非エロ:提督×曙1-244避

243 :223:2014/06/01(日) 23:37:27 ID:MpmLk9d2
んじゃ投下します
ケッコン編、提督視点曙視点 ←前に書いたの
R18編 ←続き書いたやつ

で計三編ですが実質二編です、長い上にメンドクサイ構成ですみません


244 :提督×曙 side提督:2014/06/01(日) 23:39:34 ID:MpmLk9d2
「曙」
「なに。わざわざ名指しで呼び出すなんて、ずいぶんと偉くなったものね。このクソ提督」

ある日の鎮守府。ここで艦娘たちを指揮して謎の敵「深海棲艦」を倒す「提督」となって、はや半年近くが経つ。
小柄な体で仁王立ちした駆逐艦娘が目の前にいる。今日は(今日も、かも知れない)少々ご機嫌斜めの様子だ。
割と長い付き合いとなるこの小さな艦娘―曙を呼び出したのは、一世一代の大勝負を仕掛けるためだ。
初対面でいきなりクソ提督呼ばわりされた時は面食らったが、その痛々しさが見ていられなくて、俺は彼女を大切にすることに決めた。
「大切にする」とは言っても、最初は駆逐艦娘特有の外見の幼さも手伝って
どちらかと言うと庇護欲というか、父性をくすぐられたところが大きかった。
しかし、彼女と接しているうちにそれは間違いだったことがわかった。
艦娘は人間とは違い、外見が幼いからといって精神も幼いとは限らないのだ。
曙は、小さくとも駆逐艦としての矜恃を秘めた、そしておそらくそれを『以前』に何らかの形で傷つけられた、複雑な内面を持つ艦娘だった。
それに気づいた俺は彼女への認識を改め、同時に惹かれ、別の感情を膨らませることになった。
黙々と書類仕事を片付けながら、書類に目を落としたまま話題を切りだす。

「…お前、強くなったよな」
「そうね。誰かさんのシゴキのお陰でね」

彼女は元々うちの鎮守府内でも相当高い練度だったのだが、ここ最近、連日のように西方海域での敵潜掃討任務に投入されていた。
勿論、出撃命令を出したのは俺だから、正しくは「投入していた」だが。

「その話を切り出してくるってことは、そろそろ最近の不可解な出撃の訳を話してくれるってことでいいのかしら」
「ん、まあそんなところだ。お前の練度は現状、俺の施してやれるほぼ最高のレベルに達している」
「ふーん…で?もうこれ以上能力は上がらないから第一艦隊から外すって?」
「んー…ま、そうするのもいいかも知れんがな」
「…」

しまった、つい売り言葉に買い言葉を返してしまった。俺の悪い癖だ。
しかし、曙も曙だ。そんな辛そうな顔をするなら最初からそんな悪態吐くなよ、コッチまで傷つくだろ。
…ま、そういうところもこいつの可愛らしい点の一つなのだが。
ごほん、と咳払いをして嫌な感じの空気を追い払う。

「本題に入るぞ。上が艦娘の能力を更に引き出す、新しい技術を開発したそうだ」
「新技術?」
「ああ、そうだ。今のお前の限界を超える力が手に入る。正確には、従来の限界を超えて鍛錬の効果が出る、ということだそうだ」

「これ」の噂は一部の艦娘にも届いていたようだが、根が真面目な曙は意に介していなかったらしい。
まあ、それも計算に入れての、この呼び出しだが。
そして、「これ」が噂されていた時から、既に俺は心に決めていた。

「他にも燃費が少々良くなるらしい。あと、ささやかな加護が得られるそうだ」
「ふうん…加護ってのがよくわからないけど、燃費が良くなるなら大型艦向きじゃない?」

今では彼女も俺をそれなりに尊重してくれるようになった…と思う。うん、多分。
表面上の態度は相変わらずだが、言葉や仕草の端々にそんなニュアンスがある、気がする。希望的解釈だが。

「で、それをお前に施そうと思う」
「あんたあたしの話聞いてた?元々消費の軽い駆逐艦の燃費を上げてどーすんのよ。
 それに、たかが駆逐艦の能力をこれ以上上げたって大した戦力増強にならないわ」
「付け加えると、これを受けられるのはひとつの鎮守府につき一人の艦娘だけ、ということだ」
「はあ?じゃあますますあたしに施す意味が薄いじゃない。
 武蔵さんや長門さん、加賀さんたちのためにとっておくべきでしょうが」
「まあ、理屈で言えばそうなるな」
「だったら…!」
「それでも俺は、お前に施したい」
「何でそうなる…施し『たい』?」
「ああ。この件に限っては、艦娘側に受けない自由がある。命令じゃない」

曙が怪訝な顔をする。そう…「これ」は命令じゃない。
もし、先程述べたようなことがただの俺の勘違いだったら?俺がただ一人芝居で浮かれていただけだったら?
多分、今までも沢山の先人たちが恐れたであろう、そして不幸にも的中することも多々あったであろう嫌な仮定が次々と脳裏をよぎる。
その恐怖をなるたけ表に出さないよう、淡々と説明を続ける。

