非エロ:提督×大鯨13-470「お・し・か・け 幼妻大鯨ちゃん」

469 名前:避1-444[sage] 投稿日:2014/08/06(水) 23:59:16 ID:M6IL9BjI
大鯨のSSです。注意点は
  • ハプニングはありますが非エロ
  • 龍鳳のSSと話の繋がりはありませんが、キャラ付けや一部来歴等が共通する所があります
  • NGは『幼妻大鯨ちゃん』
です

「不束者ですが、よろしくお願いします」

俺の前に立っていた少女はそう言った。彼女の名は大鯨。艦娘である。
艦娘とは、基本的にはかつて実在した艦船の力をその身に宿した少女の総称であり、
大鯨と名乗った彼女も潜水母艦大鯨の力をその身に宿している。
大鯨という名も彼女が大鯨の力を宿し、行使できる存在であることから名乗っているのであり、彼女の本当の名前を俺は知らない。
彼女に限らず大半の艦娘は本当の名前を封印し、その身に宿した艦船の名を名乗っている。
ちなみに艦船の中には人名のような名称のものも存在するが、そのような艦船の力を持つ艦娘は本当の名前、もしくは名字が一緒ということがあるらしい。
名もなき孤児だったが艦娘として幼い頃から育てられた故にそれこそが自身の本当の名前である艦娘もいるらしく、
中には艦娘が大切にしている、あるいはしていた存在の名前と、力を行使できる艦船の名前が偶然一緒だったということもあるとか。
とりあえず彼女に関しては純粋に力を行使できる艦船の名前を名乗っているだけと思う。

「よろしくな、大鯨。早速だが君の練度を上げる為に演習をするから君には第一艦隊旗艦になってもらう。
 戦闘目的の艦でないとはいえ、ある程度は強くならないといけないからな」
「第一艦隊旗艦……それは私が秘書艦になれということでしょうか」
「ああ、他の艦隊は遠征に出かけているからな。なに、心配しなくていい。秘書艦の仕事といっても君はまだこの部隊に来たばかりだ。
 君は私の仕事を見ながら、部隊のみんなと打ち解けていけばいい」
「はい、わかりました」

いつもだったら演習以外で秘書艦に新人をつけておくことはほとんどない。
俺が新人の彼女を秘書艦にしたのも彼女と一緒にいたいからだ。彼女に一目惚れしてしまった以上仕方ないことだ。
一応公私混同と言われた時の為の大義名分もあるにはある。
潜水母艦大鯨は戦闘目的で作られた艦ではない。空母にされる目的で作られ、実際空母龍鳳に改造されたこともあった。
しかし彼女の場合設計図が必要らしく、勲章とは無縁な俺には関係のない話だった。
だから彼女にデスクワーク等を教える名目でずっと一緒にいてもそう不自然ではないだろう。
こうして、俺の新たな仕事が始まった。


大鯨が来てから一週間が過ぎた日の夕方、全ての仕事を終えたばかりの俺は机に突っ伏していた。

「あぁ………腹減った…………」

突っ伏していたのは腹が減ったからというだけではない。
というのも俺は大鯨に一目惚れしたとか言ったが、実際は生で見る…いや、写真で見る前に艦娘達が描いた似顔絵で見ていたが、
その時には何も感じなかった。なので実は一目惚れとは言えないんじゃないかと悩んでいた。
くだらん事と思われそうだが俺は時々だが普段は気にしないような事を気にする。
勿論仕事には支障がないよう最大限努力したが仕事を終えた途端緊張の糸が切れたからかどっと色んなものが押し寄せてきた。
俺はそれらから逃れるかのようにまどろみの中に落ちていった…………

「ん……時雨か………」

物音がして眠気が吹っ飛んだ俺は起き上がった視界に入ってきた少女に声をかけた。

「提督…しっかりしてください!いくら私が時雨と似ているからって間違えちゃうなんて……」

そこには時雨ではなく、遠征に出していた大鯨がいた。

「私がいない間に提督に沢山の仕事が入ったって聞いて、帰ってきてすぐに飛んで来ましたけど……」

心配そうな顔でこちらを見る大鯨。仕事が忙しかったとはいえさすがに何も食べなかったのはまずかったか。心配かけすぎたようだ。

「すまないが冷凍庫のうどんをポットのお湯で解凍して、戸棚にあるレトルトの親子丼をかけてレンジでチンしてくれ」
「ええっ!?それじゃあまり…」
「早く…」
「わ、わかりました。それじゃすぐ」

