、
その正体は第二次世界大戦の亡者達(人だけではなく艦等のモノも含む)が世界中の悪意と融合した存在と思われている。
そしてその深海棲艦に対抗できるのは、同じく第二次世界大戦の亡者の力を借りた艦娘という存在だけだった。

「はっきり言って今でも信じがたいけど……でもあれを見てしまった以上信じなきゃいけないだろうな。
 それに世界中でも暴れているってのがメディアの報道でもわかるし。
 けど実はあの時よりずっと前から深海棲艦ってのがいたんだな」
「ごめんなさい、隠していて……でもあの時は今ほど深海棲艦は出没してなかったの。
 一般的には精々ネッシーを見たとかそういった程度の認識だったのよ」
「まったく……預言者ももうちょっと気を利かせて対策でも見つけてくれたらよかったのに……」

ノストラダムスの預言が見事的中した形で深海棲艦が現れたわけだ。
だがその預言があったために深海棲艦という存在が終末思想が蔓延っていた世界にすんなりと認められ、
それに対抗する艦娘という存在もあまり抵抗なく一緒に認められた…のだと思う。
ちなみにアンゴルモアとかいうのがいるかどうかは知りません。

「深海棲艦が確認されて、その後艦娘という唯一の対抗策が生まれたわ。
 艦娘はその名の通り女性しかなれないもの。でも女性なら多かれ少なかれ誰でもなれる可能性はあるの。
 私と弥生は10歳になった時に艦娘の素質があると教えられて艦娘になったのよ。
 それからは人知れず訓練を重ね、秘密裏に深海棲艦と戦い続けていたのよ」
「そうか……………………」

俺は二の句が接げなかった。
彼女達の、ボランティアとかそんな話を超えた言わば使命の過酷さ、
そんな中でさえ学生としての本分を最高の形で成し遂げる力。
俺は恵まれた中でただ目的もなく毎日を過ごしている自分自身に怒りにも近い感情が湧き、
その感情を発散させるかのように飲みかけのはちみつレモンを一気に飲み干した。

「しっかし如月って本当に何でも出来るよなあ。そんなとんでもない敵と戦いながら、
 勉強とか、その他色々なことだってちゃんと出来てるんだからさ」

如月は学年で一番頭が良いと言えるくらい頭脳明晰であり、多くの章を貰っていて、嫉妬したくなるくらい輝いている。
そんな彼女の名前を知らない者はいないと言いたくなるくらい有名だが、
彼女が名前を残そうとしているのは、彼女が悲劇の駆逐艦如月の魂を継ぐ者だからではないかと思えてきた。
駆逐艦如月は、かつて起こったあの忌ま忌ましい戦争で何の活躍も出来ぬまま沈んでいった。
知られていないというだけなら他にもたくさんの艦があるのだが、
他の艦は多少なりとも戦いでの活躍があるものの、駆逐艦如月にはそういった話は本当に何もない。
だからこそ、何の活躍も出来ず忘れ去られていった駆逐艦如月の無念が一人の少女に宿り、
今の時代にこの世界で名を残そうとしている……
如月が有名になろうとしているかのごとく頑張っていたのはそんな理由があるのかもしれない
……俺はそう思っている。もちろん俺の勝手な想像だから実際のところはどうなのかわからないのだが……

「まあ結構大変だったけどね」

……あれ?いつもと態度が違うぞ。いつもなら当然だと言わんばかりに
この年齢の女の子としてはある方な胸を張っているのに。

「私だって出来ないこととか、他の人に負けることだってあるわ」

負けず嫌いなのに弱音を吐くなんて…

「あなたは自分に自信が持てないみたいだけど、もっと自信を持って。だってあなたは強いんだもの」
「強い…って俺には戦う力なんてないよ。あの時だって全然役に立たなかったし…」
「違うわ。そうじゃないの……深海棲艦は強い。私だって戦っていてあまり無事ではない時もあるわ。
 そんなのには普通の人間なんかじゃ手も足も出ないわ。でもあなたは勇敢に立ち向かった。
 それは私を守りたかったからじゃないの?」
「…………」
「あはっ、あなたったらすぐに顔に出るんだから」

