提督×如月3-443

「んもぅー、ギリギリまで一緒にいたいのに。あなたも、一緒にお休みする?」
「…」

意味深なセリフを吐く目の前の少女…いや『艦娘』に内心ため息をつく。

「…馬鹿なこと言ってないで、さっさと入渠してこい」
「司令官ったら、つれないわねぇ…うふっ」

ゆっくりとした足取りで執務室を出て行く駆逐艦娘を見送り、俺はドサリと椅子に腰を下ろす。
…まったく、何を考えているんだか。
何の因果か艦娘達を指揮して未知の敵「深海棲艦」を叩く「提督」となって、はや数週間。
新米提督の俺には彼女…如月のような駆逐艦娘でも貴重な戦力であり、初期に出逢った縁もあって思い入れもそれなりにある。
見た目に反して(と言っては失礼かもしれないが)秘書としてはそれなりに有能なので、未だに秘書艦を務めてもらっているのだが
彼女の言動には未だ掴みきれないところがあり、慣れないのだ。
…いやまあ、正直に言ってしまうと、あの思わせぶりな態度にいちいちドキマギしているだけなのだが
中破姿であんな事言われたら嫌でも反応してしまう。ただでさえ目の遣り場に困るのだ。
俺だってあれが信頼ゆえの冗談の類だということはわかっている。
わかっているが、淡い期待をしてしまうのが男という生き物なのだ。

「…はぁ」

本日何度目かわからない溜息をついて、次の攻略目標を確認する。
「製油所地帯沿岸」。
まだ近場とはいえ、そろそろ敵の戦力が本格的に充実してくることが予想される。
俺にできるのは、鍛錬の計画を立ててやることと、艦娘の報告を元に手持ちの戦力で攻略方法を模索することだけ。
一緒に戦ってやることができないのは歯がゆいが、俺なんかが戦場に出ても邪魔なだけだろう。適材適所というものがある。
とにかく、ここを抑えれば燃料の調達に一定の目処が立つだろう。
資源はどれも不足しているが、特に燃料不足は我が鎮守府において喫緊の課題である。
うちの戦力も充実しているとは言えないが、一応俺なりには鍛錬を積ませたつもりだ。
ベストメンバーをぶつけて、あとは上手くいくようここで祈っているのみだ。

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「…まさか、これほどとは」

提出された報告書を眺め、俺は顔をしかめていた。
大破2、中破2、小破1。撃沈艦こそ出さなかったものの、惨敗である。
初めて確認された深海棲艦。暫定的に「ル級」と名付けたそれは、既存の深海棲艦の火力を大きく上回るものだった。
おそらく戦艦クラスだろう。このような近海に出現するとは…
今までは比較的楽に進めてこれただけに、ショックは大きい。少々楽観視が過ぎたようだ。

「すみません司令官…私の力及ばず…」

報告書を提出した如月もまた、手ひどくやられていた。

「いやー、やばかったやばかった。ありゃあかなりの強敵だねぇ」
「gkbrでしたよ、ご主人様ぁ」
「水上爆撃機での攻撃も、ほとんど効果ありませんでした」
「やはり私達のような軽巡や駆逐艦だけでは力不足なのでしょうか」
「…かもしれないな。ともかく、対策を考えておく。
皆、ご苦労だった。損傷を受けたものはすみやかにドックに。今日はもう休んでくれ。
…あー、如月は修復後、執務室に来るように」
「…! は、はい…」

全員の修理が完了するのは、まあ3時間後といったところだろう。
消沈した足取りで出て行く皆を見ながら、どうしたものかと考えあぐねる俺だった。

「司令官。如月、参りました」
「ん。入ってくれ」

ガチャ、とドアを開けて入ってくる如月。まだやられたショックが尾を引いているのか、やはりいつもより元気が無い。

「修復は完了したか?」
「…はい。問題ないです」
「うむ、良かった。お前が一番やられていたからな、心配だった」
「は、はい。申し訳ありません」
「はは、別に責めたわけじゃないよ。ドックの妖精さんにお礼を言いな。…で、次回の作戦だが」
「っ!」

ビクリと肩を震わせる如月。

「…ん、どうした?」
「い、いえ…」
「そうか?…コホン、製油所地帯沿岸の攻略にあたってだが、対策として…まあ対策と呼べるほどのものでもないな。
鍛錬を積み、挑むだけだ。目標として、今回攻略にあたった全員を改造できるレベルにまで引き上げる。
特に北上と千歳は、改造することでかなりの強化を期待でき―どうした?」
「え…?」

