提督×大井4-782

「提督、こちらは終わりましたよ」

しばらくペンが紙越しに机を叩く音だけが響き、秘書艦大井の声を聞いたのは1時間ぶりか。
秘書に任せても大丈夫そうな書類とそうでない書類は後者の方が多いので、
もう秘書に任せられる執務仕事はない。

「お疲れ。こっちはまだかかるから好きにしていなさい。
今日はもう出撃する必要もない筈だから」

「ありがとうございます。では失礼します」

大井は一礼すると部屋を出て行った。



執務を終えたのは更に遅い時間で、
提督の疲れもピークになっていたので、
軽く風呂――入渠ドックではなく――を済ませるとすぐに眠りについた。
そして庁舎内の廊下の明かりさえも消えている時間になって、
執務室、正確にはその奥の提督の寝室を目指す影が一つ。
自分の特徴とする沢山の魚雷と砲の装備を自分の部屋に置いてきたその影は足音を立てずに執務室へ入っていった。

せっかく夢も見ず深い眠りについていたのに、
疲れが十分に取れないまま眠りは浅くなっていく。
それは11月の夜という寒い時期の中布団を剥ぎ取られ、何やら下腹部あたりに違和感を感じるからだ。

「れろ……ちゅる……」

まず耳が覚醒した。変な音?が聞こえる。

「……んっ、んっ」

体の感覚もはっきりしてきた。
最早頭が半分寝ているだけだ。
寒いのに下腹部――股間だけが熱い。

「ぢゅうううっ」

「うあっ!?」

唐突に訪れた快感に抗えず、口が乾いているのに間抜けな声が出た。
完全に覚醒し、瞼も開き、そして驚いた。

「あ、提督、起きました?」

「こらっ、何を、ッ!」

している、と言いたかったが、一度離した口の中に再びそれを納められ、
歯を食いしばったおかげでその言葉は出ることなく喉あたりで止まった。
なぜ自分は大井に夜這いをかけられているのだ。
なぜ大井は自分の男の象徴に口付けをしているのだ。

「んんー……」

問いただしたいことは山ほどあるが、
当の本人はそれを咥えたままパッと見でも分かる拙い動きで舌を動かすばかりだった。

「提督はこういうことをされるのは、嫌ですか?」

そうじゃない。

「嫌なら……ぁむ……ふいとあすことお、れきまふよね(突き飛ばすことも、できますよね)」

咥えて喋るあたりに意思を伝える気が感じられない。
実際何を言っているのか分からない。
それでも自分をどちらかと言えば嫌っているだろう大井が、
自分のそれに歯を立ててしまわぬよう努めていることが分かっただけでも警戒心は消えた。
否、そもそも嫌がらせのためにこんなことまでしてくるというのもおかしな話だが。
頭の中は考えてもどうしようもないことばかり考えてしまうが、
それよりも喋るときの舌が動いて当たることに意識が傾く。
それから大井は戦闘を再開した。
気づけば、自分の両手は大井の両手によってそれぞれ押さえられているが、その力は弱いものだ。
弱いはずなのだが、そもそも抵抗しろという命令が体に行かない。

「うっ……ぐ、お前、北上のことが好きなんじゃなかったのかっ」

経験の無さ故、こんなことをされては声を出すのも一苦労だった。

「……っは……。提督、忘れたんですか? いつも『愛してます』って言ってるでしょう」

確かにいつも聞いているがその口ぶりは普段の軽口の内にしか聞こえないし、
その言葉の前に、それを冗談と認識させる言葉も並べていた。
それから自分を拒絶するような台詞をいくつも聞いている。

「あれは冗談だろ」

「私は本気ですよ」

「……じゃあ、撃ってもいいですか、とか、魚雷20発、つうのは」

「時間と場所を弁えてくださいという意味です」

似たようなことをある戦艦の一番艦からもよく言われた気もする。
まあ普段のああいう行いはスキンシップというか冗談というか軽い気持ちでやってはいるが、
自分に非があることは間違いないだろう。
大井は特に男嫌いのような印象があったので最近は控えようと反省していたのだが。

「提督。何か勘違いしているそうですが、私は提督に一度も『嫌い』だなんて言った覚え、ないですよ?」

「なに?」

なんということだ。
たった今自分の中にある固定観念の一つがガラガラと崩れた。
『愛してます』よりも、今放たれた言葉のほうがよっぽど自分の内まで響いた。
大井が男嫌いじゃない? 嘘だろ。
これは一つのカルチャーショックだ。

「……あらあ? 縮んじゃった……んむ」

弄り回すことを中断し言葉を交わしていたため
気づけば自分のそこはすっかり血を失っていたが、大井はやめる気はないようだった。
小さくなって口に納まりやすくなったことにより、
まるで急かすかのように舌を積極的に動かされる。

「ん……れろれろ……」

それ全体に唾液を塗りたくる蛇のような動きに早くも血がそこに集まってきた。
根元まで咥えることもできなくなり、息苦しそうにしている。

「む……んぐ……うぇ」

「……はあっ、もう……縮んだり膨らんだり忙しい人」

先端から湧き出ている液を手のひらにまぶしては全体に擦り付けて摩擦をなくそうとする。
握って上下に擦るとクチャクチャと淫らな音を立てるそれは、
もう自分の先走りと大井の唾液が混ざった液体で十分に滑らかになっていった。
汚いはずのそれを目前にしても心なしか頬まで染めているような大井の微笑が崩れることはなく、
懸命に抗う自分と合わせるように息を荒げるだけだった。
マーキングでもするかのように、執拗にそれに口付けすることをやめない。

「んぅー……んん」

裏筋を根元から舐められ、再び口に納められた。
縮んでいたときよりもずっと快感がダイレクトに伝わってくる。

「らふろきは、ひっれふらはいれ?(出すときは、言ってくださいね?)」

だから咥えたまま喋られても分からないって。
そう言いたかったが、先端が大井の口の奥に当たったと分かったときにはもう攻撃が始まっていて反論できなかった。
根元に届かないまでも根元に近いあたり、カリ、先端から満遍なく攻められる。

これまでにも抵抗する隙はあったと思うが、もう自分は大井を振り払おうとはせず受け入れる姿勢に徹してしまっていた。
大井が率先してやってくれているんだし、自分はただ気持ちいいだけだし、誰にも迷惑はかけていない。
これは自分と大井のプライベートの時間を共有しているだけだ。問題ない。
目を瞑ってそれを一心不乱にしゃぶり、時折耳に被さる長髪を鬱陶しげにかきあげる様に、
大井も女の一人であると改めて認識させられ、欲情した。

「うっ、く、もう少しで出そうだ……」

ピストンが続くと限界も来る。
恥も知らずについて出た言葉をそのまま口にしていた。
それを境に大井は吸引に切り替えたようだ。
一度息継ぎをすると吸い出しにかかる。

「……っは……ぢゅうううううっ」

ギリッ。
歯を食いしばり、唇を固く閉じ、我慢する。
が、今更ここで我慢することもない。

「ちゅうううっ……はあ……ぢゅうううっ!」

勢いをつけて欲望の塊が自分の中を駆け抜け、為すがままに口の中に放出する結果となった。



先へ進むよりも今は疲れのほうが勝った。
意識が轟沈しないうちに始末を終え、大井は、

「また来ますね。ゆっくり、お休みなさい」

と、艶がかった上機嫌な声色で部屋を出て行った。

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最終更新:2013年11月28日 22:19