如月には敵いそうにないな。

「でも守りきれなかった……あの子にダメ出しされてしまうくらい……」
「あの子……睦月のことかしら?」
「ショートカットの女の子だったかな」
「そうよ睦月よ。その子がどうかしたの?」
「あの子、俺を見て守れないとかなんとか……」
「あの子はね、小さい頃に両親と妹を深海棲艦に殺されたの」
「なんだって!?」
「その頃は深海棲艦の存在は公じゃなかったけど、あの子を助けて引き取ったのが深海棲艦を研究し対抗していた人達なの。
 彼らから話を聞いた睦月は深海棲艦への復讐の為に艦娘になったって聞いたわ。私が艦娘になった年齢よりも幼い年齢でね……
 だからかしら。私の事を妹のように扱っていたわ。私が『如月』であの子が『睦月』である事と関係あるのかもね…」

睦月…って子はとにかく如月が大切な存在なんだな。
もしかしたら俺が想う以上に如月を大事に想っているのかもしれない……

「あなたと同じくらい私の事を思っているのかもしれないわね」

俺の考えを見透かされたかのような……!?如月は俺の気持ちを知っているのか!?

「睦月は戦いの中でいつも私を守ってくれた。そしてあの時のあなたから睦月と同じくらい私への想いを感じたわ。
 実はね、今までもあなたの気持ちには薄々気付いていたの。別に嫌じゃなかったし、結構楽しかったわ。
 でもあの日あの時、命をかけて私を守ろうとした。
 あの時からなんだか私の心がちょっとおかしくなっちゃったみたい。
 もしかしたら恋しちゃったのかもしれないわね……
 ……後悔はしたくないわ。だから聞いて。私と……………………セックス…………して…………」

……………………は?
思わずそう言いたくなるくらい俺は耳を疑った。

「ソレって…つまり赤ちゃんを作るってことだろう?俺達がそんな…」
「それもそうだけど、でもそれ以外に愛を確かめ合うって意味もあるわね」

俺も男の子だ。そういったことに興味がないわけではない。というか凄く興味深々である。
そういうことは気持ちいい事って聞いたから一度はやってみたいと思ったことはある。だけど…………

「心配しなくても今日は大丈夫な日だから」
「大丈夫とかそうでないとか……そういう問題なのか?」

いざそんな場面になるとその気になれなかった。
嫌という意味ではなく、何故という意味もあったし、
もしもの時の事や未知の行為への不安などもあった。

「…………私達ね、あなたとお別れしなくちゃならないのよ……」
「…………え?」

如月が目を潤ませながら言った。

「深海棲艦が現れ、その存在が公になって艦娘達は横須賀の鎮守府へ行かなくちゃいけなくなったの。
 だからあなたとはもう二度と会えなくなるかもしれない……」
「そんなこと…」
「私達艦娘は深海棲艦と戦う。戦うということは場合によっては死んじゃうかもしれないのよ。
 だから今しかないの。あなたとの思い出を作ること、
 そして、あなたの心の中に私を刻み付けることができるのは……」

如月は多分…いや間違いなく覚悟を決めていた…のかもしれない。
俺は涙を流していた如月を信じ、その想いを受け止め、そして…………

「ん………………」

如月の唇に自分の唇を重ねた。
それはとても暖かく、柔らかく、幸せなものだった。
初めてのキスはレモン味という話を聞いたことあるけど、
さっきまで飲んでいたはちみつレモンのせいか、本当にそんな味がした。


「そう…そこよ……」

俺は如月に導かれるままに彼女の股に…初めて見た女性のあそこにちんちんの先端を当てた。
皮をかぶせていたまま当てていたが、こうやってするものと言われて如月によって剥かれた。

「本当にいいのか……」
「い、いつでも…大丈夫…ですわ……」

俺にも余裕はなかったのだが如月も余裕がなさそうなのは言葉から感じ取れた。

「じゃあ…行くぞ…!」

俺はあえて興味本位の感情を強く出して迷いを捨て、如月から求めているんだと自分に心の中で言い聞かせ、
ちんちんに力を入れて進めようとした。
だが如月のそこは阻むかのように俺を受け入れようとしなかった。
如月は少し痛がっていたが、俺は余裕なんてなかったため力任せに何回も突いた。
如月の我慢混じりの小さな悲鳴が聞こえたが、気にせずに何回も繰り返した。
そのうちぬるぬるした感触とおしっこをしたくなるような感覚に似たものを感じるようになったがまだ入らなかった。
俺は一旦腰を止めた。如月が少しきょとんとした感じの顔になった気がしたが、
その間に俺は力を溜め、そして一気に突っ込んだ。

ブツッ!!!!