如月は呆然とした面持ちでこちらを眺めている。

「い、いえ…あの、より強力な艦の採用は考えないので?」
「うむ…俺も考えたんだがな。建造、運用ともに我が鎮守府の台所事情ではちと厳しくてな。
今のメンバーを強化する方針で行くことにしたよ」
「…」
「…と、いうのは半分建前でな」
「え?」
「正直なところ、俺は今のメンツにはそれなりに愛着があるのだよ。もちろん今後限界が来るだろうが、
それまでは頑張れるところまで頑張ろうと思っている」
「では、私を呼び出したのは…?」
「何を言ってるんだ、君は俺の秘書艦だろう?今後の予定を把握しておく必要があるじゃないか。皆に伝えておいてくれ」
「…」
「…あー、本音の部分は伝えなくていいぞ、こっ恥ずかしいからな」
「…は、はい!では、失礼しますっ…」

ドアが閉まる音を聞を聞きながら、俺も今日のところは切り上げることにする。
そういや、今回は如月のセクハラ…もとい、社交誘惑(と勝手に名づけた)は無かったなぁ、などと考えながら
風呂に入るべく執務室を後にしたのだった。

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次の日から、地道な鍛錬の日々が始まった。ひたすら近海の雑魚達を虱潰しに潰して回るのだ。
漣からは「ああ、ファンタジー北島ですね」などと言われたが…正直意味がよくわからなかったので適当に相槌を打っておいた。
まあ、時間がかかるのは否めないが、今のメンバーでいくならこれがおそらく最短ルートなのである。
そうこうしているうちに千歳が改造可能になり、その副産物である甲標的を同じく改造した北上に載せると効率は飛躍的に上がった。
もちろん彼女らにずっと付き合っている他のメンバーも着々とレベルを上げ、ついに全員が改造済みとなった。

「…ふむ」

俺はその旨を報告する報告書を満足気に眺め、それを持ってきた如月に目線を向けた。

「うん、ここまで強化すればなんとかなるだろう。如月、ご苦労だったな。皆にも伝えてくれ」
「は、はいっ!」

いよいよ明日、リベンジを決行する。如月も緊張しているようだ。

「できることはだいたいやった。あとは君たちの頑張り次第だ。期待しているよ」
「はい!で、では、失礼します…」
「ははは、そう気負うな。何なら添い寝してやろうか?」
「! お、おやすみなさいっ」
「ああ、おやすみ」

パタパタパタ…がちゃん。
うん、意外に可愛い反応するじゃないか。今までやられっぱなしだったがたまにはやり返すのもいいだろう。
そういえば最近は社交誘惑の頻度も落ちてきており、無ければ無いでなんとなく寂しい気もする。
まあ忙しかったしな。疲れていてはそんな余裕もあるまい。
俺も明日に備えて早めに休むとしよう。

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いよいよ翌朝である。埠頭にて、出発前の艦娘たちへの激励。

「えー、ごほん。本日はお日柄もよく―」

いやいや、なぜ俺が緊張してるんだ。

「ごほんごほん。えー、今日こそは諸君らの練度を見せつけるときである。
ル級は手強い相手だが、レベルが倍になった諸君らは十分対抗できると私は信じている。
各員の奮闘を期待する」
「はいっ!」「はーい!」「はい…」「はーい」「うーい」「はっ!」
「あー…最後に一つ。帰ってくることが最大の戦果だ。そこを忘れないように。以上」
「「「「「「「はい!」」」」」」

鍛え上げた艦娘達を送り出したあとは俺にできることはない。せいぜい執務室をそわそわと歩きまわるぐらいである。
近海なので結果はすぐ出る。その時を待つのみである…



やけに長い午後が終わった。待ちきれず暮れつつある埠頭で待つ俺のもとに、ついに艦隊が帰投してきた。

「提督、第一艦隊、ただ今帰投しました!」

しかし、帰投の報告をしたのは長良であった。旗艦はもちろん如月だったはずである。
どくどくと跳ねる心臓を抑え、なるたけ平静を装って長良に声をかける。

「ああ、ご苦労だった。戦果と損害を報告せよ」
「はい。我が艦隊は製油所地帯の敵の排除に成功。次のエリアに進軍可能です。
損害ですが…」

どくん。

「―大破1、中破2。如月の損害が特にひどく、撃沈は免れましたが辛うじて浮いている状態です。
航行不能のため神通が曳航しており、到着は今しばらく―」

その後の長良の報告は耳に入らなかった。
練度が足りなかったか。慢心だったのか。いや、いくら練度を上げても損害をゼロにすることはできない。
しかし敵の火力が高いことはわかっていたはずだ。「愛着がある」程度の理由は艦娘をひどく傷つける結果となっても正当化できるのか。
自問自答が頭の中をグルグルと回り、後悔の念が押し寄せてくる。

「…わかった。よくやってくれた。損傷を受けたものは、すみやかにドックに入りなさい。その後はゆっくり休んでくれていい」
「はい、分かりました…あ!神通たちが到着したようです!」
「!」