そう言って大鯨は言われた通りにした。途中で訝しがるような表情をした気がしたが、腹が減っていたから気に留めなかった。

「あー、食った食った」
「元気になられて何よりです……」

空腹のせいで調子悪かったが、満腹になったから元気になった。
しかし今度は大鯨がなんだか元気なさそうである。

「ん?どうかしたか?」
「提督……レトルトの賞味期限、少し切れていましたよ……」
「ああ、すまない。忘れていたよ。まあ美味しく食べられる期限だから少しくらいは過ぎていても…」
「あと冷凍した生うどん、消費期限が過ぎてますし」
「冷凍してあるから少しくらいなら大丈夫さ」
「……そうですか…………」

大鯨は諦めたかのようにそれ以上は何も言わなかった。だが少し不安そうにしている表情は俺が司令室を出るまでそのままだった。

大鯨が来てからちょうど一ヶ月が過ぎた。俺は普段行かない食堂に珍しく足を運んでいた。

「提督!?いつも食堂に来られていなかったのにどうして今日は……?!」
「え…ああ、そうか。君は今週は遠征していて食堂に来れなかったんだったな。実は今週七夕フェアをやってるから久々に来ているんだ。
 あと今日はハヤシライスが出るからな。小学生の頃に体験学習で行った先の一日目の昼食で出るはずが
 台風の影響でそこに行ったのが午後からになってハヤシライスを食べ損ねたんだ。
 それ以来、学食とか食堂でハヤシライスが出る日は必ずハヤシライスを頼むようにしたんだ。
 これはあの時以来変わらない癖みたいなものだな」
「駄目ですよ…食堂で出るお食事は栄養バランスがいいんですからちゃんと食堂で食べるようにしないと…」
「ハヤシライスだけじゃないぞ。トルコライスや鳥の唐揚げのマヨネーズがけ丼の時だって食堂に顔を出すし。
 あと親の知り合いが俺がラーメン好きと知って毎年ラーメン送ってくれるくらい俺は麺類好きだから麺類フェアの時は欠かさず顔を出すし、
 食べたことが無いような珍しい料理が出た時も…」
「…提督は普段どんなお食事をなされているのですか……?」
「ああ、普段はグッズがもらえるキャンペーンやってるコンビニのパン買ったり、
 スーパーのお惣菜コーナーで夜に半額の商品を買ったり、安売りのカップ麺を買ったり…」
「…提督、もう少しお体を労ってください」
「大丈夫だ、トクホの商品を買って…」
「ダメです!!」

大鯨が怒鳴る。

「……ごめんなさい、大声をあげて。でも…このままだと本当にお体にさわりますよ」

大鯨の目に薄らと涙が浮かぶ。

「……わかったよ。これからは気をつけるよ……」
「本当ですか……」
「本当だって…」

渋々納得したような感じだがまだ疑うような目をしていた。
これからはお惣菜やカップ麺を控えてちゃんとお弁当を買ったり、
なるべく食堂で食べるようにしようと誓った。

あくる日の朝、俺は葱を切っている音で目が覚めた。味噌汁の匂いがして久々に……
ってちょっと待て!俺は鎮守府近くの宿舎で一人暮らしの筈だぞ!

「誰だ!」

俺は起き上がって身構えながら声をあげた。

「あ、提督、おはようございます」

そこにいたのは大鯨だった。俺は相手が顔見知りな部下だった事に安堵したが、
同時に何故彼女がここにいるのかと思い問いただした。

「提督、昨日の事を覚えてらっしゃらないんですか?今日の七夕祭の為の会議に参加して、飲んでいたことを」

鎮守府は基本的に深海棲艦と戦う為の基地であるが、同時に深海棲艦の被害者達への慰問等も行っている。七夕祭もその一つだ。

「確か会議が終わった後飲み会に誘われて……酒は強くないから飲んだのは最小限で済ませたけど、
 体が微妙にフラついて、大鯨に頼んで一緒に俺の宿舎に帰ってきたんだったな」
「覚えてらっしゃったんですね」
「酔い潰れるまで飲んだわけじゃないからな。しかしお前は自分の宿舎に帰らなかったのか?」
「少し気になったので提督の部屋の冷蔵庫を見たりしましたけど……あれじゃ本当に健康に悪いですよ。
 野菜とかほとんどありませんし、戸棚もレトルト食品ばかりで、今作ったお味噌汁も期限が迫っていて…」
「ああ、すまなかったな、ありがとう」
「とりあえずそのままだとあれなので冷蔵庫にあった葱をきざんで入れましたよ」
「すまぬ…」
「はぁ……本当に心配になってきました………」

