提督×妙高4-270

前回の話

3-1-A
太陽は頂点を少し過ぎていた。
南洋の陽光はギラギラと容赦なく照り付ける。
暑い日曜日の昼下がり。
今日は艦隊の休養日だ。
かつて、月月火水木金金と言われはしていた。
現実には人と同じように艦にもオーバーワークは禁物だということは
理解されていたらしく、平時の日曜日は休養日に充てられていた。
無論、今は戦時であるが艦娘達に疲労が溜まらない様に提督は即応待機の部隊を除いて、
休養日を設けていた。
だが流石にこの太陽の下に出歩く艦娘は少ない。
全館に戦艦大和並みに冷房設備を施している鎮守府内で艦娘達は思い思いの休みを
満喫している。
昼食後の厨房には幾人かの艦娘達が集まって料理をしている。
きゃいきゃいとかしましい談笑が聞こえる中、セミロングボブの艦娘が自信無げに
オーブンを眺めている。
ピンクのフリルで飾られたエプロンは粉と恐らくはこねた小麦粉が付着して乾いた
と思しきゲル状の物体で彩られている。
チーン、というタイマーの音に少しビクつきながらもおずおずとオーブンの扉を
開けて天板を取り出す。
天板にはほかほかと湯気を立てる黄褐色の焼き菓子が整然と並んでいる。
「あら、羽黒ちゃん上手にできたじゃない」
和装に割烹着の艦娘が羽黒に笑いかける。
艦隊の母、軽空母'鳳翔'だ。
「は、はい。あの、ありがとうございます」
羽黒がぺこりと頭を下げる。
ラードを練って作ったサクサクのクッキーをバスケットに取りながら羽黒は、
はにかんだ笑顔を浮かべる。
第五戦隊を構成する妙高型4姉妹は連日出撃を繰り返しており、即応待機からも外されて
ここ数日は完全な非番である。
那智と足柄に至ってはドッグの空きに提督に無理矢理押し込められるようにして入渠中だ。
そうでもしないと大破するまで出撃を繰り返しかねない、とため息まじりに提督が
苦笑いするのを羽黒は見ていた。

3-1-B
『提督は優しいのですね』
とドッグ入りする二人を見送りながら榛名が提督の傍らで微笑んでいたのが羨ましかった。
-私も提督の傍にいたい。できれば、手、なんかつないだり……
だが、自分の引っ込み思案な性格を熟知していた彼女にはそれは難問だった。
悩みに悩んだ挙句、彼女は艦隊の母、鳳翔に相談を持ち掛けた。
いつもなら姉たちに相談をするところだ。
だが、提督と同衾しているところを目撃してしまってからは姉たちと提督の話をするのが
どうも気が引ける。
二人の姉、那智と足柄に至っては、酒が入ると体位がどうの口での奉仕がどうのと
大和撫子にあるまじきはしたない猥談を長女の妙高に注意される始末。
その妙高も提督とは関係を持っているのは周知の事実であり、羽黒からすると余裕すら
感じられる。
そこで、艦隊でも古参であり、提督の事も良く知っている鳳翔に駆けこんだのだ。
話を聞いた鳳翔は穏やかな笑顔で話を聞き終わると
『やはり、殿方を落とすのは胃袋からね』
と言って初心者でも簡単にできるクッキーの焼き方を付きっきりで教えてくれたのだ。
『提督はお酒を飲まれるし、初心者の羽黒ちゃんでも作れる甘さ控えめの中華クッキーに
しましょう』
こうして、今、半日かけた羽黒の苦心がまず一つ報われようとしていた。
「……喜んでくれるかな」
幸せそうな羽黒の笑顔を横からニヤリと半月に笑う顔が覗き込んだ。
「そうだねぇ、甘さ控えめは呑ん兵衛の提督向きだからね~」
「えっ、その、あの、隼鷹さん」
元が客船だからか、意外にも料理が得意な隼鷹がからかう。
この軽空母は軟派なふりをして意外と洞察力に定評がある。
「ち、ちち、ち、ち、違いますから、私、その、ごめんなさい!」
「ひゃっはー、図星かな~」
顔を真っ赤にして羽黒はバスケットをテーブルに置くと速力一杯で厨房を飛び出していった。
「ちょっと隼鷹、意地が悪いわよ」
「たはは、めんごめんご。にしても素直で可愛いねぇ」
陽気な軽空母は姉妹の飛鷹に窘められても、あまり反省した様子は無かった。
「そうね、可愛いわね」
そっと後片付けを始めながら鳳翔は柔らかく笑った。
「でも余程恥ずかしかったのね、クッキー忘れてるわ。あの娘」
鳳翔の一言で軽空母姉妹は顔を見合わせて同じように幸せな笑いを浮かべた。

