提督×翔鶴1-926避「翔鶴と、提督の決意」


翔鶴と、提督の決意


「いよいよ明日で着任一周年だそうですね。おめでとうございます」
ある雨の日の執務室、報告書作成中。秘書艦の翔鶴がお茶を淹れつつ、笑顔で提督にそんなことを言った。

「そうか、もうそんな頃か。……我ながら良く更迭もされずに保ったものだね」
「あなたが司令官で良かったと、瑞鶴もみんなも言っていますよ。もちろん、わたしも」
苦笑しながら言った提督の言葉に、にっこりと本物の笑顔で言葉を返す翔鶴。

あの雨の日から一ヶ月ほど。思わぬ時間を二人で過ごした後、提督と翔鶴は互いに特別な関係に発展していた。
仕事の合間を縫って軽いキスを交わしたり、二人で朝まで語り合ったり。もっとも、あの日を含め一線を越えたことはない。
彼女の性格上、きっと望めば応えてはくれるのだろうが、それを本心で望んでいるかは分からない。そう考えると、提督は軽々しく踏み出せずにいた。

「それで……ですね。提督は今晩、何かご用事がお有りでしょうか?」
もじもじしながら視線を外して訊いてきた翔鶴に、いや、特に無いよ、と提督が答えた瞬間、彼女の表情がぱっと明るくなった。
こんな時の彼女はいつもの大人びた感じが隠れてしまうせいか、本当にただ可愛いな、と提督は思った。

「で、では、よろしければまた部屋に遊びに来られませんか?今夜は瑞鶴が友人のところに泊めていただく予定とのことで、あの、良いお茶が手に入ったので」
妙にわたわたしながらお誘いの言葉を述べる翔鶴。秘書艦なので当然、提督が明日が非番であることは把握済である。
そして無論、提督に断る理由はない。夜半の来訪の約束を交わして、彼らは再び報告書に向かった。


仕事が終わったフタヒトマルマル。何度か邪魔したことのある翔鶴型居室のドアを、提督がこんこん、とノックする。

「はい、どうぞ。開いていますよー」
中の声に誘われ、部屋へと足を踏み入れる。
「あ、錠は下ろしてくださいね」
暗さを妙に思いながらも言われるままに鍵を閉めると段差で靴を脱ぎ、そっと中扉の障子を開けた瞬間。

和風のスタンドライトの間接照明が、淡いオレンジに染めるほの暗い和室内。
いつもの和服とは違う、やや大きめのパジャマを来た翔鶴が、部屋の中央に敷かれた一組の布団の上にちょこんと座っていた。
予想もしなかった完全な『お膳立て』に、提督は思わず息を飲んだ。

「ここへ座って下さい、提督。お話と……」
ぽんぽん、と布団の端を叩く翔鶴。

「……そのほかいろんなことをしましょう」
緊張と勇気の伝わる、精一杯の笑顔。
……分かりきっている、互いの本心。もはや逆らえるはずも、誤魔化せるはずもなく。

「……ん」
待たせたことを、申し訳ないなと思いながら。
気持ちが先走り過ぎ無いよう、静かに唇を味わいつつ。

提督は彼女を、寝所にゆっくりと押し倒した。





いい匂いのする淡青の上衣のボタンをひとつ、ふたつと外し、胸元の上半分を露出する。
「提督……大好きです。本当です。可愛がって下さいね……」

言葉に応えるように、紅潮する頬に手を添えて、互いに積極的なディープキスを交わす。
「……ん………んん……っ……」

上衣を左右へ完全にはだけると、柔らかそうな翔鶴の双丘が淡い光のもとに晒された。
「は……はずかしい、です……あまり、見ないでください……」

恥じらいながらの上目遣い。その瞬間、理性の堰が音を立てて決壊した。

やわらかな胸元に密着し、揉みしだきながら舌で先端を愛撫する。
甘い喘ぎを聞きながら、下衣も脱がさず下着の中に上から手を無遠慮に差し込み、茂みの奥の秘所を撫で擦る。
聞き慣れたはずの彼女の声、耐えるような、堪えるような喘ぎが、更に理性を犯していく。


愛しい。愛しすぎて、……もっと完全に、自分のものにしてやりたい。翔鶴。


下衣と下着をもどかしいように奪い去り、彼女の白い脚を開かせ、既に滴るほどに潤う秘所を露わにする。
直後、勢いに任せた乱暴な挿入の試みが、爪を噛んで羞恥に耐えていた翔鶴に艶やかな悲鳴を上げさせた。

破瓜の痛みに耐えつつ、それでも濡れた瞳で愛しい人に手を差し伸べる翔鶴。
薄血と愛液の混じった分泌物に塗れながら、本能のままに抽送を続ける提督。

熱さ。柔らかさ。汗。熱い呼吸。喘ぎ声。動悸。髪。におい。震え。
たまらない心地よさ。受け入れられた達成感、否定されない安心感。

そして……同時に達する、融け合うような一体感。


提督と翔鶴の『初めて』は、勢いと幸福のうちに幕を降ろした。








「今夜は。お泊りになっていきます?」
「うん。お言葉に甘えようかな。瑞鶴は帰ってこないんだっけ。友達のところって誰かなあ?」
一線を越えても、いつも通り。いや、それまで以上にお互い好きになったような気がする。
布団のうえに二人並んで寝転がりながら、そんな簡単なことに提督がこの上ない安堵感を覚えていると。

「……大鳳と飛鷹のお誘いに。私の代わりに行ってくれたんですよ」
はっとする。今日の日付……6月19日。
……まさか……いや、間違いないだろう。

「翔鶴、そんな大事な日に……」
「私には、提督の一周年を一番最初にお祝いするのが、一番大切なことでした。みんな、笑顔で賛成してくれましたよ?」
「……それは……まいったな。関係はもうバレバレなのか」
提督がそう言って、思わず苦笑いをすると。
「お話をしましょう、提督。もっと知りたいです。貴方のことも、私が……沈んでから、今日までのことも」
目前の翔鶴が、静かな瞳と声でそう言った。

そして。

提督の知らない、戦争。翔鶴の知らない、平和。

その日二人は、夜更けまでいろいろな話をした。



「提督。マルナナマルマルです。朝御飯、何にしましょう?」

甘く優しく、それでいて芯の強さを感じさせる翔鶴の声で目が覚めた。
畳の香り、見慣れぬ天井……翔鶴型の部屋、彼女の布団の中。

「ようやくお茶を煎れられますね~」
カチャカチャという茶器の音、至高の芳香。
朝起きてすぐに彼女が手の届くところにいることに、この上ない幸せを感じる。これをずっと、できれば一生続けたい。
僕の心が、嘘偽りなくそれを感じているということは……。


そう。たとえそれが、どんなに困難なことであったとしても。

やはり、もう一線を越える努力をしよう、と提督は密かに固く心に誓った。

(終)


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最終更新:2015年12月06日 22:27