提督×伊19:4-408

 ――明るい。
――瞼の裏に、光がちくちくと刺さる。
――もう、朝? さっき宿舎に戻って、横になったばかりだと思ったのに。
「……んん?」
目元を手の甲でごしごし擦り、薄目を開け、あまりの眩しさに呻く。垣間見えた丸い光
は、部屋の蛍光灯のものだった。寝る前に電気を落としたつもりだったのに、消し忘れた
のだろうか。
一度気になってしまうともういけない。面倒臭さを感じつつも、私は電気を消すため
布団から抜け出そうと。して。
「あんっ」
小さな悲鳴に、腕に当たるふにょんとした温かくて柔らかな感触に、くっつきそうな瞼
が上がる。
掛け布団の中を覗く。鉄とオイルとなにか甘いような優しい匂いに鼻をくすぐられ思わず
くしゃみする。くすくす笑う声。
布団の中に伊十九がいた。何時ものスクール水着、武装だけを外した状態で、私の腹近く
で丸くなっている。
「どうやって入ったの?」
「鍵、開いてたの。提督ってば不用心なの」
私はそんなに疲れていたのか。今度から気をつけよう。とりあえず当初の目的を遂行
せねば。
「提督、どこ行くの」
小さな手に引き留められる。くいくい布団の中から引っ張ってくる。
「いや、電気消さないと」
「いいの」
「でも、明るいと眠れないから」
「いいの。イクが電気点けたから、いいの」なんと。「――それに」
にひひ、と伊十九が笑う。するりと伸びた手が布団の端を掴んだかと思うと、私たち
二人をすっぽり覆うように被せてきた。
「眠れないなら、寝なければいいの」
「イク」
「えへへ、提督、あったかいの」
布団の中は二人分の熱でとても暖かい。しかも空気が篭もっているからそこらじゅうから
イクのいい匂いがする。イクは横になった私に寄り添う。みぞおちに押し当てられる乳房
は重くてふわふわしている。寒くても寝間着をもっと薄手のものにしておけば良かった。
と。急に、熱が近くなる。
「イク?」
「んふふー」
寝間着の裾からイクの手が滑り込む。脇腹を撫でられる。くすぐったい。ゆっくりと
昇ってくる手につれて、寝間着もずり上がる。
ごそごそと。イクが動く。水着の肩紐を下ろし、窮屈そうにしていた乳房を解放する。
白いふくらみがぶるんと揺れる。イクが横になったまま水着を脱ぐのが、白い身体が徐々
に露わになるのが、布団越しの明かりで垣間見えた。
「提督も脱ぐのね」
素裸のイクが私のズボンに手を掛ける。そっちか。そっちからなのか。
「だって、提督、もう我慢できないみたいなのね」
何故か勝ち誇ったような調子の台詞と共に、膨らむ前をつつっと撫ぜられる。思わず
声を殺す。呑み込む空気は甘い匂いがした。この、湿り、温かい空気を逃してしまうのが
何となく気に入らなくて、私は布団を被ったまま脱衣にかかる。決して誉められる作法
ではない。
脱いだ服を蹴飛ばし押しやり、素裸のイクを抱く。素肌と素肌が触れあう。