3-2-A
「さて、終わった。片づけたら飯でも行こうか」
「はい。提督」
穏やかに微笑んだ太眉の艦娘が机上の帳簿や資料をまとめ始める。
事務机の上には戦闘詳報や沖ノ島海域の航空写真、敵情などのファイルが開かれている。
休日とはいえ現在、艦隊は作戦行動中である。
艦隊が休んでいる間、つまりは出撃していない間にこそ編成や資源割り当ての準備を
済ませておかなければならない。
事務方が忙しいのは昔から変わらない。
『海軍軍人たるもの地上勤務など希望してはいけない』
と西村提督は言っていたが書類を決済できる”提督”はこの鎮守府には一人しかいない。
書類が山になるのも仕方がない。
特に沖ノ島海域の攻略が始まってから遠征艦隊の編成と入渠作業で提督の手はいっぱいである。
あれやこれやと最近は深夜まで作業が続く事も多い。
今日のところは朝から手伝いに来ていた妙高のおかげもあって作業は順調に片付いていた。
「すまないな、朝から。おかげで助かった」
「いえ、お役に立ててうれしいです」
妙高はてきぱきと資料類を片していたが、ふと手を止め提督を見つめた。
何のことはない平凡な顔立ちの男。
特に上着を脱ぎノータイのシャツというラフな格好の今は特にそう感じる。
だが潮風と爆炎に鍛えられた心と体がその中に隠れている事を妙高は知っていた。
潮気とでも言うべきか。
艦娘達が共通して愛する海軍の男に纏われる独特の色気。
かつて彼女達を指揮していた艦長、司令といった男たちの持っていた香り。
幾度も共に死線を越えるうちに確実にこの男はその香りを強く纏い始めている。
幾度も共に死線を越えるうちに妙高はこの男に特別な感情を持ち始めていた。
はしたないと思いながらも自ら望んで、戦闘の火照りを鎮めるために体を重ねた夜も
多々あった。
しかし、最近はとんとご無沙汰である。
彼が深夜まで書類と格闘していることは鎮守府の誰もが知っている。
彼女自身や那智、愛宕や不知火といった事務処理に比較的長けた艦娘達が仕事を手伝うのが
慣例だ。
そしてその後、寝室まで共にしてしまう艦娘も多い。
妙高は提督の体を慮ってそのまま部屋を辞するようにしている。。
特に二人の妹は完全勝利目前で撤退した時など戦闘の穴を埋めるかのように提督の体を求めた。
秘書艦の仕事を終えて執務室を退出する自分と入れ違いに扉に突撃する足柄や、冷静さを
装いながら手と足が同時に出ている那智とすれ違った事も一度や二度では無い。
自分の慎ましさが恨めしい。
だが。
休日。仕事終了。二人きりの部屋。
ライバル?の艦娘達はほとんど鎮守府を出払っているか疲労で休養中だ。
最も警戒すべき足柄と那智の二人は現在入渠中。
13万5千馬力を誇る機関がうなりを上げ20.3サンチ主砲に仰角がかかる。
天佑ワレニアリ。全軍突撃セヨ。
もじもじと顔を赤らめていた妙高だが意を決したように提督に声をかける。
「あの提督……エッチしましょう!」

