提督×足柄15-59

生き物は、血を流す。
動くもの、動物は血を流す。
血管は毛細化し全身に張り巡らされ、全身に血を、命の水を運ぶ。
うごめくものは、皆一様に血を流す。
赤い、赤い血を。

「ガァアアアア!!」
火砲の掃射の後魚雷投射。一斉に破裂した火線と轟音と爆煙に目もくれず餓狼と評された一匹の獣は徒手空拳で深海よりの敵を屠ることを決定した。
本当に、獣のような叫びを上げて、人の形をした敵を、絞め、殴り、蹴り、艤装も使わずに貫手で敵の姿を人で無くした。
共に連れ立った姉妹たちは、突出する獣と化した姉妹の一人に動きを止めること無く、無理やり歩幅を合わせて進む。
まるで狂気に落ちた獣がまたいつかあの日のような姿で共に立てることを夢見ているかのように。
だが、だれも、声は掛けない。
だれも、獣に目配せひとつしない。
うごくものは、血を流す。
無論戦に酔う一匹の獣は赤く濡れていた。
僕は、其の姿を美しいと思った。
もう、僕も、獣も、とうの昔に壊れていた。

今思えばこの人類と人類の天敵との大戦という構図自体が狂っていたんだ。
なんたって人類の矛は人と同じ姿をした女の子ばかりなんだから。
それに、彼女たちは建造されてくる。
そう。生まれてくるわけじゃなく、建造されるんだ。
一人目の彼女が僕の些細なミスで轟沈して、二十七人目の獣が建造された時、獣は一人目の記憶を持っていた。
僕が大好きだった足柄。妙高型三番艦。血気盛んで、でも優しい人・・・
でも二十七人目の獣のこころは、壊れていたんだ。
技術部の報告によれば一人目のデータフィードバックが中途半端になされたために基礎人格が汚染されたとかなんとか言ってたが、もうその時から獣はおかしかったんだ。
常に口角は歪んでいた。何が楽しいわけでもないのに。
受け答えは普通に思えて何処か歪。二口目には「戦場」
なにより戦場や演習に出せば其の異常性はより顕著になった。
止まらない。
既に継戦能力を失った相手に対して自慢の艤装による攻撃ではなく、自らの掌で相手を破壊・・・否、屠る。
結果は当然孤立。駆逐艦は恐れ、巡洋艦は避け、戦艦は諭そうとした。
しかし、聞く耳は持ち得ない。
当たり前だ、彼女は足柄ではなく、一匹の獣なのだから。
運用中止処分もやむなしと考えていたある夜のことだった。
私室の扉を開けた時、震える影を見た。
見れば鍵は壊され、自分のベッドは荒らされていた。
そして、荒れたベッドの上で獣は泣きながら震えていた。
口元はいつもの通り引きつって歪んでいたが、身体を抱えて震えていた。

「提督・・・わたし、おかしいの・・・こわれ、ちゃってるのかな・・・」
「足柄・・・」
名前を呼んだ瞬間に獣は自らの全身を壊れそうなほどぎゅっと抱きしめた。
「ちがう、ちがうの・・・私、足柄なのに・・・ちがう私が居て、ずっと、ずっと違う私は泣き叫んでて、もう一人違う私が私の中にいて、延々と血を求めてるの・・・」
「・・・誰の」
「え・・・?」
「誰が、誰の血を、求めてるんだ」
獣は少し考えて口を開いた。
「深海棲艦の血を」
「誰が求めてる」
「・・・ひとりめの、わたし・・・?」
「それは、今のお前が望んでいることなのか・・・?」
尋ねた時とほぼ同時に獣は髪を振り乱しながら頭をぶんぶんと横に振った。
「ちがう、ちがうちがうちがうちがう!私じゃない!もう赤色に染まるのはいやあ・・・!」
震える獣を抱きしめる。
昔、一人目の足柄に抱きしめられた時と、同じ香りがした。
髪に顔を埋める。
「・・・すまない。僕が、一人目の君をそんな風にさせてしまった」
苦悩に苛まれ、眠れぬ日々を過ごしたことを、僕は忘れようとしていた。
今も一人目の足柄は、僕や、深海に対する怨嗟を叫んでいるのだろうか。
僕は、彼女を、忘れようとしていたんだ。
思えば僕は一人目の足柄が轟沈してからひどく無感動になっていた。
軍司令部の「よくあるミスだ」の一言も余計に拍車を掛けたのかもしれないが。
誰も彼もの優しい言葉も、叱咤激励も、響かない。
響く場所に穴が開いていた。
なのにどうしてだろう。
この二十七人目の獣だけは、この人が血に染まる姿だけは、絶対に見たくないのに、否応なしに美しく感じて、涙を流してしまうほどに感動してしまうのは・・・
「ねぇ、提督」
「なんだ・・・足柄・・・」
「私を、白くして」
「えっ」