急いで港の方を見ると、神通と彼女に手を引かれている如月がちょうど入港するところだった。

「神通!」
「提督!如月が、如月が…」

涙目の神通から、ぐったりとしている如月を受け取って抱き上げ、そのままドックへ走る。

「あ…司令…官…」
「! 大丈夫か、如月!」
「わが艦隊、は…やりましたよ…私も…ううっ」
「今は喋らなくていい、すぐに入渠させてやるからな…妖精さん!」

ドックに駆け込み、周りで飛び跳ねているドックの妖精さんを呼び集める。

「こいつを…早く直してやって下さい!」
「はーい」「またひどくやられましたなー」「まあ、なんとかなるです?」「しすてむじょう、ておくれはありえませぬゆえ」
「…っ、お願いします!」

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ドックの妖精さんに託したら、もう俺にできることはない。執務室に戻り、如月の修復を待つ。
当然仕事など手につかず、悶々とするしかできなかった。今日初めて自覚した、俺の中での如月の存在の大きさ。
艦娘とはいえ、あんな小さな娘に無理をさせてしまった。もう少しで俺は彼女を失うかも知れなかった。
その恐怖と己の愚鈍さへの自責の二重苦に苛まれ、どれだけ経っただろうか。コンコン、という控えめなノックの音に顔を上げる

「… 如月です」
「! あ、ああ、入りなさい」
「司令官…ご、ご心配を、おか、お掛け…」
「…かった」
「え?」
「よかった…帰ってきてくれて…」
「ああ、あのあの、司令…!?」

俺は思わず如月に駆け寄り、抱きしめながら泣いていた。
俺の腕の中にすっぽり入るほど小さく、そして温かい。
ここにいてくれることに感謝しながら、俺はいつまでそうしていただろう。

「あの…ご報告を…」
「あ、ああ…」

報告なら長良から受けたが、正直あの時は動転していたのでほとんど聞けていない。
何より如月から聞かないと、報告を受けたという実感が湧かない。

「わ、我が艦隊は、製油所沿岸にて敵主力艦隊を発見。前回の接敵時と同じく、戦艦『ル級』を確認。交戦状態に入りました。
戦闘の結果、敵艦隊の撃滅に成功。我が艦隊の損害は駆逐艦大破1、軽巡・雷巡それぞれ中破1。戦果と比較すれば、軽微と言えるでしょう」
「…」

確かに、戦果と損害の比較としてならそうだろう。しかし、俺には「駆逐艦大破1、軽巡、雷巡中破2」で片付けられてしまうそれを軽微と呼びたくない。
この小さな艦娘が傷つく姿を、軽微とは呼びたくないのだ。
だがそれは艦娘の前で言う訳にはいかない。俺は提督なのだから。

「…ああ、よくやってくれた。君は俺の自慢の艦娘だよ」
「ひぅ…っ」

頭を撫でながら労いの言葉をかけると、如月は真っ赤になって固まってしまった。

「はは、ちょっと気障だったかな。…ご苦労様。ゆっくり休みなさい」
「は、はいぃ…お、おやすみなさい」
「ああ…」

退室する如月を見送り、安堵と、さっきの自分の醜態に今更ながらに羞恥を覚えながら、
俺も就寝の準備を始めるのだった。

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次の海域は「南西諸島防衛戦」。ここを突破すれば、いよいよ本格的に敵を叩くことになる。
なるのだが…

「…あ、あの、おは、おは…」
「…ああ、おはよう如月」

…如月の挙動がすっかり不審になってしまったのだ。

「は、はい…」

顔を赤らめて返事を絞りだす如月。
いや…これは挙動不審というか…どう見ても、その…
原因は明らかに先日の俺の所業だろう。どうやら図らずもクリティカルヒットしてしまったようだ。
今までイケイケな如月しか見たことがないこともあり、この如月はこの如月で破壊力抜群だった、おそらくこちらが素の如月なのだろう。
当然「接待誘惑」もぱたりと無くなったが、あれは無理してキャラ付けをしていたのだろうか?
まあ、そのへんはこの際どうでもいい。問題は如月の秘書業に支障が出ていることと、
ついでに他の艦娘たちの「早く何とかしてやれや(意訳」な有形無形のちょっかいがうざったいことである。
しかし、そんなことを言われても俺は提督である。個人的にはその…非常に嬉しいのだが、立場上その気持ちに応える訳にはいかないのだ。
それにこっちだってこんなことに手馴れているわけではない。…困った。

「情報によると、南西諸島には空母が出現するらしい。なので、千歳を重点的に鍛えようと思う。
…あー、それでだな。一時的に千歳に旗艦を務めさせてみようと思うのだが…」
「…はい」

あーもう、そんな悲しそうな顔をするな!