私の腕の中、イクの小さな身体はすぽりと収まる。背中を丸めて抱き寄せるのが、一番
ぴったり寄り添えるかたちだ。布団と私の腕に覆われて、イクは上気した顔をしている。
当たる呼吸が、熱い。
しっとり湿る背中へと腕を回し、尻を揉む。イクが、くすぐったい、とくすくす笑う。
笑い、細い足を私の足に絡めてくる。片脚を持ち上げる格好になって、私の手の中イクの
尻肉がかたちを変える。浅い割れ目に丁度指が嵌まり、甘い声が上がった。
「てーとく……提督も、触って、いい?」
「うん」
私もイクのことは言えない。息が荒い。布団の中は湿って暑い。熱を帯びて、ぐらりと
する。晩秋だというのに汗が滲む。性器に絡み、持ち上げるように擦り立てるイクの指は
細い。イクのにおいが強く香る。
「あう…」
微かな喘ぎ。指にねとりと絡む熱、蜜、肉。私のそこと負けず劣らず、イクの身体も
準備を整えていた。ふっくりと柔らかい肉を、そっとなぞる。指先を潜らせると、つぷ、
と弾ける音がした。
イクが身を竦ませる。濡れた吐息。締めつける熱い柔襞。
「イク」布団の中にずっと篭もっているせいだろうか。暑い。抑えが効かない。効かせる
気はあったのかと聞かれると、少し困るのだけれど。
「このまま、出来るか」
「……提督は、寒がりなのね」
私の我侭を咎めるでも笑うでもなく、イクはそんな風に受け取ってくれた
向かい合って横になり、イクの片足を私の腰に載せる。大きく開けたイクの足の間、
濡れた柔襞がひくついている。
ゆっくり押し入れたつもりだったが、普段と違う角度は辛いらしく、イクの子どもらしい
丸みを残した顎が上がってゆく。苦しげな喘ぎが布団の中反響する。私の方もあまり余裕
がない。イクのなかは、きつい、というより、狭い。慣れない位置から押し広げられて、
イクはふるふると震えている。
「イク」呼んで、抱き寄せる。私が背中を丸め、イクが背を反らして、そうしてようやっと
目線が合う。「――、」謝ろう、とか、気遣おう、とは、思ったのだ。イクの顔を見る
までは。イクの、じっとりを汗を浮かせ、瞳を潤ませ、もの欲しそうに口の端から涎を
垂らす、イクの姿を見るまでは。
「提督ぅ――」
大きな胸を潰ししがみついてくるイク、その細い足首を掴み、持ち上げる。つられて
布団も持ち上がり、冷たい空気が入り、二人分の熱に塗り潰される。
「あ、てーと、てーとくぅ……!」
狭道を割り裂く。小さな頭を抱え、つむじに鼻をつける。鉄、オイル、汗、甘ったるい
イクの匂い。
湿り気を帯びた布団が重くのしかかる。べたりと貼りつく綿の中、ぬかるみ軋む身体へ
這入る。無理に開かせた中は浅く、こつ、と、簡単に行き当たった。
「ふやああ…っ!」
くっついたイクの下腹がぷるぷる震える。内側は強く締まる。ぐち、ぐちとかき回す
ように腰をぶつけ、奥を抉る。横ざまに寝ているため、好みの部分に当たらないのか、
イクが大きく腰を揺らす。少し下側を意識して突くと、甲高い嬌声が響いた。
熱。熱い。布団の中も、包まれる肉も、イクも、イクの熱も。
「イク…!」
足を放し両腕で抱きしめる。放された足が、私の腰に絡む。引き寄せられる。ごつんと
奥に当たる。奥。衝撃。イクが私の胸元へ噛みつくように擦り寄り、熱い嬌声が爆ぜた。
引き絞り、締めつける強さに、私もいちばん奥に擦りつけ吐き出した。ぎゅうぎゅうに
絡むイクの中は狭く、直ぐにいっぱいになって、それでも貪欲に呑み込もうとしていた。

熱気で湿る布団が重い。布団越しの光が明るい。

イクの熱に包まれて、私はしばらくぼんやりとしていた。酸欠で頭がぼうっとする。
「……電気」
呟き布団から出ようとすると、同じく汗まみれのイクに引き留められる。
「提督、電気、消さないでなの」
イクは私の胸に額を擦りつけ細く囁く。
「今日は、ね、明るい方がいい、なの」
私は少しだけ迷い。布団の端を持ち上げ新しい空気を入れ、今一度布団へと潜り直した。
イクの肩から安堵したように力が抜けた。
今日。
今日だけは。
今日の日付にどういう意味があるのか、私は実のところ詳しくは知らない。
唯、伊十九――“以前”の記憶を持つ艦娘が“暗いところに居たくない”“ひとりでは
いたくない”というならば、望みを叶えてやろうと。それだけを。
此処はあの海ではない――という証をあげられたら、と。それだけを。


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最終更新:2013年11月28日 21:42