虚を突かれた僕は、足柄に押し倒された。
「知ってる?人の体液って殆ど血液からできてるのよ・・・」
「なにを言って・・・」
衣服を引きちぎり、グロテスクになる前の局部にすぐさまむしゃぶりつかれる。
「な、なにを」
じゅる、じゅるり
息を荒げ、躍動する肢体が、月光に照らしだされる。
ワンテンポ遅れて僕の局部は其の本来の機能を果たすべくその肉に血液を送り込み、鎌首をもたげる。
ぺちゃ、ぺちゃ、ちゅる、ぺちゃ
獣は本能のままだらしなく舌を伸ばし、唾液すらこぼれ続ける口をひたすら肉茎に向ける。
「はぁ・・・はっ・・・はぁぅ・・・れろ・・・」
獣の吐き出す吐息は、白く蒸気のようにその凶暴性を現す。
ひたすらに僕を求める一人の獣
為す術無く、ただひたすらにその情欲に押し流される一人の壊れた人間。
「う、うあ」
「あ・・・」
肉茎は奔流をどくどくと暴発させ、白い白濁で獣の顔を白く染める。
獣はそれをひとすくい指にとって舐めると、普段とは違うとても嬉しそうな笑みを浮かべてこういった。
「ほら、こうすれば提督のお陰で私はどれだけ赤い血で汚されても提督の白い血できれいになれる」
子供が絵の具をキャンパスに重ねて塗りたくる時に白を使えば元通りになると言う思考に近い暴論。
勿論白をどれだけ塗り重ねても赤い下地はなくなるわけじゃない。
でも、其の瞳に子どもじみた冗談の色は一切混じらず、信仰に似た何かと情欲に染まる炎しか映し出されていなかった。

「足、柄・・・」
「さぁ、もっと、中まで・・・きれいに、染めて」
獣は獲物に飛びかかる時と同じように僕に覆いかぶさり、ぐしょぐしょに濡れた局部を一気に僕の肉茎に押し当てた。
ぶつり。という何かを貫く感触。すぐさま襲い来る快感。
「うぐっ・・・」
「ああぁあぁあ!」
痛みに悶えながらも、満足そうな矯正を上げる獣。
局部からは赤い血が少し漏れだして、それ以上に溢れた愛液に混じっててらてらと光っていた。
「あぁ!こんな、私の中まで赤いのが、はやく、はやく提督!中に、白いの!頂戴!!」
腰が当たる。いや、砕けそうな勢いでぶつけられる。
ばちゅん、にちゃ・・・ばちゅん
獣のストロークは引き抜く時は名残惜しげに汁を垂らし、求める時は弾けるように一気にもとめる。
「あしがらぁ・・・!」
情けない声を上げる僕の手を、獣はぎゅっと握り返す。
瞬間、僕は弾けた。
「うぁっ・・・」
「あ、あはっ・・・ていとく白いの、出たのね?じゃあ、私、いっぱい貯めこまなきゃ」
そう言うと獣は自らの身体を一気に沈み込ませ、精液をその子宮で飲み込んだ。
「ううっふぅぅぅううぅ・・・・あはぁあ・・・もっと・・・もっとぉ・・・」
びくびくと獣の足が痙攣を起こし、女陰は肉茎をねじ切らんばかりに絞めつけ、僕の上に獣の重みが、熱が、狂気がのしかかる。
嬉しそうな笑みで歪んだ獣の顔とは裏腹に言葉では、まだまだ獣は物足りていない。

「あ、あぁあああああ!」
「あ、ゃあ・・・」
もう、なんでもいい。
獣が、ほしい。
こんなんじゃ、物足りない。もっと、もっと、白く、白く染め上げてやる。
一人目の足柄、その殺意や恨みつらみの為にこの獣は居るんじゃない。
こいつは、僕のものだ。
だから、たたきつけて、刻みこんで、消えないようにする。
さっきのストロークよりももっと激しく腰を杭のように打ち込む。
「あっ!やっ・・・!あうっ・・・ひぃん!」
「僕の、僕のものだ・・足柄は、ぼくの」
陰部が赤くなっても構うことはない。どうせ僕が白く染めるんだから。
乳房にかじりつき、歯をあてて跡を刻む。
「てい、とくぅ・・・!」
獣が、僕の背中に回した手で思いっきり爪痕をつける。
多分肉まで食い込んで血が流れてるだろう。
でも、構うものか。構うことなど、何処にあるのか。
甘い声で僕を呼ぶ口に僕の口を押し当てる。
「んっ・・・んちゅっ・・・はぷっ・・・!」
唾液も、押し当てた時に少し切った口の血も、全て獣の口腔に流し込む。
ストロークはこの間も続けていた。
正直お互いにこの間に何回果てていたか分からない。
既に幾数回の痙攣を獣は起こしているし、僕ももう三回はその子宮に白濁をぶちまけている。
でも気にするものか。気になんてするものか。
だって、まだ足りないじゃないか。
全身を白く染めるまで、全然足りてない。
僕を侵食した餓狼の狂気は、僕までも獣へと変貌させた。
でも、いいじゃないか。
壊れた二人を気に留める輩なんてもう何処にも居ないんだから。
「もっとぉ・・・しろいの・・・ちょうだぁい」
「・・・あぁ・・・もっと、もっと!」
二匹になった獣は、お互いが気絶するまで其の身にお互いを刻み込み続けた。

「ただいま、提督」
獣が敵の血を浴びて帰ってきた。
「おかえり、足柄」
僕は其の帰還を本当に嬉しく思う。
「また、赤くなっちゃったから、また、白くしてね?」
「あぁ。勿論だ」
たった二人だけの獣たち。
たった二人だけでいい。
姉妹や仲間に理解なんてされなくていい。
この獣は僕のもので、僕は此の獣のものなんだから。
「そのまえに、取り敢えず血を落とそうな」
「・・・うん」
そうやって僕が手を伸ばした獣の血まみれの左手には、銀色に輝くリングがはめられていた。

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最終更新:2014年11月09日 11:20