心配そうにする大鯨を見て心が痛んだ。俺はそれから逃げるかのように味噌汁をズズっと啜った。

「ん?これ、生姜が入っているか?」
「よくわかりましたね。あまり入れませんでしたけど…」

ほのかな生姜の味がなんだか活力を与えてくれるようだった。
ちなみに葱や生姜は元々俺が買っていたもので、素麺等に使う為だ。

「インスタントの味噌汁でさえこんなに美味しく作れるなんて、大鯨は将来きっと…料理で人を幸せに出来るだろうな」

いいお嫁さんになれそう、と言いかけ、なんとか別の言葉で言う。

「そんな…幸せにできるだなんて…」
「自信持ってもいい。俺は今生き生きとしてきたぞ」

俺の言葉に大鯨は恥ずかしそうに顔を逸らした。
そういえば誰かと朝ごはんを食べるなんていつぶりだろうか。
無論出張した時とか、朝まで会議していた時には誰かと一緒に食べたことがあるが、
こうして自分の空間で誰かと食事したことは鎮守府に来てからは記憶にない。
ふと俺は時計を見た。よかった、まだ結構時間がある。俺は大鯨に注意をされないように普段はあまりしない身支度を自分からやった。

昼過ぎ、俺が七夕フェア最終日のメニューを食べ終えた頃、食堂内に大きな笹の葉が入ってきた。
立て掛けられるや否や次々と群がる子供達。食堂はお昼時には一般開放されているのが、学生である彼等がここにいるのは社会見学を兼ねている為である。

「ほらほら、お前ら一気に群がるんじゃない。順番順番」

今日の俺の秘書艦の天龍が社会見学に来た子供達に言う。
いつもの秘書艦の大鯨はちょっとした用事があると言って秘書艦の仕事を天龍に代わってもらっていた。

「ふふっ、天龍さんったら、口は少し乱暴そうですけどみんなをちゃんと思いやって見ていますね。きっと将来いい先生になれそうですね」

そう言いながら大鯨が戻ってきた。そして天龍に謝るような口調で

「すみません秘書艦なのに仕事を天龍さんに押し付けてしまって…」

と謝った。

「気にすんなって。元々俺が子供達の引率担当だったからな。ちょっと手間が増えただけだ。それよりもお前らも願い事を書いていけよ」

気にするなと言うような感じで短冊とペンを俺達に手渡し、天龍は子供達を連れて行った。
天龍達を見送った俺達は短冊に願いを書き、笹の葉に飾り付けた。

「大鯨はどんな願いかな……『私の願いが叶いますように』……これまた随分とスーパーアバウトだなあ……」
「提督は……『この世から不幸がなくなりますように』…ですか」
「幸せを望むよりも不幸を望まない方がいいかなって思ってさ。ちょいと消極的過ぎかな?」
「いえ、この世から不幸な事や悲しいことが消えればいいって私も思っています」
「あ、提督!それに大鯨さん!一緒にいたんですね、調度よかった」

鎮守府の連絡係兼事務長の大淀が書状を持ってやって来た。

「大鯨さんよかったですね。提督もこれを見てください」

大淀が見せた書状には、大鯨が俺の所へ住み込んでお世話することを許可する、という旨の内容が書いてあった。
どうやら大鯨が午前中いなかったのは不摂生な俺の世話をする為だったらしい。
なんだかやけにあっさりと許可が下りたなと思われるだろうが、こういったことはそんなに珍しい話でもない。
宿舎は部屋こそどれも広いが原則的に一人部屋であり、複数人での入居が許される範囲は家族くらいであり、
他人、ましてや異性と同居するなどありえないだろう。
しかし例外もあり、艦娘側が詳しく事情説明をすれば艦隊司令官以上の者の警護も兼ねて男性艦隊司令官との同居が許される。
ちなみに男性司令官から警護が欲しいと言われれば男性憲兵が警護に来て、
女性司令官から言われた場合は艦娘が警護につき、艦娘側から女性司令官警護を申し出ても簡単に警護出来るらしい。
大鯨があっさりと許可を貰えたのは俺があまりにも不摂生だということがみんなに知れ渡り過ぎているからなんだろう。
鎮守府の最高責任者にまで『もう少し摂生しよう』と言われたくらいだからなあ。
まあわざわざ言ってくれたという事は俺の事を必要と思っているからであろう。
俺は階級こそあまり高くないが、かつて……去年のクリスマス頃に現れた謎の敵―
―深海棲艦とは違い、艦娘と同じくかつての艦船の力を持った存在、
しかし力を発現できる存在ではなく艦船そのものがパワーアップして現れた存在―
―それらに対し一番有効な対策を立て、どうにか撃破することが出来た事が評価されているからか、
鎮守府における俺の重要性は結構高かった。

