提督×赤城8-286

286 :名無しさん@ピンキー:2014/03/25(火) 02:02:38.15 ID:QdtMc50L
渋で艦娘たちの戦後っていうタグを見つけた時に思いついたネタ投下します


「あら、いらっしゃいませ」
ある小さな飲み屋街の一角の小料理屋「鳳翔」に一人の男が現れた。
まだ開店してから一年と経ってないこの店はしかし、
女将の気立てと古き良き日本の家庭料理を売りに順調に常連客が増えてきている。

「随分今日は静かだね」
カウンターに座った男は、タオルで顔を拭きながら馴染みの女将に話しかける。
いつもは仕事帰りのサラリーマンで賑わうこの店だが、今日はこの男しか客がいない。

「世間様は、今日はお休みですからね」
そう答えながら、女将は冷奴の皿を客に出す。

鯵のたたきと冷奴にお湯割りが二杯というのがこの客のいつものメニューだ。
常連の好みをしっかりと覚えているのもこの店が人気の秘訣だろう。

「実は、都合で今度引っ越すことになってね。ここに来るのも今日が最後かもしれない」
「あら、そうでしたか……寂しくなりますね……また近くに寄ったら是非いらしてくださいね」
帰り際、名残惜しそうな女将に見送られて夜の街を歩く男の耳に並びの居酒屋の裏口から漏れたテレビの声が聞こえてくる。

「終戦から二年目を迎えた今日、各地では―」
テレビの声が伝えている通り、二年前のこの日、人類と深海棲艦との戦争は深海棲艦の無条件降伏という形で終わった。

二年前、対深海棲艦に本腰を入れた世界各国は強力な対深海棲艦兵器を多数開発し、前線に配備した。
これにより、人類と深海棲艦との戦争はそれまでのシーソーゲームから戦争とも呼べないような一方的な殲滅へと変わり、
それまで主力であったはずの艦娘は新兵器の撃ち漏らした敗残兵を始末するだけの存在となった。

それから数か月後、深海棲艦側の代表団が降伏文書に調印し、彼女らはほとんどの版図と引き換えに僅かな生き残りの命の保証を得た。
その時に設定された深海棲艦居住区から彼女達は出ることを許されず、周辺諸国により厳重な監視下に置かれることとなった。

負けた彼女達は悲惨だが、勝者にも悲惨な者はいる。
戦争の終結とともに、行き場を失った提督と艦娘達だ。

戦争初期の功労者達の処遇は、大規模な軍縮を余儀なくされた対深海棲艦軍において最も大きな問題ではあったが、部外者からはどんな問題も小さな問題に思えるらしい。

折悪しく戦争終結により支持率が上がっていた当時の政権に対し、野党は膨れ上がった対深海棲艦費用を追及。
これにメディアが同調し不要となったはずのこれらの負担が国民生活を圧迫していると主張すると、
批判を恐れた政府はそれまで計画されていた段階的な縮小からより急激な縮小へと変更。

結果として当初の想定をはるかに上回る勢いで元提督と元艦娘が各地に溢れかえり、これらを対象としていた再就職支援はパンク状態となったが、
それでも強引に推し進められた縮小計画によってほとんどの者が何のあてもないまま路頭に迷うこととなった。

そしてその無数の元提督の一人が、この男である。

「おい、待てよおっさん」

喧しいネオン街に差し掛かった所で、この元提督は呼び止められた。
声の方を振り返ってみると一組の若い男女が近寄ってくる。

既に悪趣味の域に達している派手なシャツの男がくすんだ金色の髪の毛の下から元提督を睨みつけ、人の女に色目を使っただのなんだの騒いでいて、
女の方は金髪の少し後ろでにやにやと成り行きを眺めている。

元提督は一瞬口元に笑みを浮かべ、金髪が騒ぐまま路地裏へ消えていく。

一分もせずに元提督がズボンのポケットに一万円札を一枚追加して大通りに戻ったとき、女の方はいなくなっていた。
強いと思っていた彼氏が、しょぼくれたおっさんに一瞬で伸されたのだから無理もない。

「つまらないな」
誰に言うでもなく元提督は呟く。
軍を放り出されてから何度かこういう喧嘩をしたが、いつもこんな終わり方だ。
結局絡んでくるのは酔っ払いか、女の前で粋がっただけの不良が関の山で、それまでの命がけの戦争と比べればままごとの様なものだ。

