提督×大鳳12-283

「だぁうぅ~・・・」
妙な声が腹から出る。多分、俺の腹筋の悲鳴だ、と提督は思った。


鎮守府付属の教練場。彼の身体は青空の下に仰向けに寝転がったまま、起きることさえままならない。
「何情けない声上げてるんですか」
そんな彼を両手を腰に当てて見下ろすのは自他共に認める筋トレ大好き装甲空母、大鳳。inジャージ。

「いや・・・あんまり肉弾戦の得意な提督は・・いないと・・・思うんだよね・・・」
「だったらもう終われば良いじゃないですか。やり過ぎは毒ですよ」

息も絶え絶えな提督に、困った顔で正論を説く大鳳。
ランニング、柔軟、腕立て、背筋、そして腹筋。初夏の早朝、二人だけの朝練を始めてもう一ヶ月になる。
朝寝が大好きなこの怠惰な提督にしてこんなにも続いているのは、小柄で可愛いこの艦娘と一緒だから、とかそんな不純な理由からではない。
だからといって心身ともに鍛え上げ、軍人としての自己を見直したい、とかそんな清純な理由でもない。

「・・・そんなにも魅力的なご褒美ですか。あれが」
「無論」
そうだった。俺には休んでいる暇などない。
そう思い返した提督は多少息をついたところで、既に限界を二周くらい超えた腹筋の抗議を無視して再び上半身を持ち上げ始める。
呆れ顔の大鳳は、なぜだか少し頬を染めていた。

「297・・・298・・・299・・・」

あと一回。死んでもいい、持ち上がれ俺の身体よ!

「・・・・・・300!!やった!!見たな大鳳!!アイメイドイット!!!」
「・・・はいはい。お疲れさまでした。見てましたよ、約束も守りますからそんな騒がないで」
両手を上げたままゆっくりと背後に倒れた提督に、軽くため息をついて手を貸す大鳳。今日あたりの目標到達を予想してくれていたのだろう、呆れたようなその表情の奥には--
がんばったね、という不肖の弟子を温かく讃える気持ちがあった。


腹筋300回到達で、自分と一緒に朝のシャワーを浴びる権利。
この怠惰な男の腹筋を割ったのは、半分冗談で口にしたそのニンジンだった。





「ん・・・くすぐったい・・・」

ドック施設付属の、朝のシャワー室。本来は一人用の、間仕切りで仕切られたその中に、男女二人の姿があった。
心地よいお湯を弱めに出したまま、白い泡に包まれた大鳳の小柄な裸体を背後から弄ぶのは、同じく裸の提督の手。

「じゃ。背中を流させてもらおうかな」
「はぁ・・・提督・・・ちょっとだけ、ですからね・・・?」

提督の手が、立ったままの小さな白い背中を流す。
その手はやがて背中から白い首筋へ移動してこしこしと洗い、そのまま正面、胸元へゆっくりと下りる。ふぅ、と熱いため息が彼女の唇から漏れた。
抵抗が無いのを確かめるかのように小さな胸元を軽くなぞった手は一旦引き、今度は彼女の両方の脇腹を撫ぜ、脇の下をこする。

「もう・・・背中だけって・・・」
困ったような表情を浮かべた大鳳は、それでも抵抗することなく両腕を上げたまま。
やがてぬるぬるの両手は白い柔肌を滑りながら前へと移動し、少々未発達な少女の胸を下から直接揉み上げた。

「・・・っ、提督、そこは・・・」
「実は前から服の間に、こうやって手を突っ込んでみたかった。まさかハダカに直接触れる日が来るとはね」
「・・・っ・・・へ、変態、ですか・・・っ!あ・・・っ!」

色づいた先端部を指が滑った瞬間、ぴくん、と大鳳の身体が跳ねた。敏感な先端は、若い男の手が全身を滑る感覚に既に強く自己主張を始めている。
その反応に笑みを浮かべた提督が、手のひらで大鳳のこりこりの胸先に触れはじめた。
「はぁぁぁっ、・・・っく、・・・ちょ・・・っ!もう・・・そこばっかり・・・触りすぎ・・・っ!」
「洗ってるんだよ。君だって汗をたくさんかいたろ?」
「・・・もう・・・」

見た目は小柄だが大鳳とて子供ではない。
ご褒美という形で、一緒にシャワーを浴びるという以上、興醒めにならない程度のサービスは覚悟の上だ。が--

「まったく・・・こんな身体のどこが良いんですか。女らしさなんて全然無くて」
「触れるのは初めてだけど。好きだよ、大鳳の身体」
「--!」
続いて下腿部を洗いながらの、自分のコンプレックスを吹っ飛ばすようなまっすぐな台詞に、思わず顔が紅くなる。

--心まで惹きにくるとは、思っていなかった。

「女の子らしい柔らかな肌があって、その下にはしっかりと鍛えた四肢がある。真面目な大鳳だけが維持できる、最高の身体じゃないか。とっても健康的で、たまらなく魅力的だ」
ふにふにとお湯に濡れた二の腕やふとももの感触を楽しみながら、提督が囁く。
「そ、それは・・・褒めすぎ、ですよ・・・」
「いやいや。本当に、最高に好きだよ。俺の装甲空母さん」

互いに裸のまま、背中からぎゅっと抱き締められ頭頂部にキスをされた大鳳の気持ちが、大きく揺らぐ。
 ・・・違う違う。ちょっとえっちな悪ふざけをしてるだけで、気持ちで繋がろうなんて気は向こうには・・・

「可愛いこの胸も、このお尻も。艦隊の誰よりも魅力的でさ」
「嘘・・・!・・・はぁっ・・・やめて・・・下さい・・・!」
耳に吐息と共に感じる男の声が心を震わせ、泡のついた大きな手が胸乳や尻肉を滑るたび、ぞくぞくとした何かが背中を駆け上がり大鳳は小柄な身体を悶えさせた。

--いける。いまなら、魚雷一発で撃沈いける。

何らかの確信を得た提督の手が、至高の弾力に小さくふるふると揺れる小尻の割れ目の下から、大鳳の秘密の弱点へ伸び--
次の瞬間。

「--はい、おしまい。この先は・・・」
自慢の筋力で以外にもガッチリと提督の手をとった大鳳は、驚いて固まった提督に笑顔で無慈悲な言葉を続けた。






翌日早朝。鎮守府付属の運動場。

「どうしたんですか提督?まだ二十回もいってませんよ?ギブアップですか?」
「ぬうぅぅぅ~~!」
楽しげな笑みを浮かべた小柄な大鳳を背に座らせて、ぷるぷると腕立てに励む提督の姿があった。
背中に当たる尻の感触など楽しむ余裕があったのは、最初の数秒だけだった。

腕立て150回で、本番1回。

あの魅力的な裸体を目に焼き付けてしまった以上、退けるはずがない餌。
男の悲しい本能が、彼を更なる闘争に駆り立て、暫くは書類にサインもまともに書けない日々が続くのであった。


頑張れ提督、負けるな提督。
装甲空母を嫁に戴く、その日まで。

(Fin.)


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最終更新:2019年04月29日 06:55