「これが、…その、装置だ」

意を決して、黒い小箱を取り出す。

「ふうん?ずいぶんと小さいのねえ。本当にそんな効果がある…の…」

何気なく小箱を開いた曙が絶句し、固まる。
彼女が言語機能を取り戻すまで、たっぷり数十秒はかかった。

「こ…れは、また、タチの悪い、冗談ね…」
「まさか。正真正銘、上から降りてきた新技術…その恩恵を受けるための装置、いや、証と言った方が正しいかな。
 練度が最高レベルに達した艦娘にしか、効果が無いそうだ。…お前の、ここ最近の出撃の、理由だ」
「…」
「言い忘れていたが、その技術の名前は、"ケッコンカッコカリ"…と、言うそうだ」
「…!」

理解が及んだ曙の顔がみるみる赤くなる。多分、今俺の顔も同じようになっているだろう。

「いや、な?カッコカリと付いてる通りあくまでこれは艦娘強化策の一つであってだな、
 これを開発した連中が脳内お花畑の馬鹿野郎だってのは間違いない、
 まあ中にはマジで挙式する提督もいるらしいがいやそんなことは今関係ない…」
「…そ、それじゃ、ささやかな加護って…」
「…たぶん、愛の力、とか?」
「…」

いかんいかん、何アホなことを口走ってるのだ俺は。うう、呆れたような目線が痛い。

「ごほん、あー、さっきも言ったが、艦娘側に受けない自由があるというのは…まあ、そういう、ことだ」
「…」

うん、多分大体伝わっただろう。再び沈黙が執務室を支配する。
その沈黙は、曙のつぶやきで破られた。

「…あたしなんか、可愛げもない、ただの駆逐艦なのに…、どうして告白なんかしちゃってるのよ…」
「あー、まあ何だ…惚れちゃったもんだから仕方ないな」
「惚れっ…!?  よ、よくそんな、恥ずかしいこと言えるわね!顔、真っ赤っ赤じゃない!」
「うるせえ、お互い様だ。そりゃクソ恥ずかしいが、言わなきゃイカン時ってのはあるんだよ。曙…俺とケッコン、してくれ」
「……!」
「曙には、これからも秘書艦をやって欲しい。…ずっと、俺の…傍で、だ」
「…」

不意打ち気味開き直り気味のプロポーズに、曙、二度目の絶句。だけでなく、真っ赤な顔を俯かせてしまった。あー可愛い。
しかし自分で言っておいて何だが、一連のセリフがクサすぎて死にそうだ。もうちょっと気の利いた…いや、こういうのは直球が大事…
また双方黙ってしまった。今度はこちらから声をかけてみる。

「あー… 曙、さん?」
「…して、あたし…」
「え?」
「どうして、あたしなのよ…! あたしみたいな一駆逐艦じゃなくたって、もっと綺麗で強い、戦艦や空母の方々にだって、
 アンタをすっ…好きだって…言ってる人もいるのよ…!」
「あー、金剛なんか特にな。光栄なことだよ…でも俺は、お前がいいんだ」
「…っ …あたしは…っ 提督に、いつも…いことばかり、言って…っ」
「もう慣れたよ」
「ド、ドMなのっ!?」
「ははっ、そうかもしれんな…で」
「え…」
「どう、なんだ。受けてくれる…か?」
「…」
「…」
「あたし…は、提督のこと、は…好きとかっ、そんなんじゃなくて…」
「うん」

一生懸命言葉を紡ぎだす曙を、じっと待つ。

「どっちか…って、言えば、…その、かっ、感謝とか、尊敬とか、信頼とか、そういうので」
「…うん」

感謝だって!尊敬だって!あの曙が!
俺はこの時点で奇声を発しながら走り出したい気分だったが、ダメだ、まだ堪えるんだ。
今の本題はケッコンの方だ。尊敬と恋愛はまた別物だ。

「でもっ…提督が…そう言ってくれる、なら」
「うん」
「まあ、応えて…ても…かなって… きゃっ!?」

俯いてどんどん小声になる返事を続ける曙の可愛さに堪えられず、思い切り抱きしめる。

「やった!曙、俺はお前を幸せにするぞ!んで、俺もなるぞ!」
「ち、ちょっと!いきなり何サカッてんのよこのクソ提督!」
「うるせえ!これがはしゃがずにいられるか!コラ暴れるな大人しくしろ!」
「それが好きな女の子に言うセリフ!?ちょっと苦しいってば一旦離れむぅっ…!?」

唇を塞いでやると途端に静かになった。そのまま頭を撫でてやると強張った体からも力が抜けていく。
息の続く限り柔らかい唇の感触を楽しみ、ようやく開放する。

「ぷは…っ …ちゃんと、セキニンは、取りなさいよ」
「勿論だ。ずっと大切にするよ、曙」
「ふん、今までだって、…してもらってたけどね。これからは、あたしも返してあげるわ」
「しおらしい曙も可愛いぞ」
「うるさい。一言多いのよ、アンタは」
「…曙」
「なに」
「…これからも、よろしくな」
「こちらこそ、よろしくね。…提督」

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この後、複数艦と「ケッコン」する方法があることをひた隠しにしていたことがバレ、
大層不機嫌になった曙をなだめるのに苦労することになるのは、また別の話。いや、しませんよ?

これが気に入ったら……\(`・ω・´)ゞビシッ!! と/

最終更新:2024年01月10日 20:15