そういう場合は今回のように財布からいくらか抜き取ってきているが、
迷惑料と生兵法は大怪我のもと―具体的には陸戦隊あがりで師団対抗の柔道大会において九十キロ級準優勝の有段者には喧嘩を売らないこと―の授業料としては破格の筈だ。

それにあの金髪が多分人生で初めてごみ箱の中で目を覚ました時、すぐに必要となるであろう歯科と形成外科の受診料ぐらいは残してきた。

―入れ歯の代金が受診料と別に前払いでなければの話だが。

「うるさいなぁ…」
元提督の後ろで、不機嫌そうな女の声がする。

「そいつは悪かっ―」
振り返った先にいた女を見て元提督は言葉を失った。
その女はひどくやつれ、長い黒髪は輝きを失って汚らしく、以前の姿からは想像もつかなかったが、間違いなくかつて自分のもとにいた第一艦隊旗艦だ。

「赤城か!?」
「提督!?」
赤城の方も相手が誰であるのか気付いたのだろう、元提督と鏡写しのように驚いている。

「ああっ、提督!本物ですか!?はははは、まさか…」
そういって赤城はばったりと倒れた。

「!?おい!しっかりしろ!赤城!!」
倒れた赤城を抱え上げた元提督の耳に大きな腹の音が聞こえた。

「うーん……うっ、ここは?」
次に赤城が目を覚ました時、最初に目に飛び込んできたのは見知らぬ部屋と元提督だった。

「やっと起きたか。安心しろ、ここは俺の家だ」
「提督!?夢じゃなかったんですね!!」
ぼろぼろの体のまま飛び起きた赤城は、提督を見て声を弾ませる。

「話は後にしてとりあえず風呂に入ってこい。…その、なんだ……女が臭うのはあまりよくない。幸い今月はまだガスが使える」
そういわれて自分がどういう状態なのか思い出した赤城は、真っ赤になって顔を伏せると
「すみません……ではいただきます」
消え入りそうな声でそう言って風呂場に向かった。

しばらくして風呂から上がった赤城は、在りし日の姿に戻っていた。
心なしか顔にも血の気が戻ったように見える。

「俺のしかないが我慢してくれ。んで、そいつを着たら飯を食え。また倒れられても困る」
適当に畳まれたままの提督の古いシャツを着て、赤城は何度も礼を言い、卓袱台の上に広げられた食事を無我夢中で流し込んだ。

一切れだけ残っていた小ぶりな明太子とパサパサに乾いた温め直しの冷や飯と買い置きされていたインスタントの味噌汁。
これだけでも、今の赤城にとっては十分すぎるほどのご馳走だった。

「ご馳走様でした」
全て平らげてようやく人心地ついた赤城に提督は切り出す。
「なあ、今まで何をしていた?」

赤城は顔を赤らめて、ばつが悪そうに俯きながら答える。
「行き場も仕事もない女のすることなんて……提督だってお判りでしょう」
「まぁ、な」
「当然最初は普通の仕事を探しましたけれど、何にもないんですよ艦娘って。何の仕事もないんです。
それで仕方なく…でも、その……どうしても苦手で……その、知らない男性とそういうの…」
「そうだな…そうだよな」

俯いて寂しそうにそう答える赤城に、元提督もため息交じりに呟く。
「俺も似たようなものさ」

元提督だって同じような経験をしてきた。
軍を放り出された後、方々で仕事を探したが、何もありはしなかった。
数えるほど少ないがチャンスも巡っては来たものの、戦争帰りというのがわかるとそれだけで敬遠され、雀の涙な日雇いの賃金で何とか食いつなぐのが精々だった。

ようやく入居できた今時共同トイレなこの空き室だらけのボロアパートも、特に問題を起こしたわけではないが、今月中に出ていかねばならない。
―理由など聞きたくもないが。

「お前の身の上はわかった……
ところで、悪いとは思ったがお前の着ていた服を調べたらこんなものが出てきたんだが、これは何か教えてもらえるか?」
透明なビニールの袋を卓袱台の上に置く。
中には小麦粉のような白い粉。