「まあ理屈は通っているけど、わざわざそこまで…」
「提督が倒れたら少なからず皆さんの心に影響がありますし、なによりも私…」
「わかった、俺を護ってくれ」
「…………はい!」

何拍か置いて、大鯨は嬉しそうに返事をした。

こうして、俺達は一つの部屋で一緒に暮らすようになった。
それからというもの、俺は凄く幸せだった。一人暮らしだった時と比べたら自由な時間は減り、同居人である大鯨にも気を遣ったりしたが、
それは大鯨も同じ、いや、無理を言って押しかけたからこそ俺以上に気を遣っているだろうと考えたら文句なんて言えない。
下手な事を言って彼女に嫌われたら、例え世話だけはしてくれたとしてもかなり気まずい。
それに、少々俗な言い方になるが、まるで幼妻と言いたくなるようなセーラー服を着たかわいい女の子が一緒に住んでくれて、
自分の為に手料理を作ってくれるという状況は男なら誰でも憧れるだろう。
それが自分が好きな女の子なら尚更だろう。もしその行為が仮に女の子に恋愛感情がない場合での関係だったとしても。

大鯨と一緒に暮らすようになって数ヶ月。秋の健康診断の結果は前の健康診断の時よりも良くなっていた。
これも大鯨の手料理のお陰だろう。なんだか嬉しくなった俺は、仕事が終わったらどこにも寄らずに帰っていった。
大鯨と一緒だったなら結果が出てすぐに大鯨に見せ、帰りも買い物をしていっただろうが今日は大鯨は休養日である。

「ただいまー!」

俺は嬉しそうに部屋に入っていった。しかし大鯨の声が聞こえない。
いる時はいつもすぐに返事をするのに珍しいと思い、買い物かなと思ったが、ふと浴室からシャワー音が聞こえた。
なんだ、風呂掃除をしていたのか。俺が一緒にいる時はいつも俺が掃除していたが、
俺がいない時は大鯨が風呂掃除をするというのが誰が言い出すでもなく決まっていた。

「大鯨、ただい………!?」

バスルームの戸を開けた俺の目の前に凄い光景が広がっていた。
大鯨がシャワーを浴びていたのである。勿論服なんて何も着ていない。
形の良さそうな、安産型みたいな大きいお尻に一瞬釘付けになったが、すぐに視線を上に逸らした。
大鯨の横髪は濡れているにもかかわらずいつものようにまるで鯨のヒレを表しているかのごとくハネていた。
大鯨が気配に気付いたのか顔をこちらに向けた。
数瞬の沈黙の後、声をあげたのは俺だった。

「ご、ごめん!」

俺は全力で謝り、その場からすぐに離れた。

「本当にごめん、大鯨……」
「いいえ、悪いのは私の方です。掃除に疲れたからって、提督がお帰りになる前に勝手にお風呂に入ろうとした私の方が……」

こういう時はたとえ男に落ち度がなくても責められるものだが、大鯨はひたすら自分に非があると謝り続けた。
そんな彼女を見るのが辛かった俺はすぐに健康診断の結果を見せた。
この前の時と比べて凄く良くなって、これも大鯨が来てくれたお陰だとひたすら大鯨がいてよかったと讃えた。
その甲斐があったのか、大鯨はやっと落ち着いた。

その夜、俺はふと目が覚めた。色々あって疲れているはずだから眠りも深くなるはずなのに目が覚めるのは珍しい。
しばらくして俺は横に僅かな温もりを感じた。そして豆電球の明かりに照らされたものを見て俺は声をあげそうになった。
なんと大鯨が俺の隣で寝ていたのだ。
ひょっとしてマズい事をしてしまったのかと思い、布団をあげた。
非常時の為に置いておいた懐中電灯で照らして見た感じ特に変な様子はない。
俺のパジャマにも、大鯨のパジャマにも乱れた様子はなく、布団も汚れているわけではない。
俺は時計を見て何もなかったという事を確信した。俺が寝る前に最後に確認した時間からそれほど経っていなかったからだ。
俺は大鯨が何故俺の布団に入ってきたのかを考えたが、寒くなったからとか、間違えたとか、そういった事と思えなかった。
しかし考えていても仕方がない。俺は大鯨がいつも寝ている畳部屋に彼女を運んだ。布団は敷いてあったから彼女を寝かせた。
さて、これからどうするか。あんな事があって目が覚めてしまい、寝ようとしても悶々とした気持ちになってしまうだろうからと、仕事に取り掛かった。
仕事といっても軍務関係ではなくイベント関係だった。今度のイベントはハロウィンである。
ハロウィンまではまだ日程はあったが、この機会に草案くらいは作っておこうかと思った。