「あくまで一時的な措置だぞ。南西諸島防衛戦には君にも頑張ってもらうつもりだ」
「はい…では、千歳さんをお呼びしてきますね」

しゅんとした様子で退室する如月。
…はぁ。何とかしてやりたいのはやまやまなんだがなぁ…

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「提督。千歳、参りました」
「ああ、入ってくれ」

如月に呼ばれてきた千歳に、次の海域での作戦の概要を説明する。

「――というわけだ。期待しているよ」
「了解です。…ところで提督、なにかお悩みですか?」

雰囲気を察したのだろう、千歳は目端が利く。…そうだ、彼女に相談してみるのもいいかもしれない。

「いや、どうしたものかってね」
「ふふ、如月ちゃんのことですね?」

流石である。

「受け止めてあげればいいじゃないですか。よっ、色男!」
「あのなぁ…そう簡単な話じゃない。俺は…提督なんだ。艦娘と特別な関係になる訳にはいかない」
「それは規律的な意味でおっしゃってるんですか?」
「そうだ。万一そんなことになってしまったら、おそらく業務に支障が出るだろう。
贔屓をするなと如月に反感を持つものが出てくることも考えられる。第一、あんな小さい娘と―」
「提督は、あの娘のことをどう思われているんです?」

俺の台詞を遮って、千歳が質問をぶつけてくる。

「…うちの大事な艦娘の一人だ」
「そういう意味で聞いたのではないとお分かりのはずです」
「…」

くそう。「全てお見通しです」みたいな顔してやがる。
そう…俺だって、如月にどうしようもなく惹かれているのだ。如月を失いそうになって初めて自覚した、自身の気持ち。
千歳相手では、どうやら隠し通すのは無理なようだ。

「…そんなに俺、バレバレか?」
「はい」

マジかよ。即答されてしまった。

「提督。あの娘が以前、どうして誘惑するようなセリフを言っていたか御存知ですか?」
「…いや…」
「あの娘はですね、『前』はほとんど何もできないまま沈んでしまったんです。
ずっとそれを気にしていたと、せめて『ここ』では、役に立ちたい…活躍したい、と…そう言っていました」
「…!」
「だから、ちょっと無理してでも積極的に振る舞って。あれが、あの娘なりの精一杯のアピールだったんでしょうね。
もちろん、提督はそんな誘いに乗らないというのはあの娘もわかっていたでしょうけど。
でも…製油所地帯沿岸の攻略で、だいぶ心境に変化があったみたいですよ?」
「…?この間の戦いで?」

俺が如月にアレ(泣きつき&クサいセリフ)をやらかしたのは、つい先日のはずだが…

「どういうことだ」
「ふふ…本人に聞いてみてはどうですか?」

千歳が言葉尻をドアの向こうに向ける。…え、まさか…
予感は残念ながら大当たりし、頬を染めた如月がドアの影から姿を現す。やばい、全部聞かれてたか…?

「では私、ちょーっと野暮用で席を外しますね。しばらくは帰ってきませんし、
この部屋には誰も入ってきませんからご心配なく~♪」
「お、おい!」

無責任にもそう放言していなくなる千歳。ドアがバタンと閉じられて、静寂が執務室を支配する。おい、どうすんだこれ…
…と、如月は無言でこちらに近づいてきて、俺のそばまでやってくる。やばい、どうする。

「あ、あのな如月…」
「以前、ここに呼び出された時です」
「え…」
「私達が製油所地帯沿岸の攻略に失敗して、ボロボロになって帰ってきた時です。
所詮、私は旧式の駆逐艦。あんな深海棲艦に、とても敵わない。私はもう司令官のお役に立てないって思いました。
ですから入渠のあと呼び出された時、きっと私は艦隊から外されてしまうんだって。い、いよいよお役御免だって。私、すごく怖かった。
でも…」

如月の目からポロポロと涙がこぼれ落ちる。

「でも、司令官は、き、如月のこと、使ってくれるって。私は秘書艦でいいんだって。
わ、わたし、まだまだお役に立てるんだって。嬉しくて…気づいたら、司令官のこと、す、好きに、なっちゃってました…」

…そうか。あれがきっかけだったのか。思えば、あの頃から如月の雰囲気は変わっていたっけ。

「…最初は諦めようって、忘れようって思ってました。司令官は司令官なんですから、こんなこと言われたって困るだろうって。
司令官だって、あくまで私を艦娘としてああいうことを言ってくれたんだろうし、私だけに向けられた優しさではなかっただろうから。
でも、大破して帰ってきた私を、あんなに必死に抱きかかえて、ドックまで連れて行ってくれて。
帰ってきてくれてよかったって泣いてくれました。おかげで、気持ちが抑えられなく…なってしまいました…
私にはそれをどうすることもできなくって、落ち込んでたら、千歳さんが相談に乗ってくれて。私に任せろ、なんとかしてやるって…」