「……」
赤城は黙って俯いたままだ。

「なあ、これは何なんだ?」
ゆっくり諭すように繰り返し尋ねる元提督に赤城は何か決心したように顔を上げ、それでも伏し目でぼそぼそと口を開いた。

「……市販されていない…ビタミン剤です」
言い終わるか否かのうちに元提督は卓袱台を飛び越えて赤城を押し倒し、胸ぐらをつかんで馬乗りになった。

「ふざけるな貴様!!娼婦になったのは分かる。客が取れなくなってひもじい思いをしたのも分かる。だがこれはどういう事だ!!!自分が何に手を出したかわかっているのか!!」
「…落ち着いてください提督。私は商品には一度も手を出していません。それは試供品として渡されたものです」

自分の下で自嘲的な笑みを浮かべながらそう答える赤城を元提督は更に強く締め上げる。
「商品だと?貴様は…」
「そんな事はしないと思っていましたか?」
先程までの悲しい笑顔は消え、真剣な目で元提督を睨みつけながら、赤城は言葉を遮った。

「言いましたよね。艦娘には仕事がないって。三つしかないんですよ。体を売るか、薬を売るか、その両方を売るか。
鳳翔さんみたいな例外を除けば少なくとも私の周りはみんなそうでした。だって仕方がないですよ。私達は戦争以外なにも知らないんですから」

「……」

「ご飯、ありがとうございました。お風呂もありがとうございました。それにあの頃はとても言い足りないくらいお世話になりました。
でも、もうお終いなんですよ。提督がもう提督でないように、私ももう赤城じゃないんですよ」

赤城の声が震えはじめ、目に何かが光る。

「離してください。もう他人なんですよ私達は」
「赤城、お前は…」
「もう赤城じゃないんですよ。もう提督の…あなたの部下じゃないんですよ…だからもう離してください」
「赤城…」
「私をあそこに戻せないなら、もう離してください……お願いですから…」

いつしか元提督の手は力が抜け、ただ赤城の胸ぐらに引っかかっているだけとなっていた。
「おい赤城―」
「もうお説教はしないでください!!大体、私にお説教なんてできるんですか?」

真っ赤になった眼で赤城は元提督を睨みつける。
「提督だって酔っ払い殴ってるだけのくせに……提督だって碌なことできないくせに……提督だって、提督だって……」
そこが赤城の限界だった。

「提督だって戦争しかできないくせに!!!!」

そう叫ぶと堰を切ったように赤城は泣きだした。
大粒の涙が滝のように流れ、子供のように泣きじゃくった。
元提督はすでに両手を離し、ただ泣きじゃくる赤城を見下ろしていた。

どれぐらい時間が経っただろうか。
赤城はそれまでの二年間耐え続けてきたのであろう涙を流し、もう自分は何にもなれないということを改めて実感することで泣き続けている。

元提督は何も言わずに赤城を抱き起し、泣き止むまで母親が子供にするように背中をさすり続けた。

やがて落ち着きを取り戻し始めた赤城に、元提督はゆっくりと諭すように言った。
「なあ、赤城。今俺のポケットに一万円入っている。この部屋中かき集めれば多分もう一万円ぐらいはある筈だ。計二万でお前を買えるか?」

しゃくりながらではあったが赤城は答える。
「ぐす…はい……ひぐっ、買えます」

「そうか、じゃあお前を買う。そしたら今日で娼婦も薬の売人もやめてくれ。それで……俺と一緒に戦争をしよう」

「え?」
「戦争だ。敵はいくらでもいる。
俺達に守られながら俺達を見捨てた者。お前に汚い真似をさせながら食い物にしている者。財布の中の一円五円のためにそれを放置している者。
その他にもいくらでもだ。俺達が満足するまで、俺達のための戦争をしよう」
「本気……ですか?」
呆気にとられている赤城に、元提督は自らの考えを打ち明ける。

何も今思いついたことではない。本当はもっとずっと前から気付いていて、ただそれを実行に移す踏ん切りがつかなかっただけだった。
だが、赤城と再会したことで、落ちぶれて傷ついた彼女を見る事で、ついに実行に移す決心がついた。

説明を聞くうちに、赤城もそれが最良の手段であり、今の惨状から抜け出す唯一の方法であるように思えてきた。
「わかりました。やりましょう。私と提督の戦争を」
「そうか!やってくれるか!!ありがとう赤城」

