………
……

次の日、少年の元に巨大な黒竜が訪ねて来ていた

「………キア?」

白髪の少年は駆け寄った

「キア! 久しぶりだぁ!」

そして抱きついた


「ち、ちょっと離しなさいよっ!! あーもう! 引っ付き虫か!あんたは!」

黒竜がなんとか振り払おうと首を上下に動かす


「それでどうしたの!? オレと遊んでくれる!?」

興奮しながら白髪の少年は足をバタバタさせている


「………え、あ、うん、後で遊んであげるわよ! そ、それより斎月は来てない?」

「…え? 斎月はキアと一緒に下界に降りて… それからずっと… 戻って来てないよ…?」


少し残念そうな… でも分かり切っていたような顔をキアと呼ばれる黒竜は見せた…


「そう… って何? まだあんた『光竜華』を飛ばせてなかったの?」

キアと呼ばれる黒竜が白髪の少年の愛でる『光竜華』に気付き質問を投げる

「そうだよ!キアの嘘つき!もう二百年は待ったけど全然飛ばないじゃんか!」

白髪の少年は大声で答えた


キアと呼ばれる黒竜は少し呆れた顔をして、


「バカね… 着いて来なさい!」

そう言うとキアと呼ばれる黒竜は自分の首の引っ付き虫と『光竜華』の植木鉢を器用に背に乗せて飛び立った

「え、キア!? 何処にいくの!?」


………
……

2人は崖の上に来ていた
ここで天空が終わり、雲と霧が目の前に広がっている

「キ、キアー……?」

少年は不安そうな声をあげる…


「この辺でいいかしら… いい? 良く聞きなさいよ!」

「待ってるだけじゃいつまで経っても飛ぶものも飛ばないわよ! さぁ貸しなさい!」

キアと呼ばれる黒竜は植木鉢を崖淵の地面に置いた


「…キア?」


………と自分に背を向ける黒竜を眺めていると、
ふと、白髪の少年は、昨夜読んだ黒い本の1ページを思い出した…


ーーー汝が捧げんは『竜の心臓』


「(……いまなら、いまならもしかして…?)」

白髪の少年の頭に良からぬ思いが過った


少し近づく…
「………ねぇ、キア?」
「なに?」


少し近づく……
「………どうしてオレは竜になれないのかな?」
「知らないわよ」


少し近づく………
「………キアはいいよね 竜になれるんだもん」
「………」


そして白髪の少年は密かに…また少し近づいた…………

最終更新:2013年07月27日 08:29