くそう、それで千歳の奴、誘導尋問のごとくカマかけてきやがったのか。不覚…

「それで、あの、司令官…さっきのは…」
「くそっ…ああそうだよ。俺だってお前のことは好きだ。でも…うわっ!」

如月が抱きついてくる。落ち着け、落ち着け俺の煩悩。

「それは…女の子として…ですか?」
「…ああ。俺もつい最近わかったんだが、な。艦娘は皆平等に接しなきゃならんのに、提督失格さ…俺は」
「でも、私は…嬉しいです」

その言葉にどきりと心臓が跳ねる。もはや、俺には拒絶することができなかった。
俺の腕の中で如月の、物言いたげな大きな瞳がこちらを見つめている。彼女の欲していることを、俺は正確に読み取っていた。

「ん…ふ…」

唇を重ねるだけの、しかし決定的な行為。
どれだけそうしていただろう。キスを終えて、ほう、とため息を吐く如月。

「お願いです…如月を司令官のものに、して…」

上気し潤んだ瞳で投げかけられるその『誘惑』は、今までに彼女が放ってきたものとは、明らかに異質だった…

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執務室の奥の仮眠ベッドに如月を横たえさせる。

「あ…あの…司令官…」
「何だ?」
「私…こ、こういうの、初めてだから…」
「ああ…俺に任せてくれればいい。楽にしててくれ」

コクリと頷く如月に寄り添い、体を抱き寄せて
ときおり軽くキスをしながら、背中やうなじ、頬を優しく撫でて、緊張を解してやる。

「…ん…は、あ…司令……っ」

肌に触れる度に俺の腕の中で悩ましげな吐息を漏らす如月は、それだけでどうしようもなくこちらの興奮を煽る。
今すぐ滅茶苦茶にしたい衝動を必死に堪え、丁寧に進めていく。

「…脱がすぞ」
「っ」

ぴくりと体を震わせてこちらを見つめる如月を肯定と受け取り、セーラー服のリボンをしゅるりと引きぬく。
胸元のホックを外し服の前面をぱかりと開くと、華奢な少女の素肌を覆う、少し派手な下着が現れる。
中破時に見慣れたそれは、しかしまじまじと見たのはこれが初めてである。
如月が顔を真っ赤に染めて恥じらう様子も加わって、以前よりも余程扇情的な姿だった。

「綺麗だ、如月。如月の輝く肌、もっと近くで見たい」
「や、やぁっ…」

自分で言う時は我慢出来ても、さすがに他人に言われるのは恥ずかしいのだろう。分かってて言っているのだが。

「ブラ、取るよ」

返事はない。きゅっと目をつむったまま、羞恥に耐えることしかできないようだ。
抱きしめるように如月の背中に手を回し、ホックを外してブラジャーを脱がすと、控えめながらも美しい双丘が現れた。

「如月の胸、とても綺麗だ」
「~~~っ」

まるで宝物に触るかのように、如月の胸にそっと触れる。
触られた瞬間はビクリと震えたものの、ゆっくりと撫でてマッサージするように揉んでいくと
如月の体からだんだんと力が抜けていく。

「…っあ、 …はぁ…はぁ…っん、んんっ…あ…」

時折漏れる微かな嬌声がスパイスとなり、俺自身も如月の体に夢中になっていく。
乳首は充血してツンと尖り、俺の指がそこに触れる度に一段高い喘ぎ声を上げる。
その声は俺が唇で乳首をはみ、舌で刺激するとどんどん大きくなっていく…

「はんっ…あ、しれいか、ああっ、あ、そこっ、そんなにっ…はぁんっ…」

頃合いを見計らって胸への愛撫を中断すると、物欲しげな如月の目線とぶつかる。

「…下、触るよ」
「はぁ…はぁ…っ」

宣言と同時にスカートの中に手を差し入れ、滑らかな太腿を撫でる。
撫でる度にぴくりと体を震わせるが、拒絶の意思は感じられない。
そのまま焦らすように少しずつ手の位置を陰部の方に近づけていく。

「はぁっ…はぁ…、あっ、んん…っ」

やがて…ついに如月の下着に手をかけ、その上から恥丘を、クリトリスを、スジを撫で回す。
スカートの中でワレメを下着ごと弄って、くちくちと淫靡な水音を立てているのに直接見えないその動きは、
だからこそより扇情的な刺激となって、俺と如月を煽り立てる。

「見ても…いいかな?」

荒い息のまま無言でこくこくと頷く如月。
留め具を外してスカートを取り去ると、ブラと同色のショーツが露出する。
既にうっすらと染みの付いているそれをたっぷりと時間を掛けて脱がしていく。
蠱惑的な曲線を描く無毛の恥丘が、きれいなピンク色のスジが、愛液の糸を引きながら露わになっていく…