3-2-B
「…………へっ?」
唐突すぎる妙高の申し出に提督の時間が止まる。
顔を真っ赤にした妙高は両手をグーに握りしめ提督を見つめる。
「最近、ご無沙汰ですしっ……いえ、はしたないのは重々承知ですがっ」
「そ、そうだね」
ずいと顔を近づけてきた妙高に気圧されて提督が椅子の上でのけぞる。
「ダメ、ですか……」
八の字になった眉毛の下で上目遣いの瞳が潤む。
ゆっくりと頭を振って提督は真剣なまなざしを返した。
「ダメじゃないよ」
ホッとした微笑が提督の視界で大きくなる。
白手袋に包まれた彼女の細い指が優しく顔を包んだ。
熱い唇が彼のそれに重なる。
「…んっ……ちゅっ、ちゅちゅっ……んぁはぁぅ」
そっと妙高の肩に提督の手が置かれる。
そのまま男の胸に艦娘は体を預ける。
心がジンジンとしびれ動悸が高まる。
同時に羞恥心が薄れ、本能が頭をもたげていく。
ほどなく妙高はするりと提督の口内に舌を割り込ませる。
「ちゅっ……んん、ふ……んぷっちゅぅ」
前歯の裏側をくすぐり舌先と舌先を重ねる。
観念したかのように提督の舌が呼応してチロチロと舌先を絡めてくる。
「んぶぅっ……んっんっんっんっ……ちゅぷぅるぅぅ…んぅっ」
次第に大胆になっていく提督の舌の動きに合わせるように妙高はより深く舌を差し入れる。
提督の舌が妙高の舌を完全に捉え完全に絡み合う。
「れろぉ、ちゅぷっ……んぐ、ぅうううんっ……んふぅぅぅぅぅ、んぁふぅぅんっ」
反対に差し入れられた提督の舌が妙高の口内を優しく撫で始める。
舌の裏を、歯茎を、奥歯をくすぐられて妙高の鼻から甘い息が漏れる。
口内に侵入する男の唾液を夢中で舌ですくい集め嚥下する。
胃に落ちていく熱い体液が体の内から抱きしめられる錯覚に妙高を包む。
そのままそっと提督の股間に手が触れる。
硬く熱いものが脈打ってるのがわかる。
ジュンと股間が潤い熱い愛液がショーツを濡らす。
動悸はさらに高まり、思わずごくりと唾を飲み込んでしまう。
-ああ、提督のおちんちん、もうこんなになってる…欲しい。
メスの本能をさらけ出し始めている自分が恥ずかしい。
しかし、愛欲に蕩け始めた脳はそれを甘受し、あまつさえその後の行動を催促する。
「ぷはぁ、はぁはぁ……提督、これ大きくなってます」
妙に手慣れた手つきでジッパーを下げ陰茎を露出させる。
既に力を漲らせていた怒張が天を突くように飛び出した。
「え?、ちょっと、妙高?」
「お疲れでしょうから、私がお口で……はむ、んふぅ」
提督が止める間もなく妙高は提督のペニスにしゃぶりついた。
「ちゅぷっ、ちゅぷっ、ちゅ、んんん……んふぅ、ちゅぷ……じゅるるる」
長いストロークでペニスに引き延ばされるかのように唇が歪む。
じゅぷじゅぷじゅぷ、と淫靡な水音が規則的に室内に響く。
提督が快楽に負け腰を椅子に落として妙高に身も心も委ねたその時。
執務室のドアから遠慮がちなノック音が聞こえた。
「あの、は、羽黒です。提督、いらっしゃいますか?」

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妙高
最終更新:2013年11月27日 14:58