色々調べ事をしたり考えていて、気が付いたら朝になっていた。我ながらよくもまあここまで作業が出来たものだ。
時計を見るといつもは大鯨がもう既に起きて朝食ね準備が出来ている時間だが起きている気配さえない。俺は大鯨を起こしに行った。
大鯨はまだ眠っていた。よく見ると枕が涙で濡れているように感じる。とりあえず俺は大鯨を起こそうと声をかけた。

「大鯨、起きて!」
「…………」
「大鯨、もう六時半だよ!」
「ん……あ…………ええっ!?もうこんな時間!?」

大鯨はひどく慌てた様子で起き上がった。目を見ると泣き腫らしていたのか少し赤くなっていた。
「提督、ごめんなさい、寝過ごしてこんな時間に……」
「いや、気にしなくていい。今日は俺も休みだからな」

俺が夜更かししてハロウィンプランを練っていたのはそのためである。

「今日はゆっくり休もう。働いてばかりでも駄目だからな。とりあえず起こしてしまってごめんな」

俺はそう言って大鯨を再び寝かせた。俺は昨日の夜からずっと目が冴えているからまだしばらくは眠れそうにないだろう。
その間に俺は考えた。何故大鯨は泣いていたのだろうか。色々と思い返したところ昨日のシャワーシーンが思い当たった。
確証はないが、多分裸を見られてしまってもうお嫁に行けないと思ったのかもしれない。
だとすれば、俺は男として責任を取らなければならない。
俺は大鯨が目を覚ますまで、彼女が目を覚ました時に何と言うべきか考えた。

「提督、さっきはごめんなさ………何ですか、そんなかしこまって?」

大鯨…いや、一人の少女が驚いていた。

「君に大事な話があるんだ。昨日俺が君の裸を見てしまっただろう。
 だから君がもうお嫁に行けないって思ってしまったんじゃないかと思ってね。
 俺はそうなってしまった責任を取りたいんだ…
 いや、それも単なるきっかけに過ぎないかもしれない。
 俺は君を一目見たときから好きになっていたんだ。そして、君との日々を過ごす内に君の優しさや思いやる心に触れてますます好きになっていったんだ。
 そして君が一緒に住んでくれる事になった時は本当に嬉しかったんだ。君と過ごす幸せな日々……
 それはとてもかけがえのないものだったんだ。そしてこれからもそんな日々を過ごして行きたい。だから…俺と結婚してくれ!」

俺の一世一代の告白である。失敗するならその時はその時である。
しかし、彼女の言葉は俺の言葉への答えではなかった。

「……どうして……どうして私に何もしなかったのですか……………」
「え……」
「若い男女が一緒に暮らしていたなら何かあってもおかしくはないでしょう。
 でも、あなたは私に何もしなかった……私が布団に潜り込んだ時だって……」

昨日俺の布団に彼女が潜り込んだ理由はそれだったのか。

「私は枕を濡らし、もうこの恋が実らないものと思っていました。優しく想ってくれていたのは私の勘違いなのかなって……」
「それは違う!俺は下手なことをして君を傷付け、嫌われてしまう事を恐れていた。
 だけど、それこそが間違いだったなんて……
 俺だって男だから色々と思う事だってあった。だけど、君と過ごす何気ない日々……
 テレビを見ながら笑い合うとか、一緒に音楽を聴くとか……そんな何気ないことでも、君と一緒というだけで幸せだったんだよ」
「…………ううっ……私はなんて馬鹿だったんでしょう……あなたの気持ちを理解できなくて……」
「だったら教えてくれ。俺の言葉への答えを」
「あなたの言葉への答えは……私もあなたと一緒にいたい。私を選んでくれてありがとうございます……」

涙を流しながらだったが。徐々に笑顔になり、嬉し涙に変わっていく。そして、彼女はある言葉で俺の気持ちに応えた。
俺達が初めて出会った時に言った言葉、だが、その時とは少し意味が違う言葉で。

「不束者ですが、よろしくお願いします」


―終―

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大鯨 非エロ 提督
最終更新:2017年02月26日 11:57