「全部無くなったよ、如月…如月の身体、すごく綺麗で可愛い」
「やぁっ…そ、そんな、言わないで…っ」
「もっと見てみたいな。如月の身体、全部見せて欲しい。いいかな」

確認するポーズは取るものの、ここまで来たらもう止められない。
つややかな如月の太腿を優しく撫でながら、ゆっくりと股を開かせてゆく。
やがて…愛液にまみれた如月のまだ幼さを残した女性器が完全に曝け出される。
すべてを見られている羞恥にプルプルと震える如月。

「…~~~っっ…」
「全部見せてくれたね。ありがとう如月」

安心させるように抱きしめキスすると、羞恥も少しは和らいだか震えは止まる。
その体勢のまま、覆うものの無くなった如月のワレメに手を伸ばす。

「あっ…! しれ、ぃ、ゆ、び、は、はぁんっ は、はいって、ひ、ひぃんっ」

愛液でヌルヌルになったスジにそって中指をなぞらせ、膣内の浅い場所をちゅくちゅくと弄り、クリトリスを優しく指で押しつぶす。
その度に一際甘い悲鳴が執務室に響く。
自分の指先の動き一つで愛する女の子が嬌声を上げることが嬉しくて、未成熟な少女のワレメを好き放題弄くり回すことに夢中になる俺。
同時に首筋、乳首、臍…と、キスする場所をどんどん下に移していく。

「ぁぁっ…し、れい…っ そこ、だめぇっ…な、舐めるの、やぁ、やああっ…!」

下腹部、太腿の付け根、恥丘、包皮に覆われたクリトリスにキスを繰り返し、如月の一番大切な場所にぬるりと舌を這わせる。
少女の性器を味わうことで頭がいっぱいになった俺は、スジを指でくぱぁと広げ、奥に隠されていた膣口に舌を伸ばす。
時折ヒクヒクと蠢くそこを直接舌で愛撫し、止めどなく分泌される愛液を夢中で舐めとる。

「あっ…ふわぁぁぁ、んっ、ふ…っ そ、そこ、あ…あっ しれ、ぇ、ふぁ、あ、は、あぁー… っあ、あっあっあぁあー…っ」

如月はもはや甘い啼き声を抑えようともせず、与えられる淫らな快楽に身を委ねている。
トロトロにこなれた肉穴は指を侵入させると容易にそれを飲み込み、膣内を掻き回す度にぬちぬちゅと粘質な音を立てている。
トドメとばかりに、俺は露出し始めている陰核を包皮ごとちゅう、と吸い上げた。

「っくひ、ぃぃぃっ…う、あ、っ… 、あ、はぁっ、はぁっ、はぁ…」

その途端、如月の身体がブルブルと震えて膣内の指がきゅうきゅうと不規則に締め付けられ、やがてくたりと弛緩する。
どうやら達してしまったようだ。

身体を火照らせた如月の息が整えるまで待ち、もう一度唇を塞ぐ。

「んっ…ふ、ひれぇ、は、ちゅ、ぴちゅっ、んん、んぅっ…ちゅ、はぁ、司令…」

今度は舌と舌を絡め合う、濃密なキス。お互いの唇をはみ、自分の唾液を送り込み、相手のそれを舐めとる、口でするセックス。
ちゅく、くちゅる、ちゅぱちゅぽと派手に音を立て、如月の吐息さえ全て自分の肺腑に取り込みたくなる。
脳髄まで甘く蕩けて、口の周りがベトベトになってもまだやめない。やめたくない。

「あふぅ、ふっ、ふっ…はぁ、あむっ… ちゅう …っ…ぷはっ!はぁっはぁっ、はぁっ…」

限界まで如月の口腔を犯して、ようやく口を離し、抱き合ったままベッドに身体を投げ出した。
しばらく息を整えて、俺も立ち上がって衣服を乱暴に脱ぎ去る。如月との間にあるもの全てが、もどかしい。
…と、お互い生まれたままの姿になったところで、如月がひしと抱きついてきて、そのまま動かなくなる。

「…お、おい。どうした…?」
「…」

手当たり次第俺の身体にキスをしながら、そのままずるずると身体を落とし、如月の身体が、顔が、下にずれていく。これは、もしかして…
そうこうしているうちに如月は膝立ちになり、如月のちょうど目の前にいきり立った俺のペニスが姿を現す。
如月のキスは、当然ソコにも降り注ぐ。

「…ちゅ、ん、はぁ、ちゅ、ちゅぷ、ちゅぴ、はぁ、はぁ、れろ、ちゅぷっ…」

やはりそうだ。如月は俺のやったことをそのまま俺に返そうとしているのだ。
如月が俺の愚息に口付けしているというだけで腰が砕けそうになり、たまらずベッドに座り込むがそれでも如月の奉仕は止まらない。