二人はまた抱き合い、そして見つめあった。
「でも、本当に私を……買ってくださるのですか?……私は…汚れていますよ」
「汚れてなどいるか。必死で生きていたお前が、汚れてなどいるものか」
その言葉を合図に、二人は唇を合わせる。

くちゅくちゅと互いの舌を絡ませ、同時に両手の指も同様に絡ませる。
先程と同様に、赤城を下に元提督が上になって横になり、赤城は両腕を元提督の背中に回し、抱きしめるような形を作る。

やがて光る糸を引いて唇を離すと、元提督は下を脱いで一物をさらけ出し、赤城も大きな男物のシャツを脱いで一糸まとわぬ姿となると、
うるんだ瞳で元提督のそれを眺め、次に自分が何をすべきかを一瞬考え、すぐに実行に移す。

上体を起き上がらせると丁度目の前にある元提督のそれを咥え、チロチロと舌先で触れはじめる。
やがてそれの大きさと比例して、先端で触れるだけだった赤城の舌は徐々に根元から先端までを舐め上げる動作に変わり、さらにそれを膨らませる。

「ん……む…んん、…ぷはっ」
やがて膨張したそれから飛び出した白濁液が赤城の口の中いっぱいに広がり、
口から離した際に顔にもかかったが、それを気にすることもなくにこりと笑顔を向ける。

「ふふ。提督の、美味しいです」
「食い意地は変わらんな」
からかうように元提督が言うと赤城は泣き腫らした目で少し恥ずかしそうに笑った。

「さて、今度は俺の番か」
「え?何をすひゃあ!」
赤城の体は電流が流れたようにビクンとのけぞり、それにも構わずその反応の原因である元提督の舌が綺麗に剃られた股間を這う。

「随分綺麗に剃ったな」
「ひゃれは、ひゃん!この方ふぁ、おひゃくはんが!よろひょん……ふああっ!」
呂律が回らないままの赤城は、元提督の舌の動きに合わせて嬌声を上げ、そして嬌声を上げる度に自分が唾液以外で濡れていくのを感じる。

「ふあっ!は!あぁ!ひゃああっ!!」
体をビクつかせる赤城を元提督の舌が愛撫し、存分に赤城を味わおうとヌルヌルと滑らせていく。

やがて頭を上げた元提督は、上気して色香を放つ赤城の柔らかな太ももを抱えて起き上がると、十分に濡れた赤城の中に入り込んだ。
「あっ!んっ!ああっ!ああああ!」

元提督が中で動き、その度に赤城が先程より大きな声を上げる。
生娘に比べれば少し締め付けは弱いが、それでも咥え込んだものを吸い込むように包んでいく。

「世間のっ、男はっ!くっ、見る目がないな」
「ひゃあ!ふっ!くぅ!ああっ!ふああっ!!」

ずんずんと進む元提督のそれは、ついに赤城の最奥部に到達し、その中で小動物のように動き回る。
「ひゃあん!!提督っ!提督ぅ!ふひゃあああああっ!!!」

赤城の体はビクンと大きく跳ね、はぁはぁと荒い息遣いとそれに合わせて上下する形の良い乳房以外は糸が切れたように動かなくなった。

元提督は赤城から一物を引き抜くと、足元に倒れている赤城を優しく抱き上げる。

「お前……痩せてしまったな……」
元提督は裸の赤城を見るのは今日が初めてだが、少なくとも昔抱きしめていたら、あばら骨に指が触れるようなことは無かったはずだ。

全て終わった後、元提督は赤城の体を使い古した手拭いで丁寧に拭いていく。
「明日、今の文の二万で準備してくれ。そしたら始めよう」

赤城の全身を拭き終わると、二人は再び濃密な口づけを交わす。
「きっと楽しいぞ」
「勿論です。二人でずっと」
唾液を光らせて口を離した二人は、悪戯を思いついた子供のように笑いあった。



これより数日の後、大家がこの部屋を訪れると、今まで世話になった事への感謝を綴った置手紙だけを残し入居者は忽然と姿を消していた。

その後、男女二人組の暗殺者が裏社会に現れる。
莫大な報酬と引き換えに困難な依頼も確実にこなす二人は、元提督と元艦娘であるということ以外ついに引退まで誰もその正体を知る者はいなかったという。

最終更新:2014年03月26日 00:28