小ネタ:不知火と黒潮13-82

2レスほどぺたぺたします。別に、えろくなんてないけどね
陽炎型の三人に新ボイスという事なのでちょっと放置→つついてきて書いた


不知火の場合(ちょっと嬉しそう)

 貴方はふと書面から顔を上げた。その視線に気づいて、何事でしょうかと、不知火は片方の眉をついと持ち上げた。
 すみませんね、秘書艦をやってもらっているのに、暇にしてしまって。貴方がそう詫びると、彼女はそれを否定するように首を振った。心底、心外です。そういう事を言った。
「不知火は決して、退屈などしていません」
 彼女はそう言って、数度瞬きをしてから、おもむろに軽く脚を組み替えた。抗議するように一度椅子が軋んだ。
 それでも。貴方は少し食い下がった。すると、彼女は机に肘をついて、両手の指を互い違いに合わせて、それから小さく肩をすくめた。
「……いえ、構いませんよ」
 そうですか。
 貴方は再び顔を伏せた。狭まった視界の端、ぎりぎりのところで、不知火がそっぽを向いた。その唇が僅かに動いて、ぼそりと、かすかに呟いた。
「どうぞ、ご自由に……」
 不意に貴方は酷くばつが悪くなってしまい、それからふと、頼める事があるのに気がついた。これなら、そこまで手のかかる訳でもなく、頼み事には丁度いいと思われた。
 なら一つ、お願いできますか。何気ないふうにして訊ねた。
 少しだけ身動ぎをして、彼女はあくまで平静に首肯した。けれど、返ってきたその声には、幾ばくかの喜色が浮かんでいるようだった。
 ――不知火に、何か、御用ですか。

黒潮の場合(ちょっと怒ってそう)

 ふと書き付けていた筆を止めて、貴方は考え込んだ。迫りくる一大規模攻勢(イベント)。大本営がこのところ折々で匂わせてくる例のあれを前にして、ふっつりと黙り込んだ。
 時勢は既に、備えを求めている。未だ発表はされていないが、号令がかかってからでは、明らかに遅い。戦争が誰の目にも明らかになってから準備を始める軍隊など、無能以外の何ものでもない。
 しかし、そもそもこの時期に、この大型艦建造を行うというのは、はたして如何なものだろうか。
 ゆっくりと、息をついて、眉間を強く揉んだ。
「なあなあ、司令。ちょっとええか?」
 ああ、しかし、大和型不在で臨む事こそが、慢心と称されるのではないだろうか。
 建造計画書の数字は、どこを見ても素晴らしいものだ。
 もちろん、見積もられたコストも、素晴らしかった。とてもではないが、気軽に承認できるものではなかった。
「司令はん? ……司令はーん?」
 不要の長物といえば、そうだろう。駆逐艦たちをあくせく労働に従事させずに済むし、希望する連中に好きなだけ出撃させられる。朝のおかずが一品増えたり、潜水艦に休日だって出せるかもしれなかった。
「聞こえてないんやろうかぁ……。まあ、ええか。のんびりしよー」
 要不要と、確立と、様々な事を考え合わせて、そこでようやく、貴方は彼女に意識を向ける事ができた。
 彼女の方でも、それに気がついたようだ。
 ――司令はん。なんやろかー?
 朗らかで、いつも柔和な笑顔を絶やさない黒潮の、それは冷たい声音だった。
 貴方は苦笑いをして、どうか、機嫌を治すよう頼み込むのだった。

(……陽炎? 遠征からまだ……)

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最終更新:2015年01月22日 23:01