「ちゅ、ふうっ、ふう、ちゅぷっ、ちゅぴっ、ぢゅるぅ、はぁ、はぁ、くちゅっ、ぴちゃっ、ぴちゅっ…」

むしろ俺の様子を見て自信を付けたようで、フェラチオはどんどん大胆になっていく。

「はぁっ、はぁっ、き、さらぎ…根本、から、舐め上げて…それから、唾を塗りつけるみたいにっ…全体を…」
「… れろぉっ…ちゅ、ちゅっ、にゅるぅ、はぁ、れるぅっ、ちゅうっ、ちゅくっ、はぁ、はぁ、ちゅ、ぺろ…」

無言で俺のリクエストに応える如月。
如月の熱い吐息と柔らかい小さな舌が這いまわり、剛直全体が如月の唾液まみれになっていく。
拙くとも俺を気持ちよくさせようという思惟が舌遣いから伝わって、それがより快感を加速させる。

「う、ん…いい、ぞ…手でゆるく握って…しごきながら、先っぽをしゃぶってみて…」
「はぁ、はぁ、… ぱく、んふぅっ、ちゅっ、んふ、ん、んっ、はぁ、はぁ、んんぅっ、ちゅ、ちゅぴっ…」

根本が如月の小さな手で握られ、唾液とカウパーでにゅちにゅちといやらしい音を立ててゆっくりとしごかれる。
亀頭が熱い口内に包まれ、カリ首がちゅうちゅうと吸われる。
時折、これでいい?と確かめるように上目遣いで見られるのが堪らない。

「っく、はぁっ、そ、それから、出来るところまででいいから、深く咥えこんでみて…っ」
「… くぷぷっ、ぬろぉぉ、ぐぷっ、ぐっぽ、じゅぶっ、くぷっ、くぽっ、くぽっ、くぽっ…」

俺の注文になるたけ応えようと、動きはどんどん激しくなっていく。
自分の小さな口に不釣り合いな、男のモノを咥えこんでいるというのに、表情はトロンと蕩けている。
俺も如月にクンニしていたときは、こんな表情だったのだろうか…そんなことを考えているうちに、限界はあっという間に近づいてきた。

「ちゅる、じゅ、ちゅぽっちゅぽっ、ふぁ、ん、ぐっぽ、んぶぅ、ちゅっぷ、ちゅっ……ぢゅううううっ!」
「っくあっ…き、如月…離れろ…っ」

しかし如月はペニスに吸い付いたまま離れない。むしろ尿道口が舌先で弄りられながら、ちゅうっと吸い上げられた。その瞬間―

ぶびっ、びゅるるるーっ! どくん、どぐっ、びゅ、びゅっ…

「っ! んぷ、っ、んっ、…っ … こぷっ、ふ、ふ、ふう、ふう…」

欲望が決壊し、性欲の塊が如月の口内にぶち撒かれる。
溢れた白濁液をぼたぼたと垂らしながらも、如月は懸命に受け止めている。

「ふー…ふーっ… …んくっ…はー、はー…」

大半は零してしまったが、確かに今、口内に残っている分を飲み込んだ。
その上、発射して萎えてしまったペニスにも舌を這わせ、精液の汚れを舐めとっている。

「き、如月…っ」
「…かったですか?」
「え?」
「きっ…気持ち良かったですか…?」
「あ、ああ…見て分かる通り…最高だった。無理を言ってすまなかったな」
「いえ…そんなここと…ないです…私が、してあげたかったんです…」

しかし…口のまわりを俺の精液で汚したままはにかむ如月は…

「如月…お前、やっぱエロいわ」
「ええぅっ…!」

今更ながらに自分のやった行為を思い出して耳まで染まる如月を、俺は抱き上げて改めてベッドに寝かせる。
仰向けの如月に覆いかぶさり、耳元で囁く。

「…できるだけ優しくする。きつかったら言えよ」
「多分…大丈夫です。司令官は優しいですから…」
「…っ」

多分他意なく放っている言葉なのだろうが、いちいちドキリとさせられる。
一気に挿入したい気持ちを抑え、剛直の先端を如月の花弁に押し当てる。
双方ともに既にいろんな体液でヌルヌルになっており、触れた場所から熱く火照った如月の高い体温が伝わってくる。
少しでも緊張をほぐそうと、こちらを見上げる如月の頭を優しく撫でた。

