非エロ:提督×伊勢1-539避

539 :名無しの紳士提督:2014/06/19(木) 22:41:00 ID:4RxlZu.6
あんまり芋っぽい芋っぽい言われるからつい「伊勢 いも」で検索したら
そのものずばり『伊勢いも』というものを見つけたので

※非エロ

ある日の夜、たまっていた書類を片付けた提督は小腹を空かせていた。
生憎保存用のインスタント食品は切らしており、間宮にでも行こうかと考えていた時、席を外していた秘書艦伊勢が戻ってきた。

「どうせなら私が何か夜食作りましょうか?」
折角の申し出であるので、それに甘えることにする提督。

(そう言えば、伊勢の料理を食べるのは初めてかもしれないな)
一人台所へ向かう伊勢を見送りながら、そんなことをふと思う。
もう長いこと提督のもとにいる伊勢だったが、その手料理を振る舞われるというのは初めての事だ。

ふと、提督の口元が緩む。
いつの頃からか定着した、秘書艦が提督に食事を作るという慣習。
提督と艦娘。軍人と兵器でありながらその関係は親しい男女のそれをイメージさせる。

(いや、下手な勘違いは失礼だな)
そんな考えを振り払うため、提督はこれまで何度となく繰り返した自戒を再度行う。
親しい関係でないと言えば嘘になるが、それでもそうした思いは相手に対して見当違いな認識を抱いて迷惑をかける可能性がある。

(或いは臆病かもしれんが……な)
守るべき節度というものが何事にもあるものだ。

その時、台所の方から派手に何かが崩れ落ちる音が響いた。
「おい伊勢?どうした?」
執務室からでも聞こえたその音に、提督が台所を訪ねる。

台所と言っても給湯室に毛が生えた程度のそこは間宮よりどちらかと言うと一般家庭の台所に近く、
用途もそれに近い小人数分の料理を作るのが精々である。

「痛たたたた……」
「大丈夫か?」
がらがらとその台所の引き戸を開けると、沢山の調理器具その他と共に、伊勢が尻餅をついている。

その横には少しだけとろろが入ったすり鉢が置かれ、
そこから飛び出したと思われるとろろが床と、一部は伊勢の頭やら体やらにべっとりと付着していた。
聞けば日向から伊勢芋なるものをもらったのでとろろ汁にでもしようと思ったが、
丼を取ろうとした時に不安定に積まれた大小の調理器具が降ってきたとの事。

「怪我はないか?」
手を差し伸べようと一歩踏み出した提督の、その足の裏の地面がぬるりとした感触と共に逃げる。
「うわっ!?」
「わあっ!?」

バランスを崩し、前に飛び込むように倒れた提督。
咄嗟に手をついたは良かったが、体は伊勢の股の間に倒れ込み、ついた手は押し倒されたようになった伊勢の頭の両脇にある。
倒れ込み、またその勢いに押された二人の顔は意図せず急接近し、提督が伊勢の顔を覗き込むような形をとる。

お互いの息がかかるぐらいの距離で見つめあう二人。
提督の下にいる伊勢は、髪や顔に白いとろろがついたままで、はだけた胸元から覗く黒いインナーにも同様に付着している。

「おい。今すごい音が―」
妙に長かった一瞬は提督の背中から聞こえてきた声に破られた。

振り返った提督の後ろに、「が」の口のまま立っている日向。
その視線の先にはドロドロした白濁液を浴び、仰向けのまま顔だけをこちらに向けている伊勢と、その伊勢に覆いかぶさる提督。

「―あぁ」
一人納得する日向。

「あのー……日向?」
「失礼した」
ガラガラピシャ。

「うおおおおっ!?待て日向っ!!」
即座に立ち上がり追いかける提督。

少し前にいたはずの日向は既にかなりの距離を開けて走っている。
「島風より、ずっと速い!」
どこぞの寝取られヒロインみたいな台詞を吐きながら提督も走り出す。

「待て日向!これは誤解だ!!」
叫びながら追いかける提督だったが一向に距離が詰まらない。
低速とはなんだったのか。

「止まれ!止まれば今度零式水観載せるぞ!」
まるで走ってなどいなかったかのように急停止する日向。
慣性とはなんだったのか。

「私はただ単に青葉と世間話がしたいだけだが?」
「(言いふらす気満々じゃねえか)いや実はあれは―」
状況の説明と説得(内訳:間宮アイスのタダ券)により日向を納得させた提督。
どっと疲れが出た気がしてふらふらと来た道を戻ると、風呂から一人の女性が現れた。

「ああ提督。台所の片づけ終わりましたよ。日向どうでした?」
そう言っている女性はおそらく提督の事をよく知っているのだろうが、提督は彼女の事をどうしても思い出せない。

癖のない茶色がかった黒髪はしっとりと濡れて肩甲骨の辺りまで伸びている。
伊勢のような格好をしているが、提督の記憶にある伊勢とは目の前の女性は異なる。
しかし、今の話の内容からするに、当てはまるのは伊勢しかいない。

そんな提督の様子を察したか、女性は手で自分の髪を掴み、後ろに持っていく。
「伊勢……か?」
「ひどい!」

髪を下ろした姿をみせたら誰だか気付かれなかった。
女心を傷つけるには十分だろう。
戻る道すがら、提督は何度も詫び、伊勢ももういいですよと口では言っていたが、その心中は何とも複雑であった。

執務室に戻ってきた二人は、机の上に置かれた一冊の本と残った芋を目にする。
「あれ?芋置いてきたのに……」
伊勢がそう言いながら芋をつまみ上げ、提督は本を手に取る。
「『イモ類図鑑』こんなものあるのか」
手に取った図鑑に大きな付箋の貼られたページを発見し、何の気なしにそのページを開いてみる。
そこは伊勢芋について書かれたページ。

分類や産地等の下に書かれた説明文に蛍光ペンでマークされた一文を発見する。
曰く「~古くから婚礼等の慶事に贈り物として珍重され~」

横から覗き込んでいた伊勢の顔が真っ赤になる。
その一文に日向のものらしき字で「ここ重要」とまで書かれている。

「日向っ…!!」
伊勢が振り返ると同時に、執務室の外を日向らしき人影が走り去っていく。

「なあ伊勢」
「ふぇ!?あ、あの…、いや、私はそのそういう意味があったなんて知らなくて
その提督に別にそういうことをいやその嫌いという訳ではなくてむしろその……あの……」

慌てて言葉を並べたてる伊勢だったが、最後の方はほぼ聞こえないような小声になっていた。
真っ赤になってもじもじしている伊勢を見下ろしながら提督は考える。

「日向も気が早いな。あと1レベル必要だというのに」
これ以上臆病になる意味も、またその必要もない。
まったく、よくできた妹だ。

提督の言葉の意味を理解した伊勢は俯いたまま肩を震わせていた。
はがれて床に落ちた付箋の裏に「アイスのお釣り」と書かれていた。


+ 後書き
543 :名無しの紳士提督:2014/06/19(木) 23:00:12 ID:4RxlZu.6
以上スレ汚し失礼しました
伊勢さんはポニテ勢の那珂でぶっちぎりの髪下ろしたら誰だかわからなくなる娘だと思う。
(ちな次点が矢矧。もち異論は認める)

これが気に入ったら……\(`・ω・´)ゞビシッ!! と/

最終更新:2017年03月22日 22:34