何かが破れるような感じと音がして、俺のちんちんは如月の中に入っていった。

「あっ!!ぅ……ぐっ……!!」

如月は大声をあげるもすぐさま我慢した。
我慢した時に力が入ったからなのかはわからないが
如月の中に入っていった俺のちんちんが強い力で締め付けられた。
その瞬間何かが解放されるような感覚がした。

びゅるっ……

音にするならそんな風な、そういう感覚が次に来た。
おしっことは違う、なんだか気持ちいい感覚が続いた。これが射精というものだろうか。
知識としてはあった俺だったが、実際にそうなったことは記憶の限りでは今までなかったのだ。
俺が気持ち良さを味わいながらも考えている内にそれは終わった。

「はあ…はあ…」
「っ…………」
「………如月、大丈夫か!?」

全てが終わって冷静になった俺は目の前で複雑な表情をしていた如月の心配をした。

「大丈夫……ですわ………」

どう考えても大丈夫という気がしなかった。

「なにもかも…初めてですもの……初めては…痛いもの…だから………」

痛いもの…………俺はちんちんを入れた場所を見た。そこからは赤い血が流れていたからだ。

「如月っ!ごめん!」

俺は謝った。如月を傷つけてしまったと思ったからだ。

「気持ち……良かった……?」

如月は気にしていないかのように俺に質問を投げかけてきた。
正直言って今の如月を見ていると自分だけが気持ち良かったとは言い難かったが、
気持ち良くなかったと嘘をついてしまえば痛みに耐えてくれた如月を傷つけてしまう。
俺は正直に気持ち良かったと答えた。

「良かった…………」

如月は涙を流しながらも笑みを浮かべた。それは嬉し泣きをしているようにも見えた。

「それじゃすぐ抜く…」
「抜かないで!」
「っ……いや、でも如月が…」
「私は大丈夫よ…それにあなただってまだやり足りないみたいだし……おちんちん、まだ硬いわよ」
「……わかったよ……」

俺は如月に言われた通りちんちんを抜かなかった。

「……動かないの?」
「動く?」

俺は如月をぎゅっと抱きしめたまま動かなかった。

「そう…抜ききらない程度に抜いて、もう一度入れて、また抜ききらない程度に抜いて……それの繰り返しよ」
「そうだったのか……」

入れるだけのものだと思い、動くものとは知らなかった。
俺は如月を傷つけないようにちんちんをゆっくりと引いた。
擦れた感覚がとても気持ち良く、思わず突き入れてしまった。

「っ……!」
「あっ、ごっ、ごめん!!」
「…いいのよ……続けて………」
「ああ……」

如月に言われるがまま腰を動かした。如月を気遣うかのように最初はゆっくりと快感を我慢しながらだったが、
如月の声が我慢しきれなかった悲鳴のようなものではなくなってきて徐々に動きを激しくした。
そして俺は再びあの感覚に襲われた。

びゅるるっ!!

精液を再び如月の中に出していた。
今度は奥深くに出すように腰を強く押し付け、如月を強く抱きしめていた。
如月も俺の体を力いっぱいぎゅっとしていた。

「あなたの気持ち良かったっていう証がこんなにたくさん…ありがとう……
 私も好きよ…………大好き………………」

お互いに何回も何回も求め合った。
最後の方は俺は気づかいなどなしに自分の快楽の為だけに腰を振っていた。
だが如月は俺を受け入れてくれていた。その顔には笑みが浮かんでいた。
そして俺への好意の言葉はいつものような冗談めいたものではなく、
声にならないような、切ない涙声が俺の心を震わせた。

「ギリギリまで一緒にいたい……」

それは俺も同じだった。本当は如月を戦いに行かせたくない。
危険な目に会ってほしくない。変わらぬ日常をずっと一緒に過ごしていたい。
だけど、彼女が戦わなければ他のみんなの変わらぬ日常が壊されてしまう。
子供のような理屈なんかで彼女を止めることなんてできやしない。
だから、今この瞬間を大事にしたかった。
全てが終わった後も如月と繋がり合っているこの瞬間を……

「今日のこと……一生忘れないわ……
 だから……あなたに、今は一つだけお願いがあるの…………」

『今は』……最後に、ではないのはまた会える日を信じていたからだろう。
そして、その言葉は俺にとって一生忘れられない言葉だった…………


―如月のこと…忘れないでね…―


《終》


+ 後書き
897 :名無しの紳士提督:2015/01/29(木) 20:16:34 ID:UtuOToxs
以上です
精神的に微妙なときに書きかけていたものを形にしました
相手を提督以外で書くのは初めてですが
子供的な考えとかの表現が上手くできたかわかりません
それでは


これが気に入ったら……\(`・ω・´)ゞビシッ!! と/

最終更新:2015年10月20日 22:41