「…いくぞ。力、抜いて…」
「は、はい…」

腰をゆっくりと押し進め、俺の肉棒が小さな如月の胎内に侵入していく。

「っあ…」

狭い膣口に亀頭が飲み込まれる。さっきのフェラチオに似た、しかし肉で握りしめられるような感触。

「…っく、あ…あっ…」

更に慎重に進めると、亀頭に何かが突っかかる。多分、これが、如月の…
意を決して、さらに肉槍を押しこんでいく。

「ふ…うっ、はっ、は…っ  くああっ…! …はーっ、はーっ、はーっ…」

プツリという感触とともに更に陰茎が膣内に沈み、やがてコリコリとした肉の壁に突き当たる…

「如月…全、部、入ったぞ…大丈夫か…?」
「は、はい…  っっ!」

如月の顔が苦痛に歪む。

「っお、おい…やっぱりやめる―」
「だめッ…!」

慌てた俺の声を、如月が遮る。

「だめ…やめないで…私、は、大丈夫、です、から…」

…如月は、役に立てなくなるのが怖いと言っていた。その恐怖が、『以前』の記憶が、そう言わせるのだろうか。
だとすれば、今止めれば更に彼女を傷つけてしまうだろう。

「…如月…」
「はぁ、はぁ、ぁむ…ん…」

痛みを堪える如月に、繋がったままキスする。
同時に首筋や背中を優しく愛撫しながら、胎内の異物に慣れるまで抱きしめてやる。
しばらくそうすることで、ギチギチだった膣内も少しずつ緩くなってくる。

「ふっ…う…あぁ、はぁ、ん、うあっ、は…っ」

前戯でさんざん濡らしていたのが良かったのか、一旦動けるようになると意外と抵抗は少ない。
きつすぎる膣圧と分泌される愛液が、逆にゾクゾクする快感となって俺のペニスを責めたてる。

「あ…あん、はぁ、んん…んっ、ぁ、はぅ、はぁ、はぁ、んゃっ…」

漏れる吐息に甘いものが混ざり始めた。如月も大分慣れてきたようだ。
もう少し大胆に、膣内をかき混ぜるように腰を動かす。

「あぁ、はぁんっ、はぁ、はぁ、 ! う、あぁっ…! しれい、は、やぁんっ…!」

少女の小さな肉穴に俺の肉棒が飲み込まれ、その光景がにゅちゅ、くちゅ、という淫らな水音とともに興奮を煽る。
意識して亀頭で天井を擦り上げると、その度に甘い嬌声が上がり、膣内のモノがきゅん、と締め付けられる。
射精してしまいそうになるのを懸命に堪え、如月の美しいとしか表現できない上半身に手を伸ばす。

「ひぃんっ!あ、や、そこ、も、さわっちゃ、あっ、わ、わた、しぃっ… ~~~っ」

グミのようにしこった乳首を指でこね、押しつぶすと、如月の受けた刺激がそのまま膣肉からの刺激に変換される。
その様子があまりにもいやらしくて、射精欲も限界に近づいてくる。
腰を動かしながら無意識に如月の裸体を抱きしめて、耳元で絶頂が近いことを告げる。

「きさ、らぎっ…だす、ぞっ…お前のナカにっ…ぜん、ぶ、だす…からなっ…!」
「は、いっ… はいっ… きさらぎ、をっ…しれい、かんの、ものに、してっ…」

その懇願とともに膣内が子種を欲するかのようにきゅうう~っと締め付けられ、それがトリガーとなって欲望が爆発する。

ドクッ!ビュルル、ビュルッ、ビュッ…

肉棒がどくんどくんと脈動し、俺の精が如月の胎内に流れ込んでいく…

「はぁっ、あ、びくびくってっ…しれいかんのっ…なかに、いっぱい、あぁ…っ」
「はぁ、はぁ、きさらぎっ…」

溜めていたものを最後まで注ぎ込んだあとも、如月の小さくて熱い体を抱きしめたまま、離れることができない。
如月の華奢な腕も俺の背中を抱いて、俺達は溶け合ったかのように一体となっていた。

どれだけそうしていただろうか。
お互いの息も落ち着き、ようやく離れて萎えた陰茎を引き抜くと、生々しい色合いの粘液がごぽりと溢れ出る。
それを指先で拭い放心状態の如月の口元に持って行くと、無言でちゅぱゅぴとしゃぶりだす。
…やっぱり、如月はエロい。

「…あ、司令官…」
「ん?」
「…ずっと、お側に置いてくださいね」

初めて出会った時に聞いた、しかし全く違う意味を持った言葉。
俺もその時と同じ、だが少しだけ違う返事を返した。

「…ああ。これから"も"、よろしくな」

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その後、如月の態度はほとんど以前の様子に戻り、秘書業にも問題はなくなった(千歳を筆頭とする他の艦娘の冷やかしは未解決のままである)。
が、「社交誘惑」に時折社交ではないものが混じるようになり、その判別に俺が苦悩することになったのは言うまでもない。

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最終更新:2013年11月13日 01:58